ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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巡り合う二人の名探偵〈完結、もしくはバッドエンド〉

 

 戻った日暮島が燃えているなり。

 

 「な、これは一体…!?」と明智警視が船上から身を乗り出した。

 島中から火の手が上がり、轟々と燃え盛る炎が空を黒く汚している。

 

 船の上から見える惨状に、俺たちは絶句するしかなかった。

 港には観光客を含めた島の住人が集まっていて、避難しようとひしめき合っている。

 

 ま、まずい!

 

 俺は慌てて、船に乗り込む人々に魔術を付与した。

 俺たちの世界向けの船と、金田一君達の世界向けの船とに分けるための干渉魔術だ。

 もし両界の人がごちゃ混ぜになって避難してしまえば、癒着が進んで大事になってしまう。

 

 わたわたと因果を整理して上手く避難船が分かれるようにしていると、剣持警部がにがり切った顔で吐き捨てた。

 

「おいおいおい、どう見ても避難してる人間が少ない!逃げ遅れた住民がかなりの数いるはずだぞ!」

「ッ、安室さん!お願い!」

「了解。あまりやりたくなかったがこの緊急時だ、仕方ないと思って割り切ろう」

 

 降谷さんが片手を空に向ける。

 剣持警部が「なんだなんだ、何をしようってんだ!?」と若干恐れるように距離をとった。

 

 じわりと染み出すように空に黒々とした雨雲が現れて、広がっていく。

 手を動かすのに合わせて渦を巻き、島をすっぽりと覆うサイズへと急速に成長。

 あっという間に雷鳴を纏って、それは積乱雲となった。

 

 ジンが鼻を鳴らして降谷さんに忠告した。

 

「テメェ、病をぶちまけるのだけは止めろよ」

「話しかけるな気が散る。というか疫病はオフにしてるに決まってるだろ!だが黒い色素がなかなか抜けなくて…くそ。もういい、大体透明だろう」

「またあの女に説教受けるぞ」

「君永副総監には緊急時だったと説明する!」

 

 公安信者さんに説教とか受けてたのか降谷さん。

 いや一応部下だし当然か。

 

 ぐ、と手を握り込んだのと同時に、スコールの如き強烈な雨が流れ落ちていく。

 ここから見ると雨柱のようにすら見える。

 中は視界もままならない大雨だろう。

 

 降谷さんも頑張ったのか、雨は若干濁っているものの、通常の雨のように見えた。

 

 それを見た明智警視が感心したように瞬いて声をかけてきた。

 

「素晴らしいですね。それはまじないのようなものですか?」

「似たようなものだ。あまり融通は利かないが。ともかく、あれで火災を抑えられるだろう」

「ねえ安室さん、あれ洪水にならないよね…人が流されたりとか溺れたりとか…」

「………もう少ししたら弱くしよう。うん」

 

 降谷さんはキリッとした顔になった。

 俺の化身になって、俺のゆるゆるが降谷さんにも感染したのかもしれない。

 明智警視が「渇水対策の救世主ですね。実に便利だ」とマイペースに頷いている。

 それはそうなんだがその納得方法でいいのか明智警視。

 

 そうして船が島に到着。

 俺たちは土砂降りの雨の中、傘もなくびしょ濡れになりながら避難民の方へと駆け寄った。

 

 避難する島民の整理をする駐在さんへ、金田一君が声をかける。

 

「なぁ駐在さん!この島で何があったんだ!?」

「おお、あんたら生きとったのか!!……ああ。もうワシも何が何だか…」

 

 困り果てた様子の駐在さんは随分と小さく痩せ細って見えた。

 

 話を聞くに。

 まず、俺たちが出て行ってからまもなく、島に来ていたフリーライターが殺害される事件が起きたそうだ。

 現場は爆弾で木っ端微塵にされたが、調査は日沖町長に禁止されて待機することになった。

 

 次に、明日の大事な行事のために集まっていた島の有力者2名と町長が毒殺された。

 その対応に駐在さんが出ているうちに、島中で大量の爆弾が爆発。

 それに前後して付け火による出火が起きて。

 

 もはや手がつけられなくなり、島民の避難整理をするしかなくなったのだと言う。

 

 とんでもねぇ状況に、俺たちは絶句するしかなかった。

 金田一君が少しだけ考えて、静謐な瞳を向けた。

 

「なあ。駐在さんはここに来て何年になる?」

「さて、若い時からずっとおるが…詳しい年数までは」

「ならこの島の本当の名前が日暮島だってことは、知ってるよな?」

「───ッッ!!!」

 

 息を呑んで身体をこわばらせた駐在さんに対して、金田一君は冷徹に言葉を続ける。

 

「この島で日沖町長が絶対の権力を持っていたのは、『日暮島の住人が25年前の惨劇に加担していたから』だ。弱みを握っていた、と言い換えても良い」

「………そ、それは。だがまさかこの騒ぎは…」

「25年前の生き残りの仕業の可能性が高い。あんた達は、何か事件について思い当たることはないか?」

 

 なるほど、金田一君は駐在さんの口を軽くするために「隠しても無駄だ、全部知ってる」と伝えたのか。

 だが初撃で致命傷を負った駐在さんは、沈黙のまま項垂れるのみだ。

 

 初めて会った時ジンが「こじんまりとした島のこじんまりとしたサツ」と言った事にやけにダメージを受けているとは思ったが。

 もともと駐在さんには大きすぎる傷が脛にあったということらしい。

 

 剣持警部が鋭く睨め付けるように言い放つ。

 

「詳しく話を聞かせてもらいたいが、そりゃこの島の住人を避難させてからだな。避難状況は?」

「わからん。島が何ヶ所も爆破されて、どこから火が来てるのかもわからんくなっとった。それに、日沖町長ら島の有力者は、盗まれたアレを探していて指示も何もなく…」

「アレってのはなんだ?」

「……夕闇島で見つかった金塊の、欠片じゃ。わしらの罪の象徴。あれを持っとったから、有力者は有力者だったんじゃ」

 

 日暮島民を脅す材料、ということらしい。

 お前達は夕闇島の富を使って成り上がった罪人だ、共犯者だと示すためのものだ。

 

 だが、それで25年も秘密が守られるあたり、どうしようもなさは変わりない。

 誰も何も言わなかったのか、あるいは良心の呵責に耐えかねた島民は処分されたのか。

 

 殺されたフリーライターさんは、俺たちに25年前の惨劇について教えてくれたおしゃべりなおじさんだ。

 数年前この島に調査に来て消息を絶った先輩の後を継いで調査にやってきたと言っていたが。

 全く碌でもない口封じが横行していたようで、ため息ばかりが深くなる。

 

 降谷さんが冷酷で興味のなさそうな視線を駐在さんに向けている。

 どうやら他世界のことと口出しはしない方針らしい。

 

 代わりに、厳しい眼差しの明智警視がまっすぐに駐在さんを見ている。

 

「残りの有力者はすでに島を出たんですか?」

「い、いや。残りの有力者二人は数日前から行方不明になっておって」

「となると、あの本物の夕闇島で殺された2人は、やはり島の有力者でしたか」

 

 今回の犯人は6人。

 

 日沖社長はすでに自殺。

 鳥羽美佐と一ノ瀬恵子は口封じのため殺害。

 自動車整備工場のお兄さんは後ほど捕縛の必要あり。

 鳥羽美鶴そっくりの女性と爆弾犯は行方知れず。

 

 対して25年前の主要人物はすでに全員死んでいるようだ。

 犯人は日暮島を潰し、やっと復讐を終えることができたのだと思われる。

 

 俺たちができるのは残りの犯人を捕まえるのみ。

 だが、この大勢の島民と観光客に紛れる犯人達を捕まえるのは至難の業だろう。

 第一、そんなことをしていたら避難が遅れて余計な被害が出かねない。

 

 明智警視がため息をついて肩をすくめた。

 

「本土の警察と連携して、保護した島民の身元を調査します。それと、夕闇島のほうも」

「後手後手か。全く嫌になるな。だが雨は降らせておくと同時に、ある程度息のある人間は僕の方で守ることにする。安心してくれ」

「助かります。やはり単独での手数の多さが超能力者の有利な点ですね」

 

 降谷さんの言葉に明智警視が少しだけ笑った。

 超能力ではないのだが、似たようなものなので別にその認識でも構わないか。

 

 轟々と燃える島に、まだ雨が降り注いでいる。

 

 コナン君はそれを見上げて、少しばかりほぞを噛んだ。

 犯人が目の前で自殺したのは、やはり堪えたらしい。

 

 七瀬さんがコナン君の手をそっと握って微笑んで、元気づけようとしてきた。

 コナン君はわずかに笑って、手を握り返したようだった。

 「もう怖いのいない?」とまだチャコタショックが抜けない星の精を添えて。

 

 

 

 

 そうして。

 避難船に乗って、明智警視はひと足先に本部と連絡を取るために本土に帰還して行った。

 

 その後も大火傷を負った観光客がパラパラと港まで逃げてきたので、俺が治療した。

 到着した段階で虫の息であった人もいたが、俺ならば問題なく治療できる。

 

 

 降谷さんが雨を調節したため、四時間ほどで島の火災は完全に消火された。

 

 降谷さんが風で保護した住人の救助も行うことができた。

 すでに亡くなっている方も多かったが、そちらは両界の警察で身元調査をするしかないか。

 

 燃え残って灰になった島は実に空虚だった。

 火災の被害は甚大で、見渡す限りが焼け野原。

 

 商店街の一角は少しだけ被害を免れて、そこから冷凍庫に詰められた白骨化死体が発見された。

 名刺にはフリーライターの文字が記されていて、どうやら俺たちが会ったライターさんの先輩の死体だったようだ。

 

 ライターさん本人を含め、爆弾直下にあった遺体は回収できなかった。

 爆弾で粉々になっていたから、どうしようもなかったと言うべきか。

 

 いくらか蠢いていた幽霊は俺が祓っておいた。

 観光客の幾らかは俺たちの世界の人だから、今後少し面倒なことになるだろう。

 

 

 港で船を待つ間、金田一君が雑に座り込んでコナンくんと目線を合わせた。

 

 「で、結局ポッケに何が入ってんだよ」と雑談がてら話を振っている。

 ここまで来たら教えろ、と言うことらしい。

 まあここまで情報開示したのなら黙っておく意味は薄いだろう。

 

 コナン君は愛想笑いして、ぽんぽん、とポケットを優しく叩いた。

 

 合図を聞いて満面の笑みを浮かべた星の精がポンと飛び出し、「ゲタッ!!!」と笑う。

 星の精と友達になる!星の精は優しい!ゲタケダ!

 

 金田一君は一瞬真顔になって。

 「のわーーーーっ!!!!」と悲鳴をあげたのだった。

 





・明智警視&剣持警部&降谷さん
完結の空気を醸し出す若人達を見てバカデカため息をついてる。
警察の本番はこれからなんだよなぁ。
結局爆弾犯を逃して大惨事を許した明智警視、黒焦げ死体がどっちの世界の住人か分からなくて軽々に世界を切り離すのこともできない降谷さん。
仕事は続くよどこまでも。

・爆弾犯
実は逃げずに爆弾と共にぶっ飛んでる。
爆弾で鉱山ごと家族が生き埋めになり、爆弾に恐怖と共に強く惹かれる思いが芽生えてしまったタイプの爆弾魔。

・残り一人の犯人
島の有力者の残りを毒殺していて逃げ遅れて黒焦げ。
元々そのつもりで爆弾犯と計画を練っていた。

思ったより長かった巡り合う二人の名探偵編はこれで終わり。
次回からは別の話に移る予定。
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