ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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幕間のレクイエム

 

 どうも、黄衣②です。

 

 黄衣①が手首に爆弾を巻かれてしまったので代わりに行動している次第です。

 いや中身は一緒、というか動かしてるのが小指か人差し指かの違いでしかないけど。

 

 現在はテレビ局帰りに急いで自宅マンションへと向かい、ニャルに声をかけるミッションを遂行中だ。

 

 俺は別働隊として、みんなの相談の上でムーンビーストの調査を任されたからな。

 爆弾巻かれて大人しくしたふりをしつつ、こうして分身を動かしてニャルに協力を依頼しようというわけだ。

 

 マンションの部屋に入って、居間でくつろぐニャルに声をかける。

 

「ニャルぅ、今いい?」

 

 まったりとネトフリを見ながらゴロゴロするニャルが振り返る。

 姿は上半身人間、下半身触手怪物である。

 どうやら足まで化けるのが面倒臭くなったらしい。

 

 ニャルは俺を見てニパッと笑顔になった。

 

「はーい。お帰りなさい、なんですか我が夫。あ、座ります?」

「座るー。あのさ、ムーンビースト紹介してくれないか?ちょっと聞きたいことがあって」

 

 依頼主の周りを彷徨いていたムーンビーストについて、同族が何か知らないかの聞き取り調査をしようと思っているのだ。

 直で本人達から聞いてもいいが、ことの次第によっては穏やかならぬことになるのでな。

 やはり同族に話を通しておくのが安牌だろう。

 

 俺もコナン君達に指導されて慈悲の概念を身につけたのだ。

 

 ニャルがふむふむと頷いて人差し指をピンと立てた。

 

「構いませんよ。えーっと、『告げる。10分以内に我が元に一人馳せ参じよ。遅れれば潰す』と。これでOKです」

「早い早い早い早い。来れねぇよ!」

「来なきゃ滅びるだけです。あ、そういえば僕クッキー焼いたんですよ。一緒に食べながら映画見ましょうよ」

「いいけどさぁ…」

 

 通常運転な横暴ニャルとともに、まったり映画を見る。

 アメリカのヒーローもののようだ。

 「羽虫の考える強さって矮小ですよね…可哀想…」と謎の同情をするニャルをヨシヨシする。

 

 まあでも、人間がヒーロー映画みたいに強ければもうちょっと俺も安心できるのになと思わんでもない。

 人間は脆すぎるんよ…空ぐらい飛べてもバチ当たらないのに。

 

 

 

 さて。

 8分後、満身創痍の老ムーンビーストがパチンという軽い音を立てて部屋の中に出現した。

 

 魔術で空間跳躍しながら全力で駆けつけたのだろう。

 ヒキガエルが半分吐きそうになりながらえづいている。

 

 式典用らしい真っ赤なスカーフのようなものを身につけて、儀礼用の槍も持っている。

 皮膚に黄金のアクセサリーを縫い付けて、全身がおしゃれに装飾されていた。

 どうやら正装のようだ。

 

 必死で息を整えて、鼻先の触手をもじょもじょと動かした。

 

【ゲッゲッゲッ……!】

「あ、そういうのいいんで。僕より我が夫の話を聞いてください」

 

 すごくかしこまったムーンビースト語を軽く切り捨て、ニャルが興味なさげに視線を映画に戻した。

 

 俺が「日本語わかる?」と聞くと、ムーンビーストが人間の流儀で頷いた。

 魔術師らしいし、日本語は堪能なのだと思われる。

 

「俺が聞きたいのは、この星の特にここから半径100km以内にムーンビーストはいるか?って話だ。なんか俺の周辺で見かけて、何か面倒ごとに巻き込まれてないかと思ってな」

【ゲゲッ!?!?】

 

 あわわわ、とムーンビーストがバタバタと手を振った。

 老ムンビ曰く、彼らの法で地球と人間への接触は厳に禁止されているらしい。

 

 俺がハスターの瞳から抽出したデータ映像を見せると、ムーンビーストは灰色の体を青く染めて震え出す。

 どういう感情なのか知らんが、焦っていることは確かなようだ。

 

 ニャルが写真を覗き込んで色のない無表情でポツリと呟く。

 

「ふぅん。気に食わないですね。僕ですら我が夫を慮って羽虫遊びは最低限にしてるのに。お前らアリンコが羽虫遊びしてるんですか?」

【ゲッ…ゲッ……!!!】

 

 瞬間。

 ムーンビーストがクロールの姿勢で倒れ込んだ。

 どうやら彼らの流儀で言う土下座のポーズらしい。

 そして猛烈に「ゲッゲッゲッ!!!」と話し出す。

 

 魔術も併用しているあたり、老ムンビも俺が目撃した奴らのことを確認したらしい。

 同時並行して本国ともやりとりして、怒涛の如く情報を吐き出している。

 

 どうやら、この星の来ているムーンビーストは、若い半グレ集団らしい。

 遊び呆けて奴隷の管理もせず、土星猫との交易もサボって遊び歩いている奴らとのこと。

 この星で何をやっているのかは知らないが、神の手を煩わせることもないのでこちらで始末する、と言っているようだ。

 

 となると、地球で悪行をやっているとも限らないわけだ。

 別にムーンビーストの侵入は俺の方で禁止していないし。

 ただ人間に危害を加えるなら処すと伝えてあるだけだ。

 

 と言っても、地球侵入禁止というムーンビーストの法を破っていることには違いないので、向こう方で裁くのを止めはしない。

 

 俺は頷いて沙汰を下した。

 

「ふうむ。ともかく該当の奴らが地球で何をしてたのか確認してからだな。その後、君らに任せるか俺で対処するか決めます」

【ゲッ………!】

 

 ムーンビーストの肌がなんか赤紫になってきた。

 こいつ色変わるんか。初めて知った。

 

 ニャルが意外そうな顔で瞬いた。

 

「プチプチしないんです?」

「無実なのにプチプチしたら可哀想だろ。しかもムンビはニャルのだし」

「でも僕らを苛立たせたんですよ?アリンコに気遣いするなんて珍しいですね」

「まあ、俺も大人になったってわけさ」

 

 またコナン君達に非難されても悲しいし。

 俺もそろそろ人間以外に対する慈悲の心を獲得べきだと思ったからな。

 気に食わんのは間違いないが、ここはグッと堪えるのができる大人というやつだ。

 

 「また意味わかんないことしてるなー」の顔でニャルが俺を触手でつついた。

 

 クロールの姿で固まってるムーンビーストの肌が青色に戻っていく。

 ちょっとホッとしたのかもしれない。

 

 うむうむ、仕方ない。

 もし地球に密入星したムンビが酷いことしてても、族滅だけは勘弁してやるとしよう。

 俺はなんて慈悲深いのか。

 

 ニャルがヒーローものを途中で切り上げて、ネトフリで次なる映画を探しながら言う。

 

「それより、この映画良くないです?羽虫がガンガン絶望の末に死にますよ!」

「俺そういうの苦手。怖くて見れない。あらすじで教えて」

「まず街が霧に包まれてですね」

「俺知ってるそれすごく怖いやつじゃん絶対無理」

 

 有名ホラー映画を勧めてこようとしたニャルを揺さぶりつつ、俺は大きなため息をついた。

 

 ムーンビーストもせっかく来てもらったしゆっくりしてもらおうかと茶を入れようと思ったら、ムンビさんはブンブンと首を振って辞退した。

 そのまますごく奇妙な仕草をしながら転移魔術で去っていった。

 あの仕草はムンビ流の会釈なのだと思われる。

 

 呼べばすぐ来るっぽいし、しばらくはこの近くに滞在するのかもしれない。

 加えてなんか偉い人っぽいし、茶を飲む時間も少ない忙しいムンビだったのかも。

 

「うーん、俺はあとは地球に来たムンビ三体との接触かなぁ。接触呪文で呼びかけたら来るかな?」

「来なければ遊んでいいって意味ですから、来ると思いますよ」

「なるほど。なら呼ぼう」

 

 魔術で半径100km。

 大雑把に先ほどの老ムンビを除いたムーンビーストを呼びつける指令を贈る。

 

 お、きっちり三体反応があった。

 泡を食って移動を開始したようだ。

 結構距離があるから、ここに到着するまでしばらくかかりそうだ。

 

 ニャルが俺の方にもたれかかって「ふふふ」と笑って頭を擦り寄せた。

 

「遠出するのもいいですけど、こういうまったりとする日も楽しいですね!」

「だな。ニャルのクッキーも美味しいし、ニャルと一緒に居られる俺は幸せ者だよ」

「そうでしょうそうでしょう!」

 

 満足げなニャルをわしゃわしゃと撫でまわし、これからどうなることかと俺はやや遠い目をしたのだった。

 





・老ムーンビースト
ムンビのお偉いさん。魔術の権威。
若い奴らが地球でコソコソ何かしてるってわかって胃がひっくり返りそうになった。
ことの真偽はなんでもいいから若いやつ三匹始末して早く神の視界から消えるべきだと思ってたのに、神が直々に精査するっていうから震えが止まらない。
本国と連絡を取って、一部国民を空を渡るガレー船で避難させ始めた。
月が滅ぼされても民の一部は残るように。

・半グレムンビ達
無実。ばかもの。ウェーイ系。
とはいえ悪いムンビではなく、ムンビ法には触れてるけど、ハスターの気に触ることはしていない。
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