ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

307 / 469
ワルサーP38〈世界的動乱〉

 

 シクシクメソメソ、ニャルは丸まって泣いている。

 「意地悪ぅ…」と目を潤ませて俺を見るのだ。

 

 降谷さん達を前に、俺は椅子を退けて机の下から転がるニャルを取り出した。

 

「元気出してくれニャル。羽虫の全滅がだめなだけで、他は大丈夫だから」

「ううぅ…僕は我が夫の化身、略奪するものなのにぃ…」

 

 エグエグし出してしまったので、俺はニャルを抱っこして膝に乗せた。

 

 ニャルも俺のことを心配してくれているわけで。

 単に羽虫の区別がついていないから、根本から根絶しようとしているだけだ。

 

 いや根本から根絶されても困るんだが。

 族滅はダメなのは代わりないが、条件付きなら…と俺は少し思考を巡らせた。

 

 というか、今後も俺が悲しむたびに族滅を企画されても不幸を生むだけだ。

 ニャル育成のため、この辺りで羽虫にも種類があることを教えなければならんか。

 羽虫と一括りにしても千差万別。

 人間同士で殺し合うほどに多種多様だ。

 

 ニャルに区別がつくようになれば、俺もとても嬉しい。

 

 ニャルが遊び心を出さずに我慢していられるかは疑問が残るが……信じて送り出すのも夫の勤めか。

 

 膝の上で丸まるニャルを覗き込んで、声をかける。

 

「ありがとうニャル、俺のために怒ってくれてるんだよな」

「うう……我が夫ぉ。羽虫全部潰すぅ」

「いや潰されても困る。うーん」

 

 俺はニャルをヨシヨシして宥めた。

 

「なら、指定の羽虫以外は遊ばないって約束できる?」

「する……羽虫の見分けつかないけど…」

「印つければ見分けつく?」

「付きます!」

「殺さずに遊べる?対象者以外は傷一つ、魂も無事にできる?」

「僕は優秀なので!全力で頑張ります!」

「よし!」

 

 ニャルを起こして、たくさんヨシヨシして抱きしめる。

 ニャルはパッと顔を明るくして俺に飛びついた。

 

 神罰は対象者に印をつけて、ニャルにやってもらうのだ。

 こうすれば俺が手を出したことにはならないし、より無実さが増すだろう。

 

 ニャルを野に放つなんてとんでもない!という顔で蒼白の降谷さんがブンブン首を振っている。

 公安信者さんも「や、やめておいた方が…いえ私などが神に意見など…」と冷や汗を流しているようだ。

 

 でもシクシクしてるニャルを放っておくなんてできないし。

 ニャルの愛と心配は伝わってくるから、苦渋の決断というやつだ。

 

 とりあえず神罰対象は光って爆音が出るようにしよう。

 対象は暗殺組織トップ、依頼主、そして依頼を出すことに合意したやつの合計八人。

 

 ニャルはすでにやる気満々になっているようだ。

 再度俺はピンと人差し指を立てて注意事項を唱えた。

 

「じゃあさっき俺が印をつけたやつに神罰を与える。殺さない。対象者以外は健康被害を出さない。すまない。面倒かもしれないが、受けてくれるか?」

「はいっ!羽虫如きが我が夫を悲しませたこと、目にもの見せてやりますよ!」

 

 

 そのように、ニャルは意気揚々とミョンッと次元跳躍していった。

 

 うーん、不安なり。

 降谷さんが両手で顔を覆って「終わりだ…」とか言って天を仰いでいる。

 でも最悪でも他国にキングギドラが出現するだけだし、きっと早めに討伐すれば被害は少ない、はず。

 とりあえず目だけは絶対に離さないようにしておくこととしよう。

 

 俺は重々しく頷いて、とんでもないことにならないように神に祈った。

 俺が神なんだよなぁ。

 

 

 

 

 翌日、一面は「某国党本部に怪異が出現!党員百三十名が意識不明の状態で発見される!」の文字がデカデカと躍っていた。

 

 昨日。

 なかなか終わらない議会に心配したスタッフが様子を見に行ったら、議会で全員が気絶して倒れ伏した状態で見つかったらしい。

 

 既にほとんどが意識を取り戻したが、まだ六名が何故か目を覚まさないらしい。

 悪夢にうなされるように苦悶の声を出して、それでも肉体になんの異変もない。

 

 最初は空調の異常や毒物混入などが疑われたが。

 意識を取り戻した党員たちの証言で、それは大きく状況を一変させた。

 

 触手を纏った燃える三眼の化け物が突然会議場に現れて、党員たちに呪いをかけたなどというではないか。

 化け物は「神罰です。せいぜい悔いてください」と古めかしい中国語で話したという。

 そいつは今も目を覚まさない党員六名に触手を突き刺して、ドス黒い何かを注入したのだとか。

 その生々しい様子をたくさんの党員が目撃していて、それが幻覚などではないことを証明していた。

 

 これはあっという間に世界的なニュースになった。

 

 そもそも、俺襲撃のニュースの時点で「黒幕はあの国じゃないか」という噂はかなり流れていたのだ。

 「馬鹿な手出しをして、日本を牛耳る強力な怪異の逆鱗に触れた」と報道されているらしい。

 

 同時に虎の檻に無手で入った阿呆扱いしながらも、「野蛮な君主を据えて、日本は知性を捨てた国になった」と批判する論調もあるようだ。

 そりゃ、もし日本を敵に回せば法を無視する怪異が攻めてくる可能性があるとなれば、いい顔はしないだろうよ。

 

 某国はすでに公式に声明を発表している。

 

 「愚かな言説に惑わされて、我が国の要人を蛮獣に襲わせることは到底許されない。国際社会は協調して、この醜いペットを手に入れて増長した小国を討ち果たさねばならない」とのこと。

 一部報復として輸入禁止と渡航中止、経済制裁も実施中。

 

 もちろん日本は関与を強く否定しているが、難しいことだ。

 

 ネットはすでに荒れ放題だ。

 日本がやったとは限らないのに当たり散らすのは幼稚園児のようだ、とか、神国日本!とか、お前が勝手に手出しして爆死しただけだろ、とか。

 

 俺を称賛する投稿も凄い数だ。

 この調子であの国を滅ぼしてくれ!なんて行き過ぎた意見も増えて来ている。

 

 しかし経済制裁は困ったものだ。

 俺の行動のせいで人々に実害が出るのは望むところではないし。

 運気操作で補填するべきだろう。

 

 

 

 帰ってきたニャルは触手全部ツヤツヤのプルプルにして、生き生きとしていた。

 たくさん遊んだらしい。

 

 俺はニャルをたくさん褒め称えた。

 

「約束を守れて頑張ったな、ニャル!ありがとう!」

「我が夫が羽虫を光って鳴るようにしてくれたおかげです。それに妙な守りのアーティファクトを持ってたみたいですけど、実にしょぼかったですね」

「へぇ、アーティファクトなんて持ってたのか」

 

 どうやら、某国に伝わる古い守護のお守りらしい。

 

 俺に喧嘩を売るだけはあり、並の魔術師ならあっと驚くような魔術的防護を築いていたようだ。

 とはいえ相手はニャルラトホテプ。

 軽く突破して弄ばれてしまったようだが。

 これはまぁ相手が悪かったとしか言いようがない。

 

 たくさん失神者も出たが、異界化した党本部でデスゲームも行わなかったし、ニャルにしてはすごく配慮していた。

 優しくて良いニャルだ。

 

 ニャルにはお礼に外なる神向け手作り苺大福を渡しておこう。

 

 ファミレスで食べた時、苺を気に入っていたから、モチーフとして使わせてもらったのだ。

 きちんと神造の魂も練り込んで、コクと旨みも引き出している。

 

 「これ、お礼に昨晩作ったんだ。食べてくれないか?」と手提げ袋を差し出す。

 

 ニャルはミョンッと飛び上がって食いついた。

 可愛くラッピングされた袋を開けて、大福を一つ掴んで、もそっと口に含む。

 するとぱあっと全部笑顔になって心の底から幸せそうに顔をふにゃけさせた。

 

 こんなふうに喜んでもらって、俺もつられて嬉しくなってしまう。

 

「ふふ。美味しいです!それに我が夫も幸せなんですね。歓喜が流れ込んできます!」

「う、だってニャルが喜んで食べてくれるから」

「僕、我が夫の悲しみを晴らすことはできましたか?」

 

 少しだけ、俺は沈黙した。

 報復は俺の心を晴らさない。

 俺は人間を愛しているから、それはただ自己への嫌悪となって俺の心を苛むからだ。

 

 ニャルはそっと俺を抱きしめて、耳元で囁いた。

 

「悲しまないで。貴方のいいところは僕がよく知っているから。嘆かないで。貴方が言ったんですよ、羽虫は多種多様だと」

「………そうだな。ありがとうニャル」

 

 と、しっとりとしたムード中にスマホが鳴り始めた。

 

 ニャルが顔をくしゃくしゃにしてブスくれた。

 まあすぐ電話は終わらせるから機嫌を直してくれ。

 

 見知らぬ電話番号だが一応電話に出てみることにする。

 

「はい、どちら様でしょうか」

『どもどもー。俺様だよん。黄衣ハスタ様のお電話で間違いないでしょうか〜』

 

 おお、ルパン三世だったらしい。

 彼が電話してくるということは非常に珍しいことだ。

 俺にはなるべく関わらないようにしてるようだし、何かあったと見て間違いないだろう。

 

 ルパンは困ったように口を開いたようだ。

 

『あんな、タランチュラのボスが昏睡したまま虹色に光って爆音鳴ってるんだけんども、そちらさんの神罰だったりする?』

「しまった、魔術解除忘れてたわ。うるさいだろうし解除しとく」

『まあそっちは別にどっちでもいいけどぉ。神罰はすでに下って、今後島が突然爆発したりしないんだよな?』

「しないしない。これで俺に手を出さない限り無罪放免だよ」

『うしっ!サンキュー。某国の件頑張んなよ』

「おう。そっちもよくわからんが怪我しないようにな」

 

 そのように別れを告げて、短い通話を切断する。

 

 本当は「怪我をしたら俺のところに来い」と言いたかったが。

 独立独歩の色が強い人だから、それを望まないだろうことは想像に難くなかった。

 彼はだからこそ俺のところにも連絡をかけてこないのだ。

 

 その高い実力と溢れんばかりの運気、そして鮮烈な光の如き決断力で危機を退けチャンスを掴む。

 

 極まった人間のパワーを感じる、俺はついニコニコしてしまった。

 

 ニャルは逆にむしゃくしゃしたらしい。

 頬を膨らませて「あんな猿っぽい羽虫に負けた…許されない…」とモゴモゴ言っている。

 

 俺はニャルをたくさんヨシヨシして、ひとまずの一区切りとしたのであった。

 





・ニャルゲーム配慮版
ドリームランドの一部を切り取って夢のデスゲーム会場を作成。
ルールは「かくれんぼ」。
会場は入り組んだ廃墟の形をしている。
最初から一人に一つ、持ち物のどれかが鍵に変化している。
どれが鍵かは、翼のマークがついているかで見分けられる。
鍵を全部集めて屋上から伸びる天の階段を登り鍵を開ければ、一人だけxxxxxできる。
内部には駆り立てる恐怖が徘徊していて、捕まったら食われる。

「別に、現実世界に戻ることができるなんて言ってないですよ?」


・ニャルゲームリザルト
ゴルドー:圧倒的暴力で全員から鍵を奪ってxxxx。
3名:駆り立てる恐怖に丸呑み。SAN値大幅低下で現実に帰還
3名:今もまだ隠れてる。正式な脱出手順はまだ遠い。
1名:偶然グリッチでドリームランド本体に落ちた。運が良ければ帰れる。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。