ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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アトラック=ナチャ

 

 国際会議を終えて、へとへとで帰宅した俺である。

 翌日もまだ疲れが抜けきらず、ぐでんぐでんの状態でなんとか仕事を処理している。

 

 でも進捗は遅々たるもので、俺は長い長い母音を吐きながら机にうつ伏せに倒れ込んだ。

 

 ぐてっと垂れハスターになっていると、コナン君が「大丈夫?なんか溶けてるよ?」と声をかけてくれた。

 実際俺の姿は物理的に溶けていた。夏場のアイスクリームの如し。

 それもまた仕方のないことだ。

 

 俺は無造作にコナン君を抱き抱えてメソメソした。

 

「コナン君……国際社会怖い……」

「はいはい、分かってたことでしょ。僕の分の仕事出して。仕分けできた分から進めとくから」

「薄情者ぉぉ。ニャルを召喚してやる!」

「やめて。星の精がぴいぴい泣くから」

 

 ニャル、の単語を聞いて、部屋の隅で宿題をしていた星の精がやや身構えた。

 コナン君に配布されたカタカナの練習プリントへ熱心に取り組んでいたらしい。

 

 いい星の精だ。ヨシヨシして皿に血液パイを入れておやつとして出してやる。

 星の精は満面の笑みを作って「ゲタッ!」と言って血液パイに飛びついた。

 夜ご飯前に食べすぎないようにな。

 

 コナン君が少し息をついてから口を開く。

 

「けど国際会議で何があったの?降谷さんがついてるから早々変なことをは起きないと思うんだけど」

「クローズドな会議は特に問題なかったんだよ。問題は記者質問の方」

 

 本当に、本当の本当に大変だった。

 

 神っぽい感じで赴いた俺に、各国の記者達からは質問が殺到した。

 降谷さんがカバーしているから変なのは捌いてくれるが、記者さんもいるしカメラも回ってるし。

 ポンを出さないように細心の注意を払う必要があった。

 

 でも、記者の種類によっては俺に攻撃的であった。

 厳かな雰囲気を壊さないようにするのは細心の注意が必要だったのだ。

 

「あーーー。何が『その服はどこで仕入れたのですか?オーダーメイドですか?』だよ。俺のことバリバリに疑った半笑いしやがって。俺製だよハンドメイドだよ服まで自作の神ですけど何か!?」

「ハハハ、お疲れ様。紅茶いる?」

「いる……」

 

 俺は溶けかけのまま紅茶を受け取って啜った。

 今日はマモーさんはお休みである。

 本国に呼び出されたらしく、めちゃくちゃぶつくさ言いながら帰国して行った。

 例の会議の件で話があるのだろう。

 

 はぁぁあ。政治は嫌いじゃ。

 人間はどうして神に嘘をつくのか。敬意を持たないのか。

 疑問は尽きない。

 

 と、まったりとした時間に現れる唐突なニャルである。

 

「そんな時こそ這いよる混沌の出番ですよ!!!」

 

 バァン!!!と空間を扉状に切り取ってニャルラトホテプがダイナミックエントリー。

 空間が歪んでわけわかんないことになっているので、素早く修復してからニャルを隣の定位置に座らせる。

 

 俺はニャルを抱きしめて、再び大きなため息をついた。

 そのままニャルの触手を引っ張り出して、俺の触手にあるでかい口でガジガジと齧る。

 ウザ絡みだ。

 

 くっそぉタコみたいな触手しやがって醤油が合いそう!

 

 ニャルは真っ赤になって挙動不審になった。

 「ここここんなところで大胆すぎませんか我が夫!?!?」とどもりながら逃げ出そうとしている。

 よくわからんが満更でもなさそうだ。

 

 触手の先っぽを引っ張ったりしながらガジガジを続ければ、ニャルは目を回して動かなくなった。

 なんでや。何が嫌だったんや。

 

 

「なんだこの状況。僕たちは出直した方がいいのか?」

「あ、降谷さん達よっすよっす。別に何もないからどうぞ」

 

 そんな中に現れたのは、諸伏さんと降谷さんの二人組だ。

 資料を片手に来ているあたり、仕事の依頼だろう。

 

 二人は機能停止してるニャルを三度見して慄いている。

 俺は気にせずニャルをもぐもぐしつつ、ソファに座って話を聞く体勢に入った。

 

 降谷さん達もソファに腰掛け、机上に資料を広げて口を開く。

 

「鳥取の武田という家で、二日前不審死が起きた。それについて話を聞きたくてな」

「あー、旧危険度10(最大)の『蜘蛛に通じる巣穴』か」

 

 降谷さんは深刻な顔で頷いて、「すでに公安で死者が出ている。かなり危険な状態だ」と眉間に皺を寄せた。

 

 管理番号Z122-8L「蜘蛛に通じる巣穴」。

 これは旧支配者アトラック=ナチャに続く蜘蛛の巣穴があることを示している。

 コナン君がとことこと俺の隣に座って、宿題を終えた星の精を膝の上に乗せた。

 その反対側でニャルは固まったまま大人しく俺にガジガジされている。

 

 降谷さんが咳払いした。

 

「アトラック=ナチャというものについて詳しい情報が欲しい。話を聞かせてもらえるか」

「なるほど、了解。奴は危険だし当然の判断だな」

 

 旧支配者アトラック=ナチャ。

 複数次元に渡って巣を張る巨大蜘蛛だ。

 大きさは旧支配者としては非常に小ぶり。

 ずっと深淵で巣を張ることに注力しているワーカーホリックでもある。

 

 前に俺が喧嘩売って巣をめちゃくちゃにした時はバチギレされて2000年ぐらい殴り合いになった。

 俺が勝ったが、それ以来大層根に持たれて近付くだけで死ぬほど嫌味言われる。

 凄まじく嫌われているが、蜘蛛糸布の融通を依頼するときちんと納品してくれる。

 

 仕事に真摯というか、本当にようわからん奴なのである。

 趣味も仕事も巣の建設。この宇宙誕生からずっとやってるライフワークである。

 

「なんで巣を張ってるのかは知らん。人間は巣が完成すると世界が終わるとか変な噂流してるけどな。本人曰く生き甲斐らしいし、芸術家かもしれん」

「なるほど。危険はないのか?」

「アトラック=ナチャ本人は安全。人間にかかずらったりしない。でもその奉仕種族はバリバリ人間食う」

 

 本人は人間が迷い込んでも仕事の邪魔をしない限り無視だろう。

 でもその奉仕種族たるレンの蜘蛛は凶暴で人間を食うし、アトラック=ナチャの娘も同様に犠牲者の脳を貪り食う。

 

 俺はふむ、と考え込んで背中をソファに預けた。

 

「一応地球にアトラック=ナチャの蜘蛛糸を引っ掛けることは許可してる。けど、奉仕種族の侵入は許してない」

『……つまり、相手方が約束を破って奉仕種族を放ってきたってことか?』

 

 諸伏さんが緊張した面持ちで問いかけてくる。

 俺はうーん、と腕を組んで悩んだ。

 

「アトラック=ナチャがあえて俺と事を構えるとは思えない。おそらく一部の奉仕種族の教育不行届だろうな」

「旧支配者自体に、地球侵略の意図はないと?」

「ああ。あいつ巣作りにしか興味ないし。地球側に出てきた奴を処して、アトラック=ナチャは俺らでタコ殴りにすればいい」

 

 アトラック=ナチャに蜘蛛糸を引っ掛けることを許可しているのは、俺としても苦渋の決断だった。

 奴は巣の建設にかかりきりだから、部下の管理なんてあんまりしないだろうし。

 だが逆に言えば、部下を処しても本人を処してもあんまり何も言わないと言う事だ。

 

 今までも時々奉仕種族の蜘蛛が悪さをしたが、その度に潰してアトラック=ナチャ本人を処してきたし。

 巣さえ壊さなければ、殴ってもブツブツ言って態度をちょっと改めるだけだ。

 巣の建設を邪魔するのに比べればローコストである。

 

 諸伏さんが「勝手に向こうの部下を処していいのか?」と不安そうに言うので、俺はちょっとだけ笑った。

 

「普通、旧支配者にとって奉仕種族なんて家の埃と似たようなものだよ。俺は人間やビヤーキー殺されたら怒り狂うけど、そんなのごく少数派だしな」

「人間は君の奉仕種族扱いでいいのか…?」

「俺が人間の奉仕種族説はある。猫奴隷です。なんでもします」

 

 俺はうむうむと頷いた。

 若干動きが戻ってきたニャルが、「は?我が夫が人間の奉仕種族とかありえないんですけど。羽虫のくせに生意気すぎる」とブツブツ文句を言っている。

 

 変な茶々を入れられると困るので、ニャルの触手をもう数本引き摺り出してたくさんガジガジした。

 ニャルは再びカチンコチンに硬直した。

 

 コナン君が心配そうに俺を見上げる。

 

「どうするの?被害者が出てるってことはまず現場?」

「そうだな。明日現場に確認に行こう。今確認した感じはアトラック=ナチャの娘がいるっぽいし。娘を増やされる前に討伐しよう」

 

 アトラック=ナチャの娘は元は別の通常の生物だ。

 それが特殊な毒蜘蛛に噛まれることで変化し、アトラック=ナチャの娘に羽化するのだ。

 

 公安の人員を喰らったのも、そうして生まれた元人間の娘だろう。

 

 全く碌でもない。

 本当は根こそぎ滅ぼしてやりたいくらいだ。

 人間を人外に変えて巣の建設の労働者にするなんて、ボコボコにしたぐらいで足りるはずがない。

 

 でも、あの蜘蛛の事業は白痴の魔王アザトースからの委託の可能性があるから、できる限り邪魔はしたくない。

 

 俺は大きくため息をつき、未だ固まったままのニャルをヨシヨシしたのだった。

 





・アトラック=ナチャ
人間誕生のちょっと後ぐらいから2000年、バチギレでハスターと殴り合った経歴あり。
ちなみにハスター側も人間を蜘蛛に変えられてバチギレだった。
今は和解(?)して蜘蛛糸の取引とかしてる。

・カチコチニャル
外なる神の作法では、融合しつつお互いの体を貪り合うのが営みである。
つまりハスターの触手甘噛みは超絶えっちて色っぽいモーションになる。
ハスターが醤油合いそうとか思ってても、ニャルにとってはセクハラ通り越えてベッドインでしかない。
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