ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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異次元の狙撃手〈米国海軍の動向〉

 

 マーク・スペンサー元海軍少将が、目の前で姿勢を正して座っている。

 

 ここは非公式に用意された会議室で、政府によって厳に秘されている会合場所でもある。

 現合衆国海軍長官もその隣にいて、慎重にこちらの出方を伺っているようだ。

 

 対するは俺の口としての役割を果たす降谷さん、そして神たる俺である。

 

 今回の件を受けて海軍長官はわざわざ日本にやってきたのだ。

 まさに神のお膝元、当事者として元SEALsが騒ぎを起こした可能性が高いと知って、米国本部は揺れている。

 その上「俺ことハスターも事件に巻き込まれた」とその筋を通して伝えられ。

 

 現在緊急の会合が開かれたわけである。

 

 二人は会議冒頭揃って謝罪した。

 これは非公式の場だからこそ下げられる頭だと思われる。

 

 席についてからも、黒い風を纏わせて俺の使者として正式な姿をした降谷さんに慄いている。

 マーク・スペンサー元少将がおずおずと口を開いた。

 

「このような場ですが、神を拝見できることを光栄に思います」

「なるべくなら、何事もなく世が回っている時期にゆっくりお話ししたいものです」

「!ええ、よろしければ是非とも」

 

 お、降谷さんが交流フックを差し入れたぞ。

 

 最近、日本第一主義を隠して外交の場に出るのが上手くなったんだよな。

 その内心がどうかは知らんが、在日米軍の裏のまとめ役との繋がりはあって困るものではない。

 

 今回の件で急遽来日した海軍長官か、立ち上る黒い風のモヤに怯えながら視線を揺らした。

 

「ところで、本当なのですか?今回の事件はあのティモシー・ハンター首謀のもと、その弟子が行なっているというのは」

「ええ。我が神の『瞳』にて確認したことです。とはいえ、神が人の司法にみだりに介入するのは憚られるため、口外しないようお願いします」

 

 降谷さんがチラリと俺に目を向ければ、米国からの客二名が息を呑んだようだった。

 

 今の俺は白いローブ姿だ。

 奥の席で足を組み、尊大に投げ出した触手をうねらせるハイパーボリア神モード。

 ようは、これは神前の話だと強調するための置物である。

 

 降谷さんは俺の代弁者とする扱いになる。

 旧支配者ハスターたる神体は、氷のようなかんばせのまま……みたいなイメージ戦略でこのような形をとっている。

 喋ることも表情筋を動かすこともできなくてちょっと辛いが、それはまあ我慢しよう。

 

 降谷さんが少しだけ顔を緩めて、謳うように宣言した。

 

「その経緯も、思いも、半生も、全て主は見ています。三億年前、人の世に自由を許したのは主なる神であり、それゆえに支配とは常に完璧ならざるもの。あなた達を咎めることはしませんよ」

「それは……いえ。主の御心に感謝いたします」

 

 すごい、降谷さんてばもったいぶった言い方得意すぎる。

 三億年前俺が地球から撤退したのは傷心だったのと、普通にクトゥルフとの戦闘の傷が限界だったからだ。

 「自由を許した」っつか世話しきれなくなって捨てたクソ飼い主である。

 

 すごく俺の格が高くなった感じがして、俺は鼻高々に偉そうなポーズを続けるなどした。

 

 米国軍では俺の軍事力としての研究も進んでいる。

 主にシンガポールでの調査がメインだが、そのタンカーを軽々と巻き上げる風の権能だけで脅威は明らかだろう。

 その全能性はまさに「唯一神たる力」を備えていると言えるわけだ。

 

 信仰がなくとも、神でなくとも、事実として神に足る力を持っている。

 それはある種、本物の唯一神であった方がまだマシな怪物として映るだろう。

 

 つまりめっちゃ怖がられてる。辛いね……。

 

 いくらか話を終えてから、あちらの退出を待って俺たちも息をつく。

 降谷さんが軽く首を回して口を開いた。

 

「疲れたな。だがやっぱり君はそうしているととても賢く厳かに見えていいな」

「俺はいつだって賢く厳かでーす。というか外国嫌いなのに降谷さんよく我慢できたな」

「ここで変に拗らせても面倒なだけだからな。もちろん交渉の鍵にはさせてもらった。まったく、このために外務省と緊急打ち合わせで家に帰れなくなったんだぞ」

 

 降谷さんはポコポコ怒って腕を組んだ。

 彼も三分身して常に仕事だ。

 そう思えば、俺もたまには労わって化身の勤労に報いるべきだろうよ。

 

 俺はポン!と小さな小さな手のひらサイズの寄木細工の箱を具現化。

 降谷さんに放り渡した。

 ひとまず今回の外交対応のねぎらいの品だ。

 

「これ、可能な限り小さくした神棚。バッグに入るサイズの至高の安らぎをご提供します」

「!!……だがこんな小さくて機能は問題ないのか?」

「入ってみてのお楽しみ」

 

 降谷さんが訝しげな顔をしてニュルリと箱の中に入り込む。

 そしてすぐに出てきて、目をキラキラさせて俺を見た。

 

「え、超巨大統合型リゾートが広がってるんだが!?いいのか!?本当に!?」

「おうよ。いつも外交系全部対処してくれてるから。それで疲れを癒してくれ。魔力は無限に俺から落ちてるから飲み食い自由マッサージ無料ジム完備シアター付き、庁舎にも置いておけるよ」

「恩に着る!!!!!」

 

 降谷さんはホクホク顔で大事そうに寄木細工の箱を懐にしまった。

 もう大満足してしまったようだ。

 俺の化身なのに旧神側面が多い人だし、さもありなんか。

 

 酒も浴びるように飲むし。

 呑んでも酔わないので呑むたびにどんどん不機嫌になるが。

 しかし喜びすぎだろ。新幹線初めて乗った星の精よりキラキラしてたぞ。

 

 ふう、と息をついたあたりで、コナン君から念話が届いた。

 

 何やらただならぬ様子で、息を切らしながらの念話だった。

 

『黄衣さん!大変なんだ!世良が撃たれた!』

「な…怪我は!?」

『無い!けど頭が血だらけだ!多分頭蓋骨を貫通して、そのあと魔術で治療されたんだ!』

「ん……なるほど、俺の作ったハートのキーホルダーの効果だ。大和警部から貰ってたみたいだな」

 

 死を一回だけ「無かったこと」にできるキーホルダーだ。

 死んだことで魔術が発動、無傷の状態まで回復したのだろう。

 これだけで無事なことがわかるだろうに、冷静さを失ったコナン君が相変わらず絶望的な声色で言い募る。

 

『世良が目を覚まさないんだ!』

「大丈夫、生きてるよ。脳の再生で気を失ってるだけだ。というか、世良さんが狙われたのか?」

『いや。俺が狙われてるビル・マーフィーさんに防護魔術をかけてたら……世良に……』

 

 庇われた、ということか。

 

 そりゃ、世良さんからしたらコナン君が戦艦だなんて知る由もないことだ。

 体を張って助けようとしたっておかしくはない。

 そのせいで、より柔らかい人が撃たれることになるとは。

 

 コナン君にしては迂闊だったか。

 いや、どうやら世良さんとは全く偶然行き合ったようだし、コナン君がそれを察知していなくても仕方ない。

 なんにせよ、世良さんが無事だったのら本当に幸運で、それは大和警部のおかげということだ。

 

 後で大和警部には菓子折りを送っておかなければ。

 

「念のため俺もそっちへ向かう。ビル・マーフィーさんは無事か?」

『マーフィーさんは無事だよ。死亡したように見せかけたから』

「犯人はもう撤退したみたいだし、問題ないな。すぐいくよ」

 

 念話を切って顔を上げる。

 険しい顔をした降谷さんに「何があった?」と聞かれた。

 

「世良さんが犯人に撃たれて1アウト。被害者は守り切ったみたい」

「君の守りがあったのは不幸中の幸いか」

「本当は簡易加護のついてる俺のブレスレットも配ってるんだけど、みんな着けてくれないんだよなぁ」

 

 やっぱり普段使いするにはアクセサリーは取り回しが悪いか、としょぼくれつつ。

 俺はハスターの瞳を奔らせた。

 狙撃地点に残されたサイコロを確認、そこから時間軸を遡って経緯を確認する。

 

 コナン君を狙うとは、まっこと気に食わない犯人であることよ。

 

 降谷さんが素早く目を三角にして俺を睨んだ。

 

「君、触手から暗黒の波動が出てるぞ。あと僕の心がイガイガするからやめてくれ」

「犯人がコナン君撃ってきた。世良さんも撃たれた。許せへん。神罰神罰!」

「まったく。着替えて僕らも行くんだろう。しゃんとしてくれ」

 

 全くダメな神扱いされてモゴモゴ文句言いつつ、俺達は控え室に向かったのであった。

 





・ニャルダックス君
暇なので散歩してる。
足が短くて鬱陶しいので人の体にダックス頭だけ付けてウロチョロ。
妖怪ダックス男として都市伝説になった。

・世良さん
推理を元に動いている最中、偶然コナン君にレーザーサイトが当たってるのを見て身を投げた。
狙われたら防護魔術で弾くつもりだったコナン君は愕然。
星の精と一緒に叫び声をあげてた。
不幸な行き違いだった。

・大和警部
突如怪異品詰め合わせセットが届く。
ハスター印の高品質。
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