ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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巡り合う二人の名探偵〈プロローグ〉

 

 現在、俺たちは夕闇島とやらに向かうフェリーにいた。

 メンバーは俺とコナン君、星の精。

 

 そしてジンである。

 

 ごうごうという船のエンジンが動く振動を受けながら、コナン君が手すりにもたれかかりつつ言った。

 

「ねぇ、黄衣さんが直接向かう必要があるってことだよね。怪異関連?」

「バリバリの怪異事件だね。しかも二つの事象が折り重なってる」

「なにそれ」

 

 始まりはつい先日、観光地の夕闇島で観光客が行方不明になった件である。

 観光客は未だ見つかっておらず、観光地として栄えたそこに少なくない影を落としている。

 

 島の場所は九州の南西。

 フェリーは二日に一本だから少し交通の便が悪いが、放っておくわけにもいかない。

 俺は海を眺めて、どう説明したものかとううむと思い悩んだ。

 

「いやぁ、実際のところ、日本に夕闇島なんて場所存在しないんだよね」

「………は?」

「ようは異界だよ。現実の日本に異界の夕闇島が繋がってるんだ。変だろ?」

「いやそれ、降谷さん達を連れてくるべきだったんじゃ」

「俺が異界に行く以上、化身の一つは元の場所に置いておきたいし。ルール違いで何が起きるかわからなかったから諸伏さんは連れてきたくないしな」

 

 コナン君がすごく微妙な顔をして横を見た。

 代わりにジンを連れてきたのがめちゃくちゃ思うところが満載らしい。

 

 加えて、異変はもう一つある。

 異界がこの世界に絡み合って融合している件に加えて、また別途、夕闇島で怪異による事件が発生しているのだ。

 

 つまり二重に面倒。

公安に任せるのは荷が重かろうよ。

 俺は笑ってサムズアップして問題のなさをアピールした。

 

「それに何かあれば降谷さんを呼び出すのは簡単だよ。俺の化身だし、パッと出せるさ」

「書類処理中の憮然とした降谷さんが突如呼び出されて不機嫌な状態で投げ出されるのが目に見えるようなんだけど」

「止めろ不機嫌なあいつは手に負えねぇんだよ」

 

 ジンがぷかぷかタバコを吸いながら、苛立たしげに吐き捨てた。

 多分勘が鋭いため、今向かっている場所に嫌な予感がするせいで気が立っているのだろう。

 

 パンフレットによると島までフェリーで三時間だ。

 この辺りはイルカが出るそうで、海を眺めながらぼんやりと過ごすこととする。

 

 星の精がちろっとコナン君のポケットから触手を出してゲタゲタとジンに話しかけた。

 お前星の精と友達になろう!星の精は怖くない!星の精は優しくて偉い!

 海とフェリーにテンションが上がっているようで、ひたすら小声でゲタゲタ言っている。

 

 ゲタゲタ語はコナン君以外誰もわからないから、ジンは困惑したようだ。

 というか何故コナン君はわかるのか。

 とりあえずタバコの火を消し、差し出された触手をジンが握る。

 星の精はいっそうゲタゲタと笑ったようだ。

 

 俺は夕闇島のパンフレットを見ながら、ややワクワクして言った。

 

「降谷さん達には地酒をお土産に買って行こうか。夕闇島の名物らしいし、評判いいそうだよ」

「異界の酒を持って帰っていいの…?」

「問題ない問題ない。飲食で影響が出るほど隔絶してないから。あ、ジンは船酔いとか大丈夫?」

「とくには。夕闇島は元々炭鉱の島らしいが。炭鉱には嫌な思い出しかねぇ。それ以上に嫌な予感がするから来たくなかったんだが」

 

 たしか降谷さんのニャルゲームに付き合わされて、炭鉱に潜む怪異の討伐に行ったことがあったんだったか。

 宙を泳ぐナマズ型の怪異で、人の体内に潜り込んで繁殖する凶悪なやつだ。

 夕闇島にはあれよりは厄介な物が関わっているはずだから、心しておいて間違いはないだろう。

 

 「大丈夫、俺がいるから何が起きても心配無用でーす」とダブルピースをすれば特大のため息を吐かれてしまった。

 本当のことなのに。

 

 そのあたりで一人、異界側の住人である男子高校生ぐらいの子とすれ違った。

 少し伸ばした髪を後ろでぼさっと一つに縛った子だ。

 

 人も物も、この辺りになると異界のものが結構入り混じっている。

 今はしっかりと接続しているから問題ないが、不意にベリベリ離れたりしたら大問題になるだろう。

 

 ジンがすれ違った男子ををじろりと見返して、「チッ、不躾なガキだ」と不満そうにした。

 

「無意識だろうが、俺を観察していやがった」

「いやジンって私服だとほぼ反社のお兄さんだし仕方ないのでは」

「黒服は着てねぇだろうが」

「センスがね。人を威圧する形をしてるんだよな」

 

 コナン君もちょっとしょっぱい顔をして頷いている。

 

 現在の服装は、ややはだけさせた胸元に、柄物シャツに白いスラックス、気に入ってるらしい黒い帽子にサングラス。

 居るだけで職質されそうだし探偵がいれば思わず凝視するのは仕方なかろうよ。

 

 連れらしい女の子に「はじめちゃーん!」と呼ばれているあたりを見るに、彼女とか幼馴染かもしれない。

 

 ちょうどいい。

 異界の住人から、向こう側の情報を得るいい機会だから、俺も行って話を聞いてみることとしよう。

 

 少し近寄ってぺこりと挨拶する。

 

「すまない。この島で起きてる異変について情報を集めてるんだが、何が聞いたことはないか?」

「あんたは……?」

「俺は黄衣ハスタ。探偵だよ」

 

 やや困惑した顔には興味の色が見られない。

 INTがすごく高いのに珍しいことだ。

 正義感はあるが事なかれ主義というか、謎は謎のままそっとしておきたいタチに見える。

 

 俺の周りの高INT勢は「細かいことが気になってしまうのが僕の悪い癖」タイプの人ばかりだから、正直とても新鮮だ。

 保護者らしきおじさんが前へ出てきて咳払いした。

 

「あんた、巷で話題の名探偵黄衣ハスタってやつか」

「うーん、もしそれがTVのキャッチコピーだとしたら、俺はそんなシャーロックホームズじみた探偵ではないとだけ」

「そんな探偵が行方不明情報だけで動くとは思えねぇが。何かネタでも掴んでるのか?」

 

 世界が混じり合った影響で、俺の出演するTVが逆に向こう側に流れ込んでいるらしい。

 顔が知られているのなら話は早い。

 俺はそっと人差し指でナイショのポーズをした。

 よく降谷さんがやる気取ったポーズの真似でもある。

 

「守秘義務で言えないけど、少しなら。たぶん口ぶりからして刑事さんだろ?怪対課案件と言ったらわかるか?」

「カタイカ?なんだそりゃ……まぁ確かに俺は刑事だが」

 

 おや、この辺りは世界の混じり方がグラデーション状になっているらしい。

 怪対課成立前の情報が流れ込んでいるのだろうか。

 

 しかし、彼らの怪異について認知度が低いのは少し厄介だ。

 なにせ、怪異対策課は新設されたばかりの部署。

 かなり大衆に認知され、しかも「危険な怪異と身一つで渡り合うヒーロー」的なイメージが付随している。

 既に怪対課をテーマにしたドラマもやってるくらいには認知度が高い。

 

 だから怪対課の名を出せばみんな割と喋ってくれるのだが。

 それが通じないとなると、夕闇島での聞き込み調査も少し面倒なことになるかもしれない。

 

 ともかく。

 怪しいは怪しいが、俺の言ってることにある程度の真実味を感じたのだろう。

 保護者のおじさんは改めてきちんと名乗ってくれた。

 

「俺は剣持だ。こっちは金田一と七瀬美雪。ちょっとした厄介ごとがあってこの島に来てるんだ」

「ああ。俺達の中学の同級生だった鳥羽美佐って女の子から手紙が来て。これだ。恐ろしい事件が起きようとしている、って書いてあったんだ」

 

 ふむ、と俺もその手紙を拝見してやや眉を顰めた。

 夕闇島に住む女の子からのSOSの手紙から、その残滓を嗅ぎ取っていく。

 

 ジンとコナン君が同時に俺を見たので、俺は静かに頷くにとどめた。

 

 「神隠しの件と関係があるかもしれない。島民への聞き取り調査で、並行してこっちも進めたほうがいいと思う」とコメントを残す。

 同時に念話で二人にだけ情報を伝える。

 

『やっぱりチャコタだ。怪物チャコタ。誰かが大量の人を生贄にして怪物を作ったんだろう。いや、これはできてしまったというべきか』

『……どういうこと?』

『大量虐殺するとね、確率で時々できるんだよ。チャコタって怪物。人の顔がたくさんついたイモムシみたいなやつ』

『俺は見たことねぇな』

『極低確率だしね。というか虐殺の白状やめろし』

 

 チャコタは、基本は人が儀式で作り上げる怪物だ。

 多くの贄から生み出されたそれを穴の中に閉じ込めて運用するのが一番多いパターンになる。

 生贄を喰らえば喰らうほどほぼ制限なく巨大化し、いずれは飼い主ともども破滅する。

 それは悲しみと怒りで常に叫び声を上げ、その叫びを聞いたものは魂を侵食される。

 

 旅行者が消えた件も、恐らくは餌の確保に苦しんだ為だろう。

 ついにチャコタを養いきれなくなって、観光客を攫う凶行に及んだ可能性が高い。

 

 金田一君がやや訝しげに俺とコナン君、そしてジンを見てから指差した。

 

「ところで。なんか、生き物でも隠し持ってるのか?ちょっと動いてるし、手を入れて撫でてるみたいな動きをしてるし」

「あ、その、そうなんだ!人混みに慣れてないからポッケの中に隠れちゃってて」

「いいけど、逃さねぇように注意しとけよ」

 

 モゴモゴ動く星の精がか細く「クッス!」と変な声を出した。

 自分の存在がバレてびっくりしているらしい。

 

 

 そうして、南国の島に向かうことになるのである。

 謎と、怪物と、多くの悲しみを抱えた島へ。

 





・名探偵コナン&金田一少年の事件簿 めぐりあう2人の名探偵
ニンテンドーDSで発売されていた五十周年記念コラボ推理ゲーム。
シナリオは後にダンガンロンパに携わる人が担当し、評判が高い。
あと死神が巡り合うことで死者数は倍ドンと評判。

・金田一一
なんか知ってて黙ってるな、というのは理解してじっくり観察している。
彼らは怪異の存在を知らないし、実在すると思っていない。
あと露骨に怪しい反社っぽい銀髪の人は一体…?
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