ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

39 / 469
孤島の姫と竜宮城〈あらぬ方向で番組デビュー〉

 

 発見された遺体は、撮影のため一緒に島に来たスタッフの女の人であった。

 

 死因は細いロープで首を絞められたことによる窒息。

 死体の脇には「我はグソーの使いなり」という不気味な文言が砂浜に書かれている。

 服部君によると、状況から見て島に潜んでいた俺たち以外の人間が犯人の可能性が高いとのこと。

 

 「黄衣さん!」とコナン君が死体を前に鋭く叫んだ。

 俺たち以外の何者かが島にいないか探してくれ、という要請のようだ。

 俺も頷いて軽く魔術を発動する。

 まあ確かに和葉ちゃんが襲われたらまずいし、さっさと確保して本島に戻った方がいいからな。

 

 魔術による探査網を瞬時に島全域へと張り巡らせる。

 そう大きくもない無人島だ。

 広げるのに0.1秒もかからない。

 

 しかしヒットは無し。

 この島にいるのはTVスタッフさんと俺たちだけだし、神話生物に類するものも居ないようだ。

 つまり、グソー(あの世)の使いなんて居ないってこった。

 

 海に何かが潜んでいるのかとも思い、もう一段捜査網を広げてみるもヒット無し。

 多種多様な南国のお魚さん達に癒される程度であった。

 

 ふーむ、困った。

 単に見つかりませんでしたでは俺が魔術で探索した意味がない。

 仕方ないので前後三時間の島内の人の動きを全て洗ってみることにする。

 もう犯人は島の外に脱出しているかもしれないし、何らかの成果無しで手ぶらというのも決まりが悪い。

 

 そうして。

 俺はことの全容を把握して、一つ頷いた。

 

「………コナン君、島内に不審者無し。怖い生き物も無し」

「っ!なら一体犯人はどうやって…!」

「あと、今晩はこの島で死体と野宿かな」

「へ?」

 

 一瞬呆けた後に、事態に気付いたコナン君が乗ってきた船の方に全力で走り出した。

 「おい工藤!どないしたんや!?」と服部君が後を追いかける。

 

 やはりと言うべきか、そうして向かった桟橋には俺たちが乗ってきたはずの船は無く。

 俺たちはこの無人島内に取り残されてしまったことが明らかとなった。

 

 

 

 

 ひとまず、俺たちは救助船が来るまで島にある古い別荘にて雨風を凌ぐこととなった。

 明日には撮影本番を控えている。

 番組ディレクターが戻らなければ、異変にはすぐに気付いてもらえるはずだろう。

 

 別荘に入ると、やや湿気っぽい空気と黴びた匂いが充満して居た。

 埃の被った調度品の数々がそのまま残され、生活感を残している。

 

 ここでは一年前に船を流されて本島に戻れなかった餓死者も出ているらしく。

 皆不安そうに俯いていた。

 

 ともかく、まずは屋内に不審者が潜んでいないかの確認を兼ねて内部の探索である。

 俺は魔術で不審者がいないことを知っているが、皆にはそんなこと説明できないからな。

 別荘にあった燭台に蝋燭をつけ、手分けして順番に待っていく。

 

 俺たちは台所周りをコナン君、服部君、俺の三人で探索中だ。

 和葉ちゃんは安全が確認された一階の一室でディレクターさんと共に待っている。

 

 俺がガサガサと食器棚を漁っていると、不意に服部君が近寄ってきた。

 そして「あん時の発言、どういうこっちゃ」と、静かな声で問いかけられる。

 

「あんとき?」

「だから、島に船がないことをどうやって知ったんか言うとんねん」

 

 服部君は眉を釣り上げて語調を強めた。

 どうやら俺とコナン君の内緒話を聞かれていたらしい。

 しかし意外だ。

 コナン君ならとっくに俺のことを服部君に話していると思っていたのに。

 

 彼とは付き合いもあるし、特に気負わず本当のことを話すこととする。

 

「そりゃ俺が魔術師だからだよ。ほら、こんな感じで魔術が使えるから、それで探っただけ」

 

 そう言って、みんなに差し入れするための食品をいくつか目の前で具現化した。

 加熱剤が入っており、火がなくても温めることができるタイプのものだ。

 今は夏ではあるものの、こういう時は多少でもあったかいものを食べた方が安心するからな。

 

 服部君は目の前に突如現れた人数分の非常食に目を剥いた。

 

「ッ!?どんなトリックつこたんや!」

「いや、どんなトリックにしろ、この事態を見越して保存食持ってきてるやつとかもうただの犯人だろ」

「………そりゃそうやな」

「安心しろよ服部。マジでその人は魔法使いだから」

 

 隣で食洗機の下をあさっていたコナン君が会話に入ってくる。

 そしてやや不機嫌そうに「オメーのためを思って今まで伝えないでいたけどよ」と言葉を付け加えた。

 

「……本気で言っとるんか工藤」

「冗談でこんなこと言わねーよ。それに、もう黄衣さんは犯人もわかってんだろ?」

「なんやて!?どういうこっちゃ!」

 

 この発言には俺も驚きを隠せなかった。

 俺が魔術で犯人を当てるとコナン君が不機嫌になるので、今回は状況的に仕方なかったもののできるだけ情報は伏せていたはずだ。

 なのに、コナン君はそれを察して居たらしい。

 

 コナン君が息をついてこちらを振り返った。

 

「魔術を発動してから、返事するまで若干タイムラグがあったろ。何回か首を傾げてたし、一回で見つからなかったから探し直してたんだ」

「!」

「黄衣さんは基本俺たちの話は信じるし、無駄な魔術はなるべく使わないようにしてる。だから最初は島内の探索だけに留めたはずだ」

「………」

「それでも見つからなくて、疑問に思って探索範囲を広げた。加えて、黄衣さんは過去視もできる。どうしても不審者が見つからないから、諦めて最後はそれを使った可能性が高い」

 

 「それで犯人がわかったから、俺に気を遣って黙ってたんだろ」とコナン君は至極つまらなさそうに鼻を鳴らした。

 

 俺より魔術師なんですけどコナン君俺の心とかのぞいたりした???

 

 畏怖に近いものを感じながら、俺は頷いた。

 

「合ってる。このまま黙っといた方がいい?」

「いや。犯人が船を奪ってるってことは、これに乗じてまた殺人を企ててる可能性がある。教えてくれ」

「わかった。そういうことなら」

 

 服部君が困惑している様子を見せながらも何も言ってこないようだ。

 とりあえず話は聞いてくれるということらしい。

 俺はなるべくコナン君達のこれまでの推理を真似るように、情報を頭の中で整理して口に出した。

 

「ええと、見た限り、犯人は番組スタッフの大東幹彦さんだよ」

 

 彼は二時間前に森で何かを探していた女のスタッフさんを殺してから、丁寧に海辺に安置。

 何故か沈鬱な顔で黙祷をしてたのが印象深い。

 

 次に動いたのはちっとも戻らない女性スタッフさんを探して皆が船から出た時。

 船長さんを鉄パイプでボコボコにして殺害。

 これは船の横に繋いで晒しものにするという徹底ぶりだ。

 その後、船を操作して無人で発進させ、自身は船を降りて皆に加わった。

 

 流れを説明すれば、二人とも目を見開いて「そうか、砂浜の波のトリックは船をつこたんや!」「けど証拠が…」「動機は五年前のアレか?」とか色々議論を始めた。

 俺は見た限りのことしか分からないからトリックや動機については全然だ。

 主語がまるでない暗号みたいな会話について行けず、ぼんやり二人の隣で様子を見守ることしかできない。

 

 とりあえず、俺は最低限の役割は果たせたかだけ聞いておこう。

 

「で、行けそうか、名探偵君達?」

「せやな。言うて、もうちょい詰める必要はあるけどな」

「黄衣さんはその保存食を和葉ちゃん達に配っておいて!僕らは少し聞き込みと森を見てくるから!」

「お、おう。気をつけてね」

 

 駆けていく二人の探偵は緊迫した空気の中生き生きしている。

 俺が彼らの推理を台無しにしていないことに、ほっと安堵の息を漏らして。

 

 俺は探索終了後スタッフさん達が集合する部屋に向かったのであった。

 

 

 

 皆と合流してからは、「部屋の奥で見つけたんだ、まだ食べれると思うから」と言って魔術で作成した保存食を配った。

 

 加熱剤がセットになった豚汁だ。

 「わあ、美味しそうやん!」と和葉ちゃんも嬉しそうにしてくれて、俺も満足である。

 スタッフさん達も少しホッとしたような顔をして、皆で先にご飯タイムとなった。

 

 蝋燭の光で照らされる室内はやはり暗くて、たっぷりと日の暮れた外に不安感は募るものだ。

 

 今回の番組ディレクターである竹富さんが、豚汁をすすりながら、陰鬱そうにため息をついた。

 なんだかげっそりと頬がこけているように見える。

 

「これ、たとえ生きて帰れたとしても番組は代替の企画考えなきゃ行けないんですよね…はぁ…」

「そりゃ災難だったな。せっかくだし沖縄の観光とかでいいんじゃねえの」

「うーーん、夏だしアリではあるんだけど、インパクトがねぇ」

 

 犯人の大東さんがディレクターさんを慰めている。

 かなりシュールな光景だが、ディレクターさんの煤け具合も半端じゃないからな。

 犯人としてもやや申し訳ない気持ちになったのかもしれない。

 

 俺も適当に場繋ぎのために適当に案出しに参加した。

 

「えー、無人島に取り残されたディレクターが考える!本気の非常食とは!とか」

「!!ふむふむ、悪くない、方向性は悪くないねそれ。最近地震もあったし。ふむ…あとは日程……予算がもうカツカツだし…企業の方に問い合わせて…」

 

 急にブツブツ言い出したディレクターさんの瞳は完全にマジである。

 まあ、こういう極限環境下で明日への活力が湧いてきたならいいことだ。

 

 

 

 それからの展開は非常に早かった。

 スタッフの一人を囮として使い、名探偵タッグは見事犯人を釣り上げてみせた。

 身柄を拘束し、皆の前で現行犯の私人逮捕を成し遂げたのだ。

 

 また、俺の目では確認できなかった動機やトリックもバッチリ見抜いたらしい。

 目の前で繰り広げられた推理ショーにディレクターは目が輝いていた。

 

 そうしているとじきに捜索のために海上保安庁の船がやってきて。

 俺たちは沖縄本島へと戻ることができたのであった。

 

 

 ちなみに。

 結局、ゴールデンタイムに放送される番組は最新の非常食、防災特集になった。

 

 何故か俺と服部君もゲストとして呼ばれた。

 次々お出しされる各種美味しい非常食の数々へとコメントしていくのだが。

 意外と量を食べることになって、服部君が途中で満腹のあまりウップスとなっていたのがちょっと哀れであった。

 

 まぁ、俺は原理上無限に食えるし、満腹という概念もない。

 代わりに俺の方で出される品出される品全てに丁寧にコメントしながら味わって食べていたら、なぜか大ウケ。

 

 大幅に俺のカットが増やされて、収録後別の番組へのお誘いが掛かることになったのであった。

 

 これは……大食いタレントへの道……?

 





・非常食特集
線の細い黄衣探偵が出される大量の非常食全てをニコニコ嬉しそうに丁寧に食レポしつつ完食するシーンが話題に。

・公安信者さん
当然だが多重に録画した上でリアタイした。
最近は気に入らん金髪ニャル系部下を教化しようと熱心に布教している

・降谷さん
番組の視聴感想文書かされた。クソ迷惑。
上司の布教活動によって、経典が三億年以上前から現代日本語で書かれていること、現在の日本公用語がそこから来ていることを知りハスター神へと好感度が若干上がるなどした。
ふーん、まあまあやるじゃん(上から目線)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。