ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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異文化教育まったりアフター

 

 あの後、ナラトゥースは正式に公安預かりとなった。

 

 なにやら取引があったらしく、鱗を艶々にして大満足顔のトカゲが降谷さんに媚びへつらっていた。

 バニーちゃんがどうだとかなんとか。

 お前本当に歪みねぇな。

 

 それと、俺の事務所にもやって来て、今後のナラトゥースの扱いについての情報交換をすることになった。

 降谷さんの方でも旧支配者ナラトゥースについて知っておきたかったみたいだし。

 俺としても地球滞在条件をまとめておきたかったからちょうどいい。

 

 ソファに座るナラトゥースが、人間そのものの仕草で繁々と契約書を確認している。

 トカゲはうむ、と頷いた。

 

「ギャウギャウ。ギャウ」

「了解。今後はお前という個体に限り、俺のシマでの活動を許す。他の召喚経路は閉じるし、本体が来たら死あるのみだ」

「ギャウゥ……」

「いや理由なくぶちのめしたりしないから」

「ギャァウ」

 

 お前あのニャルラトホテプと組んで荒らし回ってたじゃねーか、無実のアルワッサを囲ってボコって遊んでたろ。

 

 呆れたように言われて、俺は視線を逸らした。

 あれは俺らの視界に入るとこに居たのが悪い。

 キモい見た目だし、仕方なかったんだ。

 

 ナラトゥースは大袈裟に震えて「怖…近寄らんとこ…」みたいな様子を見せた。

 何故か諸伏さんもコナン君もドン引きしている。

 なんでや!奴らは人間には百害あって一利なしなんやで!!!

 

 契約がきっちり締結されたことを確認してから、降谷さんが口を開く。

 

「今後は僕を契約主として、任務ごとに追加メンバー扱いで仕事を割り当てる形としていく方針だ」

「仕事かぁ。給料って払われるのか?」

「給料は基本的な魔力を一定単位纏めて月一で支払うことで合意した。もちろん仕事上の必要経費は別途申請してもらう形になる」

「めっちゃ会社員じゃん」

 

 俺の反応に、ナラトゥースは「ギャウ」とサムズアップして頷いた。

 お前の化身いい奴だな、とのこと。

 

 でもこの契約だと労働時間の上限がないので、多分残業代は払うからと無限に働かせられることだろう。

 労働契約は人間文化の中でも最も難解かつ悪辣。

 

 超社畜旧支配者が生まれてしまうだろうことを予想して、俺はほろりと涙を流した、

 

 まあ、ナラトゥースなら途中で労働基準法の適用を求める直談判ぐらいするはずだ。

 そして降谷さんに「労働基準法は警察官には適用されない。僕にもだ」と跳ね除けられるのだ。

 現代社会の闇は深い。

 

 トカゲは鼻高々でギャウギャウ言っている。

 

「へー。良いキャバクラの紹介も福利厚生でしてくれるのか。お前好みじゃん」

「ギャウ」

「めっちゃキリッとした顔。言っとくけど子供は作んなよ作ったらその時点でぶっ殺す」

 

 俺が釘を刺すと、心底心外そうに両腕を広げられた。

 その凄く雄弁なポーズ止めんか。むしゃくしゃするなおい。

 

 いわく。

 俺は女性を愛してるんだ。そんな軽率に人生の重大な選択を迫ったりしない。

 お互いに愛を深めて、これからの未来を相談して、その上で欲しいとなればお前に相談しよう。

 その時には俺も彼女のために金銭的収入が必要だし、無収入で無戸籍で軽率にとはいかない。

 もちろん、この星の女性は愛に真摯だから、生涯添い遂げ、彼女が天寿をまっとうした後も真摯に彼女だけを愛す。

 それが女性に愛される良い人間種の男ってやつだ。

 

 その気迫に俺は思わず慄いてのけぞった。

 

「お、おう………」

『ゼロより真人間じゃん』

「僕に謎の流れ弾を当てるのはやめてくれ」

 

 背後から唐突に銃撃された降谷さんが呻いて力尽きる。

 伝説の地雷男とは対極に位置する発言に違いない。

 コナン君が後ろでうんうんと頷いているあたり、同意見らしい。

 倫理観がコナン君並みとかコイツマジかよ。

 

 とはいえ、だ。

 実のところナラトゥースは真人間なわけでも倫理観があるわけでもない。

 コイツは女性が好きなだけだからな。

 

 シャッガイの昆虫と一緒にいる時は、彼らの好み通りに冷酷かつ非道に拷問を成すし。

 ビヤーキーの彼女ができた時はとびきり可愛く、聖句を全部誦じられる敬虔なやつになる。

 

 根本的に願望器なので、愛情を「曲解なく願い通りの存在になる」ことで示しているに過ぎないのだ。

 それぞれの文化に合わせて千変万化、ただ望まれるものとして振る舞おうとするもの。

 

 そのための文化理解の努力はマジで惜しまないあたりは、賞賛に値すると思っている。

 

 俺の視線を感じ取ったトカゲは、キメ顔をしてキラッと笑ったようだ。

 対人間向きに表情筋を実装しているらしい。

 またむしゃくしゃして来た。

 

 降谷さんが難しい顔になってため息をついた。

 

「あとは人間に変身してくれると嬉しいんだが、コイツが頑なに拒むんだ。君からもなんとか言ってくれないか黄衣君」

「ギャウ…」

 

 俺が視線を向けると、断固とした拒否の姿勢でトカゲは首を振った。

 

 外見だけ取り繕うのは景品表示法違反で許されないらしい。

 金を創造してくれと言われて金メッキの石ころを渡すようなものだとか。

 

 難しいなコイツ。

 俺景品表示法違反なのかよ。

 ……いや中身旧支配者の人間は景品表示法違反だわ、すまんかった。

 俺はしおっと触手を縮れさせた。

 

 俺たちがどう説得しようか悩んでいると、ふとコナン君のポケットから星の精が出て来た。

 

 「クス?」と言って恐る恐る這い出して、コナン君と手を繋いだままふよふよとナラトゥースに近づく。

 ナラトゥースはハッとした様子で持って来た大きなラッピングの箱を星の精に差し出した。

 

「ギャウ……クスクスクス!」

【ゲタ?】

 

 どうやらこの間怖がらせた詫びらしい。

 貰った魔力でナラトゥースが具現化したのだろう、大きなプレゼントだ。

 

 ちなみに、中身は子供用マグネットブロックだ。

 自由に組み立ててお城、飛行機、観覧車など様々なものを作成可能。

 少し小さなピースもあり、細かな物も作れるようになっている。

 収納用の可愛い大きなバケツ付き。

 

 これは事前に俺に許可を取って用意した物だ。

 突然「このぐらいのものをあのかわい子ちゃんにプレゼントしたいんだが、家に置く場所はある?」とか聞かれてびっくりしたものだ。

 俺のマンションはかなり広いし、スペースもあるため許可した形になる。

 

 星の精はそーっと豪華にラッピングされた箱を開封した。

 中から出て来た色とりどりのブロックに、パァッと顔を明るくして喜色満面になる。

 

 触手でピースを二つほど手に取ると、磁石でパチっとくっついてさらに盛り上がったようだ。

 「ゲタゲタゲタッ!!!」と歓声を上げて振り回し始めた。

 

 星の精の喜びようにナラトゥースもホッとしたようだ。

 人間の流儀で星の精の機嫌を取るのは彼としても賭けだったろうし、仕方のないことか。

 

 星の精がナラトゥースの手をとって、「ゲタ!」と何やら話しかけている。

 ナラトゥースは困った様子で、触手を複雑に動かすようなポーズをした。

 

「ギャウ……ゲタゲタ、クスクスクス」

【ゲタッ!?!?】

「クスクスクス、クス」

【ゲタ………】

 

 なんもわからん会話が続いている。

 

 どうやら星の精はナラトゥースを自分のお母さん(!?)だと思ったらしい。

 だから「お母さんですか?」と聞いて、ナラトゥースが「違うよ。ごめんね、君のお父さんとお母さんは別にいるよ」とそっと宥めた…ように聞こえた。

 

 星の精は酷くしょげて、触手を全部しおしおにしたようだ。

 お母さんじゃなかった……星の精にはお母さんがいない…。

 星の精が小さいから捨てられちゃったのかな…。

 

 ナラトゥースが困り切って顔でわたわたフォローの言葉を探している。

 

 願望器はガッカリされることが一番苦手だからな。

 しかも星の精は女の子だ。

 あわわわわわとテンパるナラトゥースへ、コナン君が近づいていく。

 

 コナン君は星の精を優しく抱きしめて、よしよし、と撫でてやったようだ。

 

 しばらく撫でられてから。

 星の精はピトッとコナン君に張り付いて「クス!」と笑顔を取り戻す。

 ナラトゥースもフォローするように「クスクスクス。クスクス」と口を開いた。

 

 「お嬢ちゃんにはお父さんとお母さんは居ないけど、代わりに誰にも負けない友達がいるんだよ」ぐらいの意味合いか。

 星の精はおっきな口を満面の笑みに変えてゲタゲタ笑った。

 

 以上、ずっとゲタゲタクスクス言っている謎ホームドラマである。

 諸伏さんが悩ましげな顔をして首を傾げた。

 

『ええ話なのか?くすくす言ってるばっかでなんもわからん』

「流石に僕らも星の精語は未履修でな…」

 

 諸伏さんと降谷さんは疑問符に塗れているようだ。

 多分良いタイミングで話に入ったコナン君は、クスクス語をずっと聞いているうちに超高INTを駆使してちょっと理解して来たのだろう。

 

 すげーよコナン君。

 俺にはクスクス言っているようにしか聞こえないよ。

 思考読み取りと念話でなんとか理解しているにすぎないよ俺は。

 

 ナラトゥースはマモーさんが配る茶請けのケーキを受け取り、後方理解者顔でコナン君にすり寄る星の精を見つめている。

 お前やっぱ星の精のママだよ。お前がママになるんだよ。

 

 ナラトゥースが俺に親切心で提案した。

 

「ギャウ」

「星の精の文化教育か。ふむ。確かに同族と会った時のための知識ぐらいは必要だしな。お願いして良いか?」

「ギャウギャウ」

 

 どんと来いという様子でナラトゥースは胸を叩いた。

 

 文化知識においてコイツの右に出るものはいないからな。

 人間社会でも時代時代の地域別教義別に理解してるみたいだし。

 星の精を任せるにはぴったりの人材だ。

 

 よく考えたら文化人類学とか、その手の文化研究が恐ろしく得意そうだ。

 研究者に引き渡しても良かったかもしれん。

 

 そんなことを思いながら、舞い上がってブロックで遊びナラトゥースにお礼を言う星の精を見つめていた。

 ナラトゥースもニッコリして、心の底から嬉しそうにしたようだった。

 





・星の精
マグネットブロックの山でたくさんいろいろなものを作っている。
これは友達!こっちは星の精!!!
ブロックを片付けないまま転がしておいて、起き抜けのハスターが踏んで死ぬ。
設置型地雷レゴブロック概念。
黄色が動かなくなった……星の精が言いつけを守らず散らかしたからだ…また星の精は酷いことして、今度こそ白黒の車に連れてかれるんだ…(号泣)

・公安でのナラトゥースの扱い
単眼白トカゲの凶悪そうな姿に怪異対策課の面々はビビり散らかした。
でもすぐに愉快ないい奴だと気付いて、飲み会誘おうとしてトカゲだから誘えないことに遅れて気づくほど馴染む。
職場でも紳士的で女性警官にキモいモーションかけたりしない。それを女性は望まないので。
同僚の仕事も願望器ゆえに積極的に手伝い、数々の小間使い経験から報連相も行き届いている。
「凄くいい奴で頼りになる」「前の彼氏より人間できてる」「残業案件手伝って貰って予定より早く帰れた」などなど好意見がどしどし寄せられる。

・ハスターの憤怒
人間の神は!!!俺!!!!
黄衣はのんびり旧支配者すぎて仕事じゃ全然使えない?黙らっしゃい!!!(激怒)
だからトカゲは嫌なんだ!前もそうだった!!
俺の上位互換じゃないもん!違うもん!
あっ待ってニャル待ってトカゲの始末はいいんだついでに人間も始末しようとしないで…。

・ニャルラトホテプの憤怒
我が夫を裏切る愚かな羽虫はあのうざったいトカゲと一緒に処分しましょうね。
その後一緒に綺麗になったこの星で暮らしましょう。
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