ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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訪問予定

 

 帰ったら、ニャルダックス君がボーダーニャルーになっていた。

 

 犬種をボーダーコリーに変えたらしい。

 意味わからんが賢そうで可愛いのは間違いない。

 

 だが買ってあったトイレットペーパーを食い荒らし、高級な革張りソファを破って中に入り込んでワタを出す所業は許しがたい。

 戸棚を勝手に開けて、俺が買った人用お菓子も食った。

 

 しかも先住犬のテュフォン君と唸り合って、ソファに空いた穴の支配権を取り合っている。

 喧嘩すんなし。

 

「おうニャル、表出ろよ」

「あっ、お帰りなさい我が夫!ここ、この窪みいい感じですよ!」

「そうか。お前今日から外で野宿な」

「なんで!?!?」

 

 ボーダーニャルーはショックを受けて尻尾をぺたんと下げた。

 

 可愛いが、家破壊は許されざるよ。

 テュフォン君を見ろよ、普段ニャル部屋から出ずに大人しくやってるのに。

 

 喚くニャルーをわしゃわしゃすると、テュフォン君は「フンッ」と鼻を鳴らして去っていった。

 どうやら家破壊を目論むニャルーを止めてくれていたようだ。

 賢い……ニャルーより賢い……。

 

 荒れ果てた家を修復しておおかた元通りに直した後、ブスくれるニャルーをソファの上に置き直した。

 菓子だけは諦めた。

 ニャルーの口から出すこともできるが、そんなん食べたくないしな。

 

 

 ボーダーニャルーのイタズラを片付けて一息ついて、ようやく家人がいないことに気づく。

 

 どうやら諸伏さんは泊まりの仕事でまだ帰ってきてはいないようだ。

 まあFBIがドンパチしたし、米国海軍はこっちを凝視してるし。

 「黒い風課」とも呼べる諸伏さんの仕事は山積みなのは間違いない。

 

 コナン君の方は……おお、今帰ってきたようだ。

 

 玄関が開く音がして、「ただいまー」とコナン君の声が響いた。

 俺もコナン君と星の精の帰還を歓迎する。

 

 コナン君は入ってすぐに視線がニャル犬に吸い込まれたようだ。

 

「なんかニャルさん犬種変わってない?」

「!!羽虫は賢いですね。微生物の多少の見た目の違いにすぐ気がつくとは。流石、我が夫が目をかけているだけはあります」

「犬の見た目は誰でもわかるよ……」

 

 コナン君のツッコミに気にした様子もなく「この毛並みいいでしょう?撫でていいですよ」と俺の前でゴロンとお腹を見せた。

 可愛いくてとても悪いニャルだ。

 

 俺はめちゃくちゃボーダーニャルーを撫でながらコナン君に問いかけた。

 

「というか、なんか星の精が萎んでカピカピになってないか?なんかあった?」

「迷子になって泣いてびちょびちょになっちゃって。僕がハンカチで拭いたんだけど萎んじゃったの」

【クス……】

「萎むほど泣くんか……水分補給しような」

 

 俺が薄めの血をボトルに詰めて渡してやると、星の精は「クス」と元気なさげに一気飲みした。

 星の精に瞳は無いが、全身から汗を出す形で泣くからな。

 そんな干物みたいになっちゃって、まったくもう。

 

 俺はごくごく血にありつく星の精を見ながら口を開いた。

 

「そういえばさ、明日多分飛び込みで依頼人が来るんだけど、最速で受けたいからコナン君学校って休める?」

「え?いいけど……珍しいね、黄衣さんが大っぴらに未来を見るなんて」

 

 ただ事ではないと察したのか、コナン君が瞬いて顔を引き締めた。

 

 ボーダーニャルーがまた飽きたのか、ニャル柴に変化した。

 柴犬も可愛いな。人間の方がいいけど。

 星の精が恐る恐るニャル柴を覗き込んで慄いている。

 

 俺は頷いて、TVをつけてからソファに腰を下ろす。

 

「なんか正式に地球に父上が来るっぽくてさぁ。準備しときたいんだよね」

「………」

 

 長い沈黙に阻まれて、場の空気は冷え込んだ。

 コナン君が生唾を飲んでから、慎重に俺を見上げている。

 ニャル柴は面白くなさそうにフンッと鼻を鳴らしたようだ。

 

「それって前来てニャルさんを一撃で粉砕したって言う、虹色の泡みたいなの?」

「粉砕されてません。ちょっと油断しただけです」

「ニャルどうどう。そう。実は結婚式場にも飾ってあったよ。親族席に生花を偽装してさ」

「あ!あの泡立つ花瓶!え、あんなことして怒らないんだ!?」

「俺の父上おおらかなんだ。俺には」

 

 ニャル相手にはすぐにキレるが。

 いや、冷静に考えたらニャル相手だとみんなすぐキレるから平均値かもしれん。

 俺もヨグケーキとか食わされたしキレても良かったかも。

 

 俺はモゴモゴ言いながらソファに転がった。

 膝から投げ出されたニャル柴がすごく非難してくるので、頭を下げてわしゃわしゃしてから懐に入れて抱きしめる。

 羨ましいのか、星の精がものいいたげにコナン君の手のところに体を引っ付けた。

 

 ニャル柴がどうでも良さそうにゴロゴロ喉を鳴らす。

 それは猫なんだよな。

 

「そもそも、あの副王はいつでも地球に張り付いてますけどね。正式に、というと化身でも寄越すつもりですか?」

「おう。タウィル・アト=ウムルが夢の門から来るっぽくて。俺に通知が来たんだ」

 

 ヨグ=ソトースの化身、タウィル・アト=ウムル。

 窮極の門へと誘う使者にして門番。

 姿はやってくる知性体の形に合わせて変わるが、人間が謁見するのならそれはやや小ぶりな人間に似た姿を取る。

 夢見人の案内人でもあり、理性的で理知的。

 非常に穏やかな化身だ。

 

 元々タウィルさんは知性体にも友好的だからな。

 地球にやってきたとして、そこまで酷いことにならないだろう。

 ローブを剥がなければSAN値チェックも無いし。

 どちらかというと俺が授業参観の形になって落ち着かないと言うべきか。

 

 コナン君が訝しげな顔をして聞いてきた。

 

「ちなみに、ローブが間違って剥がれたらどうなるの?」

「人は魂が溶け落ちて死にます」

「ひえ」

 

 SAN値喪失1D20/1D100。

 まあヨグ=ソトースに謁見するんだから、ローブを羽織ってくれてる分非常に寛大で優しい方であると言えよう。

 

 俺は首を傾げて腕を組んだ。

 

「しかし何のために門を離れてまで来るんだろうな」

「そんなの決まってますよ。我が夫の様子を見にきたんです」

「いやヨグ=ソトースだっていつも地球の様子かぶりつきでみてるじゃん」

「我が夫だってハスターの瞳まで敷いてるのに顕現してるじゃないですか。そっくりですよ」

「………」

 

 そっくりだったらしい。

 つまり父上も人間大好き…?と考えたところで素早くニャルのツッコミが入る。

 

「そんなわけないですね。ただの親バカですね」

「夢を壊すなよ。俺は人間という最高のコンテンツを布教したいんだよ」

「我が夫がいなければ僕も多少はハマってたかもしれないですけど」

 

 おや。珍しい反応だ。

 ポロリと漏れた本音という感じで、目を丸くする俺にニャルはブスッとした様子を見せた。

 

 たしかにニャル自身の性格からして、人間はかなり楽しい揶揄いコンテンツになるとは思っていた。

 それにしては人間のこと嫌いだから何故なのかは長年疑問だったが。

 俺がいるから?わからん。

 

 コナン君がやや躊躇いがち俺に声をかける。

 

「ねぇ黄衣さん、もう降谷さん達には連絡した?」

「え、俺の父上が来るだけだし別に公安に迷惑かけるほどでは」

「連絡しようね!!!!」

 

 俺はコナン君の叫びを受け、慌ててその場で降谷さんに電話することになったのであった。

 





・ニャルの人間嫌い
実は種族としては割と揶揄い甲斐があって好きだが、ハスターの負担になるから嫌いになった。
もしハスターがいなければ、原作通り楽しい羽虫として好奇心を向けてたかも。

・タウィルさん
いそいそ身支度してる。
ローブの形を50回ぐらいチェックした。
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