次は300話記念の呪術廻戦ネタかも。
俺が記憶操作でニャルの存在を隠蔽してから。
京都府警が到着したため、黒田管理官が事情を話して公安にバトンタッチすることとなった。
やはり裏の理事官が前に出ると話が早い。
京都府警の警部さんはリスを胸ポケットに忍ばせて、そそくさと退散していった。
相手が公安だと眉を顰めることもない。
と言うかこれはあれだな。
こっそりリスを連れ歩いてるのがバレないようにとの気持ちだろう。
リスさんは話の際中も実に賢く、胸ポケットで音を立てずに大人しくしていた。
いいなぁ、相棒ペット。
俺も冒涜的じゃないやつが欲しい。白馬探偵が連れてた鷹みたいな。
いややっぱ欲しくない可愛いのに寿命が短すぎて辛い。
俺がそんなふうに思い悩んでいれば、しばしの後に京都府警の公安課が到着したようだ。
怪対課のある警視庁と異なり、怪異対策の経験はまだまだ少ない。
しかし俺たちがいるから最低限の命の保障はされている、との判断で出動が決まったのだろう。
早くニャルトラップを解除しないと人命に関わるし。
京都の公安さん達はガチガチに緊張しているようだ。
皆顔色が悪く、体も強張っている。
警視庁怪異対策課の悲劇を人伝に耳にしているのだろう。
最近でも、回収に向かった刑事が気づいたら足が腕に変わってたとかいう置換事件があったし、そりゃ噂には事欠かないか。
ちなみにその時は俺が治療して治してやっている。
素手で頑張って怪異から逃げ切って、這う這うの体で帰って来たらその奇怪な姿から仲間に怪異と間違われて逃げられたらしく。
街に怪異が出たとして一時住人が避難する騒ぎになった。
本人は復職したが、心の傷はまだ癒えていないらしい。
まあ今回は俺たちの補佐として殺人事件向けの現場の保存だけだ。
流れ弾で死ぬ可能性がある程度だし、通常の怪異対応よりも危険は少ないはずだろう。
若い公安刑事さんが「あの、この部屋に危険な怪異がいるって言うのは本当ですか?」と怯えた様子で問いかけて来た。
「そうだね。人を丸呑みにできるサイズの獰猛な空飛ぶ蛇がいるよ。あと踏んだら穴という穴から血をドバドバ流してそれでも死ねない罠とか」
「ッッッ……!」
「俺より前に出ないこと。俺が証拠っぽいものを壊しそうになったら声をかけて欲しい」
震え上がる刑事さん達を後ろに下がらせて、慎重に部屋を探索する。
彼らは幸運な方だ。
先ほど言った情報が罠を踏むまで分からないことこそが、怪異の怖いところなのだから。
部屋の中にはいくつも無秩序に魔術罠が設置されている。
ニャルは模様替えの時に、手慰みに思いついた魔術を適当に組み上げては捨てていたらしい。
奴の癖のようなものだ。黄昏の館にも結構同じようなのが転がってるし。
一眼見ただけでも、人間にとっては即死トラップになりうるものが十以上。
突入の時は黒田管理官に咄嗟に防護をかけておいて良かった。
よし、と魔術を起動。
手前から一個ずつ素早く解体していく。
しかもこれ解体しようとすると反応して炸裂する罠とか仕掛けられてるみたいで。
ニャルはもう悪いことしかしねぇな。
ちなみに、当のニャルは別室でコナン君達と待機している。
コナン君もいるし、最悪の展開にはならない……はず、だが。
早めに解体作業を終わらせて、ニャルを宥める作業に戻った方がいいことは間違いないだろう。
星の精とか震え過ぎて具合が悪そうになってたし。
チクタクマンに至っては俺に「堪忍してや…」と一言だけメッセージを送って来た。
音声なんて付属してないのに、蚊の鳴くような声なのがありありとわかる文章だった。
そんなよそごとを考えつつ、素早く危険な魔術を解体していく。
霧散した膨大な魔力が部屋をチカチカと発光させる。
刑事さんが「おお…!」と慄いたような声を出した。
全62個。これで全て解体したはずだろう。
肉眼を開いて再チェックすると、まだ一個見えにくい隠蔽特化の魔術が隠れていたのでそれも解体する。
ニャルの魔術はマジで油断できないのである。
これで魔術の方は全て終わった。
光の乱舞が終わったからか、黒田管理官か「安全は確保できましたか」と声をかけて来た。
俺は首を振ってそれを否定する。
「いや、まだ駆り立てるものが影に潜んでる。ニャルの眷属だ。本棚にいるみたいだから今出してくるよ」
「………蛇型の怪異とやらですか」
「そんな強くないけど、少なくとも拳銃は効かないな。鋼鉄の巨大肉食獣に人の知能を搭載した感じです」
「軍隊が専用装備で戦う敵、ということか」
黒田管理官が苦々しげな様子で眉間の皺を深くした。
一応光を嫌う性質があるから、上手く追い込んで大火力爆弾で仕留めることはできそうだ。
幸い米花町では爆弾は畑で取れるし、火力も用意しやすい。
純粋な熱と衝撃で硬い鱗の内部を効率的に攻撃できるだろう。
対駆り立てる恐怖戦のことはともかく、本棚に近づいて覗き込む。
シュルル……と本と本の間の影から小さく声がした。
どうやらニャルに狭こいところに押し込められたらしい。
駆り立てる恐怖がチョロっと顔を出した。
主人の意図が分からず困り切っている様子だ。
ニャルは特に意味もなく駆り立てる恐怖をばら撒くことがあるし、仕方のないことだ。
俺は念話で駆り立てる恐怖に話しかけた。
『君の主人には許可をとって回収に来た。俺と一緒に来てくれ』
『─────』
特に駆り立てる恐怖側に異論はないようだ。
にゅるりと影から出て来て、駆り立てる恐怖はとぐろを巻いた。
黒い巨体はクサリヘビに似ている。
獰猛そうな鉤爪が付いていて、それはどす黒く艶々と光っている。
羽はゴム様に頑丈でしなやかだ。
巨大で歪な頭部は凶悪に細められた瞳がいくつも並び、警官達を睥睨した。
若い公安警官が甲高い悲鳴を上げた。
SAN値防壁は作動させているが、それはそうと純粋に怖かったらしい。
駆り立てる恐怖は興味なさそうにシュルシュルと舌を出し入れしている、が。
どう見ても蛇はガッカリして萎れていた。
初陣らしく、主人に獲物の命を捧げて寵愛を得ようと意気込んでいたようで、現状には不満しかないらしい。
人間の命を捧げられても困る。
そのままコンパクトに空間を折りたたんで、しおっとした蛇を確保した。
これでもう危険はないだろう。
後ろから近寄って来た黒田管理官が「ご協力心より感謝します、黄衣探偵」と深々と頭を下げた。
もしかしたら、あの蛇を警察官が対処することになったらと考えていたのだろう。
確かにそうならなれば計り知れない犠牲が出ていたのは間違いない。
とはいえ。
実は蛇よりも仕込まれていた魔術の方が十倍は厄介なんだが、それはここだけの話。
ともかく仕事は終わったから、ニャルが悪いことしてないか確認しにいかねばならない。
公安さん達が現場の細かなチェックに入るのを尻目に、俺たちは事件現場を出る。
全速前進、トップスピードでコナン君とニャル達のいる部屋へと戻る。
そして。
たどり着いた部屋では、ニャルは派手に爆破四散していた。
部屋はニャルだったもので虹色のベチャベチャ。
至近距離からそれを浴びたコナン君はびしょ濡れになっていた。
なんでや。
・京都府警公安課
全国どこでもそうだが、怪異対策課の噂は広く広まっている。
曰く「死ぬこともできなくて怪異として本部に保管されてる警察官もいる」「任務を終えて帰ったら、まだ幼い娘と妻が呪詛で死んでいたとか」エトセトラ。
そのせいで公安配属になるとみんなお通夜みたいになる。
・駆り立てる恐怖君
人並みの知能を持つ。
里があって、そこから成人した若者がニャルの呼びかけに応じて馳せ参じているようだ。
獲物を狩って、その命を神たるニャルラトホテプに捧げることで信仰を示す。
本作の駆り立てる恐怖君は里から出て来た新人で、母親の超でか蛇に大切に育てられた甘ちゃん。
いつかニャルの側付き番犬になろうと大志を抱いている。
・星の精
目の前で恐怖の大魔王が爆散して放心してる。
あの恐ろしかった大魔王を一撃で動かなくした!
虹色の怖いやつ!
ほ、星の精が友達を守らないと、動かない、怖くて体動かない、星の精が弱いから、どうしよ、友達が死んじゃう…。
ポッケでバイブレーション中。別にコナン君は死なない。
ヨグ=ソトース
顕現してニャルをポカっと一発殴って去っていった。
ヨグ=ソトースの拳。350D6のダメージ。
軽く殴っただけなので、ニャルならすぐ復活できる。
さっき宮殿に設置された時限魔術爆弾が爆発して、フルート隊の楽器が全部タンバリンになったので処した。
アザトースは満足している。