ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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十四番目の標的〈神の手〉

 

 コナン君と共に毛利探偵事務所を訪ねているなり。

 

 毛利探偵は気落ちした様子で、蘭ちゃんも心配そうに視線を彷徨わせている。

 自分の彼女の不安そうな様子に、コナン君は悲痛に視線を下げた。

 小さい己の無力感に打ちひしがれているようだ。

 

「悪いな黄衣、来てもらって」

「構いませんよ。毛利さんの奥さんの一大事ですから。それに阿笠博士まで」

 

 昨日、阿笠博士が不審な人物にボウガンで撃たれた。

 スケボーの点検に訪れたコナン君が、倒れ伏す阿笠博士を見つけたらしく、その際に走り去る犯人を見たらしい。

 

 阿笠邸を監視する沖矢さんもやってきたが、犯人はバイクで逃走。

 追跡には失敗したらしい。

 今は志保ちゃんが看病で病院に滞在しているはずだ。

 

 まったく、どういうつもりか知らないが阿笠博士は人類の至宝だぞ。

 

 満天堂と共同開発したハードももう直ぐ発売するし、その技術力は間違いなく人類最高峰。

 各ゲーム誌が「革新的という言葉では足りない」「ゲーム界だけでなく世界が驚愕する」と盛り上がっているようだし。

 

 そんな逸材を適当にボウガンで撃つなど、あまりにも許し難い。

 

 まあ、俺が簡易ブレスレットを渡していたから、阿笠博士はびっくりして倒れただけだったが。

 ボウガンは弾いたから、阿笠博士はその拍子にぎっくり腰になっただけだ。

 いやぎっくり腰もこの世の終わりみたいなモンだけど。

 

 重たい空気の中、毛利探偵が緩く息をついた。

 

「犯人は村上丈という男と見ているそうだ。目暮警部によると、一週間前に仮出所しているらしい」

「ふむ、動機は?」

「十年前に俺と目暮警部が殺人犯のやつを逮捕したんだ」

「……なるほど。毛利さん自身「五」の文字が入ってるし、周辺の人を無差別に数字に当てはめてると」

 

 一緒に来たコナン君がやや納得しかねるような顔をした。

 それが何かはわからないが、名探偵が推理に疑問を呈しているのなら、村上丈が犯人である可能性は低いだろう。

 

 蘭ちゃんが思い詰めたような顔で俯きがちに視線を彷徨わせている。

 

 コナン君の上でオウムに化けた星の精が、ソファを伝って蘭ちゃんのそばに寄る。

 そして心配そうにニュッニュッと上下運動して頭を擦り付けた。

 

「心配?蘭ねーちゃん、心配?ほしのせーがヨシヨシ。元気出る?」

「……ありがとね、星の精ちゃん」

 

 蘭ちゃんが少しだけ表情を柔らかくして、星のオウムを撫でてやったようだ。

 星のオウムは「ほしのせーは賢い!蘭ねーちゃん元気出る!」と盛り上がった。

 アニマルセラピーで少しでも元気が出たのなら何よりである。

 

 毛利探偵が割と胡乱な顔で星のオウムを見ている。

 

「コイツ、本当にオウムか?なんか変なやつじゃねーだろうな」

「ぎくっ。まあ、その。あれだ。害はないことは間違いないです」

「……あんま変なの蘭に近づけるんじゃねぇぞ。お前が大事にしてる坊主のそばに置いてるってことは、害がないことは間違いねえんだろうけどよ」

「うす。すんません。はい。気をつけます」

 

 蘭ちゃんは星のオウムをたくさん可愛がっているようで、星のオウムはどんどん有頂天になっているようだ。

 愛しい人の笑顔に、コナン君の表情にも僅かに安心感が出てきた。

 

 蘭ちゃんが星のオウムを優しく撫でてやったあと、俺に向き直った。

 

「黄衣さん。お願いします、父に力を貸してください!」

「大丈夫だよ。それに次は10だろう?最悪、蘭ちゃんが狙われる可能性もある。蘭ちゃんはなるべく一人にならないようにして、気をつけてね」

「なっ……蘭の字には10は入ってねぇだろ!」

 

 毛利探偵が顔を真っ青にして立ち上がった。

 コナン君が再び厳しい顔をして、静かに口を開く。

 

「犯人は復讐に数字を無理やり当てはめてるだけなんだよね。なら、十は線が直角に交差している部分があるだけで十分だよ」

「………目暮警部に言って蘭に警護をつけてもらう!」

「まあ、この条件なら他の人の可能性もある。広く確認しつつ、蘭ちゃんは念のため警護をつけてもらうのがいいと思う」

 

 なんなら「黄衣ハスタ」の名前を八にでも十にでもできるし。

 こんなの犯人の匙加減ひとつだ。

 

 蘭ちゃんがふと机にほったらかしになっていた写真を見て、「この人……十の文字が入ってる」と声を上げた。

 

 先日、毛利探偵が依頼を対処したプロゴルファーの辻弘樹さんだ。

 元は俺の事務所に来た依頼だが、その内容が軽かったので毛利探偵のところに流したのだ。

 毛利探偵も、足を使う依頼では意外と確実な腕で顧客を獲得しているし。

 辻さんの依頼もこなして、一緒にゴルフに行く仲になったらしい。

 

 電話で確認すると、辻さんは今日は趣味のヘリコプターでの遊覧を企画しているらしい。

 毛利探偵は念のため今すぐに飛行場へ向かうらしい。

 俺たちも念のため同席するとしよう。

 

 その前に、降谷さんに一本電話をしておくべきか。

 

 スマホを取り出して、降谷さんに一報を入れる。

 電話に出た降谷さんは少しだけ不機嫌かつ緊張していた。

 

「降谷さん、今から次の被害者の可能性がある人物の様子を見に行くよ。帰りは少し遅くなる」

『了解。公安は通常の連続殺人と見做して今回の件は動かない。もし何か大事件の予兆があれば直ぐに連絡してくれ』

「オーケー。何か派手に爆発しそうになったら連絡する」

『本当に頼む。大事件になる前に頼む』

 

 めちゃくちゃ重ねて頼まれてしまった。

 数々の嫌な記憶が脳裏をめぐっているのだと思われる。

 そんな、俺の電話のせいじゃないのに。

 

 

 

 

 

 到着すると、俺とコナン君、毛利探偵の他に目暮警部も来ていたらしい。

 どうやら毛利探偵の連絡を受けて、目暮警部も念のためこちらに来たようだ。

 

 いつもの背広を風でビロビロさせながら、帽子を押さえて声を上げた。

 

「蘭君はきちんとこちらで守る。安心したまえ毛利君」

「ありがとうございます警部殿!」

 

 蘭ちゃんは現場に連れてくると犯人の標的が移されかねなかったので、高木刑事に預けてきたのだ。

 本当なら俺もコナン君も来るべきではないのだが、俺たちは無敵防御持ちだしな。

 

 発着場で押し問答する辻さんを見ながら、俺はぼんやりため息をついた。

 辻さんは自分は全然大丈夫だと信じて疑ってないらしく、フライトを強行するらしい。

 このぐらい心が強くないと東都では生き残れないもんな。

 

「ヘリかぁ、墜落する気しかしない」

「不吉なこと言わないで。黄衣さんが言うと洒落にならない」

「おまえ不吉!ともだちも怒ってる!」

 

 ナムナム祈る俺に、星のオウムとコナン君の非難の声が飛んだ。

 いやでもこれはカプコンのヘリ並みに落ちるやつでしょ。

 

 コナン君が眉を顰めて「僕も乗り込んだほうがいいかな…?」と不安そうに足踏みした。

 

「でも小学生が乗り込んでも怒られて摘み出されるだけだよ。あと俺も連座制」

「だよなぁ。俺が元の姿ならなぁ」

「高校生でもダメなんだよ未成年者」

 

 俺の言葉に、コナン君は大層むっつりして星のオウムに同意を求めた。

 

「俺元の姿は身長あったろ!」「友達は大きい!」「だよな。でも黄衣さんが酷いこと言うんだ」「黄色酷いやつ!」「許せないよな」などなど。

 星の精を全肯定BOTにするなと何度言ったら。

 

 星の精はすっかり同調して俺を許せないやつ扱いするし。

 いじけるぞコラ。

 

 どうやら止まらない辻さんに観念して、毛利探偵と目暮警部が一緒に乗り込むことにしたらしい。

 震える毛利探偵がガクブルでヘリに乗り込んでいる。

 毛利探偵は高いところが苦手なのに、果敢なことだ。

 

「まあ気持ちはわかる。理屈じゃないんだよな。怖いのは」

「……え、黄衣さん怖いものなんてあるんだ」

 

 意外そうな顔をされたので、俺はうむと重く頷いた。

 

「俺、ブラックホール苦手なんよ。あのクニャッて曲がる感じがな。星間渡航の時もなるべく通らないようにしてる」

「いつもの黄衣さんで安心した」

「なぜ」

 

 聞いて損したみたいな反応で、コナン君は星のオウムを抱き抱えた。

 星のオウムはコナン君の腕に包まれて幸せそうだ。

 なぜみんな俺に厳しいのか。

 俺は勇気を出して苦手なものを公開したのに。

 

 「ハスターの瞳」で確認すれば、ヘリは予定通りのコースをつつがなく飛行しているようだ。

 

 異常が起きたのは、その10分ほど後のことだ。

 俺たちが今回は大丈夫だったかと気を抜いたあたりで、不意にヘリが異常な動きをとったのだ。

 

 間違いなく墜落するような急降下。

 そしてギリギリで体勢を立て直し、フラフラと航路を外れている。

 

 辻さんは目に異常が起きているようだ。

 目を押さえて痛みに呻いている。

 同乗している目暮警部と毛利探偵も表情に死相が出ている。

 そりゃ運転手が目の開けられない状況じゃ、死を覚悟して然るべきか。

 

 辻さんの目を治すのは簡単だが、ヘリコプターの操縦者に毒を盛って墜落させるなんて、無関係な人を巻き込む卑劣なテロ行為だ。

 証拠を消して無罪放免にするのは罪が重すぎるだろう。

 

 だがここは大都会で、緊急着陸できるような場所はない。

 コナン君が急に表情の険しくなった俺に気付いたのだろう、焦りに自然と強い口調になる。

 

「黄衣さんッ!何かあったの!?」

「辻さんが眩しくて目が開けられないって!薬物の影響あり!俺の神社に誘導して緊急着陸させる!」

「ッ、散瞳剤だ…目薬か何かに混入されたんだと思う。でも神社って、どうするの!?」

 

 ちょうど、もう少し行った先に俺の神社がある。

 そこに誘導して上空まで来てしまえば、俺が手出ししても変には思われなくなる。

 

「でも黄衣さん、あそこは参拝客でいっぱいで着陸するスペースなんてないよ!?」

「大丈夫。俺がキャッチするから」

 

 風の具合と偶然の操作で誘導。

 少しばかり確率をいじるだけだ。それだけでふらふらのヘリコプターは俺の神社のそばまでやってきた。

 

 敷地上空に来たあたりで、大きな光の手を出現させる。

 触手よりも繊細な動きができるし、非実体の方が着地の時扱いやすい。

 回転する機体を掴んでから、人避け魔術を使ってそっと人払い。

 人のいない場所に機体を下ろした。

 もちろん、プロペラが変に回転しないように電源も落とす。

 

 今日も参拝客で満載だっから、多くの人が先ほどの光景を動画で撮っているようだ。

 「やばいやばいやばい!」「今おっきい光る人の手が出たよね!?」「ヘリが落ちてきた!」とスマホカメラが向けられて。

 中からヘナヘナの毛利探偵達が脱出してくる。

 

 中から電話していたのか、目暮警部の連絡とともにすぐに捜査一課がやってきた。

 

 その様子をハスターの瞳で確認してから、俺は降谷さんに電話をかけた。

 

「よお降谷さん今のさっきで申し訳ないんだけど」

『なんだ、爆弾が見つかったか』

「犯人のせいで街にヘリが墜落しそうだったから俺の神社に不時着させた。光の手とか出したから騒ぎになるかも」

『報・連・相!!!!』

「いや緊急事態やんけ仕方なかよ」

 

 ハスターの瞳を器用にジャックしたコナン君が、無事な毛利探偵に安心しながらも「またニュースになりそうだね…」と遠い目をした。

 

 俺は降谷さんに10分の時短説教を受けたのだった。

 





・ハスターの苦手
ブラックホールのあの吸引感が怖くて苦手。
引き伸ばされるのが不快なのもそうだが、ビヨビヨに伸びたヨグ=ソトースが和んだ状態で見つかるからだ。
時間の神はブラックホールの歪みをマッサージ機として使っている疑いがある。

・阿笠博士
論文とか書かない?って言われて今太陽光パネルのエネルギー効率化の理論について慣れない執筆活動で四苦八苦してる。
世界が一変する大発明が野から湧いて騒然とする界隈である。
まだ大発明はたくさんあるぞ……。
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