ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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陰謀の香り

 

 事件はあっさりと解決した。

 今回も恨みやすれ違いが生む悲しい事件であった。

 

 ただ、みんな揃って複雑なトリックを用意するのは何故なのか、俺は疑問に思わざるを得ない。

 単なる殺人が極端に少なく、みんなINT高そうな凝ったトリックをどこかから仕入れてくるんだよな。

 まさかそういう怪異なのだろうかと思う今日この頃である。

 

 

 まあともかく本題はこれからだ。

 殺人事件の後に本題が待ってるって世も末なんよ。

 

 俺たちの住むマンションにやってきたニャルは、ワクワクと部屋中を見回している。

 

「へー、さすが羽虫の巣!信じられないほど狭い!小さい!」

「まあ黄昏の館はただでさえ広い上に魔術的に拡張してあったしな。比べたらそりゃ犬小屋だけどさぁ」

 

 基本、俺たち住むには本性を出して寝られる場所が必要だからな。

 それだけでも相当な広さが必要になる。

 

 俺の本来の住まいであるハリ湖もカスピ海程度にはデカい。

 地平線まで極低温の黒い液体ヘリウムに満たされた死の湖だ。

 炭酸温泉みたいで入り心地が良いので、いつだったかに俺の住処と決めたのである。

 

 ……という話をつらつらと語れば、コナン君はひどく胡乱な顔をした。

 

「液体ヘリウムって、-269℃以下ってことだよね。生物の住める気温じゃないよそれ」

「ビヤーキーは俺の加護もあるし普通に過ごせるよ。あとカルコサの住人も」

「怖。……というかカルコサの住人?」

「俺が作った人間っぽいもの。ぽいだけ」

 

 人間を模倣する、虚ろな人間擬きである。

 精神生命体の一種で、アリのように真社会性生物。

 感情は単純なものしかないが、一応人を真似て都市を作っている。

 

 完全に失敗だったんだが、処分するのは無責任だし。

 時が経てば人間に近づくかと思って、そっとしておいてある次第である。

 

 コナン君はデカいため息をついて、星のオウムを撫でながらため息をついた。

 

「黄衣さんも意外とやらかしてるんだよね」

「やらかしてるって言わないで!人類発生まで待てなくて工作してただけだから!」

 

 Switch2手に入らなくてダンボールで作ったみたいなもんだよ!

 

 なお、星のオウムはコナン君の腕の中で哀れなほど震えている。

 「タスケテ…タスケテ……」とか細い悲鳴もあげながら、コナン君の脇に頭を突っ込んでガタガタブルブル。

 

 ファミレスでニャルに気付いた時も、阿笠博士の下っ腹の隙間に隠れようと肉をかき分けてヒンヒン言っていたし。

 非常に面白い絵面になってしまっているようだ。

 

 

 と、そんな俺たちの雑談を特に気にせず、ニャルはのしのしと室内を探索した。

 良い具合のスペースを見つけたらしく、ニャルは懐からこの間返却した駆り立てる恐怖を取り出したようだ。

 

 俺は瞬時にニャルの前に回り込んだ。

 

「待つんだニャル。駆り立てる恐怖をリビングに配置するのはおやめになって!」

「え、でも良いインテリアになりますよ?」

「インテリア駆り立てる恐怖は可哀想!あと危険だから!星の精がパクって丸呑みにされちゃったらどうする!」

「それは…ふむ。確かに勿体無いですね」

 

 取り出した蛇にニャルは語りかけた。

 

「ここから動いてはいけません。あと、通りがかったものは食べちゃダメです。いいですね?」

「駆り立てる恐怖を観葉植物の植え込みに置くやんけ。……はあ。なら俺が定期的に餌を用意しておくよ」

 

 そう言うと、ニャルは不思議そう首を傾げた。

 餌をやるという概念がなかったらしい。

 でも俺らはともかく、一般の生物に食うな動くなは死ぬんよ。

 

 改めて主から命令をもらった駆り立てる恐怖は、鱗の艶も取り戻してやる気に満ち溢れたようだ。

 シュッシュッと尻尾を振って気合いを入れ直している。

 

 コナン君がそっと俺に声をかけてきた。

 

「ところで諸伏さんって結局どうなったの?帰ってこないけど」

「降谷さんとこに転がり込むって。うっかりニャルに消し飛ばされてもアレだし」

 

 ハスターの瞳で諸伏さんの様子を確認すると、今は降谷さんのアパートで楽しく宅飲みしているようだ。

 笑い声が狭い室内にこだまして、実に楽しそうだ。

 俺も早くアレになりたーい。

 

 コナン君が真面目な顔で実家への帰省を検討する顔をしていたので、頬をブスブスとつついておいた。

 ふにゅふにゅふにゅ!とコナン君が文句を言う。

 コナン君は俺の癒しになるんだよぉお!

 

 

 と。あとは、ニャルの自室の案内だ。

 

 俺が突貫で作ったニャル部屋で、魔術的に重ね合わせた扉を潜れば亜空間に出ることができる。

 俺の部屋とお揃いの看板がかかった扉に、ニャルがにっこりと笑顔になる。

 

 中はナイトゴーントとテュフォン君がまったりしていて、ゆったりしたスペースが広がっていた。

 小さいが頑丈に作ってあるから、ニャルが暴れても少しの間なら耐えられる。

 それに物を置くだけならニャルの方で拡張すれば十分に使えるだろう。

 

 ニャルは頬を染めて俺に抱きついた。

 

「これからは正式に我が夫と二人暮らしになるんですね!僕、嬉しいです!」

「ぼ、僕もいるからねニャルさん…うっかり潰さないでね…」

「我が夫の側仕えぐらいは必要ですからね。許しましょう。我が夫のお気に入りですし、特別に気が向いたらこのナイトゴーントいじめて良いですよ」

「こらっ!コナン君に闇の遊びを教えない!」

 

 中のナイトゴーントは卑屈そうに端っこで体操座りしている。

 テュフォン君に分けてもらっているらしく、手にはテュフォン君の涎でベトベトのジャーキーが握られていた。

 

 でもニャル的にもコナン君は好感度高いみたいでよかった。

 

 俺の教えでおもちゃにできなくなって夜鬼の価値が下がっているのもあるだろうが、自分のオモチャを無料で羽虫に分け与えるとは。

 ニャルも随分成長したらしい。

 

 まあ、一通りの案内は終わったので、あとは降谷さんに連絡だけだ。

 

 スマホを取り出して、降谷さんへと電話をかける。

 降谷さんは飲み会中だが出てくれたようで、上機嫌そうな声が聞こえてきた。

 

『ニャルラトホテプの搬入が終わったのか?』

「おう。今のところ事件は起きてない。明日朝を無事に迎えられるかどうかが肝かな」

『有事に備えて周辺の避難計画を練っておく。君は全力を尽くしてくれ』

「了解」

『それと……これは未確認情報だが』

 

 そのように言葉を置いて、降谷さんは静かに声を潜めた。

 

『君の命を狙い、暗殺集団が動いている可能性がある』

「え、なんで?」

『正確には神として動く君が狙われているようだ。依頼主は未特定。おそらくは他国の政府、またそれに準じる権力だ』

「んー…俺が日本贔屓だからか?」

『国同士の争いはいつも足を引っ張り合うことから始まる。神座神社の次の神事では注意しておいた方がいい』

 

 俺は思わず深いため息をこぼしていた。

 

 べつに俺は人間に命を狙われた程度で死んだりしないが。

 俺の神社で暴挙を働かれたら、神罰を下さざるを得ない。

 できれば思いとどまって欲しいところだが、どう出てくるのやら。

 

『暗殺集団は「タランチュラ」と言う名で知られていて、腕の刺青が特徴だ。各国から依頼を受けて、世界各地で活動している』

「物騒だなぁ。気をつけるよ」

 

 神は平等でなくば対立を生む。

 仕方のないこととは言え、なんともままならぬものだ。

 

 あとちょっと電話しているうちにニャルが洗濯機を魔改造して血を搾り取る怪異に変えていた。

 ニャルはポカっと殴って、洗濯機は暴れる前に素早く討伐。

 くしゃくしゃになった洗濯機を前にもう一度ため息をついたのであった。

 

 新しい洗濯機買いに行かないとな……。

 





・降谷諸伏松田の宅飲み
遅れて松田も来ていた。
昔を懐かしみつつ盛り上がったようだ。
全員アルコールは効かないのでノンアル飲み会である。
「黄衣にアルコールも楽しめるようにしてもらおうぜ」と松田さんが意気込んでいるらしい。

・タランチュラ
「ルパン三世 ワルサーP38」より。
神を名乗る不遜な奇術師を殺して欲しいという依頼だったが、暗殺組織も馬鹿ではない。
マジもんの怪異であると察しをつけている。
だが国家相手の商売である以上、大口顧客の依頼を断るのも難しく。
難しい舵取りにボス・ゴルドーは「何も分かっていない蛆虫共が足元を見おって!」と怒りをあらわにしている。

・依頼国の党幹部
日本の国力低下を狙って、迂遠に依頼を出した。
自分は依頼主じゃないですヨー。
そしてダメ元。別に木っ端暗殺組織なら滅んでもいいし。
失敗しても人間への不信感で日本への肩入れを止めるかなと思っている。
国内では黄色の印の兄弟団の影響が弱く、それとわからない形まで改変したクトゥルフ信仰が根付いている。
螺湮城本伝。
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