ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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天空の難破船〈怒りと神罰〉

 

 俺は真っ白な亜空間にテロリスト五名と魚2匹を放り込んだ。

 

 仮想の地面に強かに顔を打ち、男達が倒れ込む。。

 魚は2匹とも硬直して動けないようだ。

 

「ックソ!?なんだ………」

 

 リーダーたる男が眩んだ視界に頭を振り、素早く銃を構えて周囲を確認する。

 その動きは常人以上に機敏だ。

 飛行船制圧も手慣れていたし、軍人なのかもしれない。

 

 そして。

 正面にいた、俺と目が合った。

 

【目、覚めた?許す。叫んでもいいよ】

 

 全長500メートルほど。

 イカの怪物ともトカゲの怪物ともつかない巨体が、触手を伸ばして不届者達を取り囲んでいる。

 淀んだ風が轟々と吹き荒れ、触手にある無数の瞳が男達を捉えている。

 高層ビルの如き触手がずぐりと蠢いた。

 

 旧支配者ハスターの顕現。

 SAN値喪失は1D10/1D100。

 

 男のうち数名が絶叫を上げて、逃げようと俺と反対の方向へと狂乱のまま走り出す。

 哀れなことだ。逃げるだけ逃げるといい。

 

 リーダーの男が逃げ出すこともできず硬直している。

 俺はギョロリと目を細めて微笑んだ。

 

【せっかく叫んでいいって言ったのに。叫べないようなら手伝ってやろうな】

「!?!?やめ、やめ、ぁ゛あ゛あああ!?」

【よろしい】

 

 地面から細い触手を出して、口から侵入させてやれば、男は血反吐を吐いて叫んだ。

 魚2匹はあらゆる手を尽くして脱出のための魔術を編んでいる。

 まあ、何をしたところで俺の神域から逃げ出せるはずもない。

 

 体内にこんな魚を入れるのは嫌だったが、外で暴れると迷惑になるからな。

 いくらカチンときたといえ、俺にも分別ぐらいある。

 

【えー、結論から申し上げますと、人間は後でSAN値を復旧させて帰すのでご安心ください。ちょっと苦しい目に遭うだけです。魚は生かしとく理由がないとはいえ、証言は欲しいので脳を腑分けした後廃棄します。何か異論のある方はいますか】

 

 俺がしばし黙ってやる。

 あらい息遣いと絶望の喘ぎに混じって、俺に対し先ほどからマシンガンで攻撃を試みるやつが少しうるさい。

 

 可愛いねぇ。

 そんな豆鉄砲必死で撃ちまくって、撃った端から再生して絶望顔して。

 人間は嫌いじゃないので、その程度ならば可愛いものよ。

 

【お、外から嘆願が届いてます。お前らが鉛玉ぶち込んで飛行船外に叩き落とした子からです。酷いことしないでって。そうだね、圧縮時間の中で100年分の苦役を想定してたけど、10年分にしようね】

 

 うむうむ。なんて優しい旧支配者なのか。

 俺は自画自賛した。

 

 加えてこまめにSAN値回復するから、男達は発狂もしないのだ。

 法廷で減刑されても癪に触るし、精神的後遺症もなし。

 安心安全の10年苦役だ。

 ちょっと魂がゆるゆるになっちゃうけど、日常生活に支障はなかろう。

 

 ちょうどそのタイミングでニャルから「だから我が夫は羽虫に甘いんですよ!!」とポコポコ怒りのメッセージが届くなどする。

 だってぇ、被害者のコナン君から必死の嘆願があったしぃ!

 

 俺は咳払いした。

 

【魚の方も遊んでから捌いて魂を瓶詰めにするのであしからず。証言できる状態にしておいてくれって降谷さんが叫んでるし、仕方なく。仕方なくだからな!】

 

 男達からの返事を待たず、俺は白い地面から触手をワッと出して捕える。

 男達から絶叫が上がった。

 逃げていた男達もついでに捕まえておく。

 距離の概念はここにはないから、逃げても無駄なんだよなぁ。

 

 瞬時に白い空間が剥がれ落ち、煮えたぎる一面の黒い液体が姿を現す。

 

 それは煮詰めた地獄。

 人類史から取り出した悪性を圧縮、煮詰めて純化した特製の「お風呂」。

 

 これは俺がちまちま集めてた人類のちょっと悪すぎる部分を濾しとったものである。

 この淀みが旧神になって暴れたら大事になってしまうからな。

 ハリ湖から遠隔回収していたのだ。

 

 その成果はとろーり濃厚。

 時々ブラックコーヒーがてら俺が楽しみながら消費している。

 ちょっと自分に酔いたい時とかにいいんだよね。

 

 だが、ニャルには「羽虫のフン食ってる…」とめちゃくちゃドン引きされてしまった。

 

 フンじゃねーし汚くはねぇよふざけんな!

 そりゃ汚い歴史ではあるけど物理的に汚いわけじゃないんだよ!

 人間の歴史のやや刺激的な部分なだけだよ!

 

 まあともかく。

 これは人間にはちょっとばかり有害だ。

 

 悪い奴なんて、自分のした悪事に呪われればいいのだ。

 一年ほどコトコト煮ておけば、心底から自分の所業を反省することだろうさ。

 

 あと魚は別途活け造りにします。

 こいつら俺のSAN値回復魔術が効かないから、下手に削り切ると喋れなくなるんだよな。

 本命なのに存分に遊べない。ちくせう。

 

 俺は遊び心で大きなお玉を具現化し、スープのように悪性の渦を軽く掻き回した。

 うーむ、ちょっと濃すぎて浸けた瞬間一気にSAN値全損しかねないな。

 

 希望もちょっと混ぜて…絶望ばっかだと芸がないので休憩時間とかも加えて。

 まぜまぜ。よし。いい味になった。

 

【それでは、罰としてひとっ風呂浴びてくること。ちゃんと死なないようにするから安心してくれ】

 

 そのように言って、俺は黒い悪意へと男達を投げ入れたのだった。

 

 

 

 

 現在。

 発着場にて、俺はコナンくんに死ぬほどド叱られている。

 

「信じられない!僕があれだけ酷いことしないでって言ったのに!!!」

「いやぁ、でもほら、あいつら無事だよ。ちゃんと自分の足で歩いてるし」

「嬲り殺しても生き返らせればノーカン理論やめて!」

 

 完璧に機嫌を損ねてしまったらしい。

 俺は「向こう一ヶ月は撫でないでよ」とコナン君に言われて、可哀想な犬みたいにヒンヒン泣いて許しを乞うた。

 

 

 あれから、急に消えたテロリスト達に皆が困惑した。

 そりゃそうだ。本物の神隠しだもの。

 

 俺が「俺の怪異で一旦別の空間に奴らを隔離しました!長くは持ちません!その間に着陸場に戻りましょう!」と言って誤魔化したが。

 鈴木次郎吉氏の意味深な視線を思うに、どれだけごまかせていることか。

 

 今現在は警察だらけの発着場で、全員一時待機している状況である。

 

 もちろんテロリスト含めて船外に出ることはできない。

 ウィルスがあるから外に出すわけにはいかないのだ。

 警官が中に入ることもできない。

 

 武器を取り上げて手錠をつけたテロリストと飛行船内で同居とはまた、刺激的な経験であることよ。

 

 降谷さんは恐怖に凍りついた顔でまもなくすっ飛んできた。

 俺が大人気なくキレたことを察知していたらしい。

 

 大怪獣出現に備えて、警官達には飛行船からかなり距離を取らせて配備していた。

 しかも完全防御態勢、テロリスト制圧後なのにバリスティックシールド付き。

 危険生物扱いしよってからに。

 

 降谷さんは外から疱瘡神を吸い出し中である。

 俺はともかく、降谷さんに任せている権能なら疱瘡神の制圧は時間がかからないからな。

 2日程度で全ての処理が済むだろう。

 

 外からできるのにかこつけて俺に近寄ろうとしないのはどうかと思うが。

 ビビんなしもう怒ってねーよ!

 

 視線の先で、コナン君の肩に乗って身を震わせるオウムの姿が目に入る。

 

「友達へいき?だいじょぶ?痛くない?へいき???」

「大丈夫だよ。星の精も大丈夫だった?」

「ほしのせーは平気…友達痛いのされた。ババババって、動かないにされた…酷い……」

 

 また思い出して悲しくなってきたのか、星の精がボロボロと泣き出した。

 

 あの瞬間、星の精は「キョア゛ーーー!?!?」と絶叫して弾丸みたいな速度でコナンくんを助けに窓を飛び出したんだよな。

 コナン君は無事だし何をするということもなかったようだが、すごい剣幕であった。

 

 表向き、コナン君は星の精に助けられて戻ってきたことにしたらしい。

 キッドがため息と共に星のオウムを撫でる。

 

「二日かぁ。俺も欠席連絡入れねーとな。というか公安から融通きかせてくれたりしねーかな?」

「流石に無理筋だと思う。というか俺親戚のおじさんが来た猫並みに降谷さんに避けられてるから、話しかけるのも無理だわ」

「遠目に見てた紅子もビビってたし仕方なくね?みんなの目が名探偵に向いてたからバレてなかったけど、全身口だらけの人型が現れたら事案だと思う」

 

 キッドが頷くのに合わせて、コナン君もうむうむと同意する姿勢を見せた。

 だって……流石にカチンと来たから……。

 

 ともかく、降谷さんには報告せねばならないことがたくさんある。

 

 そろそろ寄ってきて欲しいところであると思いつつ、俺は大きくため息をつくのだった。

 





・深きものども二人
弄ばれた。
人間達の100倍じっくり酷いことされて魂を瓶詰めされた。
人間の方が悪いのに……(涙)

・人類の悪性風呂
ことこと煮詰まっている。
コーヒーみたいに目の覚める味。ハスター談。
時間の思念の抽出物で、人間から取ったヨグソト出汁みたいなやつ。
別に汚くはない。聖杯の泥ぐらい。
前にニャルに勧めたら、カップに液体を注いだ瞬間に姿をくらました。
ニャル「オゲーーーー!!!」(迫真)
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