ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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巡り合う二人の名探偵〈黒い風召喚〉

 

 七瀬さんは非常に心配そうだ。

 

 朝食を食べる時も、彼女の部屋の席だけ一人きりだから、コナン君が席を移動して寄り添ってやっていた。

 優しく笑う子供の姿に、少しだけ七瀬さんは肩の力が抜けたようだ。

 

 二人は結局、帰ってきていない。

 

 ペンダントを通しての呼びかけに応じないのは、おそらく意識を奪われているからだろう。

 だが、ペンダントに仕込んだ位置発信魔術は生きている。

 地図の縮尺と照らし合わせて、少し離れた海上にいることはわかっている。

 

 捜索の前に一旦部屋に戻り、皆で地図を覗き込んで情報を整理する。

 昨日土産物屋で地図を買っておいて良かった。

 

 俺は地図の一点を指差して説明した。

 

「ペンダントの位置情報はここだよ」

「思いっきり海だよね。何処かに連れ去られようとしているってこと?」

「いや、昨日の晩からずっとこの位置で動きがないよ」

「……船で拉致られる途中でペンダントが海中に落ちたか?」

「いや。外れたら俺がわかるようになってる。純粋にここに描かれてない陸地があるんだと思う」

 

 ジンがタバコを吸おうとして、この旅館内が禁煙だと気づいて舌打ちする。

 この男のヘビースモーカー具合は碌でもない。

 

「地図に載らない島を丸ごと基地にするのは、デカい組織が昔からよく使ってた手だ。が、今は衛星画像もあって廃れたがな」

「組織も前はやってたのか?」

「いや。交通の便が悪いし、研究なら陸でやった方が早い。武器密輸、麻薬栽培あたりのシマではやってたらしいが」

 

 なるほど。悪の組織も多様ということらしい。

 コナン君が胡乱な顔をしている。

 

 というか、G◯◯GLEマップは多くの秘密組織に大打撃を与えたんだなぁ、と感慨深い思いである。

 いや、この世界では黄色の印の兄弟団のフロント企業、バベッジ・インコーポレイテッドが出してるサービスだけど。

 名前はバベッジマップ。俺も普段使っている。

 俺がお礼のお告げ送ったら喜ぶかな。

 

 コナン君が地図を再度確認して、眉間に皺を寄せた。

 

「まだ生きてはいるみたいだけど、急がないとまずいよね、これ」

「おう。チャコタの生贄にされる可能性は高い」

「っ、………」

 

 星の精が心配そうにしている。

 あのもじゃもじゃと大きいの居なくなった?酷いことされる?と怯えているようだ。

 コナン君がよしよしと撫でて「酷いことされないように、僕たちで頑張って探そう」と己に言い聞かせるように口にした。

 

 七瀬さんにも既に、ペンダントの位置情報から金田一君の場所がわかっていることは伝えてある。

 だがわかっているだけだ。

 彼女の元気が戻ることはなく、不安を加速させるだけに終わってしまっている。

 

 早くなんとかしてあげなければ。

 俺はしょぼくれた人間に弱いのだ。

 

 軽く各自出立の準備を整えてからは、俺たちはまず港に向かうことにした。

 

 場所は海のど真ん中だから、地元の漁師さんに連れて行ってくれるように依頼しようと思ったのだ。

 朝早くだが、既に港は漁から帰った船で賑わっていた。

 そのうちの男達に声をかけていく。

 

 だが。

 初めに声をかけた人も、その次も、ピシャリと口を引き締めて俺たちを拒絶した。

 

「あの海域には近づかないことになってんだ。帰んな」

「近づかない理由がある、ということですか?」

「帰れってのがわかんねぇのか?」

 

 まさに取り付くしまもない。

 「私の幼馴染が行方不明なんです!どうか協力をお願いします!」と七瀬さんが声を張り上げる。

 

 可憐な少女の涙ながらの訴えにうっ、と後退りしつつ。

 それでもやはり協力できないのか、「ウルセェっつってんだろ!」と凄みを利かせる。

 

 そして隣のジンニキの凶悪な笑みに怖気付いて声の調子を落とすなどした。

 追加で「あ?」と言われて沈黙。だが首を縦には振らない。

 やはり隠し事は根が深いということか。

 

 誰も彼もがこの調子だから、これ以上頼み込んでも無駄だろう。

 

 ジンが舌打ちしてタバコを咥えた。

 

「どうする。この腑抜けどもは協力できねぇようだが。素直になるまで話し合いをするか?」

「ヤクザ流のお話はちょっと。うーん、困ったな。俺たちだけなら「門の創造」で簡単に向こうへ行けるけど、七瀬さんを一人にはしておけないし」

 

 ここは公権力ゴリ押しで、降谷さんを召喚すべきか。

 警察の力で本土から船を調達して、夕闇島まで来てもらうのだ。

 

 ううむと悩んでいる間に、ふと、ペンダントから念話の着信があることに気がついた。

 どうやら金田一君の目が覚めたらしい。

 

 俺はアーティファクト越しの念話に耳を傾けた。

 

『聞こえるか!聞こえるか黄衣さん!』

『ッ起きたか金田一君!そっちは無事か!?』

 

 本当に万が一のためにとペンダントを渡しておいて良かった。

 コナン君も念話に素早く入り込んだのか、独自に念話へ接続している。

 

「ああ。昨日郷土資料館で急に眩暈がして……気がつけば別の場所にいたんだ。けど妙でさ。夕闇島のようで、夕闇島ではない奇妙な場所にいるんだ」

『一応ペンダントから位置情報は取得してるから安心してくれ』

『これGPSまで付いてるのかよ!?いよいよスパイ道具だな…』

 

 俺は「なんのことかなー」とすっとぼけて、金田一君に「いや雑だろ言い訳」と突っ込まれる。

 雑ではない。変に言い訳しなくて潔いと言ってくれ。

 

 金田一君はどんどん胡乱な感じになったが、咳払いして主題に戻したようだ。

 

『ともかく、俺はしばらくこの島を探ってみる。まだオッサンともはぐれたままだし』

『なら俺たちはそっちに行けるように船を探してみる。難航してるけど……あんまり無茶はしないようにな』

『わかってる』

 

 差し迫った危機はひとまずのところ無いようだ。

 

 攫っておいて、金田一君を拘束もせずにほったらかしにしたということは、初めから生贄にするつもりがなかったということか。

 だとしたら、なぜ金田一君を攫ったのか。

 謎はまだ多い。

 

 位置は捕捉しているから、いざとなったら魔術で保護できるように反射装甲魔術を整えてから通話を切る。

 

 「後で七瀬さんとも話をさせてあげよう。七瀬さん、すごく不安そうだったし」とコナン君が俺を見上げた。

 確かに。念話は見せられないから、受信用子機を作って渡すとしよう。

 ぐっぱ、と握る仕草をすればあっという間に完成だ。

 興味なさそうなジンが、それでもチラリとこちらを確認している。

 

 子機を七瀬さんに渡して「向こうも意識が戻ったみたい。これを通して話ができるから、どうぞ」と言っておく。

 ぱあっと七瀬さんの顔が明るくなる。

 

 ええ子や、七瀬さん。

 幼馴染との話を聞くのは無粋であるため、俺は席を外すこととする。

 

 なんにせよ、一旦七瀬さんを宿屋へ帰すために、俺たちは民宿立花へと帰ることになった。

 

 民宿に着くと同時に、庭で所在なさげに立ち尽くす女将さんと遭遇した。

 女将さんは七瀬さんを見るなり「無事だったのね!!」と叫んでほっと息をついたようだ。

 

 なんでも、島の灯台で女の人が亡くなっているのが発見されたらしい。

 コナン君が表情を厳しくして口を開いた。

 

「それ、一応見に行ってみようよ。もしかしたら…」

「鳥羽美佐とかいうガキかもしれねぇ、って話か」

「うん。そうであってほしくは無いけど」

 

 会話もそこそこに、急ぎ現場へと向かう。

 七瀬さんは置いていきたかったが、彼女だって中学の頃の友達が心配だろうし、心細い中で一人にしておくのも可哀想だ。

 

 灯台はフェリーで来た時にも見えた大きな赤いそれで、綺麗に丁寧に整備されていた。

 その入り口に一人、ワンピース姿の若い女性が血溜まりを作って倒れている

 

 それはやはり鳥羽美佐という高校生だったらしい。

 陰鬱な顔をした駐在さんと、泣き崩れる住み込み先のお土産屋さん店長がいた。

 

 これは、やはり公権力を召喚した方がいいだろう。

 

「すみません。この死体の調査を行って良いでしょうか」

「……ああ。君かね。探偵と言っておったが…」

「俺たちは彼女の依頼でこの島に来たものです。その無念を晴らす理由がある」

 

 「それなら、あまり現場を荒らしちゃいかんよ」と無力感の滲む顔で駐在さんは俯いた。

 どうやら昨日のジンのメンタル攻撃に加えて、店長さんに糾弾されて心がボロボロのようだ。

 「あんた達がもっとしっかり探してれば美佐ちゃんは死なずに済んだんだ!」と悲痛な叫びを店主さんが上げている。

 

 ひとまず捜査の許可は得られたようなので、俺はその場を離れることにする。

 

 コナン君に後は任せれば問題ないだろう。

 ジンもあれで推理はかなりできる方だ。

 視点が犯人なのが玉に瑕だが、俺は最後の推理ショーの時だけ出現すれば事足りるはずだ。

 

 ジンに別れ際に話しかけられた。

 

「おい、呼び出す前にバーボンには声をかけておけよ。不機嫌な奴は手に負えねぇからな」

「……なるほど確かに!急に呼び出されたらびっくりするな」

 

 招来魔術で事前にアポ取っとくという発想は無かったが、思えば確かに有効かもしれない。

 俺だって急に呼び出しがあったから拒否したが、事前に日程合わせてくれれば許可したのにという件はいくつもあった。

 うーむ、汎用魔術「アポイントメント」。

 神格に繋いで呼ぶのにいい日程を調整する魔術。

 

 などとおバカなことを考えつつ木陰で降谷さんに念話で繋げば、緊張した声色が聞こえてきた。

 

『どうした、もう島が爆発したか!?』

『いや、まだ行方不明三人死者一名ぐらい』

『相対的にマシに聞こえる言葉のマジックを使うのはやめてくれないか?』

 

 それは俺の仕業じゃなくないか?

 憮然としつつ、降谷さんの応援を求める。

 

『ともかく夕闇島に来て欲しいんだ。この島ちょっと閉鎖的で、下手をすると殺人事件すら隠蔽しかねない』

『……島ごとグルだと考えているのか?』

『昨日一日聞き込みして、不自然に島民の口が重いんだ。おそらく近隣にある地図に載らない島のことを隠してる』

『今から行くとなると時間がかかるが』

『俺の方で招来魔術を組むよ』

『わかった………よし、準備できた。呼んでくれていい』

 

 声を合図に「黒い風の招来」魔術を発動させる。

 空が急速に曇って、その中心から落雷のように降谷さんが出現する。

 波形にえぐれた地面の上で、降谷さんが眉を顰めた。

 

「エフェクト過多じゃないか?早く移動しよう」

「俺のせいじゃない降谷さんがカッコつけなのが悪い!」

 

 俺の喚きに降谷さんがやれやれ顔をしつつ、端的にしばらく情報交換する。

 鳥羽美佐の手紙をはじまりとした一連の謎に、隠された島、25年前の惨劇。

 秘密の香りがぷんぷんと漂うそれに、降谷さんは迷惑そうにため息をついた。

 

「事情はわかった。本土の船を手配させる。おそらく明日にはなんとかなるだろう」

「助かる。なら、あとはコナン君達のところに戻るとしようか」

 

 軽く風見さんをこき使うムーヴで電話をした後、俺たちはコナン君達のいる灯台へと戻った。

 するとそこでは、なぜか見知らぬ年配女性が増えて極寒の空気が漂っていた。

 

「ああ、来ましたか。ちょうどあなたにも話をしておきたかったところです」

「失礼ですが、あなたは?」

「私は日沖町長の秘書をしている桃園亜子です。あなた方には、これ以上おかしなことを聞き回って島を荒らさないでいただきたいと思っています」

「ふむ。我々は殺された鳥羽美佐さんの依頼でこの島にやってきたのですが」

「これは日沖町長の指示で、この島において町長の指示は絶対です。この事件を捜査するのも禁止します」

 

 どこの因習村だと思いつつ、そういう時のために降谷さんを召喚したのだと後ろからのっそり現れてもらうなどする。

 ふはは、公権力パワーを喰らえ!

 

 お大臣のごとく後ろから現れた降谷さんが、スーツにベージュのコートを羽織った姿でにこりと微笑んだ。

 まるでイケメン俳優のような整い方だが、ジンもコナン君も同時にうげっという顔をした。

 

 黒い風の不機嫌が透けて見えてしまったらしい。

 

「それならば、僕が許可しています」

「……あなたは?」

「警視庁の降谷と申します。まさか、警察の介入を拒むとは仰いませんよね?」

「我が島にも駐在がおります」

「ことは殺人事件の疑いがありますから。当然、僕も県警に連絡を入れてここにいます」

 

 そして降谷さんはうっそりと目を細めて、三日月のような笑みを浮かべる。

 

「もっとも、日沖町長を首長として日本国より独立したと主張するのならば話は変わってきますが」

「…………」

 

 すごい皮肉だ。

 嫌な奴バトルで降谷さんに勝てるものはなかなかいない。

 このバトル、勝負あったということだろう。

 

 秘書さんは顔を顰めて「いいでしょう。ですが、くれぐれも殺人事件と関わりのないことまで首を突っ込まれないように」と言い置いて去って行った。

 

 降谷さんがジトリとこっちを見る。

 

「で、僕をポケモンバトルに出したということは、こういう立ち回りを期待していたんだろう?」

「ナイスだったよ降谷さん!権力を傘に着たポッと出の嫌味な公安警察って感じで!」

「喧嘩売ってるのかな?」

 

 静かに圧の強い笑顔をされてしまったので、俺はジンの後ろにさっと隠れるなどする。

 

 ジンは激しく嫌そうな顔をしたのだった。

 





・降谷さん
てんのみぐみエアスラッシュでひたすら相手を怯ませていくタイプのトゲキッスみたいなポケモン。
こだわりスカーフで日本にこだわっていく。

・ウォッカ
留守番で寂しがるゴールデン君と遊んでやりながら兄貴の帰りを待っている。
ゴールデン君はご主人がいなくてキューキュー鳴いてる。
ウォッカも兄貴がいなくてキューキュー鳴いてる。
可哀想なイッヌの集い。
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