ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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青の玉座〈ガバ〉

 

 コントロールルームには緊張が満ちていた。

 

 先ほど、停電があったのだ。

 監視カメラの画像には不審な点はないが、どこか不審に映像中央が揺らいでいるようにも思える。

 瞬間、コナン君が何かに気付いたように駆け出した。

 何に気付いたかはわからないが、キッドの仕掛けの正体がわかったのだろう。

 

 諸伏さんがのんびりと白馬君に声をかけた。

 

『ルーバーレンズか、やるかなぁ』

「予定通りですよ。間も無く………今です!扉を閉めて封鎖してください!」

 

 無線越しに指示を出した白馬君によって、場は一瞬で騒然とした。

 中森警部と白馬君がバタバタと部下を伴って走っていく。

 

 降谷さんがさして興味のない顔で監視カメラの映像をのぞいた。

 

「僕らも行くか?」

「そうだな。まあキッドならなんとかするだろうけど、見に行くのも面白そうだし」

 

 俺たちも頷き合い、現場に軽く走って急行する。

 

 すると、工藤新一に変装した怪盗キッドが、堂々とコナン君の手引きで死体と一緒に密室デートしていたのである。

 

 死体は青の玉座に座らせられ、額から出た血がポタポタと服を濡らしている。

 この部屋の施工をした会社の社長さんだ。

 その無惨な死体と共に閉じ込められているのが、コナン君とキッドである。

 

 うーん容疑者怪盗キッド確保。

 このまま豚箱行きは確定だね。

 

 やはり平坦な目をした降谷さんが他人事のように口を開いた。

 

「この場合、実際の犯行可能性としてはコナン君の方が疑わしいな。魔術で拳銃の真似くらいできるし」

『それで犯罪者であるキッドに罪をなすりつけようと…!少年院って贈り物できたっけ』

「バッカ二人とも失礼すぎ。コナン君が証拠の残るような犯罪をするわけないじゃん」

 

 俺がフォローすると、素早く駆け寄ってきたコナン君が俺の脛を強かに蹴った。

 俺はうずくまり「ハスターは死なぬ、何度でも蘇るさ…!」と言って撃沈する。

 暴力反対!!!

 

 中森警部に死ぬほどつねられてるキッドを横目で確認しながら、白馬君がそっと声をかけてくる。

 

「貴方たちは、怪盗キッドとの対決を幾度かしている。その上でその態度。何か理由でも?」

「裏取引とかしてないです。大丈夫です」

「……このアンポンタンのことは気にしなくて大丈夫ですよ、白馬探偵」

 

 般若の笑顔で拳を握りながら降谷さんがフォローしてくれた。

 アンポンタンってなんやワレ。こちとら旧支配者ハスター様やぞ。

 あっ睨まないで触手全部縮れる……。

 

 白馬君がパチクリと瞬いてフッと笑った。

 

「なるほど、事情がありそうだ。ですが、僕がキッド捕えても恨まないでくださいよ」

「ははは。怪盗は刑務所に自由に出入りできるようになってからが一人前ってルパンが言ってたからな。豚箱に突っ込まれるのも修行のうちだろ」

「なるほど、かのルパン三世とも交流があると」

『俺が思うに、黄衣はもう喋らない方がいいと思う』

 

 俺はお口にチャックをして深く頷いた。

 

 降谷さんが背後に仁王像のスタンドを出すなどして俺を威嚇している。

 スタンド使いやったんかワレぇ。待って殴らないでオラオラしないで。

 

 白馬君が生ぬるい笑顔で「正直は美徳だと思いますよ」と声をかけてくれる。

 優しい。

 俺はパタパタと「深く感謝」を示すポーズをとった。

 

 さて、そのあたりで遅れて蘭ちゃんと園子ちゃんが現着。

 「帰ってきてたなら言ってくれればいいのに!」と工藤君に扮したキッドが怒られている。

 

 定期的にコナン君も工藤新一になっているものの、やはり頻度はあまり高くないからな。

 学校にも時々しか行けてないし。

 

 ワイヤレスイヤホンをつけたキッドが工藤君に化けたまま蘭ちゃんと会話した。

 コナン君は凄まじく不服そうだ。

 

 そこにずい、と押し入った白馬君がややイタズラげに笑ってわざとらしく言葉を紡ぐ。

 

「おやおや、そこのお嬢さんには意中の人がいたんですか。せっかく僕もディナーに誘おうと思っていたのに」

「あ゛ぁ???」

 

 おっとコナン君ノータイムでキレた───!

 

 数瞬遅れてキッドも怒りの表情を浮かべて怒鳴りつける。

 白馬君はふむ、という表情で二人を見比べてしたり顔をした。

 

 蘭ちゃんが「あ、あの!困ります!」と眉を下げている。

 しめしめニヤニヤ程よい当て馬の発生に盛り上がる園子ちゃんを添えて。

 

 白馬君はコナン君の蝶ネクタイ型変声機とキッドのイヤホンを確認。

 ラブコメに染まってしまったコナン君は、それに気づかず蘭ちゃんの前に回って凄く険しい顔でガードの姿勢を取った。

 

 青春だのぉ。

 時々はこうして刺激のある恋も嫌いじゃない。

 

 俺は写真魔術で三人の様子を連写した。

 能面のような顔の降谷さんに「先ほどのガバガバ発言についての話が終わってないが」と詰められる。

 おっと、ニャル直伝のバックレ魔術発動!

 

 時間の神からも逃れる逃走魔術に死角はない!

 

「!?逃げたぞ!追うんだ!」

『キッドより逃げるの上手いまである。怪盗黄衣。ガバでたびたび豚箱ぶち込まれてそう』

「あれがまた余計なことを口走る前に取調室にぶち込んで教育し直すんだ!公安用の新人研修でいいか!?」

『いいと思う。ってかそれ前も受けてなかったっけ?』

 

 めちゃくちゃ言われてる現実に涙を呑みながら、俺は脱兎の如く逃げ出したのだった。

 

 

 

 結局、俺がベルツリータワーの中をぶらついているうちに事件は解決した。

 

 元々スピーカー役は工藤新一に扮したキッドに取られたのはわかってたからな。

 後腐れなくバックレることができた。

 

 殺人の方は、特段気にするほどのこともないいつもの恒例行事だ。

 動機は「妻を寝とったのを責められてクビにすると言われたから」。

 被害者、妻寝取られた上に殺されたんか…カワイソ……。

 

 キッドはというと、正体を見破られて何も盗まずに去っていった。

 流石に殺人事件があったところで盗みを続行するのは捜査妨害だと思ったのかもしれない。

 あるいは、単に盗む暇がなかったのか。

 

 鈴木次郎吉氏はこの嵐のため試合中止みたいな結果に「うむむむむ…!」と眉間に皺を寄せていた。

 

 無論、戻ってきた俺はコナン君と共謀した降谷さんによってコナン君なでなで禁止令を発令された。

 無期限禁止とのこと。

 なんでそんな酷いことするの!俺がなでなで欠乏症で干からびたら責任取れるんか!?

 

 ひっくり返って喚いて泣いたが禁止令は解かれることはなく、俺はただ事務所に帰ってからもグズグズ喚くしかなかった。

 

 俺が泣いてるからと心配して沢山なでなでしてくれた星の精を添えて。

 ええ子やで……。

 ええ子には俺のゲソで作ったたこ焼きをあげようね。黄衣の王焼き。ちょっとゾッとするけど精がついて大きな星の精になれるからね。

 

 そのように俺は倉庫からたこ焼き機を出して、素早くコナン君に「変なもの星の精にあげないで!!!」と怒られるのであった。

 





・バックレ魔術
ニャルの得意技。めちゃくちゃ高度な魔術。
自分の位相を保ちつつ、「丸い時間の外」に沈み込んで移動する。
細く透明なテグスを現実世界に引っ掛けながら世界の裏側に潜伏・移動するようなもの。
原理上察知と追跡が極めて困難。

・黄衣の王焼き
今回はネギ醤油を作った。
きっちり下処理と塩茹でしてアクとSAN値チェックを抜いた。
プリプリでめっちゃ美味しい。売れる。高級タコの味わい。
凄く栄養満点で、翌日星の精が五回りぐらいデカくなった。
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