ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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ベイカー街の亡霊〈のんびり仲を深める〉

 

 舞台の19世紀ロンドンに放り出され、コナン達は行くあてもなく橋の上でたむろしていた。

 

「ともだち。ほしのせーは困った。悪い奴をつかまえるのって難しい?」

「やるしかないさ。全員の命がかかってるんだから」

「くす………」

 

 白を基調とした春色のワンポイントが入るワンピースを揺らし、星の精は大層困った顔をした。

 髪と同じ桜を思わせる瞳が煌めいている。

 整った顔立ちは将来美人になるだろうことを予想させたが、長命らしい星の精の成人にコナンが立ち会えるかは謎なところだ。

 

 というかこの髪色、よく見れば星の精の臓物と同色だ。

 髪質のせいで気付かなかったが。

 

 さて。

 すでにゲームの目的はわかっている。

 ジャックザリッパーを捕まえろ。

 史実において結局逮捕されなかった連続殺人犯を、コナン達の手で捕らえねばならないのだ。

 

 とはいえ、権力もなく身元も定かではない子供の身でできることなど大して無い。

 

 ロンドンの霧と肌寒さが体力を奪い、園子が身を震わせて腕をさすった。

 

「寒いわねここ……実際に寒いわけじゃないんでしょうけど」

「ほしのせーの上着肩にかける?ちょっとあったかい」

「子供から上着取る趣味はないわよ。というか、アンタは大丈夫なの?」

「ほしのせーはとても強い。寒いの平気」

 

 園子は「あー……羽毛あるもんね」と微妙な方向での納得をしたようだ。

 コナンは星の精が内臓ぶちまけたような触手の怪物だと知っているから、若干苦笑する。

 星の精は宇宙を一匹で彷徨う肉食動物。

 おそらく相当な温度変化まで平気なのだと思われる。

 

 代わりに寒そうにしてる歩美に服をかけてやる。

 歩美はひどく嬉しそうに破顔した。

 

 薄着のままマッスルポーズする星の精に、諸星と呼ばれた少年がせせら笑った。

 

「はっ、間抜けそうな面じゃねーか。こんなんじゃ先が思いやられるぜ」

「むむ。ほしのせーは賢い。勉強もできる」

「どうだかな?」

 

 鼻で笑われて、星の精は涙目でコナンの後ろに隠れた。

 「あいつ意地悪してくる。大きいのに叱られろ」と頬を膨らませる。

 子供達も「あいつひでーよな」「星の精ちゃんは凄く頭いいもん!ね!」「そうですよ!」と口々に慰めている。

 少なくとも、先が思いやられるのは確かなようだ。

 

 そのとき、通信がつながるブツリという不快な音が奔った。

 

 空間に響くように阿笠博士の声が聞こえてくる。

 外部から割り込みをかけているようだ。

 

『聞こえるかね!そのステージでは深い傷を負ったり警官に捕まったら脱落するんじゃ!今いる場所はイーストエンドのホワイトチャペル地区!だから通りに沿って─────』

「ッおい博士!聞こえない!博士!」

 

 叫ぶが、向こう側に聞こえた様子はない。

 奇妙なノイズ音に阻まれ、声は遠くなるばかりだ。

 ハッキングに難航しているのかノアズアークが邪魔をしたのか。

 これ以上情報を得ることはできなさそうだ…と判断した。

 

 次の瞬間である。

 

 ふいに、轟音と共に足元が揺らぐ。

 息を呑んで足元を見る。

 コナン達のいる橋が、見せしめのように中央から脆く不自然に崩れていっているのだ。

 通常の物理法則に従った崩れ方ではない。

 

 慌てて蜘蛛の子を散らすように逃げ出すしかない。

 

 「うわぁ!」「逃げろ!!」と子供達が悲鳴をあげている。

 だが位置の関係でほんの少し、逃げ遅れた子が二人。

 このままだと落ちる、と直感する。

 

 そんなコナンの判断より一歩早く動き出したのは星の精だった。

 一番後ろで逃げ遅れかけた子を二人、むんずと片手ずつ掴み上げる。

 

「お前ら落ちる!星の精がもってやる!」

「うわぁあ!?お前っ!?」

 

 掴み上げられた諸星少年のグループの子がすごく焦ってバタバタ動いた。

 星の精に「うごくな!落ちる!」とピシャリと叱られてしおれている。

 

 崩れる橋から全員が逃げ延び、道で力なくへたり込む。

 園子が慌てて「あんた達!全員いる!?」と確認している。

 幸いなことに落下した子はいなかったようだ。

 インドア派の灰原が肩で息をしている。

 

 ぽーっとした顔で頬を染める諸星少年が、星の精をじっと見ている。

 視線に気づいた星の精に「なに?」と目を吊り上げると、諸星少年はぷいっと顔を背けた。

 

「片手ずつ二人持って走るって、怪力女かよ。脳まで筋肉でできてんのか?」

「っひどーい!星の精ちゃんはみんなを助けたんだよ!?」

「そうですよ!!!」

 

 歩美と光彦に責められて、諸星少年は舌打ちした。

 星の精が地面に下ろした子供二人が、少し動揺したように顔を上げた。

 

「あ、ありがとう…助かったぜ」

「私たち、君が助けてくれなかったらあれで脱落してたかもしれません」

 

 星の精はすごく得意げに胸を張った。

 園子がちょっと引き気味に星の精に声をかけた。

 

「しかしオウムなのにすごい力ね。両手に子供って、私でも厳しいわよ」

「ほしのせーは賢くて強い。えへん。みんなとっても軽い。筋肉つけろ。力あると便利」

「そういう問題?」

 

 園子に突っ込まれているが、星の精としてはとても真面目にアドバイスだったのだろう。

 助けられた子二人はうむ…と真面目に考えている。

 

 どんなに鍛えても星の精ほどのパワーは人間には出せない。

 コナンとしても、話半分に聞いて欲しいところである。

 

 コナンはやや頭をかいて肩を上げた。

 

「けど、外部からの通信はノアズアークに遮断されるってことは、外からの助けは期待できそうにねーな」

「ど、どうしましょう…何かヒントがあるといいんですけど」

「ひとまずベイカー街へ向かおう。大人の足でも二時間はかかるから、休憩を挟みつつな」

 

 ここはどうやら現実と小説を混ぜた世界観のようだ。

 コナンの父、工藤優作らしい作風の少し陰鬱でミステリアスな雰囲気だ。

 

 元太が「考えただけで喉乾きそうだぜー」としょんぼりした。

 だがクリアを考えれば一番の近道のはずだ。

 シャーロックホームズを示唆する単語を開幕であえて聴かせてくる以上、これはコナン達に向けられたヒントで間違いない。

 

 コナンが皆を先導するように歩き出した。

 「ここがホワイトチャペル地区だとしたら…道は大体わかるから、みんな着いてきて!」と声をかけたのだった。

 

 

 

 

 

 ひたすら歩くこと二時間半。

 子供の足で歩き詰めはやはりこたえたようで、いく人かの子が音を上げている。

 

 現在はようやくベイカー街221番地に到着したところだ。

 道中へばった子は休憩を挟みつつ、星の精と園子が代わる代わるおんぶをして乗り切った。

 

 道中で警官達が「またジャック・ザ・リッパーの被害者が出た」と話しているのを聞いたため、なるべく急ぐ必要を感じたためだ。

 夜に出歩くと確率で襲われる、などだった場合厄介だ。

 

 なお、星の精の怪力を見て園子も「子供にだけおぶらせて私が何もしないのは沽券に関わるっての!」と頑張り出した感じである。

 

 扉の前で子供を下ろして、星の精は「お前大丈夫、足痛くない?」と心配そうに声をかけた。

 狂言師の息子だと言うその子は、柔らかく笑って「助かりました。本当にありがとうございます」と表情を緩めたようだ。

 

 なんだか面白くなさそうな諸星少年がむすっとしている。

 もう一人の子が「俺もやっぱもっと体力つけないとなぁ」と肩を回した。

 

「諸星達とサッカーはやってっけどよ、父さんがうるさいんだ。政治家は体力と精神力が命だって。いついかなる時も笑顔でいられる体力を養えってさ」

「滝沢、塾と習い事で鮨詰めじゃん。これ以上どうするんだよ」

「あ゛ぁーー、ゲームは捨てたくないぃー!」

 

 コナンはちょっとだけ気の毒になった。

 生意気なガキではあるが、彼らなりの悩みがあるということなのだろう。

 それは少年探偵団も理解したのか、「なんというか、個々人には事情があるって奴ですね」「意地悪なだけじゃないかも」とヒソヒソ話し合っている。

 

 会話の合間に、チラチラと諸星少年が星の精を見ていることにコナンは気がついた。

 

 この辺りでようやくコナンもピンと来た。

 諸星という子は、星の精を好いているのだ。

 ……にしては嫌われにいっているとしか思えない態度だが。

 

 実際、この二時間で両手で数えられないほど皮肉と暴言を浴びせられ、星の精は酷く彼を嫌っている。

 今も視線に気づいた星の精がプイッと顔を背けた。

 

 それでも、道中疲れ果てた諸星少年をむすっとしつつ背負ってやっているあたり、星の精の優しくて出来た人格を表している。

 

 ともかく。

 たどり着いたホームズの居住地にて、まず園子がドアノッカーを叩いた。

 

 少しでも大人に見えた方が不審に思われないからだ。

 加えて単純に、コナン達ではドアノッカーまで手が届かない。

 

「ごめんください。ホームズさんはご在宅ですか?」

「あら、あなた達は?」

 

 扉から現れたのは姿格好からしてハドスン夫人だろう。

 園子がホームズに会いたいと言う旨の話をすると、困ったように眉をハの字に下げた。

 

「困ったわねぇ。今、彼らは出張で不在なの。ダートムーアというところよ」

「!!!バスカヴィル家の犬事件か!」

 

 コナンの叫びに、皆がうーんとピンとこない顔をした。

 コナンの服の裾を掴む星の精が、自慢げに笑って胸を張った。

 

「ほしのせーそれ知ってる!友達が言ってたやつ。犬に光る色塗った悪い奴が出てくる!」

「そう。その事件だ。星の精はよく覚えてて偉いな」

「くすくす!そう!星の精は偉い!」

 

 コナンに撫でられニコニコする星の精に、面白くなさそうに諸星少年が舌打ちする。

 周りの子が「おい諸星さっきから変だぜ?」「どうした?風邪気味か?」と問いかけているようだ。

 

 なんにせよ、ホームズは頼れそうにないのは確かだろう。

 バスカヴィル家の犬において、ホームズとワトソンはロンドンをちょうど離れてしまっているのだから。

 

 その代わりに、ハドスン夫人に事件資料を見せてもらえるといいのだが。

 

 コナン達の申し出にハドスン夫人は瞬いたあと、コナン達を快く中に入れてくれたのであった。

 





・その頃外では
ゲームは生中継中。
警視庁警務主任さんが目暮警部にコンタクトを取ってコントロールルームにIN。
孫が煽り散らかしてる子が、神が面倒見てる子だと知って卒倒しそうになってる。
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