ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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マウス・オブ・マッドネス見学会!

 

 タウィルさんは今後、執事さんと共に財産整理をして行くことになったようだ。

 

 二年前結婚しただけのぽっと出の男だ。

 親族との争いはドロドロとしたものになることが予想される。

 こちらの進捗は公安でも秘密裏に見張るらしく、何かあったら俺に連絡が飛んでくるとのこと。

 平和に終わるといいのだが。

 

 

 さて、俺達はこれまで通り平和な日々……とはいかず。

 

 俺はというと、いそいそと外出の準備をしていた。

 コナン君がまたトラブルかと若干不安そうに俺を見上げている。

 

「どうしたの黄衣さん、今日出かける予定無かったよね」

「うん。なんか父上が大怪我したって話を聞いたから、お見舞いに行こうと思って」

 

 「え!?」とコナン君が半ば立ち上がりかけた。

 事務作業を手伝ってくれている降谷さんと諸伏さんが、静かに黙ったまま会話を盗み聞きする体勢に入る。

 

「それ本当!?」

「なんかニャルがまた悪さしたみたいでさ。折角だしコナン君も連れてくつもり」

「もう決まってるの!?やだやだやだ行きたいわけないけど!?」

「まあまあ、そう言わずに」

 

 コナン君をしっかりとホールドして捕獲する。

 この際だし、俺のお気に入りだから手出ししないでくださいねと見せつけに行くつもりなのだ。

 

 降谷さんと諸伏さんがナムナム両手を合わせて冥福を祈るポーズになる。

 コナン君が降谷さん達を睨みつけ、俺の腕の中で暴れて喚きだした。

 

「この薄情者!人でなし!」

『幽霊でーす。人間じゃないでーす』

「黒い風だから当然だな。生きて帰ってくるんだぞコナン君」

「あ、降谷さんも化身だし当然俺についてくるんだからな。挨拶回りはしっかりやっとかないと」

「!?!?!?」

 

 降谷さんが驚愕に目を剥いて仰反る。

 諸伏さんがほろりと涙を流してハンカチを取り出した。

 

『可哀想に…幽霊の俺より先に逝くのか……』

「待て待て待て待て!必要あるか!?僕程度の存在が神々の集う居城に行って意味あるか!?」

 

 激しく物申しを受けた俺は、重々しく頷いて口を開いた。

 

「もしもの時に『見たことある気がする』という理由で見逃される可能性がある。外なる神は大雑把なので地球ごと助かる可能性もある」

「骨は拾ってくれ」

 

 キリリとした顔で、降谷さんが戦場に赴く兵士のように立ち上がった。

 決意は固まったようだ。良いことだ。

 

 俺はため息をついてバッグの中を整理した。

 ついて行くつもりらしい星の精をバッグの外に出して、タオルを入れて。

 また星の精を外に出して、要らないレシートを捨てて、星の精を外に出して。

 

 俺は星の精を睨みつけた。

 

「星の精は行けないよ。わかる?」

【グズッ】

 

 友達が行くなら星の精も行く、ということらしい。

 ぐずる星の精を諸伏さんに渡してしっかりと押さえておいてもらうこととする。

 星の精は憮然としてグスグスと悪態をついた。

 

「たぶん地球時間で一時間程度になると思う。すぐ戻るからマモーさんと諸伏さんは留守番を頼んだ」

「かしこまりました。お帰りに合わせてスイーツをご用意いたします」

『いってらー、緊急対応あったら俺がやっとくよ』

 

 諸伏さん達に見送られて、暴れるコナン君をしっかり抱え込んだまま俺たちはぐにゃんと空間を歪めて出立したのである。

 

 

 

「来てしまった………なにこれ、360度宇宙だけど」

「まだ宮殿の手前だからね。ここで入る前の準備だよ」

 

 まず、コナン君に追加でありったけの魔術をかけておく。

 360度が宇宙の光に囲まれる中、上下の別があることにコナン君は困惑しているようだ。

 

「えっと、何してるの?」

「中に入ると一目見ただけで魂が溶け落ちる怪物ばっかだから、コナン君の魂の守りを重ねがけしてる」

「今からでも遅くはないから帰りたい」

 

 ガチトーンでコナン君は迷いなく言い切った。

 まあまあ。まあまあまあまあ。

 降谷さんが「僕の分は!?僕の分の守りは無いのか!?!?」と焦っている。

 化身は発狂しないし大丈夫です。

 

 俺もニュルンと本当の姿に戻っておく。

 触手の籠をつくり、その中にコナン君達をそーっと入れる。

 重力は俺が仮想的に付与したものだ。

 

 準備が完了してから、うねうねとうねりながら解説しつつ門を通る。

 

【じゃあ行きまーす。あれがアザトースの宮殿、「狂気の口蓋」です。宇宙の中心かつ最奥でもあるよ】

「見た目は次元の歪み…ブラックホールに似てるな。あの周辺を泳いでいる触手は門番か?」

【いや、偶然たむろしてる下級の神々。たぶんさぼってる】

「なるほど???」

 

 降谷さんが宇宙を背景に訝しげになり、本物の宇宙猫になってしまった。

 神だってずっとフルート吹いてるのはしんどいからな。

 こうして息抜きも必要なわけだ。

 

 うねうねと長く曲がりくねった廊下…という名の次元の谷間を進んでいく。

 宮殿はシンプルな造りで、すぐに大広間へと辿り着いた。

 

 そこでは、多くの神々が音楽に合わせて踊りくねっている。

 フルート隊とエレキギター隊がバイブスを上げてフロアを沸かせているようだ。

 ………エレキギター隊?

 

 コナン君が頭痛を堪える仕草をした。

 

「僕の気のせいじゃなければJポップスに聞こえる」

【ニャル野郎のイタズラだな。ともかく神々の紹介に移っていい?】

「うん。ありがとう黄衣さん」

 

 とりあえず見なかったことして話を進めることとする。

 端から順に神々の説明だ。

 ウボ=サスラ、グロースの化身、トゥールスチャ。

 人間が生身で入れば秒と持たずに肉体ごと腐り果てるであろう、神の饗宴だ。

 そこに正気のまま謁見できるというのがどれほどに稀有なことか。

 

 コナン君がくしゃくしゃの顔で肩を落とした。

 

「本当にこれ僕がいて良いやつ?超巨大怪物の宴に見えるんだけど」

【大丈夫。気に入ったオモチャを見せ合ってる時もあるし。それに時々気合の入った狂信者が魂だけで突貫してくるから、みんな慣れてるよ】

 

 ここは外なる神の社交場でもある。

 皆穏やかにまったりしているようで、コナン君達が問題になることはなさそうだ。

 

 力の差を肌感覚で理解した降谷さんが、土気色の顔で籠の端の壁に縮こまっている。

 

「僕はもうここで終わりかもしれない。萩、班長、今そっちに行くよ…」

【覚悟するのが早いっちゅーに】

 

 降谷さんを宥めつつ進んでいく。

 今日はどうやらシュブ=ニグラスは不機嫌なようだ。

 粘液を垂らす巨大な口がモゴモゴと蠢いている。

 

【今日母上は機嫌悪そうだからパスしよう。挨拶はまた今度な】

「君の許嫁でもあったんだったか」

「その件で機嫌悪いんじゃない?ニャルさんと浮気したから」

【いやまさか……外なる神の貞操観念はゆるゆるだからそういうの無いよ】

 

 そーっと宮殿の端に沿って移動する。

 今は珍しくダオロスもいるようで、部屋の隅でモゾモゾしている。

 

 俺は彼の方を触手で指さして紹介した。

 

【あれはダオロスさん。無限の情報量を持ってて、権能は『真実を明らかにする』こと。あんまり直視すると加護がかかってても頭痛がするから気をつけてね】

「うぅ、もう遅いよ…ってかなんかこっちくるんだけど!?」

 

 コナン君のいう通り、ダオロスがのっそりとした動きでこちらへとやってきた。

 珍しいな、何か話があるのだろうか。

 

【──────】

 

 ダオロスはコナン君をまじまじと覗き込んで、その幾何学模様の先っぽで籠の中のコナン君をつついた。

 そして来た時と同じく、のっそりと去っていく。

 

「えっ何何何何怖い怖い怖い怖い」

「眩しっ!!!コナン君とんでもない光量だぞ!?スタングレネードか!?」

【おお、ダオロスさんから加護をもらったみたいだな。気に入られたらしいぞ。凄く珍しい。よかったじゃないか】

 

 内容は「『ヴェールで覆われた』場所を感知できる」という加護。

 つまり秘密を嗅ぎつける能力だ。

 たぶんメッセージとしては「これからも真実を追い求めるがいい」ぐらいになるだろう。

 

 コナン君は少しだけ考え込んでから「言われなくてもそのつもりだ」と挑戦的に笑った。

 ついにっこりしてしまう俺である。

 

 降谷さんが居心地悪そうに土気色顔色のまま震えて口開く。

 

「ところで、あの床を這っている力場はなんだ?」

「あれは自分の音楽がニャルに否定されてやる気をなくした、可哀想な音楽神トルネンブラさん。むしゃくしゃしてると思うから近づかないように」

「………なるほど」

 

 神も友好関係に色々あるのだ。

 降谷さんはまだちょっとニャルの香りがするだろうから、酷い目に遭わせられるかもしれないし。

 近づくのは危険だろう。

 

 そうして最奥へと辿り着く。

 

 そこでは、部屋の中央でノタノタと踊るアザトースが触手を広げていて。

 その横で弱々しく明滅する、やや分量の少ない虹色の泡の姿があった。

 

 アザトースの横を慎重に遠回りで通り抜けて、ヨグ=ソトースの前に来る。

 

 ヨグ=ソトースは俺の姿を見てパチパチと体を弾けさせた。

 

【父上、怪我をしたと聞いてお見舞いに来ました。ご無事ですか?】

 

 パチパチとさらにヨグ=ソトースが弾ける。

 そして泡を伸ばして俺の全身を虹色のベタベタにする。

 たぶん撫でてる、ような気がする。

 

 俺は懐からお見舞いの菓子を出した。

 箱ごと食べるかもしれないから、包まずそのまま持ってきた外なる神用チェリーパイだ。

 大きさも外なる神サイズで、食べ応えも満点だ。

 

【どうぞ、召し上がってください。俺からの捧げ物です】

 

 伸ばされた虹色の泡にチェリーパイを置くと、チェリーパイは一瞬で消化されて消え失せた。

 バチバチバチバチッ!と激しくヨグ=ソトースの体が弾ける。

 そして再び、俺を激しく撫でさすって虹色のベトベトまみれにする。

 

 とても喜んでくれた……のかな。

 分からん。分からんがこれで良いことにしよう。

 

 そして一礼して、来た時と同じように静かに退出する。

 

【さっきのが俺の父上。時の神ヨグ=ソトース。ニャルをパンチで粉砕できるぐらい強い。というか父上の体が時そのものだからみんな父上の中で生きてるに等しい】

「なんかパチパチしてたね…」

【あれはよく分からん。喜んでる気がする】

 

 外なる神って力が強ければ強いほど概念的な形をしているからな。

 ちょっと意味が分からんのだ。

 

 未だコナン君がダオロスの加護によってビカビカに激しく輝いている。

 ようやく宮殿を出たあたりで、降谷さんがヘナヘナと腰を抜かして座り込んだ。

 

「死ぬかと思った……!なんだあれ!?鼻息で太陽系が滅ぶ化け物ばっかなんだが!?」

【外なる神だからなぁ。そういや母上が降谷さんのこと見てたな。気に入ったんかな?】

「化け物の視線は僕にはわからん。あとコナン君が眩しすぎて目が開かない」

「僕のせいじゃ無いんだけど!?」

 

 双方から非難の声があがったので光量を落とす魔術をかけつつ。

 俺たちは混沌の宮殿を後にしたのだった。

 





・ヨグ=ソトース
おいしかった。
また欲しい。息子愛。

・ダオロス
ふーん。がんばれ。
餞別やる。
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