ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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園子のアブない夏物語!〈旧支配者の矜持〉

 

 伊豆!旅行!!!なり!

 メンバーは俺、潜入捜査官二人、コナン君、女子高生組の6人である。

 明美さんは志保ちゃんとゆったり阿笠博士の家でお泊まり会とのこと。

 

 そんなわけで二泊三日の伊豆旅行は、花火あり海水浴ありおいしい料理ありということで意外と満足度の高い滑り出しとなった。

 

 特に夕食の海鮮を楽しんだ後、皆で花火を楽しむことができたのが良かった。

 

 現実逃避なのか何なのか、途中まで降谷さんが諸伏さん相手に途切れなく花火の歴史の蘊蓄を延々と垂れ流してはいたが。

 これにはこっそり様子を伺っていた園子ちゃんも引いていた。

 

 そういえば、この旅行はどうやら園子ちゃんとしては、いい男探しも兼ねているらしい。

 

 絶賛恋人募集中ということで、諸伏さんにも積極的にモーションをかけるなどしていた。

 諸伏さんは困りつつも紳士的に園子ちゃんを諭すものだから、余計に「うーんいい男!」となっているようだ。

 

 夜。

 時刻になると、河川敷には多くの人が集まった。

 俺たちも浴衣姿で宿からしばらく歩いたそこに訪れて。

 10分もすれば、一発の花火が空を彩り、人だかりから歓声が上がった。

 

「蘭、蘭!あそこ空いてる!行こ!」

「ちょっと園子!あ、コナン君もこっち!」

 

 女子高生組コナン君添えがいいスポットを見つけたのか、三人で人波へと入っていく。

 

 しだいにどんどんと打ち上がる鮮やかな花火が地上を照らして、自然と口数が少なくなる。

 降谷さんはなんだか楽しそうにくすりと笑い、密やかに諸伏さんに囁いた。

 

「それにしても。鈴木財閥ご令嬢がお相手か。身分もこれ以上なくはっきりしてるし、玉の輿じゃないか」

『馬鹿言わないでくれ!女子高生相手にどうこうする気はない!』

「まあまあ。お兄さんにもいい報告ができそうだろう?」

『そういうゼロはどうなんだよ。班長にはナタリーさんがいるし、萩原はあの調子だし』

「くくく、松田も両手に花だしな。あーあ、俺一人取り残されそうだ」

『ゼロは人嫌い過ぎるんだよ。外面だけ取り繕うの上手くなってさぁ』

「俺はお前たちがいればそれでいいからな」

『独身宣言かよ』

 

 密やかな会話が、花火の光に照らされて一瞬だけ耳に届く。

 

 二人はどこか頑ななまでに、諸伏さんが既に死人であることを話題に出すことはなかった。

 いや、諸伏さんは降谷さんに合わせているだけで。

 頑ななのは、ともすると彼一人だったのかもしれない。

 

 暗闇の中、学生のように屈託なく笑う二人は、どこか取り戻せない日々の続きの中にいるようにも見えた。

 

 何処からともなく出現したコナン君が「二人とも、本当に友達同士だったんだね」と俺に話しかけてくる。

 

「蘭ちゃん達と一緒にいたんじゃないの?」

「ちょっと二人の会話が気になって様子見に来た」

「盗聴器は仕掛けないようにね。せっかく二人とも今オフっぽいから」

「わぁってるよ!」

 

 コナン君が駆けていく。

 そのままこっそりと忍び寄り、秒で降谷さんに見つかって摘み上げられている。

 花火が上がる。

 皆各々に楽しみ、祭りを満喫しているようだ。

 

 俺は一人花火をぼんやりと見上げて。

 旅行に来てよかった、と素直に思った。

 

 

 

 

 

 翌日は近場の海水浴場である。

 空は晴れ渡っていて、絶好の海水浴日和だ。

 

 蘭ちゃんと園子ちゃんが先週のうちに選んでいたらしいおしゃれな水着に身を包み、浜辺で写真を撮りあっている。

 キャピキャピ、という言葉が相応しい若さの躍動するひとときである。

 

 なお、その間コナン君は「水着の蘭ちゃんに近づいてくる全てに激しく威嚇する」という重要任務に勤しんでいた。

 

 何なら俺がちょっと近付くだけでティンダロスの猟犬並みに執念深く攻撃してくるので、あれはもう蘭ちゃんの身の安全は保証されていると言って良いだろう。

 ほとんど小型の妖怪みたいなナマモノであった。

 

 先ほどまでは諸伏さんも泳いでいたが、今は軽く体を拭いて海から上がっている。

 どうやら腹が減ったらしく、露店に並んで軽食を買っているようだ。

 

 俺は髪の毛の後ろの方がやや触手なので水泳はパス。

 海の家で買ったかき氷をしゃくしゃくと口に運ぶ今現在だ。

 

 降谷さんもキャーキャー言われるのに嫌気がさしたのか、同じく海の家の目立たない位置で薄手のパーカーを羽織って涼んでいる。

 

 彼は無言で、元々話好きではないのかぼんやりと海の方を眺めているだけだ。

 しかし世間話ぐらいはしないと場が持たない。

 

 俺はそっと降谷さんに声をかけてみることにした。

 

「うーん、騒ぎ立てられるのは嫌いだろうに、こんな場所に引っ張り出してすまん」

「……いや。思ったより、悪くはなかったさ。ヒロとこんなふうに旅行を楽しむことなんて、もう絶対にないんだと思っていたから」

 

 無表情の中に陰鬱な笑いを混ぜ込み、降谷さんが暗く口角を上げた。

 

 お、おう…。

 思ったのの100倍ぐらい重苦しい答えが返ってきて、シリアスで軽口を叩きづらい空気だ。

 

 何処となく居心地が悪く、もそもそとかき氷を味わうことに専念する。

 すると予想外なことに、降谷さんの方から追加で質問が飛んできた。

 

「それより、君には人間がどう見えているんだ?」

「え、どういう意味?」

 

 しばしの沈黙。どのように答えるか悩んでいるのか。

 降谷さんは慎重に口を開いた。

 

「……アレは人間のことを、最大限好意的に表現しても、草むらをつついたら出てくる小さな虫の群れだと思っている」

「あー、ニャルのことか。そりゃ奴ならそうだろうな」

「君だって立場は似たようなものだろう」

 

 めちゃくちゃ失礼なこと言ってくるやん。

 俺はじっとりと降谷さんを睨め付けた。

 

 とはいえ、彼の言っていることは基本的に間違いではない。

 旧支配者や外なる神にとって、生物とはそもそう言うものだ。

 気にするまでもない矮小な存在。羽虫。存在としての規格が異なる、ゴミの類。

 

 それは降谷さんも分かっているのか、淡々と言葉を続けていく。

 

「そして、それは当然だ。何の意識もなく視線を合わせただけで肉ごと弾け飛ぶような脆弱なものに、気を遣う道理はない」

 

 降谷さんの瞳には、隠しきれない強い畏れのようなものが浮かんでいた。

 そのことに不意に傷付いてしまうのは、いつまで経っても俺が自分の強大さに慣れないせいか。

 俺が繊細すぎるせいか。

 

「君が何の気なしに立ち上がる。ただそれだけで、人類文明全てが、砂場の山より脆く崩れ去るだろう」

「まあ、だろうな。風速350kmの台風が地球全土を覆ったとして、人類が生きていける道理がないし」

「だが、そうなっていない」

 

 降谷さんが俺をまっすぐに見た。

 

「そうなっていないのは、君がいつだって気を遣っているからだ。慎重に、丁寧に、一歩ずつ微生物を踏まずに移動するような努力をしているからだ」

「んーーー……」

 

 俺はやや、答えに窮した。

 

 降谷さんとしては、なぜそんなにも人類なんかに意識を割くのか、と聞きたいのだろう。

 何か人類からの返礼を期待しているのか。ただの気まぐれなのか。

 その辺が分からないのでは安心できない、と降谷さんは考えているのだ。

 

 俺は溶けかけのかき氷をもう一口味わい、時間を稼いだ。

 改めて言葉にすると、こう、恥ずかしくて口に出すのに躊躇してしまうからだ。

 

「……確かに俺からすれば、人間なんて瞬きの間に死んでしまうものでしかない」

「なら、何故だ?」

 

 俺は真っ直ぐに降谷さんを見て、笑いかけた。

 

「でもさ。同時に丁寧に見てみれば、あらゆる可能性が人類には満ちている」

 

 「ハスターの瞳」の能力値数値化の機能を少し拡張すれば、各個人が持っている技能だって俺はみることができる。

 

 降谷さんは仕事柄磨き上げられたであろう高い〈追跡〉〈隠れる〉技能がある。

 諸伏さんはあまり他では見かけない〈ライフル〉技能に比重が置かれ、彼がこれまでいかに後ろ暗い任務に手を染めてきたのかを示している。

 蘭ちゃんは一瞬目を剥くほど〈空手〉を極めている。これで都大会止まりってマジか…?

 園子ちゃんは対人技能、特に〈心理学〉に長けているのが興味深い。まだまだ高校生なので高値とは行かないが、今後に期待ということだろう。

 

 そのようにつらつらと並べれば、降谷さんは苦笑いしたようだった。

 

「君からすれば、電子顕微鏡で分子構造の違いを観察するようなものだろうに」

「そうだけどさ。でも、そういうのが好きなんだよ」

 

 「好き?」と予想外のことを聞いたような顔をして降谷さんが瞬く。

 俺は小っ恥ずかしさに顔を背けて、それでも彼の疑念に応えるために正しく言葉を紡いでいく。

 

「そ。俺は人間が好きなんだ。愛してるんだ。人類発祥から、いつか来る滅びの時まで。ずっと見守り続けようって思う程度には」

 

 この宇宙の誕生は大きなイベントだったが、その時はまだ白痴の神の微睡の一部と特に気にしていなかった。

 でも宇宙が安定してきて、それが俺の前世で馴染み深い人類のある宇宙だと気づいて、一気に胸が躍った。

 あの懐かしい日々に戻れるのか。涙が出るほど安らかな世界にもう一度浸れるのか。

 

 そう考えれば考えるほど、地球が誕生する100億年が余りに遠く感じられた。

 

 やっと地球が姿を現した時は涙を流して喜んだ。

 まだ溶岩でドロドロの火の玉でしか無かったが、そこから人類が生まれるのだと思うと愛おしさすら募った。

 生命が誕生した時など、テンションが上がりすぎてところ構わず叫び回った。

 

 そうして大切に見守ってきた人類文明、ハイパーボリアが旧支配者クトゥルフによって海の底に沈められたときは、それこそ我を忘れるほどキレ散らかしたものだ。

 

 そんな人類も、いつかは滅びる。

 時の流れがある以上、永劫の繁栄など続かない。

 

 俺にかかれば、人類を時の神ヨグ=ソトースから切り離して永遠のものにするぐらい簡単なことだ。

 でも、しない。

 人類がそれを望まないことぐらい、明白なことだからだ。

 

 だからせめて、滅びの時まで見守り続け、その終わった後を永遠に覚えていよう。

 この宇宙が終焉を迎え、次の微睡が始まっても。

 旧支配者ハスターはお前達を絶対に忘れない。

 

 そのように、俺はひっそりと決意しているのだ。

 

 しばらく。

 降谷さんは沈黙した後で、ゆっくりと口を開いた。

 

 「君が神と崇められる所以が、分かった気がするよ」なんて。

 穏やかな顔で笑うものだから、余計に恥ずかしくなってしまう。

 

 俺は咳払いして、この辛気臭い話題を変えるべく早口で話題を振った。

 

「それよりさぁ、上司さんと円滑に行ってる?変な仕事回されたりしてないか?」

「…?特にこれと言ったことは無いが。君永課長がどうかしたのか?」

「いや、何もないならいいけどさぁ」

 

 意外に公私混同はしないということなのか、はたまた力を溜めているだけなのか。

 よく分からないが、変なトラブルにならないと良いなと願う次第である。

 

 と、そこで、俺は「ハスターの瞳」の技能値確認機能を切り忘れていたのに気付いて、それをオフにしようと意識を向ける。

 危ない危ない。

 流石に技能値まで見るのはマナー違反気味だからな。

 

 しかしギリギリで切る直前に対象に入ってしまったのか、すっと横を通り過ぎた店員さんの技能値が俺の頭の中に映し出された。

 

「ッ!?!?〈空手〉96!?」

 

 反射的に小声で叫んでしまい、慌てて口を塞ぐ。

 

 技能値の上限は100。

 50あればプロだろう。80あればその道で名だたる達人だ。

 つまり96とは、限りなく空手という武道の真髄を極めたに等しい武神か何かである。

 

 よく見ればSTR(筋力)もCON(耐久力)もバケモンだ。

 ムーンビーストぐらいなら単騎で撃退しそうな猛者中の猛者が、なにゆえ夏の海の家で店員なんぞやっているのか。

 

 名前は京極真、と。

 聞いたことがないが、その道の有名人に違いない。

 

 ほええ…と思わず不躾に凝視していると、降谷さんが詰まらなさそうに俺の食べかけのかき氷を横からぶんどった。

 というかコレは間違いなく降谷さんではなくニャル野郎である。

 

 俺のかき氷を遠慮なくしゃくしゃくと口に運び、横目で店員さん確認している。

 

「貴方、ああいうのがいいんです?僕はちょっと、あの手の人間は遊び甲斐がなくて萎えます」

「どんな視点で人を見てんだよ。俺は普通に感心してただけだっつの」

「ええー…、羽虫がムキムキしててもキモいだけですよ?」

「というか俺は降谷さんと話してただろうが。邪魔すんなよな」

「………」

 

 ニャルラトホテプは俺と視線を合わせ、わずかに目を細めた。

 奴にしては様子がおかしい。

 ニャルラトホテプが俺をしばし観察した後、大きなため息をついた。

 

「分かってはいましたが。やはりここ最近の貴方の羽虫への入れ込みようは異常ですよ」

「何が言いたいんだ」

「心配しているんですよ。友人として。塵に心を傾け過ぎて、貴方が喪失に耐えられなくなるんじゃないかと」

 

 這いよる混沌の瞳は真摯だった。

 奴は意外と友情に素直だ。だからこれも本音の心配なのだと、すぐに俺も理解できた。

 

 俺はやや笑ってから、「そうかもな」とだけ、答えるに留めた。

 




・野生の京極真
横目で鈴木園子を見るのに夢中。
BIG LOVE。

・コナン君
お前も!お前も!お前もお前も!!!
蘭に近づくとか何の用だ?あ???
やんのかオラ!!!
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