ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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水平線上の陰謀〈怒り〉

 

 今日は豪華客船「アフロディーテ号」でクルーズ旅行である!

 

 できたばかりの大きなクルーズ船は広く綺麗で、甲板からの眺めも最高。

 テニスコートや大浴場もあって、夜は豪華ディナーがついている。

 まあ、豪華客船の中では小型の分類だから、印象としてさほどきらびやかではないが。

 それでもラグジュアリー感は流石の一言である。

 

 そんな場所に俺たちがいるのは、ひとえに園子ちゃんのご厚意である。

 

 俺、コナン君、阿笠博士、少年探偵団、それに蘭ちゃんと毛利探偵、園子ちゃんという顔ぶれはちょっとばかり珍し目か。

 いつもの定期キャンプメンツ&毛利探偵ぐらいの雰囲気だろう。

 意外と道ゆく事件で女子高生組を巻き込む子供達は、彼女らと結構仲がいいんだよな。

 毛利探偵は酒目的とのこと。

 

 ここのところ世良さんは忙しいようで、中々遊びも誘えなくなっているらしい。

 たぶんメアリーさんに付き合ってアポトキシンの原データを精査しているのだろう。

 

 ちなみに、もちろんこっそり星の精もポッケの中でブスくれている。

 昨日のディナー中もずっと文句言ってたからな。

「星の精のぶんが無い」「お前らだけいいもん食って大きくなる」って怒っていらっしゃった。

 

 朝食を軽く済ませて、今はデッキでティータイムである。

 園子ちゃんがニコニコと海を見ながら口を開いた。

 

「しかしアタシから言い出しといてなんだけど、黄衣さんもよく来れたわね。すごく忙しいんじゃない?」

「うむ。だから諸伏さん達に仕事を置いて来た。彼らには文句を言われた」

「そりゃそうだ。オメー俳優もしててどうして仕事回ってんだよ。まさか分身してんじゃねぇだろうな」

「ハハハ、マサカ!」

 

 毛利探偵の胡乱な顔に、俺は乾いた笑いで誤魔化すなどした。

 実は俺は黄衣③である。

 黄衣①はいつも通り事務所で仕事、②は今季のドラマ撮影中だ。

 問題なのはコナン君の方で、事務所のかけがえのない戦力が何日も不在なので降谷さんに険しい顔はされた。

 

 ただ、どちらかと言うと「コナン君、せっかくの日本の豪華客船を爆破してこないようにな」とコナン君の方があらぬ疑いをかけられていたか。

 可哀想に。

 何故コナン君の行く先々で事件は起こるのか。

 

 そんな疑念を飲み込んでいると、コナン君にジロリと睨みつけられて。

 おおっと、表情に出ていたらしい。危ない危ない。

 

 俺は咳払いがてら話題を逸らした。

 

「そういや、遅ればせながら蘭ちゃんにどうぞ。関東大会優勝祝い」

「え、ありがとうございます!」

 

 俺の手作りの加護入りお祝いを渡すと、蘭ちゃんが嬉しそうにぺこりと頭を下げた。

 昨日の夜せっせと用意したのだ。

 蘭ちゃん怖い目にあいがちだからな、あって損はないだろう。

 

 見た目は普通のお守りで、中には俺の魔術がぎっしり詰まっている。

 色はもちろん黄色。イカの刺繍付き。

 

「……これはなんですか?」

「ありがたいお守り。凄くありがたい。どうぞ」

「え!?!?いいんですか!?」

「クォラ黄衣!なに蘭に変なもん送ってんだ!!」

 

 毛利探偵がいきりたって俺を睨みつけた。

 その後ろを少年探偵団達がかけっこして遊んでいる。

 志保ちゃんに「椅子の間を走るのはダメよ」と嗜められて、子供達はしょげかえったようだ。

 

 俺はうむうむと頷いてお守りを擁護した。

 

「いやー。危険は無いよ?凄くありがたい。身を守れる。安心安全なお守り。ほら、厄除けって書いてある。ちょっと後で怪異登録証が届くだけ」

「ふんぬ!!!」

「うぎゃ!?」

 

 毛利探偵に拳骨を落とされ、俺は頭を押さえてヒンヒン可哀想な犬のように泣いた。

 なんでそんな酷いことするの!!!

 

「ちょっとお父さん!ごめんなさい黄衣さん。大事にするわ」

「前々からなぁ、オメーは怪異を乱用しすぎだ!どうせ効果がきっちりあるんだろうが!厄の百倍悪意引いてりゃ世話ねぇんだよ!」

「そこはお守りを秘すなどして臨機応変に対応をしてもろて……あっ待って二発目は勘弁して」

 

 俺は頭を押さえてコナン君の後ろに逃げ込んだ。

 

 今日は天気がいい。雲ひとつない晴天だ。

 阿笠博士が「まあまあ。その辺に」とおおらかに仲裁してくれる。

 コナン君がため息をついての今後の予定を聞いた。

 

「この後はどうする?」

「俺は元首相の新見夫妻と話をする約束があるよ。昨日食後に会ってさ、ちょうどいいからってね」

「え!?黄衣さんそれ本当!?凄いじゃない、黄衣さんのファンなのかしら」

「どうだろ。まあ、俺としてはありがたく顔を繋ぐだけさ」

 

 びっくりした様子の園子ちゃんに、俺ははははと軽く笑って肩をすくめた。

 実際には降谷さんとともに何回か顔合わせしたことがあるのだ。

 向こうも、俺が一般客に混じって普通に観光を楽しんでいるのを見て大層驚いていたらしい。

 

 式典時はともかく、人間体の時は顔を変えてないからな。

 

 阿笠博士はマッサージの予約。

 子供達はかくれんぼ。

 毛利探偵はここでゆっくり酒の吟味。

 それぞれの予定を聞いて、俺はにっこりと席を立った。

 

「じゃ、俺は行ってくる。たぶん30分ぐらいで戻るから」

「行ってらっしゃい黄衣さん」

 

 コナン君の言葉に合わせて「クス!」と星の精も挨拶してくれた。

 星の精も会話できないながら、こそこそ子供達と交信しているようだからな。

 ポッケの探偵バッジにクスクス言って「大人には内緒のおしゃべり」を楽しんでいるらしい。

 

 さて、俺はその後は茶室に移動だ。

 個室になっていて、俺たちはひっそりとそこで会う手筈になっている。

 本来はないスケジュールだったので、向こう側の秘書さんが頑張って色々工面したらしい。

 

 夫妻は俺を歓待してくれた。

 

「貴方と直にお話しできるとは私共も思ってもみませんでした。いつも日本と人類を思ってくださりありがとうございます、神よ」

「いえ。こちらこそお招きいただきありがとうございます。黄衣ハスタという立場上、俺は込み入った話はできませんが、ご理解いただければと思います」

 

 会合は終始、穏やかな流れだった。

 具体的な話はせず、どちらかと言えば俺の信念や立ち位置の理解がメインだったように思う。

 いや、もしかしたら為政者が知りたかったこととは、そもそも俺の根本理念だったのかもしれない。

 

 俺もできるだけ丁寧に質問に寄り添った。

 俺が人間を愛していること、できるだけ俺から自立して、長く豊かに繁栄してほしいこと。

 

 自立してほしいのに甘やかしてしまうのは俺の悪い癖だが。

 世の親のジレンマみたいなやつだ。

 ちなみに、自立の結果人間に「今日からハスター信仰やめてツァトゥグアの子になります!」って言われたら、俺は暴れます。

 なんだいそれ、ツァトゥグアを消せばいい…?

 闇堕ちの瞳不可避である。

 

 しばらく話して、無事に会談は終了した。

 穏やかに別れの挨拶をしてから廊下に出て、ほっと一息ついた頃。

 コナン君から念話が届いた。

 

『急にごめん、園子がどこにもいないんだ!黄衣さん、そっちで見つけられない?』

『迷子?この船大きいしね。ええと、今は……っ、!?!?』

 

 俺はひゅっと息を呑んだ。

 

 園子ちゃんは今、霊安室の棺の中だ。

 





・その頃の降谷さん
ハスターの超むしゃくしゃを察知して仮眠から飛び起きた。
 
・もし人間がハスター排斥を求めたら
ただ出てけなら号泣して人類史ストーカーになります。
他の神に乗り換えるなら激怒して他の神をボコボコにしたあと、加護山盛りにして「俺の方がいい神様だよ!」「嫌なところは直すよ!」って振られた人みたいに必死にアピールします。
つまりメンヘラ神です。
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