ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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沈黙の15分〈神の忠告〉

 

 星の精に頭からむしゃぶりつかれているなり。

 

 優しいので髪の毛をもぐもぐするだけが、ついでに頭中舐め回されてデロデロである。

 俺は運転中なのでとても危険だ。

 仕方なく星の精を注意する。

 

「げた……?おかしい。黄色を食べると大きくなるはずなのに。ほしのせーは大きくならない……。どうして?」

「星の精君や、危ないから運転手にちょっかいはかけないこと。後ろの席に戻ってみんなとババ抜きしましょうね」

「くすっ」

 

 俺の運転するハイエースには現在、子供達と阿笠博士が乗っている。

 今日はやや離れた科学館まで遠出する予定だ。

 科学館で大宇宙展というのがやっていて、宇宙船のシミュレーションもあるとのことで子供達も大はしゃぎ。

 彼らを連れていくにはいい催しになるだろう。

 

 星の精がゲタゲタブツブツいいながら子供達の輪に加わっていく。

 

 俺は結局、コナン君の目を盗んでこっそり星の精にゲソ焼きを与えたわけだが。

 翌朝星の精が急速成長したせいで見事にバレたんだよな。

 

 前日まではコナン君の頭と同サイズぐらいの触手ボールだったのだが。

 一晩経ってあら不思議。

 大きく豊かな中サイズ星の精が現れたではないが。

 サイズはフルサイズのタンスの半分ぐらい。

 星の精は狂喜乱舞してドゥルルルルって家中を走り回った。

 

 そしてコナン君の掛け布団になったり、コナン君を簀巻きにしたり。

 コナン君を上に乗せてハスキーよりテンション高く空飛ぶ絨毯したり。

 朝は盛り上がる星の精の相手で大変だった。

 

 無論のこと、俺はコナン君にクソ叱られた。

 「やっぱ昨日星の精に変なの食べさせたんだ!どうすんのこれ!星の精こんなにデカくなっちゃって!!」エトセトラ。

 俺は星の精とは対照的に萎びて小さくなった。

 

 いいじゃん、星の精は生態的に浮力の節約のためでかくなっても体重変わんないんだし。

 ポッケも亜空間式だからきちんと入れる。

 本人もこんなに喜んでる!

 

 いや、本人的には全然満足してなくて、より大きくなろうと俺をベロンベロン舐め回してるわけだが。

 

 そんな諸々を気にすることなく、星の精は不満げに足で器用にババ抜きのトランプを持った。

 光彦君に「次星の精の番ですよ!」と声をかけられる。

 

 元太君がうーんと唸って首を傾げた。

 

「そういやよ、宇宙になんかうめーもんあるんかな。うな重がなる木とか」

「あるわけないでしょ元太君!?」

「ほしのせーは知ってる。変な飛ぶのとかいた。怖い。ここのほうがいい」

「えっ、そうなの?歩美怖い…お空から襲ってきたらどうしよう…」

「大丈夫よ。やけに慈悲深く愛情深い神様が、空と地上を隔てる壁を作ってるみたいだから、私達は心配いらないわ」

 

 志保ちゃんがバックミラー越しに軽く微笑んでくる。

 歩美ちゃんは「ほんと!」とパッと顔を明るくさせた。

 

 まあ、そうですとも。

 俺が巡回警備してるし、怖い事は極力起こらないようにしているからな。

 助手席で阿笠博士が志保ちゃんにバレないようこっそりおやつを摘まもうと努力しているのが見える。

 

 コナン君はといえば、自分の番が来てもスマホに夢中のようだ。

 「おい!次コナンだぞ!」と元太君につつかれている。

 

 どうやらコナン君はニュースを見ているようだ。

 というかワンセグじゃん生きとったんかワレェ!

 フロッピーといい急に見せつけてくるなぁ、この世界の科学技術。

 いや、おおむねヨグ=ソトースがじっとしてるのが悪いといえばそうなんだが。

 

 志保ちゃんがコナン君のスマホ画面をのぞいて呟いた。

 

「脅迫状が届いたらしいわね」

「ああ。都営地下鉄15号線、東都線開通の記念式典で事を起こすと、朝倉都知事宛にな」

「黄衣さんにでしょ、この人ここにいるけどいいのかしら」

「黄衣さんはポコポコ増えるからいいんだよ。向こうの式典会場にもいるだろうし」

「そう、皮肉ね。立っているものは親でも使えというけど、神にも当てはまるなんて。しかも子供の送迎役で」

 

 シニカルに笑う志保ちゃんに、俺はちょっとゴニョゴニョ言い訳未満を口から吐き出した。

 阿笠博士にばっか運転させてちゃどうかと思うし、俺だって子供達と旅行行きたいし。

 

 まあ、都知事への脅迫状の件はテロの疑いもあるので公安も動いてる。

 そのため降谷さんと諸伏さんは忙しい状況だ。

 

 仕事は黄衣③でするとして、こっちはゆっくり大宇宙展を楽しむとするか。

 

 

 

 

 ……などと、その気になっていた俺はお笑いだったぜ。

 

 俺は内心そのように呟き、天を仰いだ。

 不意にコナン君が車内で立ち上がり、叫んだのだ。

 

「黄衣さん!車を停めて!!!」

「うおぉ無理ここ待避所無い!」

「なら車両の避難と地下鉄の停止をお願い!爆弾がある!あと12秒!」

「ウッソでしょ!?!?!?」

 

 俺は仰天してハンドルを思わず切り損ねそうになった。

 わからん!

 何も気づかなかったがコナン君がいうのなら間違いない!

 

 ちょっと迷ってから、爆弾の解体をせずに

 俺は都営地下鉄とこの周辺の車に呼びかけた。

 

 

 爆弾解体までしてしまうのは流石に人の事情に入りすぎる。

 この忠告もどうかと思うが、俺はせめて口出しするに留めるべきだろう。

 

【忠告する。この先爆弾が仕掛けられている。止まれ、止まれ、お前たちは止まるがいい】

【忠告する。この先に爆弾がある。急停止しろ。急停止しろ。急停止しろ。まだ間に合う】

【忠告する。あと少しでこの道に多量の瓦礫が降ってくる。立ち退け。止まるな。逃げろ。】

 

 それぞれ個別にチャンネルを合わせて繰り返していく。

 幸い、この手のアナウンスには前例がある。

 トルネンブラさんの降臨の時にTVで超有名になったからな。

 皆、すぐに従ってくれたようだ。

 

 コナン君がその短い間に爆弾を遠隔で一個解体。

 しかし全てを解体し終えるには足らず。

 

 直後に、轟音と共に爆炎が上がった。

 

 大破した線路から派手に電車が降ってくる。

 お、降谷さんが風を纏わせて電車を軟着陸させたようだ。

 そのまま乗員に負担にならないように減速させていく。

 

 これなら怪我人も最低限だろう。

 脱線したとは思えないほど穏やかに止まったからな。

 

 とはいえ、既に俺たちの乗る車は先に進んでしまっている。

 ここからでは現場の様子は見えない。

 

 爆破の煙と轟音だけは届いているので、子供達が「爆弾だ!!!」と騒いで立ち上がっている。

 コナン君も遠見の魔術で現場の様子を確認して、歯痒そうに吐き捨てた。

 

「くそ、もっと複数魔術の併用がうまくできりゃ俺が解体できたのに!」

「……あなた、この状況で解体しようとしてたの!?」

「元々、動く物体の解体はラジコン爆弾の時やったしな。でも今回は数があったし、大きくて構造も少し複雑、おまけに暗視魔術を併用しなきゃならなかったから……」

「そう。あなた十分人間離れしてるわよ」

 

 まあ、いくら単純な仕掛けとはいえ2秒で飛行中のラジコン飛行機解体は人間業じゃなかったもんな。

 

 変身してもサイズ据え置きのいつもの星のオウムは、爆発にびっくりしてコナン君にぴたりと張り付いて震えている。

 心配した歩美ちゃんが「大丈夫、星の精ちゃん。平気だよ」となでてやっているようだ。

 

 

 そのように。

 なんとも、大事件の予感を覚えさせるものであった。

 





・デカ星の精
でかくなって力が強くなったが、生活に支障はない力加減上手。
念願だったコナン君を乗せて飛ぶが常時できるようになってこの世の春がきた。

・神の忠告
最近ハスターが便利に使ってる。
100%聞いたほうがいい忠告なのはTVで周知済みなので、みんな動揺したあと勢いよく動き出す。
時々逃げ遅れたやつが忠告聞かん馬鹿扱いされる。ひどい。
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