ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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鷲尾山の紅蓮髑髏

 

 今日は鷲尾山に任務で来ている。

 

 ここには昔から結構荒ぶってるタイプの旧神が封印されていたのだが。

 最近また活動し始めたらしい。

 調査に行った公安メンバーがSAN値大幅減で逃げ帰って来たのだ。

 

 旧神の通称は紅蓮髑髏。

 古来神として祀られていたが、仏教の伝来とともに魔物として扱われるようになった。

 

 山頂へ続く階段を登りながら、降谷さんが胡乱な顔をして息をついた。

 

「君の危険度判定の信頼のおけなさは本当にどうにかならないのか?どんどん危険度作成基準書が分厚くなるんだが」

「いやさぁ、正直さぁ、どのカブトムシが一番強いかの判定なんて誤差でしかないんよ」

 

 俺がブツブツ文句を言うと、降谷さんが「気持ちはわかるが」ともう一度ため息を深くした。

 今回の旧神も小型のカマキリ程度の強さでしかない。

 アリよりは強いが、それだけだ。

 

 同じく山を登る服部君が「おい、ホンマに大丈夫なんやろな」と不安そうに俺を見てくる。

 チクタクマンも「せやせや」と囃し立てる。

 ニャル化身に怪異の脅威について説かれるのバグ感が酷いな。

 

 服部君とは偶然ここで会っただけだ。

 

 どうやらこの鷲尾山の絶景を告白スポットにしたいようで。

 下見に来たら偶然俺たちと遭遇、と言う経緯らしい。

 

 俺たちの姿を見た瞬間くるりとUターンを決めそうになったので俺が引き留めた。

 逃さんぞ癒しの服部君!

 俺の心の服部君がいなくなってしまったし、代わりに本物をそばに置くんだい。

 

 俺はゴホンと咳払いして笑顔を作った。

 

「大丈夫。鷲尾山に伝わる紅蓮髑髏は旧神だけど、規模としては小さめ。おまけに悪人しか狙わない」

「その「悪人」とやらの基準も問題なんやけど」

「それは旧神の肌感覚ですねぇ。主に窃盗が一番の重罪っぽいけど、不信心も罰する対象かも」

「ダメな要素しか見つからへんのやけど」

 

 服部君にピシャリと言われて、俺はしおしおと凹んだ。

 

 紅蓮髑髏はハイパーボリア崩壊後の古い時代に人々に信仰された旧神だ。

 それは人の規範を司る神として、それを中心としたコミュニティを作ったようだ。

 

 しかし仏教伝来とともに人同士の争いが勃発。

 勝利した陣営が青仏──俺の化身たるエメラルド•ラマの像───をもって紅蓮髑髏を封印したのである。

 

 俺は気を取り直して諸伏さんに声をかけた。

 

「一応、これからいく寺には旧神が掲げる規範をまとめた古文書があるらしいよ。だったよな?」

『おう。俺も調査員として確認済み。殺されそうになったけど』

 

 おお怖、と諸伏さんは当時の任務を思い出して震えたようだ。

 

 「生者を呪ってはならない」という規範に抵触したらしく、調査中現れた紅蓮髑髏にぶっ殺されかけたらしい。

 まだ封印が半端に効いているため、活動限界時間までなんとか逃げ延びたようだが。

 全く危ないところであったとのこと。

 

 ふと見ると、結構上まで登って来たようだ。

 体力無限、もしくは体力ある人間しかいないから、登るのも早い。

 コナン君も小さいけど意外と体力お化けだし、危なげなく俺たちのペースについて来ているようだ。

 

 木々の隙間から雄大な景色が見えている。

 登山というほど山道ではないが、整備された階段の向こうに見える景色はハッと息を呑む美しさ。

 

 キョロキョロと他の登山客がいないことを確認してから、コナン君が星の精に声をかけた。

 

「今ならいいよ」

【ゲダゲダッ!】

 

 ポケットから飛び出した星の精が、ドローンを真似して触手をブンブン振り回しながら飛び出した。

 スマホも持っていて、器用に空の景色を撮影している。

 

 しばらく飛び回った後、星の精はブーーンと降りてゲタゲタ上機嫌そうにコナン君にスマホを見せた。

 画面には、動画で美しい鷲尾山からの絶景が映っている。

 すごい安定感で、風に小揺るぎもせず手ぶれもほとんどない。

 

 服部君も覗き込んで「ほー、こりゃ絶景やな!やるやないか!」と星の精をわしゃわしゃした。

 星の精はますます鼻高々になって、二足歩行モードに突入。

 胸を張ってクスクスゲタゲタ言っている。

 そう、星の精は凄い。テレビで見た飛ぶやつできる。星の精はみんなに褒められる。

 

 降谷さんが「つまり…透明状態で無線カメラを持たせれば容易に尾行要員として採用可能…?」などとアイディア成功した顔をしている。

 俺は降谷さんを睨め付けて「星の精に悪いこと教えるの禁止」と注意した。

 

 降谷さんと諸伏さんは「正義の執行のためなのに」「だよな」とコソコソ文句を言っている。

 

 

 

 さて、そんなことを言っているうちに、目的のお寺が見えて来た。

 

 多くの仏像とともに青仏を祀る大きなお寺で、栄えスポットとしても有名だったりする。

 もうすぐ一雨来そうな天気だ。

 夕方までには止むだろうから夕日は拝めるだろうが、早く中に入ったほうがよかろう。

 

 ごめんください、と言って事務所を覗く。

 すると授業中のお坊さんが出て来て、「ああ、お約束の怪異対策課の方々ですね!今和尚を呼んできます!」と走っていった。

 

 しばらくして現れた和尚さんが「これはこれは、あんなことがあってもまた来ていただけるとは。嬉しい限りです」と深々と頭を下げた。

 諸伏さんが「こちらこそ、ご迷惑をおかけしました」とペコペコする。

 

 諸伏さんが先に調査に来て、紅蓮髑髏から逃げ切った時のことを言っているらしい。

 諸伏さんも遠慮なく呪詛を飛ばして牽制しながら脇目も振らず逃げたようだし、そりゃ場はメチャクチャになってしまっただろう。

 後で遠隔で呪いは回収したようだが、ベリベリになった障子とか蹴っ飛ばしたお茶とか色々あるだろうし。

 

 諸伏さんはしゅんとして眉を下げている。

 

『俺が紅蓮髑髏から逃げる時に荒らしてしまった部屋は無事ですか?』

「ええ。我々で綺麗にしております。しかし……やはり青仏の修理を怠ったのが原因でしょうか……」

 

 和尚さんも気落ちして視線を下げた。

 そりゃ目の前で自分の寺で人が襲われたら、皆びっくりするだろう。

 

 もともと、この寺には定期的に青仏の修理のため、青来寺という寺から高齢のお坊さんがやって来ていたのだ。

 

 そのお坊さんは物質修繕の民間魔術の使い手で、全国各地のお寺を巡っては格安で仏像や仏閣の修理を請け負っていた。

 ジンもたしか、小さな木彫りの青仏を修理してもらっていたはずだ。

 

 しかし少し前に風邪をこじらせてお亡くなりになってしまったらしい。

 それ以降、青仏を直せずどんどん傷みもひどくなり。

 先日、封印が破れてしまったのだという。

 

 服部君が少し難しい顔をして首を傾げる。

 

「そんな早く悪くなるんか、その青仏言うんは」

「ええ。何もせず半年もすれば不思議と色は禿げてあちこちが黒ずみ、腐敗したような匂いがするようになるのです」

「その修理の坊さんは後継者はおらんのか?」

「二人、遠縁の技術者がおられるようなのですが。どちらも先代から出された課題を完璧にこなせるまでは青仏に手を出すなと言い付けられているようでして」

 

 和尚さんは困り切って、もう一回俺たちにペコペコ

 まあ、それに関しては仕方のないことだろう。

 

 あれは念仏を原始魔術として成立させ、モノをもとあった状態に戻す魔術。

 その単純な構造上、魔術の込められたアーティファクトを直すのは神懸かり的に難しい。

 魔術的効果を残したまま修復するなんて、一体どれほどの研鑽を積んだのやら。

 

 下手をすれば「ただの新品の仏像」になってしまうからこそ、後継には厳しく課題を課しているのだろう。

 

 俺は内心嘆息した。

 後継者問題は、やはりどの業界でも重くのしかかってくるものよ。

 





•青来寺の老僧
117話「探偵達のノクターン〈ミュージアムマター〉」に登場した老僧だが、このたび大往生。
念仏魔術で各地の青仏を直してまわり、生涯現役を貫いたようだ。
魔術を何も理解せすただ「御仏の加護」と思っていた魔術師でもない人だが、素晴らしい国宝級の職人さんであることは確か。
公安は現在、このような怪異封印の技術者の保護に取り組み始めたようだ。

•ジン
実は老僧の葬式に出席してた人。
礼を言い損ねた。葬式で大泣きしていた小さな老僧の孫娘に、自分の持っていた仏を渡した。
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