ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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甘い愛と絆

 

「ナイトゴーントを実家に帰してやろうな。な、ニャル!」

「やです。あの犬畜生にはほとほと愛想がつきました」

 

 現在、ニャルの説得に尽力している俺である。

 

 東都に帰ったらコナン君をマンションに置いて、そのまま黄昏の館に来たわけだが。

 ニャルは着いて早々ナイトゴーントを檻から引っ立て、嬉しそうに振り回した。

 新しいおもちゃが手に入って嬉しいらしい。

 

 ナイトゴーントはか細い悲鳴をあげて振り回されている。

 光を手に入れてここのところ、ニャルはめっきり羽虫遊びの頻度が減ったからな。

 その分の遊びが見つからなくて、ニャル自身フラストレーションが溜まっていたのだろう。

 

 おもちゃのぬいぐるみ並みに振り回されたナイトゴーントはしょげ返ったようだ。

 

 ニャルはソファでくつろぐテュフォンの獣を指差して唸った。

 

「あいつ見てくださいよ!我が夫からの授かり物を我が物顔で貪って勝手にソファで寝てるんですよ!?」

「いや食べてもらうために買ったわけで。ソファも別にニャル座らないだろ」

「しかも尻尾も毟らせないで僕に唸り散らしてくる。許されない。この犬畜生!」

【ヴヴヴ…】

「テュフォン君と喧嘩しない」

 

 仲裁すると、ニャルはモゴモゴと文句を言いながら引き下がってくれた。

 

 うーむ、なかなかニャルの下等生物向け教育が進まない。

 もっと労りをこめて接することができれば一番良いのだが。

 俺もあんまり人のことは言えないし、長い目で見る必要がありそうだ。

 

 ともかく、まずは昨日蘇生されたナイトゴーントの様子を確認せねば。

 

 さっき振り回されてあらゆる箇所を痛めているようで、動きもヨタヨタしている。

 魔術で治してやれば、ナイトゴーントは羽をしおしおに窄めて猫背になった。

 

 露骨に元気のないナイトゴーントを確認してから、ニャルに声をかける。

 

「いいか。今後、ナイトゴーントから羽を引っこ抜いたりはしないこと」

「エッッッ」

「手足も尻尾もダメ。死ぬようなのもダメ」

「蘇生しますよ!?!?それでも!?」

「ダメ。代わりに無限プチプチあげるから」

 

 ブーブー文句を言うニャルに、俺は買っておいた市販の無限プチプチとハンドスピナーを手渡した。

 プレゼント用のラッピング付きだ。

 ちょうどバレンタインだし、俺手作りの外なる神も美味しいチョコもつけておいた。

 

 そもそも、ニャルはおもちゃに執着があるわけではない。

 元来飽きっぽく、ただ暇してるだけで手持ち無沙汰なだけ。

 

 そして俺が少し想像していることだが。

 きっと、アザトースの分の退屈も請け負っているからこその飽き性なのだと思われる。

 

 加えて常に一緒に暮らしていて初めてわかったのだが、ニャルはペン回しの感覚で生き物の部位を引っこ抜いているらしい。

 手元に別の面白そうなものがある時は代わりにそれを使っているのをよく目撃している。

 だから代用の無害なものを与えれば、ニャルの悪癖は大きく改善するはずだ。

 

 ニャルはワクワクと袋を開封。

 中から出てきたチョコを大事そうにいそいそと亜空間にしまった。

 

 次にカラフルなボタンの並ぶ無限プチプチをしげしげと眺める。

 「ほー」とニャルは感心する姿勢を見せた。

 プチ、と押してふむと考える仕草。

 「75点ですかね。星の精の触手には劣りますがナイトゴーントより良さそうです」と結論を出した。

 

 ハンドスピナーも手にはめて回してみるようだ。

 

 ルーレットにもなっていて、少しばかり遊ぶことができる。

 何回か回して、悩んでから魔術で回り心地を良くした。

 凄い勢いで回り出したハンドスピナーに、パッとニャルの顔が明るくしたようだ。

 

「どう?ナイトゴーントいじめない?」

「はい!我が夫のくれたものですから、羽虫より優先されるのは当然です!ずっと大切に遊びます!」

 

 ニャルは懐をごそごそして、中から千切った俺の触手を取り出した。

 そしてハンドスピナーの真ん中に装着したではないか!

 

 !?!?!?

 

 ハンドスピナーの真ん中で俺の触手が高速回転している。

 ニャルからワアッと歓声が上がった。

 いや意味わからんけど。

 分からんが、ニャルが満足するならそれで良いか……。

 

 高速回転する触手はヘニョヘニョと遠心力に靡いている。

 あんなの本当に見てて面白いのだろうか。

 

 ニャルがハンドスピナーに夢中になっている間に、俺はナイトゴーントを座らせて、食事を渡して労わってやった。

 ナイトゴーントの黒目しかない目からダバダバと涙が溢れる。

 夜鬼って泣くんだな…初知りだよ……。

 

 ともかく、今後は屋敷でテュフォン君と一緒に自由にしててもらおう。

 

 ニャル教育の礎にするのは酷なことだが、ニャルをこのままにしておく方がもっと被害を生むわけで。

 おお、ナイトゴーントは犠牲となったのだ…。

 

 回転するハンドスピナーをじっと見つめていたニャルは、そっと俺に声をかけてきた。

 

「僕、我儘ですよね。我が夫に迷惑をかけていますよね」

「そうですね」

「そこは僕を元気づけるためにも『そんなことないよ』って言うシーンでしょう。少女漫画で読みました」

「ニャルその少女漫画ってどっから仕入れてんの?まず人間の著作物を読むって発想無いよね?」

「元化身が奉納しました」

 

 そして降谷さんはいったいなぜニャルに少女漫画を……?

 ちょっと背後に宇宙を背負いながら、俺は気を取り直して口を開く。

 

「まあ、あれだよ。親友に嘘をつくのは不義理だからな。迷惑なのは本当だけど。でも、ニャルだから俺は付き合ってる」

「つまり?つまり?」

「がっつくなし。恥ずかしくなるだろ。俺もニャルを愛してるってことだよ。……はい、サービスシーンここまで。全員解散してくださーい」

「ヤダヤダヤダ我が夫のサービスシーンもっと欲しい!!!」

 

 ニャルはひっくり返って泣き喚いた。

 そしてキュルンと床の上でぶりっこポーズをした。

 

「可愛いでしょう?サービスシーン続けたくなったでしょう?」

「続きはニャルが下等生物への接し方を習得してからかな。To Be Continued…」

「ケチ!!!」

 

 ニャルは再び喚き出した。

 その拍子に足が机に当たり、机にかけてあった布がさらりと落ちる。

 

 机にはペンとインク壺、白インクなどが並んでいる。

 あれは漫画か?

 特徴的な厚紙に、緻密に何やら絵が描かれている。

 めちゃくちゃ上手い。

 流石、ニャルは何をやらせても芸術センスがあるんだよな。

 

 ニャルは「!!!!!」と跳ね起きて布をかけ直した。

 布には埃除けとともに、魔術的透視を阻害する効果があるようだ。

 ここ自体が異界だったため、空間の複雑化を避けてやむをえず布をかけて隠していたのだろう。

 そして恥ずかしそうにもじもじする。

 

「見ちゃダメですよ、我が夫。これは僕の日記帳的なやつですから」

「お、おう。ニャルが嫌がることはしないでおくよ。もし商業誌になっても読まないでおく。でもお布施で買うぐらいは良いよな?」

「許可します。しかし口で直接感想を僕に伝えるやつは例外なくぶっ殺しますので、周囲にもそう伝えておいてください」

「読むとニャルに殺される魔導書かぁ」

 

 とんでもねー禁書が生まれてしまうようだ。

 俺はうむうむ頷いて、事故でSNSに切り抜きが流れてこないように設定を見直す計画を立てる。

 ニャルは心底幸せそうに微笑んで、俺の手を取った。

 

「僕も……優しくて愛情深いあなたに相応しい僕になれるよう、頑張ります」

「テュフォン君を虐めないのはできたもんな。次はナイトゴーントを虐めない、だ。頑張れそうか?」

「はい!頑張ります!!任せてください!」

「よし!」

 

 ナイトゴーントが視界の端で心細そうにみじろぎした。

 ちょっと不安だが、ニャルのやる気は確かだし、今後に乞うご期待というやつである。

 





・最近のニャルの趣味
ニャル自身とハスターの恋愛を描いたオリジナル漫画をせっせと描いている。
超絶イケメンハスター(デカキモイカ)に恋するニャルラトホテプ(冒涜的可変イソギンチャク)の純愛漫画。
SNSで連載しており、カルト的人気を誇る。
安定した更新速度、美麗ペン画で表現されたモノクロの宇宙と異文明などもそうだが。
特に上位存在と外宇宙の描き方が、素晴らしく良く練られたSFとして界隈で絶賛されている。
ニャルは実録漫画と公的にも言い張っているが、多くのニャルの妄想が含まれる。
ハスターがアカウントを見つけた場合、「誰だこの理解ある彼君」と困惑する。
一般漫画形式で書籍化しやすい形式のため、既に単行本化のお声がかかっているようだ。
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