ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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水平線上の陰謀〈ルルイエ事故〉

 

 俺がまったりお茶会をしている間に、複数の事態が同時に起きていたようだ。

 

 まず園子ちゃんが霊安室の棺の中に閉じ込められて、気を失って発見された。

 むしゃくしゃのムシャである。

 

 加えて八代グループの会長が行方不明。

 こちらはすでに俺が位置を特定しているが、海の底でお亡くなりになっているようだ。

 

 最後に八代グループの女性社長がナイフで殺害されている件。

 半年前の事件も合わせると、八代グループの人間を狙った連続殺人だと思われる。

 

 俺はムッスーー、と膨れっ面で現場検証に立ち会っていた。

 

 先ほど目暮警部達がヘリで到着したのだが、元首相夫妻もいるということで慎重に捜査が進められている。

 乗員乗客約600名の船の上。

 捜査は難航することだろう。

 

 どうやら犯人らしいパーカーの人間を毛利探偵が見ていたようで、彼も積極的に捜査に加わっているらしい。

 目暮警部と話をしているのが遠目から確認できた。

 

 俺の隣でベンチに座るコナン君が、やや心配そうな顔で俺を見上げた。

 

「ねぇ、変なことしないよね?」

「……しないよ。降谷さんに釘刺されたし。降谷さんも今こっち向かってるって言ってたし」

「どうやって?身ひとつで?」

「うん。海原に吹き荒ぶ一陣の黒い風になって」

 

 降谷さんは俺の激怒を浴びて、大慌てで船へと飛んでいるらしい。

 仮眠中だったらしくすごく文句を言われた。

 まあ、それは流石に申し訳ないことをしたと俺も反省している。

 

 でも俺の怒りも結構深いのだ。

 コナン君がそろー、と慎重に俺に声をかける。

 

「それ、園子が殺されかけた怒りだけ?」

「………実は、ちょっと違う。具体的にはクトゥルフが憎いぐらいのイメージ」

 

 根本はあの優しい園子ちゃんが酷い目にあった怒りなのは間違いないが。

 クトゥルフのせいでピタゴラスイッチ的に事件が起こったことも怒りの元であったりする。

 

 コナン君は瞬時に表情をこわばらせて息を詰めた。

 

「それ、古代ハイパーボリアを滅ぼしたっていう怪物だよね!?」

「そだよ。憎っくきタコ野郎。無限と阻害の権能を持つ、無尽蔵の具現化たる大災害」

 

 旧支配者クトゥルフ。

 水の支配者とも呼ばれるが、それは単に俺が海に封印したからついたイメージだ。

 本来はリソースの枷より解き放たれた「無限」、繋がりを断ち切る「阻害」の二つの権能を持つ旧支配者である。

 

 阻害はあくまでサブ、無限からの派生系に過ぎないが……。

 この力を使い、クトゥルフは幾つもの文明を滅ぼして、勢力を広げてきた。

 

 コナン君が眉間に皺を寄せて声を潜める。

 

「勢力を広げた?旧支配者にも縄張り争いがあるの?」

「無いよ。クトゥルフ独自の行動。奴だけ世界観が戦国武将なんだ。元からそういう奴なのか、俺の光を盗み食いしたのか知らないけど」

 

 地球を襲ったのもその一環だろう。

 いや、もしかしたら本当は俺を狙ったのかもしれない。

 奴の支配を盤石にする、「光」と言う名の極上のエネルギーを狙って。

 

 ……………ああ、なんて胸糞悪い。

 

 コナン君が瞬時に小学生モードに入って、わざとらしくキュルンと目を潤ませた。

 「黄衣さん、お顔怖いよ?」と子犬みたいな顔で俺に擦り寄る。

 

 おお、かわゆいね……沢山なでなでしてやろうね……。

 

 俺はコナン君をわしっと掴んで、死ぬほど撫でくり回した。

 コナン君が不服な猫みたいな表情でブスくれている。

 

 撫でねばやってられぬ!!!!

 

「う゛ぅ゛ーー、あいつ絶対ぶち転がす…この三億年無限回シミュレーションした。もう人間は滅ぼさせねー全身引き裂いて肥料のいらないプランターにしてやる」

「どうどう黄衣さん、そんなに泣いてるとニャルさんが来るよ」

「もう来てる」

「黄衣さん!!!!」

 

 俺の声に合わせ、「はーいニャルです!」と俺の影からじわっと滲み出して具現化した。

 コナン君以外には見えないよう、魔術で認識阻害も併用している。

 

 ニャルは俺のむしゃくしゃを受けて昂り切っているようだ。

 腕まくりして激しく拳を突き出している。

 

 コナン君が絶望の表情で硬直している。

 

「我が夫、元気を出して!あのタコの一つや二つ、僕がぶちのめして刺身にしてやりますからね!」

「ううーニャルー!あいつが!あいつが俺をいじめた!」

「よしよし。酷いことされましたね。本当に許せませんよね」

 

 優しく慰めてくれるニャルに、コナン君が胡乱な様子で目を細める。

 すごくダメな大人を見る目だ。

 

「聞いてなかったけどさ、そのクトゥルフという怪物が事件にどう関わってくるの?」

「15年前、うっかりクトゥルフの封印地に人間の船が突っ込んだっぽい。それでダゴンが怒ったわけだ」

「不穏な滑り出し」

「人間は代わりにクトゥルフ復活の手伝いをするということで見逃してもらったわけだ。だが、その際殺されて恨みに思った遺族もいた」

「ふむ?」

「遺族はクトゥルフ復活の手伝いをする人間達を殺して復讐を始めた。それが、今回の一連の事件の犯人達であるのだよ」

 

 これは俺が事件を受けて改めてハスターの瞳で調査した結果である。

 可哀想に、あんなクソみたいなルルイエに激突してしまった船がいたらしい。

 あそこは定期的に浮き上がるから仕方ないんだが、全く傍迷惑な野郎どもである。

 

 コナン君は背後に宇宙を背負った。

 「クトゥルフって神様、園子が襲われたことにうっすらとしか関係してないよね…?」と俺に物申した。

 俺は素早くいきりたった。

 

「元はといえば、ダゴンが家にタンカーで突っ込まれたぐらいでガタガタ抜かすのが悪い!人間誰だって失敗はあるのに!」

「こんなふうに我が夫を怒らせて!まったく下級なタコ如きが許せませんよ!」

「ほら!ニャルもこう言ってる!」

 

 コナン君は俺の憤りを聞く価値なしと判断したらしい。

 「僕、現場で何か見つかってないか聞きに行くね!」と俺を見捨ててどっかへ行ってしまった。

 

 なんでや。ワイの何が悪かったっちゆーんや。

 

 俺がぼそぼそ文句を言いながら口をへの字に曲げていると、ふと目に留まるものがあった。

 毛利探偵だ。

 彼は深刻そうに目を細めて、なにやら気合いが入っている様子で捜査に打ち込んでいる。

 

 推理こそポンコツだが、あの人はあの人で優秀な人だからな。

 コナン君もいるから俺が捜査に出張らなくても問題ないだろう。

 

 外の空が黒い風の気配が満ちてきたし、そろそろこの船に降谷さんが到着したのだろう。

 俺はそっと席を外し、ヘリの離着陸のため規制で人気のない甲板の方に歩いて行った。

 

 外は降谷さんの影響か、やや曇り空に変化してきている。

 

 黒い一塊の風がぐるりと空間に収束。

 これは風に溶けて散らばっていたのが視覚的に見えるようになっただけだ。

 この付近に滞留していた黒い風が形を伴い、降谷さんが肉体を形成する。

 

 黒い風から滲み出るように現れた降谷さんは、「ふう」と息をついてネクタイを直したようだ。

 

「まだ君も暴発してないみたいだな。もう限界ギリギリかと思ったが」

「なぜ俺を爆弾みたいに言うの。向こうから来てくれるんなら待つぐらいの忍耐はあるさ」

 

 そう言うと、降谷さんは深刻そうに眉間の皺を揉みほぐした。

 

「ッ……まさか旧支配者がこの船に来ると言うのか?」

「いや。単に眷属のダゴンが襲いに来るだろうってだけで、クトゥルフ復活はまだだな」

 

 クトゥルフとのパスを確認するため、諸伏さんの様子も確認したいところだが。

 今彼は警視庁にいるのが歯痒いところだ。

 

「事情は説明した通り。おそらく八代グループは犯人に殺されてしまったことで、偶発的に契約を果たせなくなった」

「だから不履行を咎めに来る、と。規模の予想は?」

「ダゴンと、1000ぐらいの軍勢じゃないか?そんな大した量じゃないよ」

「は、三国志の世界観に比べれば数は少ない、みたいな理解か?海上保安庁が壊滅的被害を受けるぞ」

 

 それを言われると痛いところだ。

 俺がいるから全て守り切れるが、怖い思いはさせてしまうだろう。

 ニャルが影から生首だけニュッと出してゆっくりみたいなゆるキャラ画風になった。

 

「それに僕もいますからね!あんなダンゴムシ一捻りですよ!」

「なるほど地球は滅びるのか……」

「おう、理解が早いな。俺も今それについて我に返って悩んでるとこ」

 

 降谷さんの絶望に、俺は深刻に頷いた。

 ちょっとむしゃくしゃで突っ走り過ぎてしまった気がする。

 俺はニャルに慰めてもらうため泣きついたのだが、ニャルもすごくやる気になってしまったからな。

 

 俺がうむうむと頷くにとどめた。

 降谷さんは気の遠くなったような顔をして、静かに未来の己に黙祷しているようだった。

 





・クトゥルフ
荒っぽい性格、征服した場所に深きものどもを置いておくのが趣味。
少しだけ光を得て、人間的欲望を得た。
すなわち「支配欲」である。
それ以外は父に似て無感動。母に似て動物的。
すやすやぁ。………むにゃ?

・ダゴン
突然ルルイエにタンカー突っ込んできて流石におこ。
賠償金代わりにクトゥルフ復活のため人間を働かせてた。
信者じゃないからハスターの瞳にも引っかからないし、便利にこき使ってた模様。
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