ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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史上最悪の二日間〈平和な決着〉

 

 俺、正座なり。

 激怒の降谷さんが仁王立ちで俺を見下ろしている。

 

「じゃあなんだ?僕たちが真面目にコナン君を奪還しようとしている間、夫婦でサッカーして遊んでいたと。そういうことか?」

「うむ、言い訳させてもらっていいか?」

「被告人は静粛に」

 

 ピシャリと冷酷に言われ、俺はしょげかえった。

 星の精は言い訳聞いてくれたのに…。

 

 文句ありそうな俺の様子に「あ?」とドスの効いた声を出した。

 俺は小さく縮こまって「なんでもないっす!」とハキハキ答えた。

 怖E。

 

 降谷さんはため息をついて半目で俺を見た。

 

「だいたい、あのイゴーロナクの顕現は不完全だったろう。腕を取り戻すために完全顕現を狙うのは自然なことじゃないか」

「!!!」

「今気づいた顔やめてくれ。まったく、今後も末長く日本の守護に尽力してもらうことで手を打とう」

「実質ノーコストで許された。優しい…」

 

 降谷さんは眉を釣り上げて「怪異一覧の定期更新と必要そうな法案の精査作業があるんだが」と恐ろしげな声を出す。

 うす。外部有識者として全力で当たらせてもらいます!

 俺は敬礼してキリッとした顔をした。

 

 星の精がバッグから顔を出して「クッス」と訝しげな様子を見せている。

 黄色また何か悪いことやったのか。悪いやつ。友達にも怒られる。

 凄く見下されているようだ。

 

 俺やっぱそろそろINT上げた方が良いのかな、と涙を飲んで正座のまま小さくなった。

 でもポンなのは俺の性格だし、INTあげても改善しなさそうなのが辛いところだ。

 ちょっと試すだけ試してみようか。

 

 などと考えていたら、降谷さんが切り替えてまじめな顔をして問いかけてきた。

 

「それで、イゴーロナク招来術式的に対応はできるか?」

「もちろん。赤レンガ倉庫全体に招来防止の魔術を敷けば最悪の事態は避けられると思う」

 

 本来は「彼方より来たりて饗宴に列するもの」さえあれば防げるのだが。

 ニャルが直さないままどっか行っちゃったからな。

 

 あんなに直せって言ったのに、急に耳が遠くなって気づいたら消えてたのだ。

 本当に悪いニャル野郎め。

 

 まあないものねだりをしてもどうしようもない。

 ニャルは猫に類似するものなので、仕事させようとしても無意味だ。

 猫よけ棘を設置するとその上で寝る。

 

 ポン俺と猫ニャルの無敵コンビである。

 地獄かな。

 

 俺は咳払いして言葉を続けた。

 

「設計図の術式はすでに確認済みだし、変更があったとして対応できるようにもする。問題ないよ」

「なら、あとは爆発自体の対処か」

「そっちも俺が術式を敷く?」

「一応コナン君側の計画もあるからそちらはやったとして予備になるだろう」

 

 どうも、コナン君は殺し屋のコンドウを仲間に引き込んで、計画の頓挫を狙っているらしい。

 

 彼らの細工で爆弾は不発になるよう、コンドウが通信システムに細工。

 加えてコナン君が発信機でアジトの位置を特定。

 降谷さん達に念話で共有していたらしい。

 

 既に公安で制圧作戦が同時並行で進んでいるとのこと。

 

 有能だぁ。

 俺はその頃追いかけっことサッカーに勤しんでいたのに。

 俺こそ真の小学生説。旧支配者の恥かな。

 

 俺は丸くなっていじけるなどした。

 降谷さんがそんな俺を小突いてため息をつく。

 

「ともかく………ッコナン君が到着したようだな」

 

 監視カメラの映像にコナン君の姿が映ったようだ。

 あどけない様子を装って、周囲に注意を配っている。

 そろそろ魔術を構築せねばなるまい。

 

 本当は、そんなことせずとももう百年ぐらいはイゴーロナクも地球の召喚には応じないと思うか……。

 万が一もある。

 魔術は張っておいて損はないだろう。

 

 イゴーロナクが召喚に応じないと俺が思うのは理由がある。

 

 人間的感性では当然「あんなことしてくれて復讐してやる」とか「この恨み晴らさでおくべきか」とか、そういうことを考えると思うだろう。

 人間なら当然だ。

 だが実のところ復讐心を持つのは人の大きな特徴であり、神話生物を見渡せば非常に稀有な性質だったりする。

 特に、旧支配者はそういうことがほぼ存在しない。

 

 というのも、彼らは感情が非常にシンプルで過去を顧みないからだ。

 

 例えば捧げ物を沢山した種族がいたとして、次の瞬間には「お前らなんでまとわりついてくんのウザ」になる。

 10万年封印された旧支配者がいたとして、解放されて「こんなことしくさった奴らに目にもの見せてやる!」にはならない。

 「わーいおそと!」になって適当に暴れるのだ。

 

 長命だが非常に刹那的な存在、と言えるだろう。

 

 だからこんなに暴れてる俺とニャルもお礼参りは一度もされたことがない。

 「あっ嫌なやつだ!逃げよ!」と逃げていくだけだ。

 なんならバトったことも忘れてる。

 

 まあ旧支配者の話はともかく、魔術の構築を進めていこうか。

 

「ちちんぷいぷい」

「だからなんなんだその掛け声」

「日本の伝統的な掛け声だと思って使ってる」

「よく分かってるじゃないか」

 

 降谷さんは非常に満足げにした。

 日本過激派なんだよなぁ。

 

 人差し指をすいっと振れば、術式が展開する。

 対旧支配者召喚用妨害術式に加えて、爆発性物質制御魔術だ。

 

 旧支配者召喚妨害に関しては念入りに、八十億と58の術式に分けて構築した。

 純粋な空間転移のほか権能のみの干渉、思念波、小部位の強引な押し込みなどにも対応。

 あらゆる角度での招来魔術を禁止する。

 

 旧支配者対策は特に俺の得意とするところだ。

 複雑さの観点でも消費MPの観点でも、人類種では同様の術式を組むのはどれほどの時をかけたとして不可能だろう。

 

 それに比べ、爆発性物質制御は単なるおまけだ。

 それでも演出用の煙と爆弾の識別程度ならできる。

 

 ずろろろろ、と術式を展開すると、降谷さんがドン引いた顔でのけぞった。

 

「相変わらず凄まじいな。もはや術式の中に赤レンガ倉庫が沈んでるんだが。どうやったらそんな術式組めるんだ?」

「俺の場合、チマチマ自作ライブラリ作ってるからな。降谷さんも作っとくと楽だぞ。それとも俺の使う?」

「将来的に使えるようになると嬉しい、とは思う。今は素人が深淵に手出しするようなものだな」

 

 むすっとしながら降谷さんは口を尖らせた。

 だいぶ上達して、念話に保留機能もつけられるようになったようだし。

 順調に成長はしているようなんだが、本人は納得できていないらしい。

 

 俺もそろそろ新しい魔術教本でも書くとするかな。

 

 初心者向けの本はハイパーボリアの時代に沢山出版されてるし。

 皮膚の兄弟団を見習って、中級者向けの魔力運用とか、概念への変換とかに絞って自費出版しようかね。

 

 などと考えている間にニホリカ国の王家も到着したようだ。

 たくさんの護衛を引き連れて、子供が二人キラキラと輝く瞳でヤイバーを堪能している。

 うむ、子供を狙う犯行は許せへんよなぁ。

 

 コナン君も見知らぬ男女二人を伴っているようだ。

 男の方がコンドウで、女はイゴーロナクの手先の共犯だろう。

 

 降谷さんが無線機で合図をする。

 

「予定の位置についた。合図が出たら確保しろ」

 

 降谷さんのスマホが鳴る。

 漏れ聞こえる声は「制圧完了しました」という風見さんのものだった。

 降谷さんは凍える声色で「ご苦労だった、撤収しろ」と指示を出す。

 

 そうして、降谷さんは宣言した。

 

「総員、確保!!!」

 

 

 

 

 

 

 無事、イゴーロナク招来爆弾は解体された。

 俺も解体作業に参加していたので少し時間を食ったが、爆弾は無力化。

 爆発物処理班が回収していった。

 

 俺達は事務所にすぐに帰宅することができた。

 本来は事情聴取が必要だが、俺が急いでハスターの瞳を復旧しなければならないので後日にしてもらったのだ。

 ニャルの方も軽いイタズラだろうし、頑張ればすぐにハスターの瞳は復旧できるはずだ。

 

 コンドウは公安の方と協議しているらしい。

 

 優秀な人員であることは本当だし、危険性も低いので公安は引き込みを考えているようだ。

 

 まあ、コナン君によると恋人との平和な生活を求めているようだし、彼がそれを受けるのかは定かではない

 公的な仕事で安定した収入を得つつ恋人と過ごすのも悪くないとは思うが…その辺は本人次第だ。

 

 そうして帰ってきた事務所で、俺はソファに倒れ込んだ。

 

「あー〜ー、ニャル野郎の細工箇所分からん。あいつあの短時間でめちゃくちゃ巧妙なトラップ仕掛けるやんけ…」

「お疲れ、黄衣さん。星の精も何も言わずにいなくなってごめんね」

【ゲタッ!!!】

 

 星の精はひしとコナン君に張り付いて震えている。

 今更になって怖いことが起こってたかもと怖くなったのだろう。

 コナン君は星の精を優しくヨシヨシした。

 

 俺がいない間に不安がピークに達していたのかもしれない。

 マモーさんが塔みたいな豪華巨大ケーキを出して「どうぞ…!」と涙目で運んでくる。

 すげえ、天井につきそうだ。

 こんなの運び込めないし、まさかこの事務所内でシェフに作ってもらったのだろうか。

 

 もう全方位申し訳なくて、俺はマモーさんにめちゃくちゃ頭を下げた。

 

 ケーキをありがたくもらうこととする。

 

 そのあたりで不意に、ぱちっとパズルがはまった感覚で弄っていたハスターの瞳の修正が通った。

 全ての術式が歯車のように回り出す。

 オールグリーンで極大術式「彼方より来たりて饗宴に列するもの」が稼働を再開した。

 

 今回は知恵の輪的なコンセプトでイタズラしたらしい。

 あのニャル野郎覚えてろよ。

 

 復旧した全生活オーガナイザーの姿に、マモーさんが幾度目かの滝涙の決壊を見せる。

 

 さらっと帰ってきていた諸伏さんがケーキを掻っ攫うように大盛りにしている。

 こんなの食べきれないので、降谷さんももうすぐ応援に来ることになっている。

 

 まあなんにせよ、世は全てこともなし。

 

 俺は皆にポンを小突かれながら、平和にケーキをご馳走になったのだった。

 





・ハスターの旧支配者招来妨害術式
人類には到達不可能な術式。
旧支配者を地球に寄せ付けない、神の御技。
人類の生存権を確立する奇跡の光。
これが故に人類はハスターを神と崇めるのだ。

・旧支配者の生態
どっちかというと動物的。
知恵を働かせる理由がないから、皆まちまちに適当に壊し喰らうのみ。
強者に立ち向かうこともないし、工夫することもない。その必要がない。
そんな中、暴れ狂う狂神ハスターは災害に等しかった。
何度返り討ちにしても執念深く挑んできてだんだん強くなって殴ってくる。
意味不明。
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