ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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戦慄の楽譜〈降臨〉

 

 風見さんを入れて、探偵事務所で打ち合わせをしているところなり。

 

 メンバーは俺、降谷さん、諸伏さん、風見さんの四人だ。

 コナン君は少年探偵団と外に出ていて不在。

 

 なんか最近俺の事務所は公安の出先みたいになってきてるんだよな。

 別にいいけどズブズブ感が辛いところ。

 

 調査を任された統括の風見さんが、整理した資料を配って口を開く。

 

「現在までに四人が殺害されています。二人はプラスチック爆弾、一人はガス爆発、最後の一人がパラグライダーに穴を開けられての墜落です」

「譜和匠の関与の痕跡は見つかったか」

「いえ。この四件が同一犯であることは明らかですが……物証はなく、加えて殺害の動機が薄く」

『確かに動機は不十分に見えるか』

 

 諸伏さんが頷いて同意する。

 一応犯人がこの四人の生活態度に怒っていたという証言はあったらしいが……それだけで殺したと断定するには証拠が薄過ぎる。

 

 降谷さんが難しい顔をして顎を撫でた。

 

「元太君が飲んだという魔法瓶の中身は?」

「刺激性の強い薬物であることは捜査一課の調べでわかっています。犯行に使われたトラックも、現場付近で盗難されたもののようです。現在防犯カメラを確認中」

「捜査は続けてくれ。いまいち見えてこないな。黄衣君、犯人は譜和匠で間違いないのか?」

「間違いない。ただまあ、そっちは捜査一課に任せておけばいいと思う。問題は堂本ホールの件だよ」

 

 殺人に関しては普通の事件だから気にしなくて良い。

 コナン君を狙われたのは気に障るが、今はそちらを深掘りする意味はないだろう。

 

 何か嫌な予感が拭いきれない。

 未来視を解禁しようかとも迷ったが、外なる神相手にさほど意味のある行為ではない。

 相手だって未来は見えてるのだから、未来が移ろうだけの追いかけっこが始まって余計面倒になるだけだ。

 

 風見さんが恐れるように体を縮こめて俺を見た。

 

「……また全世界データ消失事件のような、大規模な怪異災害が起きるということでしょうか?」

「まあ、よっぽどのことがない限り大丈夫だけど、万が一の場合俺じゃ勝ち目がないから用心するだけしてる感じかな」

「ほぼ全能に近い貴方が…勝ち目がない…!?」

 

 余計に慄かれてしまった。

 普段俺の力を借りているからこそ、俺の不可能に恐怖が大きくなっているらしい。

 

 そうは言っても極大の概念存在たる外なる神を相手にするんだ。

 そもそもアザトースを眠らせる音色が強くないわけがないというもの。

 

「うむ。もしその時になったらニャルをけしかけるしかない。なお地球は余波で滅びる」

「滅びては困るんだが」

「いや外なる神が顕現したらどう足掻いても無理だよ。確定で滅びます。降谷さんだって見たんだからわかるだろ?」

「それは……そうだが」

 

 降谷さんが苦悶の表情で顔を押さえて呻いた。

 

「上に話を通して、適当な理由でコンサートを中止させてホールを接収する。……には、根拠が薄弱すぎるのがなんともな」

「そうなんだよなぁ」

「もう僕が局地的ハリケーンでコンサートホールを吹き飛ばすか」

「うむ。落ち着け。まあ、俺は俺で準備をしておくよ。降谷さん達は引っ張れる理由を見つけておいてくれ」

「わかった。まったく、こういう時法は身動きが取りづらいな」

 

 などと相談していたところにコナン君のトトト、という軽い足音が聞こえてくる。

 どうやら帰宅したらしい。

 

「ただいま!あれ、風見さん?」

「君か少年。いや、少年ではないんだったか」

「そう。小学生詐欺のコナン君です。可愛くてあざとい。大人を翻弄する形をしている」

「どうして帰ってきて早々喧嘩売られてるの僕」

 

 そんな、褒めてるのに喧嘩だなんて。

 ソファをぽすぽすと叩いて隣に座るように促せば、凄く嫌そうな顔をしつつも大人しく座ってくれた。

 最近、仕草の小動物感が工藤君になっても引き継がれるようになっててあざとかわいさが増したんだよな。

 これは蘭ちゃんもさぞや庇護欲をそそられることだろう。

 

 俺がニコニコしていると、ポッケの星の精から「クス!!!」とお叱りの声が飛んできた。

 黄色が悪い顔してる!友達も怒ってる!白黒の車がもうすぐ来る!

 

 それは流石に冤罪すぎる。弁護士を呼んでくれ。

 

 コナン君が胡乱な顔をしつつ、出し抜けに「そういえば」と話し出す。

 

「堂本ホール館長の譜和さんが逮捕されたよ。現行犯。秋庭さんと僕を銃撃してきたから現行犯で取り押さえた」

「話早すぎるんだわ!?!?」

 

 すごいコナン君あまりに仕事早い!!

 これには思わず諸伏さんも腰を浮かせて目を白黒させている。

 風見さん見事の宇宙猫。

 降谷さんが眉間を揉んだあとキリッとした顔を作ってコナン君を褒め称えた。

 

「よくやったコナン君!これで面倒ごとの8割は解決した!」

「う、うん。そんな気はしたけどちょっとモヤモヤするかも。僕の推理の余地が残ってなくて」

『今回ばかりは未然の阻止が肝だからな。一件落着で正解なんだよな』

 

 そっと遠見の魔術を起動して、混沌の宮殿、マウス・オブ・マッドネスを覗いてみる。

 

 トルネンブラさんはアザトースの近くでじっと動かない。

 何かの期をじっと待っているようにも見えなくもない、不気味な雰囲気だ。

 

 うーん。

 まあ、俺の疑心暗鬼が見せた印象でしかないかもしれない。

 

 俺はコナン君を労って眉を下げた。

 

「コナン君は怪我はない?変な魔術喰らってない?」

「譜和さん、魔術師じゃないみたいだったよ。銃で撃ってきただけだし、僕の魔術にすごくびっくりしてたし」

「そっかあ。ほなら問題ないかぁ。あ、俺そろそろニャルの寝相を確認しておかないと」

「ニャルさんまだ寝てるの?」

 

 俺は「時々は起きてるよ」と返事した。

 今回はネムネムの時間が長いようで、起きたり寝たりを繰り返している。

 眠いのに遊ぼうとしてわけわからん寝ぼけ魔術を暴発させたりするので、定期的に見張ってないと後が怖い。

 

「前に俺の寝床でニャルが寝ぼけ魔術を暴発させてさ、俺のこと食おうとするコケの群生地になっちゃったんだよ。すごい獰猛でもう困ったこと」

『絶対に地球でやって欲しくないこと過ぎる』

「地球に生えてたら瞬く間に動植物は絶滅だな。悪いニャルなんだ」

 

 俺はブツブツ言いながら、マンションのニャル部屋に転移したのだった。

 

 

 

 

 

 

 そうして、コンサート当日。

 

 事件が解決したということで、多少爽やかな気持ちでやって来れた。

 俺は慣れぬ正装で触手が圧迫され、ちょっとだけ息苦しい気持ちになっている。

 

 懐の亜空間に星の精を潜ませながら、ややフラフラしているニャルに声をかけた。

 

「ニャルー、眠いなら無理してこなくても良かったんだぞ?」

「やだ…こういうの、親密な男女が一緒に聞くの流行りなんですよね!!」

「その流行り知らんけど。19世紀ヨーロッパとかの話?」

 

 ニャルはいかにも眠そうに目を擦った。

 ブルーグレーのロングドレスは上品で、ニャルの美貌も相まって素晴らしい美しさだ。

 まあ、今は本人がしおしおだから輝きも翳っているけど。

 

 というか、ニャルがどうしてもと喚くから園子ちゃんに無理を言って用意してもらったのに。

 寝たら往復ビンタするしかない。

 

 今回、俺たちはバルコニー席を取ってもらっている。

 降谷さん達も念のため、かつ気晴らしのために同席する。

 

 子供達は元太君が喉の怪我で意気消沈してるし、仮面ヤイバーのショーを代わりに手配した。

 いまごろ阿笠博士と楽しんでいることだろう。

 星の精もオウム姿でそっちに送り込むつもりだったんだが、本人がオペラがいいというから連れてきている。

 まあ、単にコナン君のデートが気になってるだけだろう。

 

 降谷さんのインカムが小さく音を立てた。

 

『降谷さん、皆配置につきました』

「ご苦労。念には念を、だ。譜和は口を割ったか」

『いえ、黙秘を貫いています』

「そうか。進展があったら知らせろ」

『はい。それと、少しだけ気になる点が。どうやら昨日からこの堂本ホールの調律師が行方不明とのことで』

 

 まだ犯人が捕まっていなかったタイミングの被害者のようだ。

 早く見つけてやらないと不憫なことになるかもしれない。

 

 俺はちょいちょいと降谷さんの肩をつついて声をかけた。

 

「西多摩市橋立町にある6階建ての廃ビルに縛られて放置されてる。助けてやってくれ」

『……ッ、聞こえたか風見。西多摩市橋立町の6階建て廃ビルだ。ミュラー氏はそこにいる。救助を手配しろ』

「は、はいっ!」

 

 だから急遽調律師が手配できなくて、音がズレたままなのか。

 俺は直前のリハーサルを思い出し、ぼんやりと思った。

 

 工藤君が蘭ちゃんとこそこそ話をしている。

 お互いちょっと頬を赤らめて、気恥ずかしそうに小声で話をしている。

 青春の香りは実に素晴らしい。

 園子ちゃんも大満足顔でニヤニヤしている。

 

 星の精が気に食わないみたいな顔でブスくれて口を曲げた。

 

【グスッ…グス】

「まあまあ、そう言わずに。友達の幸せを願えるのも良い星の精の条件ってやつだ」

【クス……クスゥッ】

 

 良い子の星の精は納得したようだ。

 やや萎み気味ながらも、亜空間内でゆらゆらバンザイポーズで触手を揺らしている。

 応援ポーズだ。

 この間小学校で運動会があったもんな。

 

 ニャルも俺と手を繋ごうと、腕を物理的にビヨーンと伸ばして俺の手を取る。

 

「こらっ人間はそんな腕が伸びたりしないんです!」

「いいじゃないですか。人間って暗いと知覚が失われるんでしょう?」

「流石にこの明るさなら見えるわい!!」

 

 ニャルが無視して腕で俺をグルングルンにする。

 後ろの席の諸伏さんが「うーんカオス」と感想を漏らした。

 どうしてくれんだよこれ。

 

 ともかく。

 席について、20分もすれば開演の時間だ。

 

 暗くなった舞台に灯りが灯され、白く優美なドレスを身に纏った秋庭さんが歩いてくる。

 パイプオルガンの演奏者は堂本さん、ストラディバリウスを持つ女性の姿もある。

 

 静かに、演奏がゆったりと始まる。

 

 響く音色は美しく、ここが日本の名だたるオペラコンサート会場であることを知らしめる。

 全てが完璧に調和して一分の隙もなく美しい。

 

 うんうん、音楽とはかくあるべきというものよ。

 

 軽い一曲が終わったところで、オルガニストの堂本さんが今回のコンサートの挨拶を始めた。

 

 音楽は人間から神への問いかけです。

 それゆえに、我々は祈るように歌おうと。

 そのようにありたいと思っております。

 

 1分ほどの挨拶に、観客から拍手が起こった。

 

 ふと隣を見ると、早くもニャルが爆睡していた。

 このニャル!!と頬を引っ張る。

 しかしゴム人間のように無限に伸びて全然ダメージにならなかった。

 

 ダメだ、起きない。あと腕も伸びたまま戻らない。

 寝ながら触手をはみ出さないだけマシということにしておこう。

 

 次の曲が始まったタイミングで、パイプオルガンが調律不足で少し低い音を出した。

 瞬間、少しだけ地面が揺れた、ような。

 

 降谷さんが体をこわばらせ、瞬時に険しい顔をした。

 風の知覚を外に広げてあったのだろう。

 この堂本ホールの敷地一帯を監視下に置いていたらしい。

 ここまで監視できるなら、公安の人員を配置する必要はなさそうだが。

 

 次いで念話が繋がる。

 降谷さんはいつのまにかグループ念話を習得していたらしい。

 鋭い思念波が伝わって来た。

 

『外で爆発が起きた!場所は……このホールの出入り口だ!事前に設置してあった分だろう!』

『ッ安室さんそれホント!?じゃない、本当ですか!?』

『工藤君がコナン君との間でバグってる…』

『黄衣君は無駄口利かないように。僕と黄衣君で外の状況を確認してくる。ヒロはホール内で何か不審な動きがないか確認していてくれ』

『了解』

 

 どうやら犯人はあらかじめ爆弾を設置していたらしい。

 爆弾を操作できる状況じゃないはずだから、タイマーか何かだろう。

 

 体を中に残し、急いで外に分身を出現させる。

 降谷さんも黒いモヤのようなものを外のホール廊下に固めたようだ。

 そこから悍ましい何かが形になるように、降谷さんの分身が姿を現す。

 

「降谷さんそれ悪役の出現方法じゃん」

「君は気の抜けることしか言えないのか。ともかく向かうぞ!」

 

 廊下にはすでに煙が充満していた。

 少し走るだけでエントランスに到着する。

 

 エントランスは崩落していた。

 入り口に面した併設のカフェが丸ごと潰れている。

 受付も瓦礫が落下していて、瓦礫の端から受付スタッフの足がのぞいて

 

「無事か!今助ける!」

「ダメだ、もう死んでる、というか捧げられてる」

 

 すでにこの男性に魂は存在しない。

 神への呼びかけが成立し、すでに神の贄となったのだ。

 もし神の側が無視していれば取り返すこともできたが、もうすでに受け取った後。

 返品不可の状態に歯噛みするしかない。

 

 そしてそれを見てようやく、俺は事件の真相を理解した。

 

「なるほど、音楽は人間から神への問いかけってことか」

「……どういうことだ」

 

 俺は悔しさに俯いた。

 これは歌い、奏でることで成立する招来魔術。

 しかも、歌う本人すらもそうとは知らぬままに!

 

 館長は譜話さんだが、堂本音楽ホールを建てたのはオルガニストの堂本さんだ。

 譜和さんの話を聞き齧って、歯抜けの「塚」を作っても何もおかしくない。

 

 堂本さんに悪意は何もない。

 今回と同じプログラムは過去に幾度も開催されていた。

 神に捧げる音楽を、いつも通りに音楽への信仰と共に捧げただけだ。

 

 ここは、ずっと前から死者の出てはいけない音楽ホールだったのだ。

 

 何かがつながる感覚に、俺の体が僅かに圧迫された。

 ここで死亡して魂を接収されたのはほんの十人にも満たない数だ。

 

 その程度を捧げられて外なる神が振り向くはずもない。

 スパチャで言えば1円未満、1銭とかそのぐらいだ。

 挨拶を返すにも値しない。

 

 

 そのはずなのに。

 

 

 降谷さんも外なる神の気配を感じたのか、戦慄と共に体を震わせる

 

「おい、まさか……!」

「そのまさかだ!気まぐれにも程がある!ここに、外なる神トルネンブラが降りてくる!!」

 





・堂本さん
別に神召喚とか全然考えてない。
魔術に関して知識もない。
全部が噛み合って招来呪文が通っちゃっただけ。

・トルネンブラさん
ふーん、ワイを信仰するんか。ええ心がけやで。
弱った心にスーッと染み入るわ。
特別に降臨してやるやで。
あと近くにいるニャルはぶち転がすやで。
(特別意訳:翻訳者チクタクマン)
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