ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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占い師の矜持とキングの狙撃

 

 最近、星の精はスポーツに夢中である。

 

 特にサッカーがお気に入りらしい。

 サッカーボールを買ってもらってからは、ずーっと事務所でリフティングをしている。

 

【ゲタッ、ゲタゲッ!】

「星の精はとっても上手だね!」

 

 小さなゴールにコロコロとサッカーボールをシュートして、星の精はすっかり得意げになった。

 上手く触手で二足歩行になって、仮面ヤイバーの決めポーズを取っている。

 

 星の精はサッカーが得意!

 きっと将来「ぷろ」の人になる!みんなが星の精を褒めて、星の精の活躍を見に来る!

 

 俺が作ってやった星の精用簡単ユニフォームを着て、星の精は鼻高々で胸を張った。

 すっかり人間の仕草が上手くなったようで何よりである。

 

 空間を魔術でやや拡張して、軽いレクリエーションスペースを作ってやって正解だったな。

 星の精に公園でサッカーをさせるわけにはいかなかったから苦肉の策だったが。

 喜んでくれたようで何よりである。

 

 フニョフニョフニョ、と俺の落とし子が二匹ほど星の精を囲んで胴上げする。

 星の精がゲタゲタと笑った。

 

 コナン君だけじゃサッカーするには不便だろうと、短くて細い抜け毛で落とし子を作ったのだ。

 一メートルほどのチビタコキーパーだ。

 細い毛を抜いて作ったチビ落とし子で、俺の認識に影響されて星の精にも親切である。

 

 サッカーについても教え込んだので、一緒に遊ぶ分には十分だろう。

 

 コナン君が星の精にシュートのコツを教えてやるのを見ながら、俺は二人に声をかけた。

 

「おーい、マモーさんがおやつ用意してくれたぞ!二人とも!」

「わかった!ほら、星の精も行こうね」

 

 星の精はゲタッ!と言いながらチビタコキーパーの触手を引いて彼らも連れてきたようだ。

 俺の落とし子に食事は必要ないのだが、まあいいか。

 

 マモーさんの今日のおやつは美味しいシェフ監修の高級マンゴーパフェだ。

 その美味しそうな彩りに、思わず俺の顔もキラキラしてしまう。

 最高級マンゴーがこんなにたくさん!おお、マモー様!

 

 みんなが席に座るのと同時ぐらいに、ナイトゴーントがお茶を出してきてくれた。

 ナイトゴーントは緊張しているらしく、そーっと皆の席にティーカップを置いていく。

 飲食店の新人アルバイターのようだ

 

 星の精の前には、限界まで似せて作った特製血液パフェを置く。

 星の精のテンションが爆上がりした。

 クスクスという声が止まらなくなってしまったようだ。

 

 チビタコキーパーには泣く泣く俺のパフェを分けるとしよう。

 実質俺だし。無しは星の精の教育に悪いし。

 俺のマンゴーパフェ………。

 

 皆でいただきますをして、食事タイムに移る。

 

 諸伏さんが相変わらず真剣な表情でパフェを貪っている。

 その様子を横目で見ながら、降谷さんが口を開いた。

 

「黄衣君。君に少し話をしておきたいことがあるんだが」

「んー、何かな。穏やかな話?」

「単に、今後公安で魔術師とそれに類する特異能力の持ち主を保護しようと考えているだけだ」

 

 降谷さんはマンゴーを飲み込んでから、少しだけ眉間に皺を寄せた。

 彼には少し甘かったのかもしれない。

 

 なんでも、現在公安では怪異対策における民間の技術を取り入れようとしてるらしい。

 青来寺の老僧の物品修復魔術もそうだし、各地に伝わる封印儀式の伝承もそうだ。

 その中から汎用性のあるものを抽出し、今後の管理に活かそうとしているとのこと。

 

「特異な技能のある人間に関しては、専門技能職として雇い入れること、技術継承の支援をしていくことを検討している」

「はは、亡くなった老僧さん、八面六臂の活躍だったみたいだしな」

「調査の結果、全国54ヵ所の怪異封印が危機に瀕していることがわかっている。まったく、同様の事例が頻発したら公安では対処しきれないぞ」

 

 降谷さんは大きく疲労にため息をついたようだ。

 今後怪異対策課の規模拡張を検討しているらしいが、警官の忌避感が強くて人員がなかなか集まらない問題もある。

 現在、怪異対策課の金銭面の待遇改善を検討しているらしいが……公務員であるが故に難しいことも多く。

 問題は山積みらしい。

 

 チビタコキーパーにパフェを一口分け与えると、モゴモゴと味わってから、その沢山の目をキラキラさせて俺を見た。

 美味しかったらしい。俺と同じ味覚だもんな。美味しいに決まってるな。

 

 だがやらんぞ。もうやらんぞ。

 パフェを遠ざけて俺のものにする。

 

 チビタコは俺の断固たる想いが伝わったのか、しょぼくれて触手を全部しおしおしにした。

 すかさず横から「ゲタッ!!!」と注意が飛んだ。

 友達をいじめるな!お前悪い奴!

 

 俺はしぶしぶチビタコにまたパフェを与えた。

 俺のなのに…何故抜け毛にパフェを与えねばならんのか。

 

 俺は口を尖らせながら顔いっぱいで不満を露わにした。

 

「そういえば、例の女性に提案した治療の件、どうだった?」

 

 俺の質問に、降谷さんは少しだけ目を伏せた。

 コナン君が「提案?」と首を傾げる。

 

「生まれつき、俺の『ハスターの瞳』に接続してる女性だよ。そのように自らを改造した一族の末だね」

「……それは問題ないの?」

「大有りだよ。人間に処理し切れる情報量じゃないし」

 

 降谷さんも「僕も一度練習していた魔術の操作を誤って繋がったが。頭がはち切れるかと思った」と眉間に皺を寄せている。

 

 頭がはち切れるで済ませられたのは、降谷さんが黒い風として膨大な存在規模を持っていたからだ。

 人間ならその場で脳が溶け落ちて死んでいただろう。

 

 もちろんかの一族はそうならないようセーフティを刻んでいたようだが。

 なんにせよ、あんな粗雑なシステムで扱いきれるものではない。

 

 マモーさんが憂いを帯びた瞳を細めた。

 

「全生活オーガナイザーを使用せず、神の加護もないままその身で神の視界を得ようとは。その娘子も祖先の業を継がされるとは哀れなものですね」

「ああ。だから俺も治療をしてやらないとと思ったんだ。それで、降谷さんどうだった?」

 

 降谷さんは少しだけ息を詰めた後、静かに口を開いた。

 

「断られた。この力は趣味に使っているものだから、別にいいと」

「………そっか」

「だが、こうも言われた。もしこれから同じように馬鹿なことを考える人間が出てきたら、止めてやってほしい、とな」

 

 その女性は占い師として活動して、その視界を使って多くの人にアドバイスを与えていた。

 多くの富豪に信を得てなお、場末の地下街で惑う人々に助言を与え、人を助けることを「趣味」として生きてきたようだ。

 

 自分の生まれに絶望もあったろう。人の世に喩えきれぬほどの不信もあったろうに。

 その生き方を貫くことを決めるとは。

 

 儘ならぬものの世になんと多いことか。

 

 

 

 

 

 さて、そこで空気を変えたのも、やはり一本の電話であった。

 高木刑事からの連絡は簡潔で、向こうも混乱しているらしい。

 俺は目を見開き、慌てて返事をした。

 

「え、目暮警部がですか!?すぐ向かいます!」

 

 目暮警部がランニング中、ボウガンで撃たれて緊急搬送されたらしい。

 

 

 

 皆で病室に向かうと、目暮警部はすでに手術を終えて、案外元気そうに腕を上げて挨拶してくれた。

 

「来てくれたのかね黄衣君!すまんね、心配をかけて」

「いえいえ。警部がご無事そうで何よりです。びっくりしましたよ」

 

 どうやら、脂肪が盾になって臓器の損傷を抑えたようだ。

 まだ腹は痛そうではあるが、そこまで酷くはないらしい。

 

 コナン君のポッケの中で、星の精が無言で震え上がっている。

 白黒の車のひと、悪い奴に動かなくされた!?悪い奴連れてくひとなのに!怖い……!

 

 必死で声を抑えようとしているらしい。

 ゲッッッと妙な咳き込む音を星の精は立てている。

 我慢できてとてもえらい!

 

 高木刑事がなんの音か分からずちょっとキョロキョロしつつ、俺に状況を説明してくれた。

 

「現在は犯人を捜索中で、周辺の監視カメラも当たっています。もしよろしければ黄衣探偵にもご協力いただけると心強いんですが」

「もちろん引き受けるよ。目暮警部にはいつもお世話になってるしな」

 

 というかいつも事件現場で鉢合わせる仲だ。

 協力しないのは逆に不義理だろう。

 

 ちなみに、降谷さんは空気が妙なことになるからと来なかったようだ。

 空気を妙なことにしている自覚はあるようで何よりである。

 

 

 

 少しばかり情報を交換してから、今日のところはひとまず病室を出て車に戻った。

 諸伏さんが「無事で良かったな」と呟き、星の精も同意するようにゲタゲタ言った。

 

 というか星は精は震え過ぎだ。

 思考を覗くと、星の精の中は不安でいっぱいだった。

 

 あんなに、あんなに元気のない大きいのがいる…小さいのも…。

 悪い奴のせいだ……怖い……。

 友達をたくさん守らないと。友達が動かないになる……。

 

 病院に具合の悪そうな人がたくさん居て怖かったらしい。

 コナン君の頭をしきりになでてクスクス心配そうにしている。

 

 そして星の精は決意を新たにしたらしい。

 コナン君の頭の上でゲタッ!と意気込んで触手をうねうねさせた。

 友達は星の精が守る!

 

 諸伏さんが「そういや幽霊の俺がお見舞いって、ちょっと縁起が悪かったか?」とポツリと呟いた。

 俺は「そういう意見もある」と言うに留めた。

 

 足引き系大怨霊のお見舞いなら一周回って厄除けになる気がしないでもない。

 





・チビタコキーパー
ゴールの下に置かれたミニ落とし子君たち。
わざと大袈裟に防御に失敗して星の精のシュートを通したりする演技派。
大型犬のようにおっとりしてかしこい。
用が終わるたびにハスターに取り込み直されている使い切りタイプ。

・撃たれた目暮警部
十四番目の標的。
コナン君のポッケがずっと振動してるので「スマホでも入れてるのか?」とちょっと疑問に思ってた。

・旧支配者ハスター
美味しいものにはケチ臭くなる。
なんで抜け毛に美味いもんやらなきゃいかんねん。
占い師のことを心配してそーっと見守ってる。

・占い師
神様が声をかけてくれるのは嬉しいけれど、自分の生き方に後悔はしていないから断った。
本当はちょっぴり子供が欲しかったけど、自分と同じ苦しみを味合わせたくなかったから作らなかった。
神様はきっと自分なんかより、もっとずっと見えているし知っている。
きっと死ぬほど辛いだろうに、まだ人間を好きで居てくれてありがとう。

そのように、末期の病床で自分を見守る神様と目を合わせて……そっと虚空に向けて言葉を紡いだ。
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