ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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神話生物のSAN値チェック

 

 前回までのあらすじ!

 

 殺人事件現場にニャルが出た!

 少し目を離した隙にニャルは処され、ミンチになって散らばった!

 

 

 

 俺たちはまず、ニャルの肉片を集める掃除から始めることにした。

 飛び散ったニャル片はすっかり部屋にこびりついて、部屋の壁や家具に染み付いていた。

 虹色で見るだけでSAN値を奪う、とんでもなく有害なニャル片だ。

 

 完璧に除去する必要もあり、掃除にはかなりの苦労が伴った。

 

 部屋をきれいにしたら、公安さん達の事情聴取に応じて事件に協力。

 事件当時の聞き取りや、公安の採取した事件現場の資料に怪異品が紛れ込んでいないかの確認などなどをこなした。

 

 しかし肝心の証言者であるニャルが昇天してしまったし、本題はニャル復活を待つことになるだろう。

 

 その間に服部君は大岡さんにひっつかれつつ、役得な様子だった。

 しかも駆けつけた和葉ちゃんと一悶着あったようで、激しいゴングが鳴り響き。

 ラブコメ主人公感を出しながら一旦解散となったのだった。

 

 俺たちも念のため、ニャル復活を待つのと新事実が出たらすぐ駆けつけられるように京都に一泊することになった。

 

 さて。

 急遽宿をとることになったが、繁忙期の京都でいい場所の宿を当日とるのは意外と難しい。

 俺たちも手一杯だったので、今回はマモーさんに連絡を入れて近場の部屋を取ってもらった。

 

 するとあら不思議。

 予約の取れない超高級旅館が当日宿として現れたではないか!

 

 料金はマモーさんのブラックカードから支払われるようだ。

 貢がれている…断るとマモーさん凄く悲しそうな顔するんだよな……。

 

 京都駅も京都府警も近場で、アクセスを重視した上で一番いい宿を選んでくれたのだと思われる。

 豪華懐石付き。写真にはデカい伊勢海老とかが写っている。

 ありがとうマモーさん…ッ!

 

 コナン君と俺はそこにチェックインして、優雅に一泊することにした。

 そこは一つの部屋が半ば一戸建てのようになっていて、美しい内装に中庭がついている。

 一日二組限定らしい。

 庭園のような廊下は豪華で照明も抑えめ、エレガントな空気を醸し出している。

 

 部屋の中に案内されて、俺たちは荷物を下ろす。

 

 まずコナン君は机の上に犬ベッドを置いて、その上にそっと星の精を寝かせてやった。

 星の精はカタカタ震えて、クスとも言わずに縮こまっているようだ。

 

 俺は星の精を覗き込んでコナン君に声をかけた。

 

「調子どう?星の精元気出た?」

「ううん。ずっと震えてる。まだショックが抜けないみたい」

 

 コナン君が心配そうに撫でてやると、星の精はいっそう震え出した。

 コナン君が星の精に薄いブランケットをかけてやる。

 星の精はブランケットを手繰り寄せて、丸くなって塞ぎ込んでいる。

 

 俺は机の後ろに、同じく塞ぎ込んでいる駆り立てる恐怖をそっと寝かせた。

 十メートル超えの巨体だが、部屋が広くて助かった。

 細い尾の先の方は丸めて省スペースとする。

 

 のっし、とデカい体が床の上に横たえられる。

 

 コナン君が瞬時に目を剥いた。

 

「変なの!!また連れて来た!!!」

「待ってこれはニャルのペットを一時預かりしてるだけだから!」

「しかもすごく元気がない…なんで?ニャルさんがあんなになったから?」

「うん。信仰する神がミンチになってるのを見て卒倒した」

 

 駆り立てる恐怖は横たえられたまま無気力に動こうとしない。

 酷い無力感に駆られているようだ。

 巻いた尾の先をちろっとだけ動かして床のカーペットを毛羽立たせる。

 何をする気も起きないらしい。

 

 死屍累々といった室内に、自然とため息が重くなる。

 

「ところで集めたニャルさんはどうしたの?」

「ビニール袋に入れて風呂場に置いてある。多分明日朝には復活するんじゃないかな」

「なんか黄衣さん達って生態が便利すぎない?」

 

 コナン君に胡乱な顔をされてしまった。

 

 別に肉体と魂が完全に消滅しても復活するし、便利と言えば便利かもしれない。

 俺たちは自然発生した生命体とは違って、アザトースの夢の一部だからな。

 特にニャルはいないとアザトースが変に思うらしく、すぐにリポップするのだ。

 

 風呂場からは「にゃーるー…」と恨めしそうな声がこだましている。

 ヨグ=ソトースに殴られたことを根に持っているらしい。

 

 見た目は風呂場に不法投棄されたゴミ袋に、口の生えた肉塊が入っている形だ。

 完璧にホラーだから、間違ってもホテルのスタッフに見つからないようにしなければ。

 

 ともかく、まずは星の精の対処からだ。

 

 じろっと思考を覗き込むと、星の精が何に悩んでいるのかが明らかになってきた。

 澱んだ思考をかき分けて、要旨を抜き出す。

 

 星の精はあの虹色のに狙われてるんだ…。

 きっと一人ずつあの虹色のに動かなくされるんだ…星の精のせいだ…友達もみんな虹色のべちょべちょになるんだ…。

 ああ!向こうに虹色のがいる!!

 

 不定の狂気:幻覚・幻聴。

 星の精が発狂するんかい。

 

 可哀想な星の精はコナン君に飛びついてグスグス泣き始めた。

 

 念のためSAN値防壁は築いておいたが、流石にヨグ=ソトース顕現で精神にダメージを受けてしまったらしい。

 服部君はチクタクマンが追加で守ったのかもしれない。

 

 グッスングッスンと変な声を出す星の精にはヨグ=ソトースの幻覚が見えているようで、必死でコナン君に縋り付いている。

 虹色あっちいけ!友達に近づくな!友達は星の精が守るんだもん!!!

 

 流石に可哀想なのでなんとかせねば。

 

 星の精を覗き込んで、そーっと手を翳してやる。

 パニックの星の精はそれに気付かず、グズグズ喚いて大声で泣いている。

 

 流石に星の精のSAN値を回復させるなんて初めての試みだし、上手くいくかはわからない。

 ダメ元で人間用のSAN値回復魔術をそっと発動。

 星の精に生きる意味と希望みたいな無形の概念を流し込んでやる。

 

 星の精は「……ゲタ?」とふと正気に返ったようだ。

 触手をざわめかせて犬ベッドに戻ってキョロキョロと不思議そうに周囲を確認した。

 あれ?虹色は?いなくなった?平気になった?

 

 自分が幻覚を見ていたことには気付いていないらしい。

 コナン君がそっと撫でてやった。

 

「大丈夫?怖かったり痛かったりしない?」

【ゲタ!!】

 

 星の精は力こぶを作って、自分の強さと成果をアピールし出した。

 強い星の精が虹色をやっつけた!友達を守った!星の精はとても強い!!

 

 そして、そのあたりで背後に寝ている駆り立てる恐怖の存在に気づいたようだ。

 ベタンッッ!とトップスピードでコナン君の顔面に張り付いた。

 

【ゲ ダ ゲ ダ !!!】

「大丈夫、僕も黄衣さんも付いてるから。怖くないよ」

【グスッ……!】

 

 まだ心の傷は癒えそうにないようだ。

 さて、次は駆り立てる恐怖の番だ。

 

 駆り立てる恐怖を覗き込む。

 横たわったまま全部の目が虚空を見て呆然としているようだ。

 思考を少しだけのぞいてみる。

 

【…………シュル…】

 

 お前はいつもそうだ。

 お前は色々なことに手をつけるが、一つもやり遂げられない。

 誰もお前を愛さない。

 

 こいつもSAN値が無くなっているらしい。

 可哀想に、ネットミームみたいな自己嫌悪で蛇の抜け殻みたいになってしまっている。

 

 星の精と同じようにSAN値回復魔術をかけたが、効果は無いようだ。

 駆り立てる恐怖は茫然自失で口から魂が出たみたいな顔をしている。

 人間的精神が無いと効果がないということは、逆に言えば少しでも人間味があれば神話生物相手でも効果を発揮するということか。

 

 新しい知見を得た。

 

 仕方ないので、ツルツルとした鱗を少しだけ撫でてやる。

 瞬時に、巻いてあった尾の先で優しく押し除けられた。

 好きでもない男に頭ポンポンされた女子みたいな反応だ。

 

 汚ねえ手で触ってんじゃねーよカス。

 主のご友人だから言えねぇけどマジ不愉快なんだが。

 

 内心はほぼセクハラ社長の言動に耐えるOLであった。

 すまんかった……俺も礼を失しとった……。

 

 とりあえずそっとしておくより他無いだろう。

 

 蛇と星の精を隠して持ち込まれる豪華懐石を楽しんだあとは寝るだけ。

 あの美しい天ぷらがな、ちょっと変わってて美味しかったんだよな。

 

 星の精には我慢してもらうために、スタッフさんが帰った後に懐石再現血液料理を豪華大盤振る舞いした。

 星の精は「友達が食べてたやつ!」とゲタゲタ言って喜んでいた。

 

 駆り立てる恐怖の前にも俺が具現化した肉の塊を置いてやったんだが。

 食欲がまるで無いらしく、魂の抜けたまま横たわっているばかりだ。

 

 その晩は蛇の小腹が空いて星の精が一呑みにされても可哀想だし、星の精には保護魔術をかけてコナン君と寝かせることにした。

 コナン君の腕の中で幸せそうに眠る星の精を見ながら、一夜は過ぎて行ったのだった。

 

 

 

 翌日朝。

 ニャルは元気に復活した。

 

 朝早くに復活したらしく、俺の布団に入り込んで俺の全身を触手でロックしての目覚めであった。

 

 亜空間内に入り込んで俺の本体までギチギチに締め付けている。

 普通に締め殺されそうな勢いだ。

 ギブギブギブと床を叩けば、ニャルは俺が破裂する前に渋々離してくれた。

 

 ニャル、サイズが可変だから俺と同サイズにも全然なれるんだよな。

 ニャルはポコポコと憤って唇を尖らせた。

 

「副王酷いと思いません!?あんな急に暴力なんて!最低!」

「今回は何やったんだ?」

「ちょっと王宮のフルート隊をタンバリン隊に変えて、バイブス上がるような新曲流して来ただけです!」

「うん、反省しような」

 

 ヨグ=ソトースがあんまり怒ってなかったし、たぶんまたアザトースが新曲を気に入っていい感じに寝たのだろう。

 ニャル、アザトースのメッセンジャーなだけあってアザトースの好みをピンポイントで押さえてる臭いんだよな。

 これまで宮殿でたくさん悪いことしたが、その全部でアザトースは満足しているし。

 

 なお、アザトースを見下すニャルとしてはその反応はかなり不愉快らしいことをここに追記しておく。

 

 しかし、またトルネンブラさんがべしょべしょに意気消沈しているだろうから、そろそろ菓子折りを持って謝罪に行った方がいいだろうか。

 外なる神界の菓子折り分からなすぎて辛い。

 イブ=ツトゥルに何が好まれるか聞いてみようかな。

 

 あと、帰宅したら黄昏の館に顔を出して捕まってしまったナイトゴーントの様子を確認せねばならないだろう。

 きっととんでもなくしょげ返っているはずだ。

 

 

 なんで身の回りの神話生物はみんな揃いも揃って元気がないのか。

 

 そのようなことを思いながら、俺は懐いて来るニャルをヨシヨシしたのだった。

 





・ニャルラトホテプ
宿の床に駆り立てる恐怖が横たわっていたが視界に入っていない。
蛇の管理はあんまりしてないので、影に詰めてそのまま忘れることがよくある。
どんな悪戯してもアザトースは満足しているのでむしゃくしゃしているが、それもわかってて悪戯してる。

僕はアザトースのメッセンジャーなので。
気が向けば、アザトースの求めることもするのです。

・トルネンブラ
フロアを盛り上げるニャルが3秒で作ったニセ演歌タンバリン付きにSAN値が減っている。
アザトースすやすや。
今、横たわって床の埃とか集めてる。
なんも…良いことない……。
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