ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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史上最悪の二日間〈イゴーロナク逃亡〉

 

 ともかく、俺たちはコナン君の居場所を探すことになった。

 

 俺のブレスレットの反応は街中にある工場から発せられているのはわかっている。

 風呂でコナン君の服と荷物を回収し、車に乗り込む。

 

 公権力が必要になるかもしれないから、降谷さんにも合流してもらった。

 

 急遽警視庁から車を飛ばしてきた降谷さんは、怒りの炎をたぎらせつつ額に手を当てている。

 

「ったく!あの子は賢いのに時々かっ飛んでいくな!」

「まあまあ。高校生らしい無鉄砲じゃないか。実際それでなんとかできる子だし」

「君が目にかけている子が無鉄砲では困るんだが、本当に。君が連鎖爆発するという意味で」

 

 なぜ俺を時限爆弾みたいに言うのだ。

 まあコナン君が可哀想なことになったら誰が相手でも責任を取らせる心づもりだけれど。

 

 降谷さんは「この忙しい時期に!」とポコポコ怒っている。

 気になって、俺もそろりそろりと問いかけてみる。

 

「どういうことだ?公安で何が動いているのか?」

「外事課の案件ではあるが、つい先日米国から爆薬の密輸があったとCIAから情報があった」

『それってこの間のトラックの件か?』

 

 諸伏さんの発言で、俺もそれが何を示しているのか理解できた。

 この間起きた爆破テロの件だ。

 運び屋が指定の場所に動かしたトラックが、実は爆薬満載で、死傷者も出てトップニュースになった。

 

 運び屋は逮捕されたが、何も知らされてなかったらしく情報は出てないとのこと。

 

 降谷さんが難しい顔で言葉を続ける。

 

「特に、あのトラックに積載されていた爆薬はおそらくCIAから連絡された量に満たない。まだ残りの火薬があるってことだ」

『まずい気もするし、大勢に影響のない気もする』

 

 諸伏さんがうむうむと頷いて腕を組んだ。

 

 そうだな。

 トラック一杯分の爆薬なんて米花町では川から流れてくる程度の量でしかない。

 なんなら素人手作りの不発爆弾が捨てられて実際に川から流れてくる。

 

 降谷さんは目を三角にして俺たちを睨んだ。

 

「ともかく!今はニホリカ国首相一家も来日している。騒ぎが起こる前になんとかしたいところだ」

「なぜこの犯罪多発都市に家族旅行を…?」

「名誉毀損で逮捕する」

 

 ゆるゆるの名誉毀損罪で俺に手錠をかけようとしたので、俺はニャルの後ろに隠れるなどした。

 

 ニャルはコナン君の様子を観察してニマニマしていたが、俺がひっついてきたので瞬時に満面の笑顔になった。

 

「そうですよね!頼るなら僕ですよ!羽虫なんかに縋っても無力で無意味だ!」

「ぐっ…ニャルラトホテプの後ろに隠れるのはあまりに卑怯だろう…!というかなんで男なんだ」

「羽虫のルールに抵触せずに我が夫と風呂に入るためですよ。優しいでしょう僕、わざわざ羽虫の敷いたルールを守って」

 

 その通り、賢くて良いニャルだ。

 俺は「よーすよすよす!良いニャルだね!」とニャルを撫で回した。

 ニャルは大型犬のようにゴロニャンと俺に擦り寄った。

 でも男の姿なんだよなぁ……。

 

 俺がややしょんぼりすると、ニャルはそれを察して瞬時に女性型へと再変身。

 二次元から飛び出たような美人狐っ子巫女服だ。

 公衆の面前で性癖を展示され、俺はしめやかに爆破四散した。

 

「可愛いでしょう?我が夫の好みに合わせました!」

「ウン…カワイイネ……」

 

 道ゆく人がチラチラこっちを見て指差すなどしている。

 諸伏さんは萎びた俺を憐れんでナムナムと手を合わせてくれた。

 

 降谷さんが「どうでもいいが早く行かないか」と興味なさそうに死体蹴りしたので、俺はめそめそとニャルにしがみついて泣いた。

 

 

 

 

 

 さて。

 コナン君がいるのはここから車で少し走った使われていない工場にある。

 意外と街中にあって、潜伏には向かないように見える。

 

 やはりここは単なる一時休憩地点なのか、ちょうど相手も出立の途中の様子。

 ここで捕まえるのも手だ。

 

 しかしその瞬間、内部から銃声が響き渡った。

 俺たちが血相変えて踏み込もうとした途端、コナン君が念話を送ってきた。

 

『待って!まだ共犯が隠れてる可能性が高い!』

 

 降谷さんが苦虫を噛み潰した顔で足を止める。

 きちんと米国から火薬を仕入れられるということは、しっかりした足場を持つ裏の人間だということ。

 逃せばそうそう捕まらないだろう。

 

『今確認している人間は四人。全員誰かに雇われて指示を受けてるみたいだった。目的はまだ分からないけどね』

『君は無事なのか?』

『僕は平気。撃たれたのは「アドリブのタツ」と呼ばれていた人と、「鍵屋のマル」と呼ばれた人。銃弾の位置からおそらく即死』

 

 残りは「コンドウ」と謎の女性の二人で、コナン君を連れて車に乗り込む途中らしい。

 

 しかしそれを聞くに、神話的恐怖とは無縁に聞こえるが。

 でもニャルの表情がニャルニャルしてるのでとんでもない怪異系で間違いない気はする。

 

 仕方なしにコナン君の乗せられた車を隠れて見送り、俺はむしゃくしゃしたままニャルを小突いた。

 ニャルは迷惑そうに唇を尖らせる。

 

「僕、ほとんど手は出してませんよ?」

「まったくじゃないんだね……。何やった?」

「ハスターの瞳を落としたのと、あと神話生物を探査に引っかからないようにしたことぐらいですね」

「お前表出ろよ」

 

 俺は素早くいきり立ち、ファイティングポーズで拳をシュッシュッと繰り出した。

 降谷さんと諸伏さんが顔面蒼白になっている。

 

 コナン君が怖い目にあったら神話生物はサッカーボールにしてやる。

 あとニャルは出禁三ヶ月。

 

 ハッとした様子のニャルが俺にひっついて瞳を潤ませた。

 

「僕を追い出す予感がしました。我が夫はそんな酷いことしないですよね?」

「ニャルの反省の程度による」

「反…省……?」

 

 ニャルは初めて聞いた単語みたいな顔になった。

 俺はニャルの頭をぐーでぶった。

 「ぶった!僕をぶった!!!」と被害者ぶるニャルを再びよすよすする。

 

 コナン君の居場所はわかっている。

 なら先に犯人が去ったアジトの調査と死体の通報をしてから追いかけるべきだろう。

 

 降谷さん達と頷いて、こっそりと工場の敷地へと乗り込む。

 機敏でスパイ感の溢れる公安組の動きに比べ、俺はよたよたキョロキョロとした動きだ。

 ニャルは全然堂々と歩いている。

 

 残党がいないとも限らない。

 降谷さんが慎重に入り口の扉を開けた。

 

 カチッ、という音とともに轟音と衝撃波が広がる。

 衝撃。音。光。そして風。

 

 コンマ秒にも満たない間に、降谷さんが風の防壁を展開したようだ。

 俺と諸伏さんは風に守られ、棒立ちで無傷だ。

 降谷さんも肩の辺りに僅かに黒い風をゆらめかせるだけで、人の姿を崩していない。

 素晴らしい反射速度である。

 

 俺はこういうの、反応するの諦めて生身で食らって後で再生すればいいやの精神だからな。

 不意打ちで封印喰らってご臨終する不死者ムーヴなのはわかっているが、そんな常に気を張ってられない。

 そういう意味で降谷さんの反応速度は賞賛に値する。

 

 なお、ニャルは全然無傷で「わあい!見栄えがしますね!」と炎上する工場を見て喜んでいる。

 降谷さんが苦虫を噛み潰したような顔をした。

 

「まさかこの件に爆弾が絡んでくるとはな。まさかCIAの言っていた残りの爆弾か?」

『どうだろうな。この辺に自生する爆弾を犯人が収穫しただけかもしれない』

「ヒロは爆弾をなんだと思ってるんだ」

 

 憮然として降谷さんがむくれている。

 だが俺も、爆弾は東都に限り野草と同じ扱いでいいと思っている感じである。

 

 爆発箇所を中心に工場が燃えているが、すぐさま消し止められた。

 黒い風が大気を奪ったから、燃え続けられなくなったのだ。

 人で混雑していると使えないが、この程度の広さならこの消し方もできるらしい。

 十徳ナイフ降谷さん概念。

 

 中に入ると、爆弾で吹っ飛ばされてはいるものの比較的形が残っていた。

 元々燃える前提だったらしく、そこまで爆薬は多くなかったのが幸いしたようだ。

 

 休憩スペースらしき場所に、死体が二つ転がっている。

 いや、片方死体じゃないなこれ?

 

 死んだふりをしたジャージの男は動かない。

 降谷さんもその魂を見る怪異としての瞳で分かったらしく、厳しい瞳で声をかけた。

 

「お前、生きているだろう。この爆発を含めた一件で話を聞く必要がある。一緒に来てもらおうか」

「……へへっ、ばれちゃ仕方ねぇ。こんなに早く人が来ることは想定外だったんだがな」

 

 起き上がった男がペロリと舌を出して嗤う。

 嗜虐的に歪められた表情は、全てどうとでもなると高を括っているように見えた。

 

「運が悪かったな。あんたらは俺の人形になってもらう。この呪文は俺にとっても負荷がデカいから使いたくなかったんだが、仕方ない」

「………」

 

 黙りこくる降谷さんの前で、男が両手を前に突き出す。

 その手のひらには生々しい何者かの口がパックリと開かれており、涎を垂らした舌が踊っていた。

 

 すなわちこれ、背徳と悪行の神、イゴーロナクである。

 

 彼はおそらくその恩恵を受けただけだろう。

 憑依ではなく、その手先だ。

 規模がとんでもなく小さいし、装填された「支配」の呪文程度が負荷になる矮小さのものでしかない。

 

 それでも、イゴーロナクの手自体は旧支配者本体と繋がっている。

 人の抗えるものではない。

 

 手のひらに生えた口が、ベロベロと舌を動かしながら。

 不意に、俺とニャルの存在に気づいたようだ。

 

 ぴたり、と動きを停止してスンッとなった。

 呪文が詠唱されないことに不審に思った男が不審に思って手のひらを確認している。

 

 というか神に詠唱してもらってたのかよ。

 イゴーロナクってば意外と親切だな。

 

 イゴーロナクの手はだんだんガタガタと震え始めた。

 

「ど、どういうことだ!?なんで、どうして呪文が使えねぇんだ!」

「想像とは別方向に面白くなってきましたけど、どうします?このままサッカーします?」

「そうだな。コナン君取り戻してからになるけど、サッカーしようか。もいだ手足でゴールも作るんだ」

「いいですね!」

 

 俺たちのまったりした会話を聞いたのか、イゴーロナクの口はすうっと男の手から消えて無くなってしまった。

 イゴーロナク、人間の言葉もわかるもんな。

 いいぞ、鬼ごっこも嫌いじゃない。

 

 酷く狼狽する男の肩に、ぽん、と降谷さんが手を置いてにっこり笑う。

 

「話は署で聞くが、異論はあるか?」

「ひぃ」

 

 なんとも、締まらない逮捕劇となったのであった。

 





・イゴーロナク
地球に落とした手の様子をこっそり見にきただけ。
そろそろほとぼり冷めたかと思ったのに秒でハスターに遭遇して鬱。
逃げろ!!!!

・星の精
みんなが銭湯に行くって言ったので文句言いながら待ってたのに、夕飯の時間になっても全然帰ってこなくてゲッタゲタに喚いて怒ってる。
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