ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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残された声無き証言〈あの世談義〉

 

 TV出演が一気に増えて、この頃お茶の間の人と化している俺である。

 

 TVコメンテーターとしてワイドショーで事件の考察を述べるほか、雑多な旅番組などに出演。

 儚げ高INT(知性)大食いキャラとして定着しつつある。

 

 工藤有希子さんの指導でAPP(容姿)が増していい感じのイケメンに寄れたからな。

 一応そこそこ評判も良くて嬉しい限りである。

 

 降谷さんも「黄衣事務所所属の探偵」という肩書きを存分に活かして動き回っているらしい。

 隠れ蓑として十分機能しているみたいで俺も大満足である。

 

 なお、コメンテーターとして出演すると急に俺が的を射た答えをスラスラ言い出す現象について、「チート使ってる」「裏コマンド使い」とかコナン君たちに陰口叩かれていたことをここに追記しておく。

 そうだよ裏技だよ!!

 恥かきたく無いもんいいじゃんかよ!!

 

 もちろんだが。

 俺の出演する番組全てに謎の買取希望者が出現している。

 流石にここまで高頻度だと普通に営業妨害なので、この間俺自ら映像を買い取って謎の希望者の住所に送りつけておいた。

 

 俺直筆のサイン色紙付き。

 簡易魔術記法で俺の名前と「ハスターとの接触」の呪文が黒いサインペンで書かれている。

 

 ようはカタギの人間に迷惑をかけるのはやめましょう、という強いメッセージである。

 まったく、狂信者はその辺りがまるで分かってねぇ。

 

 

 さて、そんなこんなで探偵のお仕事だ。

 

 今日はゲームのシステムエンジニアが行方不明ということで、三人のお客さんがやってきている。

 

「なるほど。板倉さん、という方は貴方がた三人から別々のゲーム開発依頼を掛け持ちしたまま行方不明になったと。そういうわけだ」

「そうなんですよ!納期も迫ってるのに!」

 

 降谷さんの言葉に三人は口々に文句を言っている。

 どうやらプログラマーとして問題も多い人物だったようだ。

 納期が迫るとすぐ蒸発するわ、フリーランスだが熱中すると全然要望とは別の品を作ってしまうわ。

 

 だがその腕は抜群。

 極小のリソースのみで曲芸のような動きをするプログラムを作成し、見事顧客の要望全てを満たすシステムを作るんだとか。

 

 どうやら時空異常の影響で少しばかり時代が捻じ曲がっているらしい。

 見本にと見せた客三人のPCが明らかに古めかしいのに、コナン君達は気がついた様子を見せなかった。

 

 将棋のソフトを依頼していたという男性が、心配そうに俯いた。

 

「でも気になると言えば、二年前に怪しげな男が板倉さんに会っていたんですよ。まさかそいつに誘拐されたってことは……」

「それはどんな人です?」

「黒服の大男で、関西弁でしたね。ほら、最近満点堂の新作発表会にもいた」

 

 ああ、と別の二人も頷いている。

 確か俺も満点堂の新作発表会はコナン君と共に行ったな、などと当時のことを思い出す。

 

 その時死んだのも黒服の大男だったような…?

 

 コナン君が殊更ニコッと可愛らしく微笑み、会話に乱入する。

 

「ねえねえ、板倉さんって人、黒服の大男とどんな会話をしていたの?」

「え?ああ、私が着いた時はもう会話も終わっていて、そう大したことは…」

「少しでもいいから!ね?」

「えーっと、『もうお前は用済みだ』とかなんとか」

「!!」

 

 諸伏さんが顎に手を添えてやや考え込んでいる。

 そして俺をチラリと見た。

 どうやら念話を繋げということらしい。

 

 そういう要望なら俺に否やは無いが、俺は念話で会話しながら目の前の客三人と別途会話するのは無理なんだが。

 いやコナン君たちが対応してくれるだろうからいいか。

 

『よーっす、開通完了。なんでも相談していいぞ』

『助かる!おいゼロ、どう思う?』

『正直プログラム系の取引は僕はノータッチだったからな。分からん』

『あー、やっぱそうだよな』

 

 軽い感じの二人の会話にコナン君がむくれている。

 どうやら二人が何か情報があることを期待していたらしい。

 降谷さんが声を険しくして釘を刺す。

 

『そこの小学生探偵。不用意に突貫しないこと!分かっているだろうな!』

『もっちろん!僕子供だもん、怖いことなんてしないよぉ』

 

 諸伏さんが「少年は今日にでも突貫するって言ってる」と謎の翻訳を投下。

 並行して客三人に聞き取り調査をしている降谷さんの笑顔が引き攣った。

 

『……このガキ…!』

『いや待てゼロ。この子を野放しにしておくのはいい手かも知れないぞ』

『何が』

『この子が突貫するだろ。組織に捕まって酷い目に遭いそうになるだろ。するとその時不思議なことが起こって、組織が物理的に吹っ飛ぶだろ』

『おい』

 

 黙っていられず、俺は思わず突っ込んだ。

 俺を核地雷みたいに扱うんじゃありません!!

 しかも降谷さんが「その手があったか」と深く納得してしまった。

 納得すんなし。そういう姑息なことをするつもりなら俺にも考えがあるぞ。

 

 殊更猫を被った爽やかな降谷さんの声がする。

 

『コナン君、悪かったね。何でもないよ。探偵の真実を求める行動はいつだって正義だ。それを止めるつもりはさらさらないよ…』

『安室さん……黄衣さんが睨んでるよ』

 

 そろそろ客人も喉が渇いてくる頃だろう。

 俺は咳払いして客人三人のお茶を新しいものに交換した。

 

『悪いが、コナン君が組織関連で危ない目に遭った場合は、その瞬間不思議なことが起こって組織員全員が男女の区別無くすっかりハゲになる方向で話を進めておくことにする』

『!?!?!?』

『もちろん、NOCがどうとか潜入捜査員がどうとか、そういうことは考慮しない。また、過去に足抜けした人間も遠慮なくハゲる』

『え、幽霊、幽霊には慈悲はあるんだよな?』

『ない。お前ハゲだよ……』

 

 降谷さんが謎のアイディアをクリティカル成功させてしまったらしく「つまり赤井も…ハゲ…?」と真剣な表情をしている。

 やめろ、皆してハゲになりに行く選択を真面目に考えるな!

 

 

 まあ、そんな会話をしつつ表ではきちんと行方不明のプログラマーの滞在ホテルを割り出し、現場に向かったのである。

 

 場所はホテルニューベーカの2004号室。

 将棋盤と囲碁盤とチェス盤を借りて一週間も滞在する奇妙な客だからな。

 コナン君の発案であったが、特定は容易であった。

 

 とはいえ、到着した頃には既にプログラマーさんは死んでいたのだが。

 

 諸伏さんの見立てによると、死後2日は経過しているらしい。

 しかも、どうやら毛布に包んでぐるぐる巻きに縛られていた痕跡があるらしい。

 事件性ありありだ。

 

 すぐさま警察に連絡すれば、目暮警部も急行するとの旨の連絡があった。

 

 念のために警察が来るまでの間部屋の外で待機してもらった客三人の様子を窺いつつ、俺はぼんやりと部屋の中を歩き回った。

 いつも恒例の魔術チェックだ。

 これをしないでいるとコナン君がとてつもなく不安そうな顔をするため、毎度丁寧に調査することにしているのだ。

 

 よし。

 幽霊なし。魔術な………あ。

 

「なあなあ、コナン君」

「どうしたの黄衣さん。何か気づいたことでもあるの?」

 

 とてとて、と小さな足取りでコナン君が近寄ってくる。

 諸伏さんも降谷さんも、自然と俺に視線が集まったようだ。

 俺はちょっぴり口籠もりながら、今わかった解析結果を伝える。

 

「なんかこの被害者、魔術師だったっぽくてさ」

「………は」

「いや、魔術師と言い切るには語弊があるというか、なんというか」

 

 俺の歯切れの悪い回答に業を煮やしたのは降谷さんだ。

 公安の顔がチラ見えする色のない表情でこちらを詰問してきた。

 

「どういうことだ」

『板倉さんには魔術の知識があったのか?」

「いや、知識はないんだと思う。けど、天性の才能がたどり着いた先に魔術めいたものがあった、という感じ…か」

 

 この人に魔術的な知識はないに等しい。

 だが、プログラマーであるこの人は自らが作成するプログラムにて、何か魔術的な現象を再現するに至ったのだ。

 たぶんその術式は完成していない。

 だが、魔術的残り香はその身体には僅かに付着していた。

 

 しばし、場に沈黙が満ちる。

 降谷さんが目を細め、慎重に口を開いた。

 

「そのプログラムで再現しようとしていた術式がどんなものかわかるか?」

「遠目から雑に見たらどんな誤作動を起こすか分からないし、実際に見てみないことにはなんとも」

「……そうか。なら、この日記だけは捜査一課が来る前に拝借しておこうか」

 

 そう言って、手袋をはめた手でするりと板倉さんのバッグからフロッピーディスクを抜き取った。

 というかまたフロッピーかよ!

 

 と、そうこうしているうちに目暮警部がやってきた。

 どうやら今回は佐藤刑事は別件で動いているらしく、着いてきたのは高木刑事のみのようだ。

 

 高木刑事は「あ!黄衣さんじゃないですか!」とほわほわした笑顔をこちらに向けてくる。

 俺も笑顔でぺこりと一礼する。

 

「聞きましたよ、あの東都タワーのエレベーターで閉じ込められてたのって高木刑事だったんですよね。お疲れ様でした」

「いえいえ、コナン君が凄くしっかりしてたから、僕なんて狼狽えてるばかりで」

 

 お互いペコペコしあっていると、目暮警部から「おい高木!」と喝を入れられて慌てて作業に戻っていく。

 純朴ないい刑事さんである。

 

 諸伏さんが部屋にあった囲碁盤から目を離さないまま、こちらへ問いかけてきた。

 

『なあ、死後の世界ってあるのか?』

 

 いつのまにかコナン君も降谷さんも囲碁盤に集まっている。

 どうやら既に答えは出ているらしく、三人で頷きあっていた。

 

 また一人だけ置いて行かれた…なんでみんな俺を置いていくの……。

 

「うーん、あの世かぁ。場合による」

『どんな回答だよそれ』

 

 諸伏さんが口を尖らせた。

 いやまあ、場合によるとしか言いようがないんだよな。

 

 基本、この世界において魂は崩れたらそれっきりだ。

 だから絶対的な「あの世」は存在しない、と言ってもいいだろう。

 

 ただし、一部の旧支配者が管理運営する牧場的なあの世なら存在しなくもない。

 人間の魔術師が旧支配者シノーソグリスと呼ぶ存在は、時折霧の向こう側にあの世っぽい場所を作っているみたいだし。

 ニャルラトホテプも死者の魂を集めて蘇生権をかけてデスゲームとかしていたことがある。

 最近見たドラマがいい感じだったらしい。

 

 また、転生という現象も確認済みだ。

 とはいえアレは魂が偶然同じ形に組み上げられたことによる類感魔術的なものというか。

 ようは本人ではなく、そっくりに生まれたが故に記憶も同一になってしまった別人というべきものだ。

 そのため厳密に転生と呼べるかは疑問の残るところである。

 

 俺はぼんやりと鑑識さんの作業を見ながら、大きく伸びをした。

 

「あの世、あった方がいい?」

『……お前それ、何気なく聞くにしては人類史の転換点過ぎる質問だろ』

「いや別にそんな重い感じじゃなくて、需要あるなら実装しようかなと、ユーザーアンケート的な」

 

 話を黙って聞いていた降谷さんに「アンケートならもっと広く取るべきじゃないか?」とポツリと言われ。

 俺は深く頷くなどしたのであった。

 

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