ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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十四番目の標的〈しっとの神〉

 

 事務所に帰宅すると、ニャルが降谷さんと腕を絡めてラブラブしていた。

 

「う゛わ゛き゛!!!!!!」

「そうじゃないことは君が一番わかってるだろ!」

 

 俺は瞬時にひっくり返って泣き喚いた。

 降谷さんが憤慨して叫ぶが、離れる様子はない。

 ニャルは愛おしそうに降谷さんの手を取って頬擦りしている。

 

 うわァァアアアアアん!!!

 化身がニャル取った!!!俺の妻取った!!!

 

 触手を出してビタンビタンと暴れる。

 たくさん目のついた俺の本体の触手がバラバラに体から伸びる。

 その目は全部涙目だ。降谷さんがニャルを取るから!

 

 諸伏さんが遠くから念仏を唱え出した。

 鎮まりたまえ黄衣じゃないんよ。これが静まっていられるかよ!

 

 「我が夫!お帰りなさい♡」とニャルがするっと降谷さんから離れてひっくり返って暴れる俺に近づいてきた。

 頬を染めて、満面のニコニコ笑顔だ。

 

「我が夫は本当に化身に嫉妬するんですね!可愛い!僕は夫一筋なのに!えへへ!」

「ウン……ニャルはいつだって悪くて可愛いネ……」

 

 俺はべしょべしょに泣いてうずくまった。

 触手も同じように黒い涙を流して小刻みに震えている。

 

 たぶん偶然俺たちのいない間にニャルが来て、降谷さんと雑談することになったのだろう。

 その時に降谷さんに「そんなに僕に絡むと黄衣君が嫉妬するぞ」とかなんとか言われて。

 化身に嫉妬するほど俺がお熱であることが信じられなかったニャルが、すこしお試ししてみただけだろう。

 

 たしかに俺は世間体があるので嫉妬の様子を見せたことはなかったが。

 ニャルが別の旧支配者と仲良くデートしてたら泣いてハリ湖に引き篭もる自信がある。

 

 ニャルは床で転がる俺の両腕に飛び込んできてゴロニャンと懐いた。

 かわゆ……相反する二つの心で胸が張り裂けそう。

 

 コナン君が「ニャルさん通常運転だね」とクールな感想を述べて、暴れる俺をスイッと避けて席に戻った。

 あまりにクールすぎて人の心がない。

 

 俺が恨みの視線を降谷さんに向けると、「純粋な被害者に向かってその目はないだろう!僕にどうしろというんだ!」と怒られた。

 まあニャルの誘いを断ったらその場で死あるのみなので、降谷さんの対応は妥当なのである。

 

 それはそうと俺の傷ついた心に安らぎはない。

 

 俺は無言で俺のモヤモヤを化身の繋がりから降谷さんに送り込んだ。

 降谷さんが「うわ汚ッ!?生活排水を送り込んでくる奴があるか!」と悲鳴をあげた。

 

 俺のモヤモヤ、生活排水扱いされた件。

 余計にモヤモヤしたのでたくさん送り込むこととする。

 降谷さんが目を三角にしてシュプレヒコールを上げれば、とりあえず諸伏さんが同調して俺を責め始める。

 

 俺はシクシクして悪くて可愛いニャルを抱きしめた。

 ニャルは全然悪びれることなく俺の頬をぷにぷにしている。

 

 怪獣が暴れていたからかナイトゴーントは給湯室に匿われて、マモーさんだけが俺に挨拶に来たようだ。

 

 従業員を守るマモーさんかっこいいね…。

 

 降谷さんが大きくため息をついて口を開いた。

 

「ともかく君に伝達事項がある。聞いてくれ」

「ハイ………」

「つい先ほど、君達が帰還する直前に毛利探偵から電話があった。妃弁護士が毒物を混入されて倒れられたらしい」

「ッ!!」

 

 俺は思わず絶句して立ち上がった。

 

 

 

 

 なんでも、ジゴバのチョコレートをもらった妃弁護士はタイミング的にそれを夫からのチョコレートだと誤認。

 以前にジゴバのチョコを毛利探偵からもらっていたこともあり、なんの警戒もなく口に入れてしまったそうなのだ。

 

 現在は病院で胃洗浄してもらっていて、命に別状はないらしい。

 これは不幸中の幸いというより、ほぼ犯人側に殺すつもりがなかったからだろう。

 

 東都には野山から湧き出ているとしか思えない流通量の青酸系毒物が跋扈しているからな。

 しかもその毒性は俺の前世で知るそれより遥かに上。

 ほんの少しでも口に入れれば、俺の救命すら間に合わぬ速度で命を落とす。

 

 青酸系毒物を使わず農薬で済ませたのは、犯人は妃弁護士を苦しませたかった、もしくは死んでも死ななくてもどっちでもいいと思っていた証左だ。

 

 現場には目暮警部の狙撃現場にあったのと同じ、紙製の細工物が置かれていたようだ。

 

 目暮警部は紙製の剣。妃弁護士は紙製の花。

 まだ一般に出回っていない情報だったし、同一犯である可能性は高い。

 

 コナン君が目を細めて推理モードに入っている。

 

「警察に弁護士。逆恨みを買いやすい職業だからまだ断定は難しいけど、共通の事件が無いか探すべきだと思う」

「そうだな。自身を有罪に追い込んだ者たちに復讐している、とも取れる」

 

 俺は頷いて、「うーん、どうだろ」と首を傾げた。

 本命にしては殺し方が雑だからだ。

 だが、本命が多いから雑に素早く処理しようとしている可能性は否定しきれないし。

 

 俺は口を開いて、むむむと唸る。

 

「しかし、なんにせよあと十一人ターゲットがいるのか。すごい執念だな。ABC殺人事件の可能性も否定できないけど」

「……どういうこと?黄衣さんは何か気づいたの?いや、そうか、紙の剣と花ってもしかして…!」

 

 コナン君が答えに行き着いたらしく、ハッとして目を見開いた。

 全員が目を丸くして俺を見る。

 

 俺は己の状態に気づいて、慌てて「タンマ、ちょっとお漏らしした、見なかったことにして」と顔を背けた。

 

 さっきのニャルショックでINTの縛りが緩んでいたらしい。

 どうりで心が気落ちしてると思ったよ。

 俺はきちんとINT低下の自己呪詛をかけ直した。

 

 皆が俺を凝視しているので、俺は視線を彷徨わせてしおっとした。

 ふよふよ浮いている星の精を抱きしめて、所在なさげに視線を逸らす。

 

 星の精は「ゲタ?」と体を傾げさせた。

 

「いやぁ……現場にあった紙製の剣と花。これはトランプのキングとクイーンだ。目暮十三と妃英理だから、あとジャックからエースまでいるのかなと」

『突如冴え渡る黄衣の頭脳。そんなニャルさんのことショックだったのか?浮気するとしてゼロ相手だけはないだろうに』

「ヒロ、どうしていつも僕に流れ弾を…?」

 

 静かに力尽きる伝説の地雷男、降谷零。

 ニャルは相変わらず俺に手を絡めてラブラブニコニコしている。

 

 ちなみに、俺がさっき出した触手はニャルに引っこ抜かれてニャルがいまもう片方の手で抱き枕にしている。

 なんで引っこ抜いたし。

 目がずらりと並んだビチビチうねる触手の先っぽを、ストローのように口に含んで上機嫌で甘噛み中。

 やめて俺の触手吸わないで。

 

 星の精が震える触手の先で俺の頭をこっそり撫でてくれた。

 お前触手引っこ抜かれた!痛い?悲しい?星の精がよしよしする?だいじょぶ?

 

 優しい星の精だ。

 でもこれ以上関わってニャルに目をつけられると可哀想だから、触手を軽く触れてから俺の腕の中から解放してやった。

 

 コナン君が若干不服そうにしながら、むすっとして結論を述べた。

 

「トランプ……なら次はジャックの11か。何を標的にしているのか知らないけど、あとは警察の捜査待ちかな」

「一応後で目暮警部にも伝えておくか。あと、今回の事件は神話生物の仕業じゃないでーす」

「それはいいことだ。本当のことであればだが」

「なんで降谷さんはいつも俺のこと信じてくれないの」

「自分の胸に手を当てて考えてくれ」

 

 俺は己の胸に手を当てて、そのあまりの潔白さに驚いた。

 何も心当たりがない…こんなに出来た旧支配者はいないのに、なぜ降谷さんは俺を疑うのか。

 

 降谷さんがジト目で俺を睨め付けた。

 

 まあ、今後神話生物の犠牲者が出る可能性はあるが……まぁ、それは普通に運が悪かったということで。

 神話生物の仕業でないことには間違いないしな。

 

 神話生物も油断すれば殺される側になる。

 それが東都の流儀である。

 





・降谷さん
黄衣の発言は上記の通り油断ならないので、基本疑ってかかっている。
嘘を言っていると思っているわけではなく、追加質問しないと出て来ない情報が多すぎる。
旧支配者からすればホコリの位置を詳しく聞いてるみたいなものだから、わざわざ口に出さないのはわかるが。

・上機嫌ニャルニャル
我が夫がバリバリに嫉妬してくれてめちゃんこ嬉しい今日この頃の悪くて可愛いニャル。
復讐の神として、電波を受信した知らんソムリエ羽虫に祈られている気がしないでもないが、気にしていない。
なんで僕が羽虫如きの復讐を応援しなきゃいけないんです?

・知らんソムリエ羽虫
十四番目の標的の真犯人。
復讐を決意してる、新しい「略奪するもの」の狂信者。
勝手に信仰してるだけなので特に力はない。
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