ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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静かなる眠りと一件落着

 

 大激闘の一週間が終わり、ようやくニャルが家に帰ってきた!!!

 

 ニャルは多少ボロついていたが、いつも通りの美貌にテンション。

 元気よく昼の探偵事務所の扉を潜った。

 

「ただいま戻りました!もーあのすやすやソング強情でしたよ!鼻面踏みつけてやったら凄い罵倒してきて!」

 

 トルネンブラさんの鼻面ってどこのこと…?

 

 と、思ったが席で半分とろけてる俺は返事ができず、ちろっと触手を振って挨拶した。

 そんな俺にすかさず紅茶を出してくれるできる信者、マモーさん。

 でもテロテロな俺への心配から涙ぐんでいる。

 

 降谷さんはソファで撃沈していて、諸伏さんにヨシヨシされている。

 無事なのはコナン君と星の精くらいだ。

 

 ニャルが訝しげに首を傾げた。

 

「あれ、やっぱ元気ないですね我が夫。外から見た感じもしおしおでしたけど」

「……よく場所わかったな…適当に逃げたのに。というか普通に俺の神域入ってくるじゃんけん」

「我が夫のことならなんとでも。というか、中に羽虫を抱え込んで何やってるんですか。寄生虫をペットにするのは流石にキモさの度を越してますよ」

「うるせー……」

 

 俺はしなしなの触手をテロンと垂らして抗議した。

 

 

 現在、探偵業務は休業中だ。

 そんなことできる余裕はないからな。

 俺たちは探偵事務所を使って、地球を神域に隠したことによる影響への対策に奔走していた。

 

 既に政府で対策本部が設置されているから、そこに連携する形になる。

 

 俺はノタノタとなんとか起き上がって、深く重いため息をついた。

 そして両頬を叩いて気合を入れて、肩を回す。

 

「仕方ないだろ。このままじゃ人間社会への影響がデカすぎるんだから」

「それにしても面倒見すぎじゃないです?この星、貴方の権能まみれなんですけど」

 

 ニャルが目を三角にして怒るから、俺はむっつりと「そんなことないし」と口をへの字に曲げた。

 

 まず、喫緊の課題だったのは発狂者だ。

 

 日本を中心に、アジア各国まで巻き込んで発狂者が救急搬送されている。

 その数は凄まじく、流言飛語は制御できないレベルに達していた。

 新型のウイルスだとか、危険な化学薬品が散布されたとか。

 ともかく不安にまみれた社会によって、経済活動も停滞を避けられなかった。

 

 だから、俺は発狂者へと「祝福」の名を冠したSAN値回復魔術をかけることにした。

 

 膨大な数の発狂者全員にだ。

 前段階として政府との調整もあり面倒ではあったが、こればっかりは仕方ない。

 SAN値回復はかなり熱量のいる魔術なので、それだけの数こなすのも一苦労だった。

 

 次に影響が出たのは海洋関係だ。

 

 大量の魚などの死骸が流れ着いて、それは明らかに異常気象の様相を呈していた。

 海流が弱まった影響で、生態系が激変したのだ。

 

 海流は濃度、温度、風、自転あたりで決まってくる。

 風と濃度と温度による循環はまだある。

 しかし自転による海流がなくなったことで、既存の海流が大きく変化したのだ。

 

 このままでは大量絶滅、水産物への影響は避けられないだろう。

 

 そこで、慌てて俺の方で海の生態系の再生プログラムを組んだのだ。

 

 時間軸を遡り、自転があった頃の海流・海水温に戻す特別魔術だ。

 素直に自転を加えることも検討したが、なにせここは俺の神域だからな。

 

 下手に「意味を持った動作」を加えたら、外に出た時手がつけられなくなる恐れがある。

 これは概念的空間ならではの難しさだろう。

 

 まあともかく、生態系を整えたら、次なる行動は海洋生物群の復活だ。

 

 人間に知られることもなくそっと絶滅してしまった生物群とかを蘇生してなんとか形にする。

 人間と違って魂を気にしなくて良いから、適当に過去の時間から複製してポンポン作成していくのだ。

 どうやらバクテリアやプランクトンにも影響があったようで、その辺を含めると海は大荒れだった。

 

 

 などと語り終えると、ニャルラトホテプがさらに目を釣り上げて不満を見せた。

 

「それだけじゃないですよね。風にも権能が仕込んであるの見えてますよ」

「いやだって、降谷さんこれだしさ」

 

 ベッドでうんうん呻く降谷さんを指差すと、ニャルは「化身に風の管理を任せてたんですか?」と問いかけてきた。

 俺は深く頷いた。

 

 三日目にして降谷さんが撃沈したのは、正直想定外だった。

 

 地球全土の風の調整は、あらゆる意味で難航した。

 世界各地で強風による事故、風力発電の不具合等が多発。

 風によって立つ波の調整も考慮しなければ海流に影響が出るし、ジェット気流はきちんと再現しないと航空関係に支障をきたす。

 

 いくら演算域を貸しているとはいえ、これは負担が大き過ぎたらしい。

 

 昼頃、降谷さんは庁舎で突然シャットダウンしてしまわれたのだ。

 

 そのままうっかり救急病院に運ばれて、息してるのに脈ないし血液取れないし心電図無反応で頭部CTも虚無という大事件が勃発。

 「幽霊患者」の異名をほしいままにして米花総合病院の伝説になってしまった。

 

 まあともかく、今は代わりに俺が風の運行をすることになった。

 

 それと、主戦場がすぐに太陽系から移ったから、太陽系の再建も同時進行で進めている。

 一刻も早く元の環境を取り戻すべきと言うのが政府と俺の総意だし。

 

 また、「月と星がないと夜道が怖い」と言う要望を受けて月と星も仮実装。

 「生物の創造ができるならついでに水産資源を増やして欲しい」と言われて、変なことが起きないように調整して増加。

 「今回の件に伴う経済不安に何かいい策はありませんか」と言われて軽く運気上昇の加護を広域付与した。

 

 あとそれから───。

 

 コナン君がくしゃくしゃな顔をして俺を非難した。

 

「降谷さんが倒れて黄衣さんしか対応できる人がいなくなっちゃったからさ、黄衣さん無限に安請け合いするんだよ。で、このザマ」

「我が夫。羽虫を甘やかさない」

「うす」

 

 ニャルラトホテプにガチ目に怒られて、しおっと悲しみに暮れる俺でおる。

 

 星の精は諸伏さんと一緒に降谷さんの看病をしてるので俺を慰めにきてはくれないようだ。

 悲しい。

 でも戦闘が終了したのは喜ぶべきことだろう。

 

「なんにせよ、俺は地球を元の場所に戻そうかね。事前に準備が出来次第予告なく戻すことは言ってあるし。そうすれば俺もお役御免だ」

「我が夫が羽虫如きにたかられてむしゃくしゃしてきました」

「どうどう。俺の体力が戻ったらチーズケーキ作るから。というかこれ…元はといえばニャルがあんな場所で喧嘩売ったからでは……」

 

 ニャルラトホテプは急に耳が聞こえなくなったようだ。

 呻く降谷さんをヨシヨシした後、シュバっと姿を消した。

 去り際にちょっと降谷さんを回復してくれたようだ。

 

 すり減っていた存在規模を補填され、虚な顔をして降谷さんが起き上がる。

 

「う……あれ、………風の操作してない!!!ヤバイ!?!?」

『おおお落ち着けゼロ。大丈夫、黄衣がやってくれたから!』

「な、……済まないッ!限界になる前に声をかけてくれと言われていたのに」

 

 珍しく降谷さんがガチ凹みだ。

 まあ、全ての風が止むイコールで人類にどれほど悪影響が出るかわかったものではないと言う話もあるからな。

 

 「いいってことよ」と俺は軽く触手をぴらぴらと振った。

 代わりに米花総合病院への言い訳は自分でしてくれよな。

 

 同時に組み終えていた魔術式を起動。

 地球を元の場所へと、元の運動エネルギーのままにそっと戻していく。

 静止状態からの整合性は魔術でとるから問題ない。

 事前に何回もエミュレートしてあるから、全てはスムーズかつ一瞬で完了した。

 

 あーーー疲れた。

 

 太陽系再建が一番疲れたかもしれない。

 第一に、純粋な大質量の再現だしな。

 加えて鉱物資源とかガス配分とか、その他諸々将来使うかもしれない資源はそのままあったほうがいいわけで。

 ミ=ゴの都市がある冥王星をそのまま再現するのが面倒臭かったが、そこも科学技術の宝庫なのでそのままに。

 

 俺は自然環境を支えていた魔術を解除した。

 こうして自然のあるがまま、元の通りの地球の完成である。

 

 俺はガンギマリの顔で頷いた。

 

「寝ます。今寝ますすぐ寝ます星の精の犬ベッド借ります」

『いやなんで星の精!?!?』

「ソファは降谷さんが使ってるじゃん。それじゃおやすみ」

【ゲタッ!?!?】

 

 小ぶりの触手ボールに変身した俺は、星の精の犬ベッドで丸くなった。

 星の精が凄まじく嫌そうな顔をしている。

 

 黄色が星の精のベッド取った……あとで洗う…。

 

 そんな年頃の女の子みたいなことを言っているとはつゆとも知らず。

 俺はぐっすりすやすや寝に入ったのだった。

 





・怪奇!幽霊患者!
米花総合病院の今一番ホットな話題。
急に警察が来て患者を引き取ったけど、あれ絶対幽霊だよ。いや怪異ってやつさ。
CTに何も映らなかったんだって。怖いよね。

・ベッド取られた星の精
お父さんにベッド取られた気持ち。
やだ……くさい……。
なおハスターはややシトラスの香水の香りがする。
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