ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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隻眼の残像〈爆散〉

 

 事件の詳細に関しては工藤君に任せているので省くとして。

 

 要は10ヶ月前、大和警部は雪崩に巻き込まれた。

 長野県警の暴走機関車たちはそれにより制御を失い、諸伏兄は所轄に飛ばされ由衣さんは嫁入りした。

 で、その時の事件で起きた「何か」か、今回の事件に関わっていると。

 

 刑務所で多少の情報収集ののち、大和警部は息をついて口を開いた。

 

「俺はこの後また未宝岳に行ってみるつもりだ。どうも俺の記憶がこの事件の鍵みてぇなんでな」

「うぅん……無理しないようにな。あんまり戻らないようなら俺も手を貸すから」

 

 俺は眉をハの字に下げて進言した。

 これはSAN値の絡まない純粋な外傷による忘却だし、俺なら記憶を戻せるだろう。

 だが自分で取り戻した方が馴染みが良いのは確かだ。

 

 その言葉に由衣さんがいきりたった。

 

 「私も行くわ敢ちゃん!」「お前は来るな上原!」「私は大和よ!」と言い争いが勃発。

 有識者の諸伏兄が「あれは照れくさいと双方が素直になれないことを示しています」と解説した。

 うむ、良い景色だ。春だなぁ。冬だけど。

 

 工藤君がずいっと間から顔を出して笑った。

 

「僕も未宝岳に行って良いですか。現場を見ておきたくて」

「ちょっと新一、デートの邪魔になっちゃうわよ!」

「デートじゃねぇ!!!」

 

 さらに諸伏兄が満足げになっている。

 諸伏兄が煌めいて見えるようだ。ようやく実りの時を迎えた農家さんみたいというか。

 

 星の精が「ほしのせーは友達といる。友達はほしのせーが守る!」と胸を張っている。

 蘭ちゃんはついて行こうとして、毛利探偵が心配でやめたようだ。

 ううむ。毛利探偵、明らかに気合いが入りすぎてるもんな。

 

 俺は降谷さんに声をかけた。

 

「俺たちはどうする?」

「その辺に宿をとって今日は一泊するで良いだろう」

『なら俺大きい温泉と信州牛があるところがいい!』

「と、ヒロが仰せなのでその方針で決定した。黄衣君も異論はないな?」

「無いですけどぉ」

 

 諸伏さんが大勝利ダブルピースをしている。

 降谷さんは頻繁にこうして諸伏さんに甘い時があるんだよな。

 

 と、俺もそろそろ仕事の時間だ。

 

「あ、先にホテルに行っててくれ。俺はアフーム=ザーに一言言ってからホテルに戻るよ」

「………やはり近いのか?」

「今太陽系に入ったところ。もう地球の裏側は昼間みたいに明るいはずだ」

 

 アフーム=ザーの光だ。

 常時はそれほど光るやつでは無いので、単にテンションが高いのだと思われる。

 まったく、あの陰キャめ。ボコボコにしてやらねば気が済まない。

 

 じゃ、と分かれて長野県警から出て、人目のないところで飛び立つ。

 太陽系など俺の「移動」の権能を駆使すれば一瞬でどこにでも行ける。

 

 そういえば、これは余談なのだが。

 降谷さんが飛行機事故を防いだ事件以降、全国の航空会社が俺の加護に注目してきているようだ。

 加護を求めて偉い人が俺の神社を訪ねて来たり、流れを受けて船の会社も相談に来たり色々あったからな。

 

 俺も「移動」の権能を持つ神なので、旅の安全を守るのに否やは無い。

 事故は誰にとっても幸せではないことだ。

 現在政府と協議して、ハスター保険として事故時の命を護る制度を考案中である。

 

 特に自動車を対象にした必須の保険にしようと考えているらしい。

 比較的負担の大きい事業だが、これは珍しく降谷さんも乗り気な模様。

 親友を居眠り運転による交通事故で亡くしているからこそ、思うところがあるのだろう。

 

 そんなことを考えながら太陽系外縁部に到着。

 陽気に遠足気分のアフーム=ザーを視認する。

 すごく光っていて上機嫌そうだ。

 

 俺はひとまず挨拶がてら「魂の撃滅」を15発ほどぶちかまし、アフーム=ザーのそばを掠めるように威嚇射撃した。

 

 威力を絞った極大の呪詛、魂を直接抉り取る究極の攻性魔術が乱舞する。

 一つでも直撃すれば、たとえ旧支配者であろうと結構な痛みになることだろう。

 

 シュンッッッとアフーム=ザーの光が消える。

 

 オイ、デュエルしろよ。

 俺が触手全部で派手に咆哮すると、アフーム=ザーがのけぞってチカチカ瞬いた。

 流石に恐れ慄いているようだ。

 

 いや、俺の噂聞いたことないのかよ。

 なんで「どうして急にそんな酷いことするの…?」みたいにちいかわのふりしてんだ、旧支配者のくせに。

 

 それでも出て行かない。

 そのままの位置でチラチラ地球を見て、逃げるのを躊躇っているようだ。

 

 おいおい、もう殺すしかなくなっちゃったよ……。

 どう思います父上。罪深いと思いませんか???

 おお偉大なる父上あいつに裁きの鉄槌を。

 

 俺がカチ切れていると、その瞬間。

 

 ズイ、と。

 不意に虹色の泡が質量を伴って顕現。

 アフーム=ザーをぶん殴ってから歪なサムズアップの形を取り、そのまま俺を転がして消えた。

 

【……????????】

 

 俺は転がされて虹色のネトネトだらけで疑問符まみれになった。

 最高位の神に殴り飛ばされ、爆散したアフーム=ザーの残骸が宇宙に散らばっている。

 

 何何何何何怖い怖い怖い怖い!!!

 

 多少神に祈ったけどそんな即物的に現れることある?

 というか内心だぞ。

 まさかヨグ=ソトースともあろうものが数多ある生命のうち俺の思考だけピンポイントで見てんの?

 流石にプライバシーの侵害だぞ。

 

 あっ、再び虹色の泡が現れて俺をたくさんコロコロし始めた。

 なんだかドロドロと元気のない泡だ。

 

 やっぱ内心を読んでて謝罪に来たらしい。

 

 いやなんかすんません…言い方きつかったよ。

 父上のこと尊敬してるし愛してます。

 アフーム=ザーをぶち殺してくれてありがとナス。

 

 という思いを込めて泡を撫でると、泡はバチバチ激しく弾けて燃えた。

 感情分からんくて怖いナリィ。

 

 アフーム=ザーの残骸を遠い外宇宙に散布して、さて帰ろうかな、と思ったあたりで。

 追加参戦するのはニャルラトホテプである。

 

 ポン!とメチャクチャ息を切らしたニャルが、ゼエゼエとわざわざ疲れた人間の動作をエミュレートして現れた。

 ここ宇宙だからゼエゼエできるわけないんだよなぁ。

 

「あーーー!もう終わってる!は!?!?許さん副王が調子乗ってる無理!!」

【おうニャル、荒ぶるな落ち着け】

 

 ニャルはフシャーー!とやんのかステップを決める猫のように荒ぶっている。

 ヨグ=ソトースはパチパチ弾けて余裕の表情。

 触手を全部うねらせてニャルは地団駄を踏んだ。

 

「ありえないんですけど!?僕の周囲だけ時間固めて足止めするとか信じられない悪辣さ、恥ずかしくないんですか!?」

【──────】

「ばーかばーかしね!」

 

 ヨグ=ソトースはなにやら勝利台詞を吐いて消えたようだ。

 ついにニャルは小学生の語彙力になってひっくり返って喚き出した。

 

【おおよしよし。ニャルも駆けつけてくれたんだろ、嬉しいよ。俺たちも帰ろう?】

「うう……あの虹ゲロ絶対潰すぅ……弾ける吐瀉物のくせに……」

 

 俺は敗北感に震えるニャルを抱えてヨシヨシしながら地球に戻ったのだった。

 いやヨグ=ソトース相手に悪口すげーな。

 

 

 そして帰宅してすぐ聞いたのは、工藤君と子供達が犯人に撃たれたという胸糞イベントであった。

 





・何も悪くないアフーム=ザー
久しぶりにモゾモゾ外を見てたら自分のこと熱心に見て、信号を送って来た生命体がいたので、友達になりたい!と思って近寄って来てた。
この度爆散させられてもう一回引きこもることになる。
おそと怖い……(メソォ)
もちろん、生命体の強度を考慮しないので到着すれば相手は氷になってるとする。

・ヨグ=ソトース
ニャルが来てから、虹色の模様をよく見ると中指立ててる柄だった。
品がないので息子には見せちゃダメな仕草だって聞いたし。
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