ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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天国へのカウントダウン〈世紀の発明〉

 

 キャンプ二日目の朝である。

 

 少年探偵団と志保ちゃん、コナンくん、それに阿笠博士と俺で、俺たちは富士山近くにキャンプに来ていた。

 キャンプ場で一泊して、今日は新しく建設された西多摩市のツインタワービルに遊びにいく予定である。

 

 阿笠博士がハイエースにテントをしまいポリポリと頭をかいた。

 

「すまんのお黄衣君、車を出してもらって」

「構いませんよ。いつもお世話になってますし。あ、それと俺の依頼の品はどうです?」

「バッチリじゃ!効果も確認しとるし、ふふふ、ワシの腕にかかればこれくらい軽いもんじゃよ!」

「うん、あまりにすごい…!」

 

 ふはははは!と変な高笑いをする阿笠博士を、俺は裏表なく褒め称えた。

 実際本当に凄まじいからな。本当に。

 

 俺が頼んでいるのは、警察に卸すための魔術探知メガネの工場用モジュールだ。

 

 今、このメガネは俺が全て手作業で作成している。

 確かな精度と性能を求めると、人の手での製作ができなかったから仕方のないことだ。

 だがこれでは人間側の知見が得られないし、俺への依存度が高すぎる。

 

 そのため「なんとかして科学の力でこのメガネと同じものを作ってくれないか」と阿笠博士に相談していたのだ。

 

 魔術の付与されたメガネの性能確認用ペンダントと共に預けたのは一ヶ月前。

 

 阿笠博士は未知の課題に喜んで打ち込むこと今日まで。

 幾度かの謎の爆発を経て、見事目標を達成したらしい。

 

 いやなんで完成するのかよくわからないんだが、ともかく完成したのだ。

 俺もダメ元だったのに……分からん……すごい……。

 

 ダブルピースでニヤニヤする阿笠博士をあらん限りの拍手喝采で讃える俺に、コナン君が半目で見ている。

 「大丈夫か本当に?」と胡乱な表情だが、ここから大丈夫にするのが俺の仕事だ。

 

 0を一足飛びに1000ぐらいにしてもらったんだから、後を整えるぐらい楽な案件だろう。

 

 ほい、と阿笠博士がスマホに研究資料のまとめを送ってきてくれる。

 確認すれば、その中身は「魔術の手順を科学で再現した」というより、「全く新しい魔術科学とも呼ぶべき技術の骨子を作った」に等しい何かであった。

 チラ見ではまだ詳しいことはわからないが、これは相当腰を据えて当たらないと俺でも理解が難しそうだ。

 

 志保ちゃんがガサガサと鍋を片付けながら言った。

 

「一応理論は私の方も携わったけど、名前は伏せてちょうだい。あの奇想天外な科学の淵に関わる気はないわ」

「え、すごいお給金出ると思うよ?のちの教科書に名前載るレベルの偉業だけど???」

「平和に暮らすのには重荷なだけよ。でもその代わり、博士の名前は絶対に残すように」

「了解」

 

 志保ちゃんに念押しに、俺は少し微笑んだ。

 彼らの祖父と孫みたいな、そうでないような奇妙な関係は形容し難い。

 それでも確かな信頼がそこにはあって、なんとなく温かな心地になるのだ。

 

 まだコナン君は審議中の顔なんだが、なぜそんな博士の有能さを認めないんだ君は。

 絶対これ人類史の転換点だぞ。

 そもそも人間の科学の理論でアザトースに夢の変更を納得させるなんて、本当にどういう理屈なんだこれ。

 

 

 さて、これからはツインタワービルへと向かうことになる。

 車を走らせて西多摩市へと向かう。

 

 しばらく走ると、高い双子のビルが見えてきた。

 新築のそれは聳え立つほどに高く、さぞや見晴らしもいいだろうと思われた。

 

「でっけー!てっぺん見えねぇぞ!」

「すごーい!!歩美も上がる!」

 

 子供達がわちゃわちゃと先を競うように車から降りて走り出す。

 そこを慌ててコナン君と志保ちゃんで制御。

 熟練の羊飼いの動きで誘導していく。

 

 なんか小学校の先生に近い何かを感じたが、やはり苦労のほどは似たようなものがあるのだろう。

 

 駐車場に車を停め、ビルの前まで来たあたりでロータリーにタクシーが停まった。

 降りてきたのは蘭ちゃんと毛利探偵だ。それに園子ちゃんもいる。

 

「あ、黄衣さん!奇遇ですね!」

「よっ、蘭ちゃん。あれから体調はどうだ?」

「すっかり良くなりました。ご心配をおかけしてすみませんでした…」

「いいよいいよ。蘭ちゃんが良くなって本当に良かった。毛利探偵もどうもです」

 

 俺がぺこりと頭を下げると、毛利探偵も咳払いして背広を直した。

 

「なんだ、黄衣も招待されたのか?」

「招待というと?」

「俺は来週のオープンを前にオーナーに招待されたんだよ。大学時代のゼミの後輩でな」

「なるほど、そうでしたか。俺たちは単なる周辺観光ですよ」

「なら人数指定はされてなかったし、俺らと一緒に見学していくか?」

「おお、ぜひお願いします!」

 

 流れで見学を許可されて、子供たちは拳を振り上げて歓喜した。

 ビルは周辺の探索だけで済ませて、メインは商店街の方にしようと思ってたのだが。

 なんともまあ嬉しいお誘いだ。

 子供たちも目がキラキラと輝いている。

 

 園子ちゃんが「大人しくしてなさいよガキンチョども!」と喝を入れながらもうまく子供達を盛り立てている。

 この子も本当に人を惹きこむのが上手いんだよな。

 

 ビルへ入ると、秘書さんが先導して内部を案内してくれる。

 

 オフィス区に入っている会社はTOKIWAと言って、ソフトウェア開発が主の会社らしい。

 色褪せたような黄色っぽい色調の内装に、歪んだ疑問符が三つ連なったような社章が額縁に掲げられている。

 

 うーんどう見てもハスター系列。

 

 すごい勢いで見てくるコナン君に、俺はそっと視線を逸らした。

 奥に俺を祀ってるっぽい神棚が見えたけど気にしない。

 ネット関係って俺信仰の団体多いんだよね…。

 その起源からして俺の教団が関わってるし。

 

 途中で加わった専務さんの説明も聞きながら、順に回って確認していく。

 どうやら社員自体には魔術師は少なそうだ。

 

 そのあとは75階のコンサートホールの見学だ。

 今はパーティの準備中のようだが、オーナーは毛利探偵のために待っていてくれたらしい。

 

 オーナーはTOKIWAの社長でもあり、30代ほどの女性だ。

 毛利探偵と軽く談笑してから俺に気づいて「まあ!」と顔を赤らめさせた。

 

「黄衣探偵ですか!?本物!?!?」

「ええ。黄衣ハスタです。探偵仲間として毛利探偵に誘われまして。この度は誠にありがとうございます」

「は、はい…!毛利先輩っ、そんな、なんで教えてくださらなかったんですか!」

 

 オーナーがパタパタと化粧を気にするような様子を見せたので、ジト目の毛利探偵と視線が合う。

 毛利探偵はチャラチャラした顔の俺が気に食わないらしい。

 いや仕方ないよ。俺の方が若いしイケメンだ。

 いや年寄りで触手だけど、若くてイケメンなのはガワだけだけど。

 

 おっと、異次元の角度からニャルの眼力が飛んできたのでこの話はここまでとする。

 

 羽虫にニヤついてんなし異常羽虫愛者!ってメッセージが飛んできた。

 すんません。もうしません。

 

 というかこれは根本的に浮ついた話ではなく、信仰する神に不意に会った焦りをなんとか隠そうとしている信者の仕草なのだが。

 うむ、まぁ気にすることもない話よ。

 

 不機嫌な日本画の先生などとともに挨拶周りをしていく。

 するとふと、窓の外を見てコナン君が声を上げた。

 

「ジンの車……!?」

「え、こんなとこで仕事あったのかあの人」

 

 俺はパチクリと瞬いて首を傾げた。

 公安の外部エージェント扱いのジンは、日本国内あらゆるところへ出向いて難しい怪異問題の解決をしている。

 とすると、この辺に何か問題が起きていると考えるのが自然だが。

 

 一目散にエレベーターの方へ向かうコナン君を追って、俺もその場を離れるのだった。

 





・阿笠博士と灰原さんの共同研究
魔術科学とも呼ぶべき新たな学問分野の一歩。
あえていうなら、科学の理論でアザトースに夢の変更を認めさせるもの。
あまりにエキセントリックで、魔術師にも科学者にも理解が難しい。
理論の基礎はアポトキシン4869と同じ。
魔術ではないが科学を超えた、奇跡の類。
机上の空論でしかなかったそれを阿笠博士が実用段階にまで持って行った。

・信者オーナー
突然の野生の神出現に脳内で気絶してた。
毛利探偵に「なんで言ってくれなかったんですか!」って可愛く言ってたが。
本音は「マジかよ終わった毛利先生愛してます靴舐めますはーーー堪らん今すぐ爆発四散する!!!」ぐらいのノリ。
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