ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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天国へのカウントダウン〈おぞましき贄〉

 

 オープンパーティ当日。

 俺達はパーティ会場であるツインタワービルへとやってきていた。

 

 本当は子供達も招待したかったのだが。

 親御さんに危険があることを伝えて、行かないように注意してもらったのだ。

 魔術案件に子供を巻き込むわけにはいかないからな。

 

 コナン君を伴って現れた俺を、まず入り口付近に控えていた重役一同が揃って頭を下げて迎え入れた。

 

「ようこそお越しくださいました。我々一同、貴方様の、」

「俺は黄衣ハスタ。しがない探偵でしかありません。過分な接待は不要です」

「こ、これは失礼いたしました!どうぞこちらへ!どうぞごゆるりとお寛ぎください!」

 

 俺はむすっとして「変に注目させんなよ!」というメッセージを送った。

 神が不機嫌なことを察知して、ピャッと一同は解散していく。

 しかし遠巻きに凝視していて、その異様な様子に周囲の来客たちも何事かと俺を俺を見ていた。

 

 先に来ていた毛利探偵も俺に寄ってきて訝しげな顔をしているようだ。

 

「おいおい、いくら社長の常磐君に気に入られてるからって、なんだありゃ?」

「たぶん怪異関連で俺に便宜を図ってもらいたいことがあったんだと思う。俺には何にもできないんだけどなぁ」

「俺ができることなら常磐君の力になってやりてぇが、怪異関連じゃあな。あんま黄衣に絡まないよう言っとくか」

 

 頭をかいて仕方なさそうに毛利探偵は嘆息した。

 毛利探偵、ほんとにすごく面倒見がいいよなぁ。

 そりゃ後輩にも慕われるわけだ。

 

 どういう経緯でこんな信仰に傾倒したかは知らないが、なんともやりきれん気持ちになる。

 

 というか奥の部屋に接待ルームがあるのが見えるんだが。

 ハスターの瞳で覗いたら中には人肉料理が並べられているし、まさかこれ俺用に用意したやつじゃないよな?

 誤解が過ぎるぞ???

 

 全身から冷や汗を垂らしてゾッとする。

 食わされそうになったら暴れようそうしよう。

 

 間も無く、軽い壇上での挨拶が終わると、歓談の時間が始まる。

 

 コナン君が動き出すのもこのタイミングだ。

 彼は人混みに紛れ、トイレに行くふりをして部屋を後にした。

 俺がいなくなると目立ち過ぎるから、地下空間の探索はコナン君に任せているのだ。

 コナン君ならどっかに入り込んだとして、側から見て何の違和感もないからな。

 

 地下へ繋がる場所を探すべく、魔術探査を有効にしてこっそり駆けていくいく。

 ポッケに入り込んだ星の精もやる気満々のやうだ。

 買い与えたガラケーで写真撮影の補助をしてくれるので、証拠集めはこれで十分だろう。

 

 その間にも、自然な雑談を装って役員達が頻繁に俺にモーションをかけてくる。

 

 遅れて会場に到着した園子ちゃんが、俺の姿に気づいて駆け寄って来た。

 珍しく髪をウェーブさせて、オシャレに決まった姿は京極さんも惚れなおしそう。

 

 園子ちゃんがこそっと俺に耳打ちした。

 

「ねえ、この会社もしかして怪異に関連があったりするわけ?」

「!そうだけど、どうして分かったんだ?」

「黄衣さん、怪異の絡む事件で警察に協力してるすごい重鎮でしょ。もし危険なら蘭に知らせなきゃ、と思って」

 

 情報元は鈴木会長のぼんやりとした証言とかになるだろうか。

 俺が空を跨ぐ神なのはトップシークレットだから、対外的にはそのように俺の立場を誤魔化しても不自然ではない。

 

 俺は頷いて少し微笑んで見せた。

 

「危険なのは間違いない。この場は危険じゃないけど、この会社は危険だな」

「そっか。蘭とおじさまにも言っておかないと。出資の予定もあったみたいだけど、それはお父様に報告ね」

「なるほど、出資はまずい。流石、園子ちゃんは目端が利くなぁ」

「えへへ。真さんが武の道を極められるように、アタシがしっかりしないとと思っただけ」

 

 俺が褒め称えると、園子ちゃんはVサインで応えた。

 この子もすごく優秀な子なんだよなぁ。

 INT(知性)やEDU(教養)によらない、人間的コミュニケーションや勢力図の妙を極めている人というか。

 

 お、早くもコナン君が地下通路を発見したようだ。

 少し咳き込みながら俺に連絡を入れて来てくれる。

 

『無事目的地に入り込めたよ。これから撮影に移る』

「了解、データは逐次降谷さんに送ってくれ。それと、どこに入り口があったんだ?」

『僕は換気設備の中を通ってるから大人は通れないけど、正規で行くなら70階から直通のエレベーターがあると思う。認証が必要で僕は入れなかったけどね』

「なるほど。無理しないようにな」

 

 あちらはあちらで順調そうだ。

 「ああ待って星の精、配管は、配管の写真はそんなに撮らなくていいから」というコナン君の言葉を最後に通信が途切れる。

 可愛いのぉ。

 

 その次は、壇上に上がった司会者を中心にちょっとした余興の時間だ。

 

 時計を見ずに60秒を測るというチャレンジタイム。

 実に平和だが、そのあたりで俺への呼び出しが入った。

 

 重役さん達が近づいて来て「貴方様と是非お話しさせていただきたい」というお誘いだ。

 俺は頷き、その提案を受け入れる。

 

 重役の一人に先導される形で別室へ案内されていく。

 

 シンプルであったはずの部屋は、一面赤く人の血で紋様が描かれて、むせ返るような臭気を漂わせていた。

 

 品のいい調度品。スーツ姿の男性達。

 フォーマルな装いの中、部屋の中央に乗せられているのは人肉を使った料理の数々だ。

 

 見た目は豪勢な中華料理に見える。

 一ミリも食べたくないが、コナン君から目を逸らす機会を無駄にはしたくない。

 

 俺を待っていたのは代表の重役三名で、リーダーと思しき男がニコニコと口を開いた。

 

「このような少人数でのお出迎えになり誠に申し訳ございません。きちんと貴方様の人への擬態が疑問に思われませぬよう、細心の注意を払わせていただきました」

「………俺になんのご用で?」

「我々の信仰をお受け取りください。ささ、こちらは我らが貴方様のために用意いたしました特別な珍品です。どうぞお楽しみくださいませ」

 

 男の頬は紅潮し、明らかに震えている。

 俺を前に緊張と高揚を必死で抑えているのだろう。

 

 そっと、美味しそうにみえる料理の数々を見下ろした。

 しばしハスターの瞳で料理の中身を確認する。

 

「……子供の肉を使ったんだな。日本人だな」

「!はい、やはり肉の厳選から必要だと、我が社でも協議いたしました。ちょうど、社長に年頃の子がおりましたので、健康状態にも問題なく、質としても最上級かと!」

「これは…そうか。本人からの希望だったんだな」

「はい。神と合一する名誉に咽び泣いておりました。まさに誰もが羨む幸運でありましょう。神と肉となれるなど、できるなら私がなりたいほどですとも!」

 

 にこやかに言う重役の男の言葉に、嘘や虚飾の類は微塵もないことが理解できた。

 

 今ここで「俺の贄になれ」と言えば、喜んで贄となるだろう。

 そのような信仰であったし、狂気であった。

 

 この子供もまた狂気の教育の中で育ち、そのような価値観を形成するに至った。

 それは間違いなく、俺の罪でもあるのだ。

 

 俺は太い触手をぬるりと取り出し、その縦に裂けた口を大きく開いた。

 重鎮たちは「おお!」と熱狂を孕んだ瞳で固唾を飲んで見守る。

 

 一口。それだけで料理の全てを盛り付けた皿ごと平らげる。

 ここで料理を固辞するのは簡単だ。

 だが……。

 どこへも行けなかった犠牲を、俺は許容できそうにない。

 

 人間の知恵と技術がふんだんにあしらわれた料理は、濃密なソースと旨みが引き立ち味わい豊かだった。

 まるで普通の高級レストランの料理のように、俺の口に馴染んでいく。

 

 のちに墓に入れられるよう、分解せず肉だけを亜空間に隔離しておく。

 全てが全て胸糞悪い。これだから狂信者は嫌いなんだ。

 

 俺はその全てを味わった上で、心の底からの独白を漏らした。

 

「俺、人間に愛を注いでるつもりなんだけどな」

「……?御身の愛は我々が理解しております。このように地上に降り立ち、羽虫でしかない我々の下賎なパーティにお越しくださった。それだけで、我々は歓喜に打ち震える思いです!」

 

 熱狂を灯して重役さんが早口に言い募る。

 ため息とともに、俺は目を伏せた。

 

 食用肉を大事に育ててるわけじゃないのに。

 こんなに言葉を尽くして、手を尽くして幸せに生きてほしいと願っているのに。

 存在規模の違いは人の理性を奪い、狂気をもたらす。

 

 

 

 瞬間。

 向こうの部屋で絶叫が響き渡った。

 予想外のことに重役たちが腰を上げて狼狽える。

 ノックと共に素早く入ってきた社員が、「大変です!社長が、な、亡くなっています!!!」と叫んだ。

 

 俺は彼らの制止も待たずに走り出した。

 

 ホールでは、舞台中央に大きな大きな富士山の絵がお披露目されていた。

 そしてその前に、真珠のネックレスで首を吊られた社長の変わり果てた姿があったのだった。

 既に魂はそこにない。死んでいるのだ。

 

 壇の下には絞殺にあり得るはずのない不自然な血溜まりが作られていた。

 まるで地下のそれを暗示するように、血溜まりに輸血用の血液の空パックが捨てられている。

 

 なるほど、被害者の血ではない、と暗示したかったのか。

 俺は毛利探偵に走り寄った。

 

「毛利探偵ッ!」

「なにやってる!そこ!機器の操作で常磐君を降ろせ!黄衣君はこの間に警部を呼べ!事件だ!」

「っ、わかった!」

 

 俺は110番通報すると同時に、コナン君に緊急連絡した。

 

『一旦戻ってきてくれ!TOKIWAの社長が殺された!』

『な……分かった!僕の方も収穫は終えたしすぐそっちへ行くよ!』

 

 社長の遺体を下ろした毛利探偵が、その息がないのを確認して肩を下ろした。

 真珠のネックレスにはピアノ線が結ばれていて、首を吊られる仕組みになっていたのだ。

 舞台袖にお猪口が割られないまま落ちている。

 

 日本画の巨匠が、死体で割られた己の作品を見上げてただ目を伏せていたのが気がかりだった。

 





・日本画の巨匠
連続殺人事件の犯人。
富士山のよく見える景色を楽しみに、よく家へ遊びに来る15歳の孫娘がいた。
家へ向かう途中、友人と共に誘拐にあったらしく行方不明。
降谷さんの持つ資料にも顔写真が載ってる。
復讐系探索者かも。

・株式会社TOKIWA
狂信者の作ったソフトウェア会社。AIスタートアップとかを目指す。
有望日本企業ということで鈴木財閥が支援の手を入れようとしていたが、おそらくこのたびストップする。
人間を生贄にして捧げようとしてることを除けば、本当に企業としては有力。
優秀な国産AIを作り出したことだろう。
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