まだ未定だが、明日の更新はその分お休みかもしれぬ。
俺たちは急ぎ病院へと向かった。
コナン君は工藤新一の格好だ。
俺と現れるのは不自然だが、コナン君たっての希望だから仕方がない。
受け付けで手続きしてから病室に向かう。
部屋に入ると、昼の光が窓から差し込んでいた。
昼なのにどこか薄暗い印象なのな、そこにいる人物の表情がそうさせるのだろう。
病室は清潔で白いばかりで、どこか空虚さに満ちている。
落ち窪んだ表情で、幽鬼のような様子の毛利探偵が丸椅子に座って項垂れている。
毛利探偵は俺に気づいて立ち上がった。
「!!黄衣………悪いな、来たのか。それに探偵ボウズも」
「蘭の様子は!」
「今は寝てる。記憶は戻らねぇままだ」
沈鬱に言い切って、毛利探偵はやるせなさそうに俯いたようだった。
蘭ちゃんの状態は、すでに俺たちも聴いている。
結婚式の途中に何者かが佐藤刑事へと発砲。
佐藤刑事は重体で生死の境を彷徨い、一緒にいた蘭ちゃんは気絶状態で見つかった。
目が覚めると、彼女は全ての記憶を失っていた。
ベッドの前に立って、工藤君が歯を食いしばって拳を握りしめたようだ。
毛利探偵が、ガッと俺を掴んで懇願した
「なぁ黄衣、怪異でもなんでもいい!お前の伝手で、記憶を戻す方法が手に入れられねぇか!」
その様子は見たこともないほど必死だった。
普段、毛利探偵は俺が怪異に精通しているとしても決して頼ろうとしない。
怪異を遠ざけ、冗談でもそれに頼ることをしようとはしなかった。
今の毛利探偵の必死さは、それだけ蘭ちゃんのこと想っている証だ。
俺はできる限り誠実に頭を下げた。
「俺の持ってる知識で蘭ちゃんの記憶を戻すことは可能だ。だが、まだそれを使うのは早い。使わない方がいいですね」
「ッ、なんでだよ!?蘭は何も覚えて…」
「蘭ちゃんは、記憶を失うほどショックな場面を見たんでしょう?」
俺の言葉に毛利探偵は息を呑んだ。
そう。
蘭ちゃんはSAN値の喪失によって健忘症を発症した状態に近い。
精神への大きなダメージが、魂を傷つけてしまったのだ。
心へのダメージは予測がつかない。
自ら記憶を忘却してまでそのことから逃れたというのに、無理やり直面させることが魂に負荷をかけないはずがない。
「無理に戻せば蘭ちゃんが可哀想だ。再び記憶を失うならまだいい方だろう」
「………ッ」
しばし震えた後、毛利探偵はやるせなさを滲ませて肩を落とした。
あらかじめその辺の記憶に封印してから他の記憶全てを思い出させる手もあるだろう。
だが、そうすれば本来戻るべき、立ち向かうべききっかけも失ってしまう。
だから魔術は、彼女の記憶が戻らなかった時の最終手段にすべきだ。
そのように丁寧に説明していけば、毛利探偵はわずかによろめいて、そのままフラフラと窓枠ににもたれかかった。
理屈はわかったが心がついていかない。
最愛の娘に誰だと問われたことが、あまりにもショックだったのだろう。
その姿はひとまわり痩せこけて見えた。
工藤君も俯いたまま蘭ちゃんのベッドの脇を離れようとしない。
部屋の空気の重さに、俺はつい叫び出しそうになった。
俺が蘭ちゃんの魂に手を入れれば万事解決なんだが、それってつまり俺の好きなように蘭ちゃんを組み替えるだけ。
倫理的に流石に無しだと思うのだ。
俺も悲しいしみんなが悲しんでてそろそろ禿げそう……。
などと、俺がまだ見ぬ犯人に怒りの炎をたぎらせていた時。
蘭ちゃんが目を覚ましたのだ。
「ん……あなた、は…?」
「蘭!目が覚めたのか!」
蘭ちゃんが工藤君を見上げて困惑の表情をした。
蘭ちゃんからすれば見知らぬ男女ばかりが己に会いに来て、不安で仕方がないのだろう。
より一層工藤君の顔が曇って、そのまま儚げに微笑む。
「俺は工藤新一。お前のことを心配して来たんだ」
「そう……なの」
「無理せず寝てていい。蘭も、入れ替わり人が来て疲れてんだろ?」
精一杯強がっているのが丸わかりの声色だ。
俺はあまりの辛さに胃に穴が開きそうになった。
あーー犯人ちょっと肉眼で睨んどこうかな。
というか犯人精神科医かよ。探索者ぶってて気に食わねーな。
坊主憎けりゃ袈裟まで憎い。
蘭ちゃんも工藤君の強がりを感じ取っているらしい。
同時に、そこに根ざす感情を疑問に思い、そっと口を開く。
「貴方と私は、どういう関係だったの…?」
これまで、そういうことを全然聞かない無気力な状態だったらしい。
毛利探偵が目を見開いて「蘭、お前…」と思わず漏らす。
工藤君はふっと笑って、蘭ちゃんの手を取った。
「俺は少なくとも、お前のことが好きだよ。……この世界の、だれよりも」
蘭ちゃんが頬を染めて目を見開く。
人が聞けばキザなセリフと思うだろう。
だが、それはおそらく工藤君に取って誰よりも何よりも真摯な言葉だったと。
俺はそう感じたのだった。
尊い…人間種の青少年の純愛尊い……。
俺の加護いる?たくさんいる???
と、そこで突然。
「小五郎!」と急ぎドアを開ける見知らぬ男が一人。
毛利探偵は「ワニ!」と言って男に駆け寄った。
どうやら親しい仲らしい。
ワニと呼ばれた男はやや動揺して俺を見た。
「小五郎、お前噂の黄衣探偵と知り合いだったのか」
「ん、ああ。提携してる。こいつのとこ、知名度の割には人手が少ないからな」
「そうか。その人脈大事にしろよ」
さりげない言い回しだが、どこか何かを含むような気配だ。
俺について何か知っているのかもしれない。
毛利探偵はやや眉を下げた。
「まさかお前の結婚式でこんな事件が起きるとはな…」
「ああ。あんな警察のウヨウヨいる会場に拳銃持ってくるなんざ、にわかには信じられん」
「僕も当時の状況が気になっていまして、お聞かせいただけませんか?」
工藤君の言葉にワニと呼ばれた男は頷いた。
始まりは結婚式の歓談の時間の最中だったらしい。
突然ホテルが停電したのだと言う。
後から調べたところ、電気制御室が爆弾で吹っ飛ばされていたとのこと。
いつも通り米花町の畑で取れる量産品の爆弾だろう。
そうして、しばらくして暗闇の中蘭ちゃんの悲鳴が聞こえて。
刑事たちは急いで化粧室へと向かった。
すると重傷の佐藤刑事が倒れていて、折り重なるように蘭ちゃんも倒れていた。
ワニさんが頭をかいてため息をついた。
「俺も現場を見たが、空薬莢が落ちていた。9mm経口のオートマ。懐中電灯も落ちてたから、恐らくは犯人の罠だろうな」
「……おそらく目暮警部達が出入り口は封鎖したでしょう。硝煙反応は?」
「全員出なかったよ。拳銃から指紋も出なかったらしい」
だから今皆が解放されたと言うことなのだろう。
これは厄介かもしれない。
工藤君が深刻そうな顔をするので、ワニさんがフォローするように口を開く。
「俺の方で、この子の記憶喪失は積極的に口に出している。心配するな青少年」
「!……なるほど、ありがとうございます」
工藤君は深々と頭を下げた。
毛利探偵は疑問符を乱舞させて二人を交互に見ている。
高INTの会話を要約すると下記ぐらいの内容になるだろう。
つまりだ。
犯人は懐中電灯をトラップに暗闇の中蘭ちゃん達を誘き寄せ、銃で撃った。
その性質上うっかり蘭ちゃんは犯人の顔を見てしまった可能性がある。
だから、ワニさんは積極的に記憶喪失の噂を流して犯人に「殺すのは後でいいか」と思わせる工作をしている、ということになる。
で、工藤君はお礼を言ったと言うわけだ。
このワニという人、凄く優秀なのだろう。
工藤君も瞬時にそれを見抜いて信頼を寄せ始めている。
「ところで、どうやら目暮警部の口が随分と固いようですが何かご存じだったりしますか?」
「さあな。俺は窓際の改革準備室だから、情報は来ていない」
「……そうですか」
「だが、何事も触れたくないものには口が重くなるものさ」
この言い回し、おそらく全部わかってて自分が言ったとならないように匂わせで伝えて来てるに違いない。
触れられないではなく触れたくない。
つまり、例の小田切警視長が被疑者の件と関連があると言うことだ。
ここまでで見つかっている証拠でそう警察が同定できる証拠は……そうか。
拳銃の薬莢が、小田切警視長の疑われている事件と同一のものなのかもしれない。
俺はふとパチクリと瞬きして我に返った。
うーん、なんか頭が回りすぎてる気がする。
確認するとINTが15まで上がってしまっていた。
道理で何もおもろないわけだ。
俺がガッカリして下げようと意識を集中すると、さりげなく工藤君に足を蹴っ飛ばされるなどして妨害された。
この状況で俺までポンコツでいてもらっては困るらしい。
むすっとしつつ仕方なしにそのままにする。
しばしワニさんと雑談してからが帰った後、目暮警部たちがやって来た。
彼らから新たな情報を得つつ、俺たちは英理さんを加えてその内容を精査するのであった。
・星の精
オウムは病院に連れてけないって言われて怒ってたが、蘭ちゃんが記憶喪失になったと聞いてトーンダウン。
番が友達のこと何にも覚えてない?そんな酷い…星の精のグミあげる……元気出せ……。
しおっとして事務所でしょげてる。
・高INTハスター
きちんと探偵の話についていけるシャキッとしたハスター。
ポンは据え置き。
会う人会う人全員悲しんでて、猫の虐待動画見てる気分。絶許。睨んでやる。