ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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巡り合う二人の名探偵〈上陸〉

 

 船で出立することしばらく。

 目的の「もう一つの夕闇島」が見えてきた。

 

 外観はまさに夕闇島そのものだ。

 船は俺たちをゴムボートで降ろしたら、念のため素早く岩壁の向こうなどに隠れてもらう予定である。

 俺たちはゴムボートで港以外に上陸して、こっそり行動を開始する手筈になっている。

 

「結局、この二界間の異常の原因はなんだったんだ?」

 

 降谷さんが小声で疑問を問いかけてくる。

 ジンも興味があるのか、耳をそばだてて聞いているようだ。

 コナン君と明智警視が話しているうちに、俺は頷いて調査結果を伝えることにした。

 

「うん、俺も魔術調査をずっと続けてわかってきたんだけど。たぶんこれは『運動不足』だ」

「………は?」

 

 降谷さんがパチクリと瞬いた。

 

 うむ。

 まさしくこれは、ヨグ=ソトースの運動不足に違いない。

 たるんだ段腹周りがうっかりくっついて、融合しているだけだ。

 

 時間とは空間であって、神たるヨグ=ソトースは一にして全。

 向こうの世界とこっちの世界はヨグ=ソトースの体表の位置の違いでしかない。

 その二つの位置がたるんだ腹周りによってくっついた、というわけである。

 

「最近父上動いてなかったし、太っただけだな」

「時間の仕組みってそんなルーズな感じなのか?物理学はどうなっているんだ?」

「それは父上の健康な皮膚上生理学みたいなやつだから。肌荒れすればその限りではない」

「バケモンも肌荒れするのか」

 

 ジンが実に遠い目をしながらタバコをふかしている。

 

 そりゃ肌荒れぐらいするだろう。

 ニャルが王宮を荒らしたストレスでブツブツができたりもする。

 今の地球だってヨグ=ソトースがモゾモゾ動いて凝視してるから、わけわからんサザエさん時空になってるわけだし。

 

「だから、分離後しばらくは俺が二界間の距離を支えることにするよ。で、その間に父上にはダイエットしてもらう」

「その、ダイエット?にはどのぐらいかかるんだ」

「父上のやる気次第。最短マイナス5秒とかその辺。ものぐさだと次の宇宙までこのままかも」

「世界観が大雑把すぎないか?」

 

 降谷さんが見事なチベットスナギツネになってしまった。

 まあこの辺は仕方ないことだ。

 矮小な人間ですらやる気を出すのは難しいのに、全能の存在がやる気を出すなんて極めて難題と言わざるを得ない。

 

 繰り返し話題に出されたからか、ヨグ=ソトースがちょっとだけ俺に気を配る仕草をした。

 ぬっ、と強大な神格の視線が注がれて、時間がグラグラ揺れる。

 

 加えて、時間面が揺れて俺をコロコロ転がし始める。

 顕現せずとも俺を転がす方法を見つけたようだ。

 

 もちろん、突然船の上で激しく回転した俺に、降谷さんもジンも「!?!?!?」と驚愕してのけぞった。

 父上、今はやめてね。

 

 なお、明智警視とコナン君は楽しく話が盛り上がっているようだ。

 探偵小説について語り合ったり、「幼い頃の私そっくりだ。聡明で、将来が実に楽しみだ」と明智警視はニコニコしている。

 仲良きことは良きことなり。

 

 

 

 さて。

 島に到着すると、そこは遠く見える地形すらも夕闇島そっくりの島だった。

 

 ジンが島を見回して気に入ったのか少し明るい声を出す。

 

「ほう、寂れちゃいるが広さもあるいい島だ。外洋から乗り付けられるから武器密輸拠点にもってこいだ」

「黄衣さんの探偵事務所では出所者の受け入れもしているんですね。素晴らしい社会貢献だ」

 

 すかさず、うんうん頷く明智警視の大体合ってる推理が飛んでくる。

 すごい勢いでジンにガンを付けられているが、気づくこともなく感心している。

 我が道を行くの化身みたいな人だ。

 

 あながち間違ってもいないので、俺は「うん、まあね…」と煮え切らない返事をするに留めた。

 

 ともかく合流が先決だ。

 七瀬さんが頷いて、「はじめちゃん!聞こえる?」とアーティファクト越しに問いかける。

 船に乗る前も問いかけていたが返事がない。

 話ができないような状況下にある可能性がある。

 

 俺が確認して、首を振って口を開いた。

 

「いや、これは外されてるな。誰かに取り上げられたんだ」

「なに?それは面倒だな。こちらの話を聞かれている可能性はないか?」

「それは問題ない。伝えようと思わなければ伝わらないからな」

 

 などと会話していると、ざざ、と雑音が混じる。

 新規登録者がアーティファクトに話しかけた証拠だ。

 アーティファクトの向こう側で、謎の人物が話し始める。

 

『聞こえるか』

「だ、誰なの!?はじめちゃんじゃない…!」

 

 七瀬さんが怯えた様子を見せたので、少し迷ってから、俺が代わりに返答をする。

 魔術的逆探知も兼ねての行動だ。

 

「金田一君から通信機を取り上げた不審者さん。ご要件は?」

『……我々に手を出すな。後悔するぞ』

「残念ながら、こちらにも目的がある。この島の謎を全て解き明かし、白日の元に晒すという目的が」

『……………』

 

 本当は事件解決自体はサブ目的だ。

 それでも、なぜか謎の男はどこか考え込むような、複雑な吐息を漏らした。

 もしやこの謎の人物、事件解決自体は賛成している?

 

 「好きにしろ。忠告はした」と、それだけ言って通信が途絶える。

 どうにも色々な背景がありそうだ。

 

 明智警視がふっと笑って砂浜の砂を踏み締める。

 

「ともかく、一刻も早く金田一君と合流すべきでしょうね。通信機を持つ男に捕えられている可能性もあります」

「僕も同意見だ。黄衣君、場所を頼む」

「あいよ。ここ見えづらいんだよなぁ」

 

 魔術式を組んで魔力波長を通した探査を放つのだ。

 人間の目から見たら普通の場所に見えるだろうが、空間自体がうねうねしていて普通に魔力を放つと探査漏れが起きかねない。

 むむむ、と丁寧に探査していく。

 

「見つけた。島の構成自体はほぼ夕闇島と一緒。俺らの滞在する民宿立花とほぼ同一位置にある建物にいるよ」

「すぐ向かおう。あちらはまだ僕たちが上陸したことに気付いていないだろうが…金田一君達の安全を考えれば早い方がいい」

 

 皆で頷いて歩き出す。

 道中、明智警視が少し考える仕草をしてからにこっと口を開いた。

 

「そういえば、ロスに出ていた頃にスタンフォード研究所の記録は見たことがありますが。未来では正式に認められているのでしょうか?」

「あー……」

 

 明智警視は「それに対応する警察部署が『カタイ課』と言われていると、私は推察していますが」と笑顔のままに俺に問いかけてくる。

 

 どうやら七瀬さんとも少し船の上で話をしたようだ。

 剣持警部と初めて会ったとき、刑事にならわかるという発言と共に怪対課の名前を出したこと。

 突然現れた新顔警視正降谷零とやらは、別行動しているという割にはホテルも取っていない。

 

「服装はこの時代に合わせたとして、日本語の口語が全く同一なのは不可解です。第二言語として習得したにしてはあまりに流暢だ。とするなら、そう離れていない時間から来ていると考えるのが自然だ」

「うーん名探偵か?」

「黄衣君、自白が早い。頼むからもっと誤魔化してくれ」

「ははは。タイムトリップできるほどの技術的ブレイクスルーがすぐ起きると考えるより、黄衣さんの不可解な力を信じる方が自然でしょう」

「全くもってその通り」

「テメェ努力ってもんが足りねぇんじゃねぇのか」

 

 降谷さんとジンにフルボッコにされ、俺はしょげかえった。

 ならジンは超能力探偵事務所で働く一般ムショ帰りヤクザってことになるけどいいのかよ!

 

 しょげた俺はコナン君の後ろに隠れるなどした。

 ちなみに、星の精は夜中にテンション上がって枕投げ遊びしてコナン君に怒られたから、今はネムネムすやすやモードである。

 

 しかし、明智警視も素晴らしい推理だ。

 ある程度事情を知ってもらうために敢えて公開した情報も多いとはいえ、推理速度が早すぎる。

 

 その後は無事誰にも会わずに民宿立花のある場所までやってきた。

 民宿の形すらもそっくりなのが不気味ですらある。

 

 金田一君達は、そこの一室にまったり暇そうにぶらぶらしていた。

 俺たちが扉を開けると、びっくりしてバタバタと起き上がる。

 

「なっ!?明智さん!?なんでこんなところに!」

「剣持さんも無事で何よりです。私は爆弾犯の捜索に来たのですが、君は早速神隠しにあってミイラ取りがミイラになったようで」

「うるせー陰険野郎!こんなとこに美雪を連れてくんなよ!」

「あの島も十分にきな臭いですから。一人で残しておくのは不安でしょう」

 

 開幕一方的に金田一君がいきりたっているが、なんともしっくりくる組み合わせに見える。

 安心感のある凸凹コンビ、という感じで俺はほっこりしたのだった。

 





・ジンニキ
美雪ちゃんにめっちゃ怖がられてたけど、すぐに「優しいヤクザの人」という地位を得た。
昨晩星の精にしこたま枕ぶつけられて寝不足。
星の精はコナン君の説教を受けてしおしおになった。

・コナン君と明智警視
コナン君は「変わってんなーこの人」って思ってる。
自分もほぼ同じレベルで変わってることに気づいてない。
明智警視は「自分にもこんな時代があったな」とニコニコしてる。
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