ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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十四番目の標的〈ヘビ人間〉

 

 案の定、翌日の一面は各社「光の手が墜落するヘリを救う!緊迫の瞬間!」であった。

 

 救われたのはカメラ慣れしたプロゴルファーなこともそれを後押ししたようだ。

 TVではその奇跡的な体験を大々的に放送し、護国の神の奇跡だと囃し立てた。

 

 神社の方も、ヘリコプターが不時着した境内は危険なため一時的に封鎖されているが、その様を一目見ようと多くの観客客が殺到。

 メディアのカメラも押しかけ、現場は一夜明けた今日も依然として混乱しているようだ。

 

 「神の加護」は今や国民に広く浸透。

 新しい仏像をつくろうとか、自分の家に神棚を飾る方法が万バズするとか盛り上がっている。

 せっかくだし、もし俺のところのお札や青仏が飾られたら加護を渡しに行こうかね。

 

 一番有名な京都の件は映画を作ろうという話にもなっているらしい。

 俺にオファーの連絡が来ている。

 カメオ出演みたいで楽しいので受けようかと考え中。

 

 観光客も増加の一途を辿っている。

 米国富裕層の観光客が多くなっているそうで、超高級ホテルで予約が取れない事態になっているらしい。

 明確に黄色の印の兄弟団感だが、まあそれはいいか。

 

 公安総務課長の部屋にて。

 降谷さんが頭痛を堪えるような顔をして俯いた。

 

「君は最速で報告してくれたようだ」

「おう」

「だがこの、君ならもっと穏便にする方法も、あったと言う思いが、そう、僕の狭量さでしかない…だが……」

「すごく苦悩させてすまん」

 

 降谷さんは全部の苦悩が顔に貼り付いているような様子で意気消沈している。

 

 加熱しすぎた神座神社熱の監視、神カッケーが盛り上がりすぎて法律が変な方向に行かないように調整する国会対応、新興宗教詐欺対策などなど。

 降谷さんの仕事がまた激増したことは間違いない。

 

 特に昨今、怪異詐欺が多発しているからな。

 怪異の被害を避けるにはこのツボを100万で買って以下略。

 一周回って最新の詐欺になっているツボ売りである。

 激怒の黄色の印の兄弟団が潰して回っているが、そんなのでは全く足りないほどポコポコ詐欺が湧いているし。

 きっと今回も神の手を込めたお札(詐欺)が三桁万円で売られるのだろう。恐ろしいことだ。

 

 というか。

 確かに今思えば、視力回復させずとも一時的に視力を付与させるだけで済んだ話だったかもしれない。

 飛行場まで戻る間だけでいい。

 これなら辻さんが病院に搬送されるのは代わりないが、後日彼に口止めするだけで済む。

 

 まあ今更の話だ。

 俺は降谷さんへ感謝のナムナムをして許してもらうことにした。

 

 降谷さんはしおしおになって疲弊したため息をついた。

 

「それで、毛利探偵の方はどうなっている?」

「ソムリエの沢木って人のところに行ったらしいよ。もしかしたら俺以外の八の候補かもって。で、そこで旭勝義って実業家が九に当てはまる可能性に言及してた」

「旭勝義?毛利探偵が何か依頼を受けていたのか?」

「いや全く無関係。九ってだけ。あと……」

 

 俺は頬をぽりぽりして視線を明後日の方向に向けた。

 

「実業家の旭勝義は人間じゃない。ヘビ人間だ。殺されたらちょっと面倒かも」

「な、………!?」

 

 降谷さんが絶句して思わず立ち上がった。

 

 ヘビ人間。

 ハイパーボリア壊滅後に新たに発生した、地球生まれの知的生命体である。

 

 俺がぼんやりしている間にヴァルーシアという大帝国を建設したが、人類との争いに敗れて四散。

 独自の魔術と高い文明力を誇っていたが、ハイパーボリア時代の遺物を持ち出した人間には敵わなかったようだ。

 今は人に混じって、交雑することなく細々と生きている。

 

 降谷さんがすうっと目を細めて固い声を出した。

 

「それは危険じゃないか?人に滅ぼされた過去を持つ異生物。人に復讐を望んでも不思議じゃない」

「まあヴァルーシア再興を目指すやばい一派があることは確かだけど。でも大抵は人間文明に馴染んだ普通のヘビ人間だよ。スペックも人間と大して変わらないし」

「ヘビから進化した知的生命体と人間が大して変わらない?本当なんだろうな」

「俺から見たら大して変わらない感じ」

「君のそのザル判断なんとかならないのか」

 

 俺は降谷さんのコメントにいきりたった。

 ザルとはなんだザルとは。みんなが俺に比べて小さいのが悪い。

 

「危険がないのは本当だよ。深きものどもと違って人と交わっても子ができないし、少子化でもうほとんどいないから」

「……どこの世も世知辛いというわけか」

「昔は蛇神のイグを信仰していて、ある程度長命で強かったけど。二億年ぐらい前に俺がイグをボコったから普通のヘビ人間になったんだ」

 

 そのように説明すると、きょとんと降谷さんは瞬いた。

 

「何故敵対関係になったんだ?君のことだし、人を滅ぼそうとしたとかか?」

「いや純粋に気に食わなかったから。俺が気落ちして寝てたのに殴り込んできてさぁ。もう生きてること後悔させてやるしかないだろ」

「………そうか」

 

 降谷さんに静かに引かれてしまった。

 

 でもそうだろう。

 俺がハイパーボリア崩壊のショックで寝込んでいるところに突然やってきて、「お前の庇護してるネズミどもに我が眷属が殺された!」とか言ってきて。

 いや俺の地球に住まわせてるだけで感謝すべきだろうに。

 

 なんだァ?てめェ……って素早く全ギレしても仕方なかろうよ。

 

 まあともかく、そうしてイグは俺の拳を受けて地球から撤退。

 ヘビ人間は普通にヘビ由来の知的生命体になったのである。

 イグ殴るだけで族滅しない俺氏、寛大すぎる。優しさの塊。

 

 降谷さんは大きくため息をついて、背もたれに体重を預けた。

 ぎし、と高級そうな椅子が鳴る。

 

「なら、旭勝義は僕の方で洗っておく。君は毛利探偵についていてくれ」

「了解。この後旭勝義の所有する海洋娯楽施設アクアクリスタルに向かう予定だから、何かあったら連絡するよ」

 

 俺が言うと、少しだけ降谷さんが笑って俺を見た。

 

「頼んだ。あまり国民が怪異に対して疑心暗鬼になられても困るからな。完全な除去はできない以上、上手く付き合う方向に誘導していきたい」

「だな。人間が怪異を完全に制御するのは無理だ。である以上、どれだけ皆が正しく理解できるかが肝だからな。うーん、言うが易し〜」

「本当にな」

 

 降谷さんに軽く別れを告げて警視庁の外に出る。

 

 車で少し走ってから、学校帰りのコナン君をピックアップ。

 毛利探偵は先に行っているから、アクアクリスタルで合流する手筈になっている。

 

「おー、おかえりコナン君達。今日はどうだった?」

「星の精にいいことがあったんだ。ね?」

【クスクス!】

 

 星の精はクスクス言って今日あったことを教えてくれた。

 今日は校内絵画展があったらしく、星の精の絵が一年B組の絵として飾られたらしい。

 これはこっそりコナン君の代わりに星の精が描いたもので、星の精の力作らしい。

 確かに家でもなんか描いていたな、そういえば。

 

 星の精はみんなに褒められて鼻高々になっていた。

 どうやらコナン君から見ても結構上手かったらしく、星の精はニュッと触手で二足歩行になって胸を張った。

 星の精には絵の才能があるらしい。

 

 俺とコナン君で二人で星の精をたくさん撫でてやれば、星の精はゲダッゲダと謎の声を上げて車内をスキップした。

 

 

 

 さて、海洋娯楽施設アクアクリスタルに到着した俺たちだが。

 

 目の前でアクアクリスタルは爆弾で派手に吹っ飛んで、轟々と音を立てて崩れ始めていた。

 アイェェェェ展開早い!

 

 慌てて中に救助に向かおうとすれば、自ら上がってくるものが一人。

 

 生きてたらしいヘビ人間が海からブハッと顔を水面に出して、悲鳴をあげて震えている。

 ゼエゼエと重たい動作で陸に上がってそのままベシャリとうつ伏せに倒れた。

 人間の服を身につけているあたり、人に化けたまま死にかけたのだろう。

 

 ヘビ人間はヒィヒィ言っている。

 

「し、死ぬかと思ったわい…………、ギャッ!?!?人の神!!」

「元気そだね…」

 

 仰天して俺から距離を取り腰を抜かすヘビ人間に、俺はちょっとばかり胡乱な顔をした。

 





・星の精の絵
探偵事務所を描いた高彩度のクレヨン画。
コナン君が持ってる謎のもしゃもしゃが星の精だが、大人は皆タオルだと思っているようだ。
皆特徴をよく捉えており、マモーさん、降谷さん、諸伏さんだとわかる。
ナイトゴーントもしっかり遠くの方に描かれている。
あいつ、いつも星の精から距離取る…かなしい…。

・ヘビ人間旭勝義
一般現代ヘビ人間。尖った思想のない普通の人。
九死に一生を得た。
死んだふりしてこっそり逃げてきた。
お前、ワインの管理が雑だったぐらいで殺す奴があるかよ!!!と人間社会不信になっているようだ。
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