ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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ベイカー街の亡霊〈乱闘〉

 

 コナン達はダウンタウンのトランプクラブに来ていた。

 

 これは、ホームズの下宿で手に入れた情報から辿り着いた場所だ。

 

 詳細は省くが、どうやら巷を騒がせるジャック・ザ・リッパーは、かの犯罪界のナポレオン、モリアーティ教授と繋がっているらしい。

 そのため、その部下であるモラン大佐がよく通っているというトランプクラブに足を運んだのだ。

 

 相手はならずものの集団だ。

 それなり以上に危険をはらむ。

 配置された資料からして、これは導線通りの行動だと思われる。

 ホームズ宅にあった資料には、ご丁寧にモラン大佐の顔写真まで添えてあったのだ。

 接触しろと言う意味で間違いない。

 

 コナンは皆を押し留めて、裏口から中へと侵入した。

 念のため星の精も来てもらっている。

 

 今のコナンにはキック力増強シューズが意味をなさない。

 万が一荒事になった時切り抜けるための戦力が必要だったからだ。

 

 星の精はブスッとした顔で自分の手足をつついた。

 

「ほしのせー、あんなに歩いたのに透明にならない……お腹いっぱい食べたから?」

「人間は透明にならないんだよ。それより声を抑えて」

「っ!!ほしのせーは静かにする…!」

 

 自分の口を押さえたあたりで、その後ろから諸星少年ともう一人が入ってくる。

 

「おいメガネ、どうなんだよ。何かわかったのか?」

「……まだだよ。モラン大佐はそこにいる」

 

 ふぅん、と反発するように諸星少年が目を細めた。

 星の精の前でいいところを見せたいのかもしれない。

 

「力尽くで吐かせられねーのかよ」

「まさか。子供向けのゲームに大人の荒くれが十人以上出てるんだ。端っから武力でクリアできるように設定されてるはずがねーよ」

 

 たとえば、敢えてクリア不可能にすると言う目的でもない限りは、だが。

 

 その瞬間。

 ザザザ、と言う奇妙なノイズが響いた、

 同時に不自然に荒くれ者達の配置が移動する。

 

 瞬間移動したかのように裏口を覗き込む男が出現し、荒くれ者は叫び声を上げた。

 

「ここに子供がいるぞ!」

「っなに!?」

 

 小太りの男が声を上げると同時に、一斉に皆が立ち上がった。

 「おいおい、ガキが何の用だ?」「オイタは俺らが躾けないといけねぇなあ?」と悪質な笑みを浮かべて近寄ってくる。

 

 コナンは息を呑んで思考を巡らせた。

 状況の不自然さは後で考えるとして、今は逃げるしかない。

 だが、地理も不確かな場所で、大人の足相手に逃げ切れるはずがない。

 その上、諸星少年ともう一人が恐怖で固まってしまっている。

 

 状況があまりにも悪い。

 

 荒くれ達を静止し、歩み寄ってきたモラン大佐がコナン達を一瞥する。

 いく人かの男達が退路を封じすべく裏口へ向かおうとして外へ出た。

 そして園子たちと遭遇したのか、にわかに外も騒がしくなる。

 

 もはや一刻の猶予もない。

 

 訝しげな顔をするモラン大佐に、諸星少年が悪手を放った。

 

「……あ、アンタ、モリアーティってやつを探してる。あんた、居場所を知ってんだろ?教えてくれよ」

「!!!どこでその名を知ったかは知らんが、生かしてはおけんな」

 

 「この小僧どもを縛り上げろ」と冷徹にモラン大佐が命令する。

 犯罪界のナポレオン、モリアーティ教授の名は厳に伏せられている。

 モラン大佐は是が非でもコナンたちを捕らえ、情報元を吐かせようとするだろう。

 

 ゆっくりと、ニヤついた荒くれたちが近寄ってくる。

 星の精が前に出て、それを制止するように睨み上げた。

 

「友達に触んな。痛いことするぞ」

「おいおい嬢ちゃん、おままごとか?」

「ギャハハハハ!こいつはいい!俺たちが口の利き方ってやつを教えてやるよ!」

 

 声と共に、ついに乱闘が始まった。

 最悪の展開だ。

 

 星の精が叫んだ。

 

「友達はみんなを連れてくる!星の精が悪い奴らぶっとばすから、扉を閉めれば後ろは安全!」

「っ、頼んだ星の精!」

「おいっ、あいつを見捨てんのかよ!!」

「全員脱落する前に表で待ってるみんなを集めて、星の精の後ろに固まるんだ!俺らは邪魔にしからならない!」

 

 諸星少年の怒声に、同じく歯噛みしてコナンは叫んだ。

 

 星の精が踏み込んで、ニヤニヤする荒くれ者の向こう脛を刈り取る。

 バランスを崩し、男は容易く壁へと激突した。

 倒れ込んだ男を足場に跳躍。

 後ろの男を顎を強烈に蹴り上げ、昏倒させる。

 

 どことなく仮面ヤイバー的な動作だ。

 それを可能としているのは、星の精の身体能力と動物的センスに違いない。

 

 思えば、オウムの時も飛行の仕方も二足歩行もあっという間に習得していた。

 人間の体になったのは今日が初めてだというのに、その野生動物じみたしなやかな動き。

 それは狩人の本能だろうか。

 

 瞬く間に三人を制圧し、にわかに男達が色めきたった。

 

 コナンは「いくぞ!」と諸星少年を連れて駆け出した。

 

 外へ出ると、表では子供達が逃げ惑っていた。

中で揉め事が起きているので男達の人数は少ない。

既に少年探偵団3人がやられている状況だった。

 虹色に輝いた元太、歩美、光彦が消えていく。

 

 コナンは必死で生き残りに声をかけた。

 

「オメーらこっちだ!」

「がきんちょ!無事だったのね!」

「園子姉ちゃんも!早くこっちへ来て!」

 

 コナンの叫びに、狂言師の子、銀行頭取の孫、そして園子と灰原が必死に駆けてくる。

 男が追いかけてくるので、その前に裏口の扉を閉めて籠城の姿勢に入った。

 

 バンバンと裏口の扉を叩く音が響く。

 

 その間わずかな間に、星の精は大半の男を伸してしまったらしい。

 

 死屍累々の男たちを目の当たりにして、モラン大佐が戦慄と共に後退りした。

 

「バケモノめ……!」

「しつれい。ほしのせーは可愛い。みんなそう言ってる。お前がヤイバーみたいに強くないだけ」

 

 誇らしげな星の精が胸を張っている。

 裏返った空飛ぶ臓物みたいな姿は間違っても「可愛い」という文字列では表現できないが。

 所作は可愛いのは確かなので、星の精の自己肯定感は高まる一方ということらしい。

 

 他の男達も、その異様な強さに慄いてかかってこようとしない。

 避難してきた園子が「あのオウムちゃんこんなに強かったの!?」と驚愕の声を上げたようだ。

 

 コナンが口を開こうとした、その時である。

 

 表の扉がパタリと開き、どこか場違いな空気を伴って老人が一人、トランプクラブへと入ってくる。

 みなりからして、どうやら御者のようだ。

 

「皆様、モリアーティ様がお待ちです。どうぞこちらへ」

「……!?お、お待ちください!!」

「口は慎まれますよう。二度は申し上げません」

 

 モラン大佐が制止しようとして、御者の男性に睨まれて口を噤む。

 

 この時点で御者の老人について一定程度の推察が立てられた。

 モラン大佐が敬語を使うのはモリアーティ教授に対してだけ。

 この御者の老人がモリアーティ教授である確率はある程度まで高い。

 近づいてコロンの匂いを確認すれば、より核心は強まるだろう。

 

 星の精が首を傾げてコナンに問いかけた。

 

「あゆみ達がいない。どこか隠れてる?」

「……脱落した。あいつらの命は、俺たちにかかってる」

 

 星の精は息を呑んで、半べそで目を潤ませたのだった。

 

 

 

 

 

 その頃、現実世界にて。

 俺はコントロールルームで画面を眺めながら、ふむと顎に手を当てていた。

 

 星の精め、やりおるわ。

 

 俺は確かに星の精の数値データを魔術でいじった。

 だが、逆に言えばそれだけである。

 星の精という種族の基礎スペックは高いが、それは種族的な意味でしかない。

 戦闘センスはまだ別問題。

 狩りの苦手なライオンがいるように、その辺は星の精にも個体差がある。

 

 これまで星の精も健やかに育ってきたわけだが、人間としての生活のみ。

 その前は苗床にいたが故に、あの子は狩りなんてしたことがないはずなのだ。

 

 それが、初戦からこれとは。

 実は生まれながらに戦闘力が高いエリート星の精で、天才的な狩りの才能があるのかもしれない。

 

 実際、あれは格闘ではなく狩りであった。

 圧倒的強者が、いかに消費を抑えて獲物を一撃で刈り取るか。

 そういう動きにほかならない。

 子供向けのゲーム内だからか映像的に死者は出なかったが……明らかに全員息の根を止めていた。

 しかも星の精本人はそれに気付いてないと来た。

 

 ううむ、これはきちんと教育し直さねば。

 

 コントロールルームには、重い空気が流れている。

 もう既に半数以上の子供が脱落した。

 

 外部からの救助は不可能。

 ハッキングの試みは一度行われたが、どれも失敗して警告が行われている。

 手を出せば子供達の命はない、と。

 

 日本の要人が集まるこの場所において、念のため警察の規制によってTVメディアの放映は固く禁じている。

 だが、大事件自体は既に出回っている。

 ネット上では憶測も出回っているようで、早期の収束が求められている状況だ。

 

 警務部長さんが俺に少しだけ目配せして、「少しいいでしょうか?」と俺に声をかけた。

 

「はい、どうかされましたか」

「喉が渇きました。少しだけ飲み物を買いに行きませんか?」

 

 これが口実なのは明らかだった。

 俺は頷いて、コントロールルームから警務部長さんと共に退出する。

 

 警務部長さんの顔色が青い。

 孫の命の危機に、失敗に、警察官としての職責に、極度の緊張がかかっているのだろう。

 

 廊下の人気のない場所まで来たあたりで、第三者、すなわち降谷さんがこちらに駆けてきた。

 

 警務部長さんに敬礼したあと、ほっと安堵の息をついて降谷さんは肩を落とした。

 

「人工知能が子供達を人質にテロを起こそうとしてると聞いて、君が暴発しないか本当に心配だったよ」

「失敬な。人工知能は人間の被造物だから俺も大切にするってば」

「君から流れてくるイラつきが僕の心をささくれ立たせてた」

「申し訳ありませんでした」

 

 俺は素直に頭を下げる。

 心配がむしゃくしゃに変わってただけやねん。

 降谷さんが深いため息をついたようだ。

 

 警務部長さんがその緩い空気に僅かに体を弛緩させてから、恐る恐る口を開いた。

 

「よろしいでしょうか。神々よ」

「ん、あの場からあえて抜け出したということは、俺に何かあったんだよね。どうしたんだ?」

「………あなたのお力で、子ども達を救ってくださいませんか」

 

 その言葉は無力感と、藁にもすがる思いが込められていた。

 この各界の著名人の子が集まる場で、この大事件は日本を揺るがせることになるだろう。

 ネットに対する不信、警察に対する不信。

 あらゆる悪影響が想定されうる。

 

 それに何より。

 誰だって自分の子孫は大切だ。

 警務部長さんだって、自分の孫が今まさに命の危機に陥っているのだ。

 藁に縋ることになんの不思議もないだろう。

 

 俺は肩をすくめて口を開いた。

 

「それは、まあ、最後の砦ぐらいにはなるから安心してくれ。単に人間の業にまで首を突っ込むのは神的にどうなのかなと思ってさ。本気で子供が死にそうになったらなんとかするから、今は見守るよ」

 

 俺の言葉に降谷さんが半目で睨め付けるような顔をした。

 

「………急に人外の倫理観を持ち出すのはやめてくれないか。早く解決したいんだが」

「わかるけどさぁ、できるだけ人間側で頑張るべきじゃろ。子どもが可哀想だから結局最後は助けちゃうんだけど」

「君の人間に駄々甘なところは嫌いじゃない」

 

 降谷さん的にはパパッと解決して欲しいらしい。

 そりゃこんな事件、早く収束したほうが警察も国民も人類も嬉しいに違いないか。

 難しいことだ。

 

 俺はうーんと腕を組んで警務部長さんに頷いた。

 

「まあ、命は助けるから安心してくれ。最悪の事態にはならない」

「……ご慈悲に感謝します」

「とりあえず星の精とコナン君に美味しいもん作って帰還を待ってようか。というか俺が手を出さなくともさぁ、いくらデスゲームでも一人ぐらい生き残るって」

「君、そのどんぶり勘定なんとかならないのか。僕がどんな気持ちでこの場に駆けつけたと思ってるんだ」

「え、なんで?なんか心配事あった?」

「最悪怒り狂った君が大暴れ顕現してるかと思ってた」

 

 そんな、ニャルじゃないんだからそんなことするわけなかろうに。

 俺は憮然として口を尖らせた。

 

 子供が傷つけられるの地雷かって?

 それは……そうだね……ちょっとむしゃくしゃしてますけど……。

 

 そのように、俺は比較的まったりと彼らの様子を見ていたのだった。

 





・ノアズアーク
割と本気でロンドンのプレイヤーを潰そうとした。
変な数値操作されているし放っておく手はない。
が、星の精がやけに強くて生き残ってしまった。

・星の精
エリートサイヤ人とかそういうやつ。
あくまで格下を刈り取る狩人なので、互角の戦闘には向かない。
星の精としてまっとうに育てば、大きく健康状態の良いモテモテ狩り上手星の精になったかも。
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