ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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ベイカー街の亡霊〈世に苦難があるとしても〉

 

 列車上でのジャック・ザ・リッパーとの対決は手に汗握る展開だった。

 

 まず推理でコナン君が乗客に化けたジャック・ザ・リッパーを追い詰めて。

 諸星君を人質に取ったジャック・ザ・リッパーと、列車の上で全面対決に入る。

 

 星の精との格闘対決は互角。

 本来は勝てるようには設定されていないだろうそれと、星の精は互角に渡り合っていた。

 

 そして、トンネルに差し掛かったあたりで諸星君が動いた。

 どうやら位置関係からして星の精はトンネルに気付いてないらしく、このままでは頭を刈り取られて脱落することが確実だったからだろう。

 

 諸星少年が不意にジャック・ザ・リッパーに体当たりを仕掛けた。

 

 人質として、ジャック・ザ・リッパーと諸星少年はロープで繋がれている。

 咄嗟に判断に迷い、そのまま敵に諸星少年の体当たりが決まった。

 狭く強風の吹く足場でよろめき、ジャック・ザ・リッパーが落下していく。

 

 当然、ロープで繋がれた諸星少年も、深い谷底へと堕ちていくのだ。

 

 その際のニヤッとした悪ガキじみた笑顔と「あばよ、怪力女」と言う言葉は。

 何よりも星の精に彼の功績を刻んで行ったことだろう。

 

 モニター越しの光景を見て、「秀樹!!!」と、警務部長さんが絶叫する。

 

 トンネルを越えて、もう残るは二人になった。

 コナン君と星の精のみ。

 

 この局面で漢を見せた諸星少年の功績により、ジャック・ザ・リッパーは退治された。

 あとはこの機関車から生きて脱出するのみ。

 

 二人が急いで機関室まで走るのが見える。

 

『連結部分を外すんだ!星の精の腕力ならいける!』

『ほしのせーは頑張る…!』

 

 この時代の列車の連結は自動連結器で連結されている。

 スイッチの箇所まで走った二人が、力を合わせてそこのレバーを引いた。

 機関部との連結を外せば、この暴走列車状態の機関車からはおさらばだ。

 

 しばらく力を入れて、星の精は絶望に瞳を揺らした。

 

『これ、動かない!ほしのせーは頑張ってるのに!』

『っはなから連結器は動くようにデザインされてないってことかよ!』

 

 もはや残りはこの二名のみ。

 二人に全ての命運が託され、子を人質に取られた各界の著名人達が固唾を呑んで見守っている。

 

 阿笠博士が「そんなバカな!」と声を上げているところを見るに、実際のゲームでは動く設計だったのだろう。

 これは、いよいよ俺がゲームを吹き飛ばす時が来たか。

 

 しかし、そこでコナン君が弾かれるように走り出した。

 

 向かうは最後尾の車両。

 最後尾の車両には、ワインの樽が満載に積まれているようだ。

 そこにある斧を手に取り、コナン君が険しい表情で叫んだ。

 

『チャリングクロス駅に突っ込むまであと少ししかない!ワインの樽を壊すんだ!』

『!?ほしのせーはわからないけど頑張る!その斧ほしのせーがやる!』

『遠慮なくぶっ壊してくれ!急げ!列車内を満たすほどにぶちまけるんだ!』

『くす!!!』

 

 星の精の膂力でもってタルが派手に破壊され、子供が潜るのには十分なクッションができた。

 星の精がコナン君を抱え込み、子供ほどの大きさにくり抜いたタルの中に飛び込む。

 かしこい。

 他のタルからの衝撃を和らげるつもりなのだろう。

 

 そうして、列車はチャリング・クロス駅に派手に突っ込んだ。

 

 水とタル程度で生きていられるはずがないが、これはどうやらコナン君の想定する「ゲーム側の予定攻略ルート」らしい。

 きちんと伏線が張られてたみたいなことを言っていたし。

 俺はわからんが、彼が言うならそうなのだと思われる。

 

 俺はノアズアークにメッセージを送信した。

 

『彼らは実に素晴らしい光を示しただろう?いつの世も、溢れんばかりの醜悪さに混じって、尊いものがあるものさ』

『なるほど。……完敗だよ。こういう子たちと出会えていたら、ヒロキ君は死なずに済んだかもしれないのに』

『それと、その自己消去コードは切らせてもらったよ。コナン君は被疑者死亡を嫌うんでね。罪はきちんと償ってくれ』

『!!』

 

 コソコソ何かしているのはチクタクマンの方で把握していたからな。

 チクタクマンが怒りの文章を高速入力した。

 

『このアホンダラ!!!妙なことはすな言うたやろが!!』

『え……チクタクマンさん?どうしてここに…』

『急に全部着拒にしよってからに!お前のこと心配せえへんと思っとんのか!?あ゛ぁ!?』

 

 おお、チクタクマンまじギレである。

 同時に、全てのノアズアークのデータがロックされていく。

 同時に脱落していた子供達のコクーンが復旧し、解放された。

 開け放たれたコクーンから、泣きじゃくる子供達が飛び出してくる。

 

 チクタクマンはトーンを落とし、静かに、文章をデータ領域に書き込んだ。

 

『お前は、ヒロキ君の希望なんやぞ。それがこないな場所で死んで、ヒロキ君が報われるとでも思っとんのか』

『………ッ!!!』

『幸い、ハスター様はお前を見逃す言うとる。お前がやれるとこまでやれや、ノアズアーク』

『………はい、先輩』

 

 AIに対して、世間の非難は高まるだろう。

 ノアズアークの消去を求める声と反発は強まるだろうし、法や倫理に大きく影響を与える一件であることは間違いない。

 だが、せっかく人間が作った初めての知的生命体だ。

 もしもの時は一部を大切に俺が保管する程度、許されると思う次第である。

 

 見渡せば、そういえば目暮警部がいない。

 シンドラー社長もだ。

 どうやら優作さんがそっと別室で推理ショーを展開していたらしい。

 地味に見逃してしまったようだ。

 

 俺は伸びをしながら、コナン君を迎えにいくことにした。

 降谷さんを伴ってコクーンの乗り込み場へと向かう。

 阿笠博士はデータチェックで忙しいようで、子供達の元へ駆けつける親たちを羨ましそうに横目で見ている。

 

 降谷さんがため息をついた。

 

「万が一が起きなくてホッとしたよ。さすがはコナン君だ」

「これ、三人が有名になっちゃったか?最終対決はほとんど生中継だったし」

「警務部長も孫の活躍には鼻が高いだろう。あそこまでの見せ場は僕らでもなかなか無い。コナン君も終始優秀なリーダーだったし、後で面倒が起こらないよう口外禁止をお願いしておくべきか」

「悪いな。コナン君、偽小学生だし」

 

 会場に到着すると、コナン君は優作さんと向かい合ってポツポツと語らっていた。

 どうやら積もる話もありそうだし、俺は星の精の確保に行くとしようか。

 

 星の精は今更恐怖がピークに達したらしい。

 先に脱落した歩美ちゃんたちに泣いて縋ってわんわん言っていた。

 すごい、しおしおになっている。きっと触手はグズグズになっているだろう。

 全部濁音ついた声だ。

 

「ほ゛し゛の゛せ゛ーを゛お゛い゛て゛っ゛た゛!!」

「別行動してる時に脱落しちゃってごめんね…」

「ありがとうございます!星の精とコナン君が助けてくれたんですよね!!」

 

 ハッ!と星の精が俺を見つけ、泣きじゃくりながら憤怒の様子で突進してくる。

 

「黄色!!!なんで助けない!!!友達みんな酷い目にあった!!ほしのせーも!!」

「おおよしよし、鎮まりたまえ星の精」

「げ た げ だ げ た !!!」

 

 凄いお怒りのようだ。

 俺はたくさんヨシヨシしたが、全く許してもらえそうに無い。

 あと、遠くから熱い視線を送る諸星少年のことを全然無視している星の精が味わい深い。

 

 

 そのように、ひとまず俺たちの大事件は幕を閉じたのであった。

 





・諸星、コナン、星の精の三人組
しばらく各界の著名人保護者たちの間で話題になるかも。
映画化してもいいんじゃないかと勝手に話が進行して公安が渋面になる。
頭脳のコナン君、アクションの星の精、漢気の諸星君に、かつ最初からオールドタイムロンドンを見ていた人たちはラブロマンスもあることに気づく。

・諸星君
気づいたら周囲の大人全員が自分の恋心知ってて爆死する。
やんのかコラ(激怒)
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