ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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異次元の狙撃手〈幕間の平穏〉

 

 翌日。

 コナン君は今日から三日ほど少年探偵団と一緒に阿笠邸にお泊まり会だ。

 

 俺が阿笠邸に送っていくと、いつもの少年探偵団が博士の発明品で遊んでいた。

 

 二足歩行ロボットのラジコンだ。

 それと新品の探偵バッジ。

 探偵バッジは小学生のハードユースにあっという間に壊れ、少年探偵団はがっかりしているようだ。

 

「変形しねーのかよ!飛行機になるとかかっけーのに!」

「この新しいバッジ光るだけ…?歩美がっかり…」

「博士ー!アンテナ部分が壊れちゃいました!」

 

 博士はぐぬぬぬぬ、と名誉挽回に燃えている。

 

 ロボットは二足歩行で、子供達ぐらいの背の高さの小型のものだ。

 メカメカしい見た目に反して非常に表情が豊かで、動きも生き生きとしている。

 「子供の遊び相手」として作ったのだ思われる。

 少し触れば、子供が怪我をしないよう信じられないほど柔らかく、軽く作られていた。

 

 元太君が唇を尖らせて文句を言っている。

 

「博士が作ってくれたんだけどよ、やっぱ飛行機に変形した方がカッケーと思うんだよな」

「でもプロペラを出して空を飛べてましたよ?」

「変形がカッケーんだろ!」

「それはそうですけど…難しいんじゃないですか」

 

 光彦君のもっともな言葉に、燃え盛ったのは阿笠博士の方であった。

 きっと次は空中で変形させる。

 そんな執念を感じさせる瞳だった。

 

 まあ、とはいえ。

 異常な体幹を持つ二足歩行ロボットでも、石を乗り越え木に登らされ元太君と追いかけっこして追突されれば転けるぐらいする。

 ジャンプした瞬間飛行機に化けるぐらいしなければ、目の肥えた少年探偵団ウケはしないだろう。

 

 次はあゆみちゃんにバッジを見せてもらう。

 

「これだよ!さっき光彦君がぶつけて壊しちゃって」

「うう…アンテナの部分を出しっぱなしにしてたのを忘れてました」

 

 俺は「こりゃすごい」と思わず息を呑んだ。

 

 バッジはどうやら近くの害ある魔術を感知して光で警告を発するものらしい。

 「害ある」なんてファジーな概念をどうやってこんな小さな物体にプログラムしたのか。

 謎は尽きないが、見た感じ感知した魔術に干渉する技術を用いている模様。

 科学魔術ってすげー。それしか言葉が出てこない。

 

 それでも、立体映像もなしに光るだけとなると、子供を喜ばせるのは足りないだろう。

 そして尻ポケットに入れたまま転けて這いずって尻に敷いて砂と一緒に擦られてという超ハードユースに耐えられなくてはならない。

 

 志保ちゃんがクールに言い切った。

 

「私たちもまだまだってことね。素材の改良とソフトウェアは協力するわ」

「とほほ……わしの『頑張るロボット君』なのに……」

 

 悲しんでいるところに、コナン君がじろっとロボット君を睨みつけて口を開く。

 ロボット君は笑顔になってパタパタと手を振った。

 

「博士ぇ。もしかして魔術使ってる?」

「もちろん子供達の使うものじゃし科学技術だけじゃよ!まあバッジの危険魔術感知はちろっとだけ魔術科学技術を使っとるがの」

「私も見てたけど、ロボットに関しては今のところ普通の科学よ。安心して頂戴」

 

 なんでプロペラ飛行する感情豊かな二足歩行ロボが科学で作られてるんですかね。

 

 コナン君は「ならいいか。博士の発明ポンコツだしな」と頷いて納得した。

 認識改変の魔術を受けてらっしゃる?

 

 星の精は素早くオウムへと化けてバタバタとロボット君の肩に留まったようだ。

 中に人が入ってるレベルで滑らかな動きをしたロボット君が、驚いた様子で頭を傾げて留まりやすいようにした。

 

「ほしのせーも!ほしのせーも遊ぶ!」

「あ!星の精ちゃんだ!星の精ちゃんの分のバッジもあるって!こっちこっち!」

「このロボたのしーぜ!空の追いかけっこできるぞ!空の追いかけっこ!」

「いいですね!夜は花火の予定ですし、星の精も持ちやすいように持ち手の短いやつをより分けましょう!」

 

 すっかり受け入れられているらしい。

 星のオウムは瞳を煌めかせて「ともだち!たくさん!!!」とバタバタ騒ぎ出した。

 

 あとはお邪魔でしかないので、コナン君を置いて帰ることとする。

 どうやら少年探偵団で一緒に自由研究と自由工作もするみたいだし、阿笠邸はピッタリだろう。

 

 怖ぇな、志保ちゃんの自由研究。

 気軽に最新の論文がお出しされそうで。

 

 俺が外へ出たあたりで、スマホに着信が入る。

 降谷さんからだ。

 スマホを取り出して通話ボタンを押す。

 

「はーい。黄衣です」

『ティモシー・ハンターの交友関係を洗った。一応情報共有しておく』

「了解。助かるよ」

 

 三人ほど、ハンターが頼るかもしれない共犯候補が上がっているらしい。

 温度感に差はあるが、特にマーク・スペンサーという人物はかなりの遺憾の意を表明したようだ。

 

 横須賀基地の元司令官で、階級は少将。お偉いさんだ。

 以前、米軍基地はカルコサ新党に乗っ取られて醜態を晒したばかり。

 これ以上の問題を起こしたくない状況でのこれに、やはり苛立ってはいたらしい。

 

『それと、おそらくマーク・スペンサーは黄色の印の兄弟団の信徒だ』

「まじか。いや、ならいざという時は俺が出ればスムーズに情報取得が可能だな」

『アメリカの要人の兄弟団率は凄まじいな。流石、陰謀論のネタ元になるわけだ』

 

 降谷さんが肩をすくめる気配がする。

 そりゃ兄弟団はアメリカの金持ち互助会だしな。

 上流階級の嗜みみたいなものであったわけで。

 

「一般的には基督教の方が俺の色が濃いからな。ハイパーボリアを神の楽園と同一視しているし、俺は唯一神だし」

『君が唯一神なのは割と世も末だな…いやかなりガチに唯一神ではあるが』

「世界を創造したのは俺じゃないぞー」

『人を生み出したのは6日目か?』

「いや日数とか覚えてないわ。製造時間は3秒ぐらい。基盤は出来上がってたしDNA弄るだけだしな」

『もっと丁寧に作らないからこんなんになったんだぞ。責任取ってくれ』

 

 軽く冗談を言い合ってから話を切る。

 

「ともかく、何か必要があったら連絡してくれ。俺もニャルを抑えておく」

『頼んだ。僕の名誉が修復不可能なまでに傷つくことがないようにしてくれ』

「多分大丈夫。場合によっては新しい顔を作って頑張って欲しい」

『勘弁してくれ本当に』

 

 軽口を叩きつつ電話を切る。

 

 事務所に帰ると、ニャルが一人でPCに向かって大人しくしていた。

 勝手に事務所内にゲーミングブースを作って高そうな椅子に座って最新ゲームをしている。

 

 まだ降谷さん形態のようだ。

 画面を見れば、某有名2D工場建設ゲームであった。

 ニャルにこういう理路整然としたゲームは向いてないと思うのだが……と、思ったのも束の間。

 飽きて放り投げてニャルは椅子ごとぐるぐる回り始めた。

 高速回転している。

 

 そうはならんやろ。

 

「ニャールー。そろそろ女性型に戻らないのか?」

「うーん。あの形飽きたんですよねぇ。今新しい形を考えてます。我が夫は羽虫が言うナイスバディが好きですよね。狐耳も搭載するとして」

「やめてね。俺が爆裂死してしまう。あと顔面変更は社会制度上混乱するのでなるべく同じ方向で頼む」

「えぇーー。飽きたぁ。飽きたぁ」

 

 ニャルはやだやだ期に入ってしまったようだ。

 きっとコナン君は今頃少年探偵団達の統制でかかり切りになっているだろう。

 俺も頑張らねば。

 ああ、面倒臭くなったからってのっぺらぼうにならないで!せめて顔は作って!

 

 そんなふうにニャルと戦うこと一晩。

 

 新たな被害者が出たのである。

 いやニャル被害じゃなく、普通に狙撃事件で。

 





・頑張るロボット君
純粋な科学技術のみで作られた、非常に軽く丈夫な二足歩行ロボット。
非常用電源にもなる大容量バッテリーを積んでいるのに、子供でも持ち上げられるほどの重さしかない。
純粋な科学技術……?

・マークスペンサー
元横須賀基地司令官にして少将。
日本に神が降臨している話はすでにニュース等で知っているので、礼拝は欠かしていない。

・アメリカ式ハスター信仰
基督教と合流して、十字架に祈る形式。
唯一神をハスターと同一視して、良き人間は死後ハスターの元にいくと信じられている。
人類創造の経緯も楽園の話も割と事実寄りなので、仏教より噛み合わせは良かったりする。
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