ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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神々のエイプリルフール

 

 4月1日、午前である。

 

「突然ですが!ハイパーボリアを復活させようと思います!拍手!!!」

 

 俺の妄言に、コナン君が「わー」と心にもない拍手をしてくれた。

 マモーさんは今日は所用でいないので安心の嘘だ。

 流石にマモーさんの前でそんな残酷な嘘はつけんからな。

 

 俺は長野組に小道具を無理やり装備させた。

 

「はい、これ持ってね。高明さんは政府を象徴するブレスレットとヴェール。由衣さんは医療と学問を象徴する赤い俺の紋章付き帽子。大和警部は神殿組織を示すジャラジャラネックレス」

「来て早々悪いんだが何をさせられてんだ俺らは」

「エイプリルフールの仮装を渡してる」

「ハロウィンと間違えてんじゃねえか」

 

 大和警部の冷静なツッコミが突き刺さる。

 だって神がたくさん嘘つくのはな、流儀と違うし……。

 

 そう、今日はエイプリルフールである。

 偶然事件のことで俺に聞きたいことがあったらしい長野組を招き入れ、事務所でダラダラくっちゃべっているわけだ。

 

 高明さんは政府、つまりは王族と有志が集まった機関だ。

 こう言う案を作ったんだけどいいと俺に伺いを立てる機関とも言う。

 三億年の間に役割も変化していったが。

 王はアトラック=ナチャの糸で織ったヴェールと、黄衣の王の王族権限をもつブレスレットを代々身につける決まりであった。

 

 もちろん、今諸伏兄がつけているのは当時のものだ。

 

 由衣さんと大和警部に渡したものも同じ。

 当時の国宝である。

 まあ、俺が永遠に死蔵してても意味ないしな。

 ものは身につけられてこそ、使われてこそだ。

 

 唐突にヴェールを頭に被せられた諸伏兄は、何故か荘厳そうな顔をしてブレスレットを掲げた。

 大和警部に「高明、テメェもノってんじゃねぇ!」と怒られている。

 帽子を膝の上に置いて、由衣さんが首を傾げた。

 

「ハイパーボリアってよく月刊ムーとかに乗ってる古代王国よね?何かあなたと関係があったりするの?」

「俺が古代王国の主神です。と言うか、由衣さんムーとか読むんだ…」

「あら、黄衣さん読んでないの?意外ね、今すごく人気なのに」

 

 由衣さんが大きめのトートバッグからごそりと取り出したのは、該当の今月号であった。

 

 表紙には「今月特報版:ズフ王国で起きた怪異災害の真相に迫る!」「今一番ホットな場所!神座神社のご加護について!」の文字が踊っている。

 特別綴込み付録は日本怪異目撃スポット地図だ。

 渡されたのでチラチラと中身を確認する。

 

 すごい、意外と正確だ。

 怪異対策法に触れない範囲でうまく書き切っている。

 特に目撃スポットの正確さは目を見張る。

 全国に散らばる怪異について「このエリアに近づくな、危険」と漏れなく地図化しているのだ。

 特に超危険な奴や言及すると危険な奴は省いてあるのが凄い。

 

 これは間違いなく魔術師の有識者が協力しているだろう。

 でなければここまで詳細に語ることは難しいはずだ。

 

 ……でも、オカルト雑誌に協力して小金稼ぎしている魔術師って何なんだ一体。

 

「へぇ、凄いな!というか記者も命かけてるなこりゃ。絶対異界に閉じめられた体験談じゃんこれ。へぇ、S226-3N『霧の密室』だな。公安が工事中の看板で立ち入り禁止にしたんじゃなかったっけ」

『柵乗り越えてやってくる肝試しの命知らずまで面倒見てやれないからな。帰って来れたならOKだろ』

「うーん、危険地はやっぱ大々的に公表した方がいいのかなぁ。悪用されそうで怖いんだが」

 

 俺の悩ましげなと息を聞きながら、諸伏兄がパッと閃いたようにブレスレットに力を込めた。

 パッと火花が散って、それから止まらなくなる。

 

「おい高明危ねぇだろうが!」

「敢助君、止め方わかりますか」

「知るか!!!祈ればいいだろ!」

「ふむ……これをうまく使えばファイアトーチができそうですね」

「言ってる場合か早く止めろ!!!」

 

 愉快な長野組の横で、事務仕事から手を離さないまま、降谷さんがポツリと言う。

 

「危険場所の周知か。死体遺棄地にはちょうどいいな。違法薬物の取引場所にもいい」

『俺、勝手に看板撤去して、ターゲットを誘い込んで完全犯罪にしたい。集合場所として連絡すれば勝手に死んでくれるわけで』

「汚い流石人間汚い」

 

 俺はだらんと机の上に伸びた。

 諸伏兄の火花は止まったようだ。

 

 もういっそ俺が怪異は全部撤去するか。

 いやそれだと人間の怪異研究の余地を奪う、でも好奇心から昇天する奴が後を立たなくて、あーーー。

 

俺はむしゃくしゃして、ハイパーボリア神様モードで長野組に偉そうなポーズをした。

 

【汝らに命ずる。清く生きよ。正しく在れ】

「無理言うんじゃねーよ。それで清く正しく生きられたら警察はいらねぇ」

【ハイパーボリアには警察なかったもん。神兵はいたけど、警察と軍が合体した超閑職だったし。主な任務は酔っ払いに回復魔術かける程度の】

「なんだそりゃ。じゃあ事件が起きたらどうすんだよ」

【起きないもん。全てが満たされてたから、起こす意味がなかったんだ】

 

 1000年に一度とかに軽犯罪は起きるかな、ぐらい。

 でもそれは全生活オーガナイザーですぐに処罰。

このぐらいしないと人間は清く正しくは生きられないと言う意味でもあるのが悲しいところだ。

 

 諸伏兄が神妙な顔で頷いた。

 

「警察は仕事がなくなることを目標に仕事をしている存在ですが、いざ無くなった実例を聞くと少しばかり心配になりますね。果たしてそれで良かったのかと」

「幸せには違いねぇんじゃねえか。犯罪で得る幸せよりゃましだろう。つか高明そのブレスレット取っておけよ。また火花出たら危ねぇだろうが」

「敢助君もそのネックレス似合ってますよ。神殿の象徴でしょう。ちょうど神もおわしますし、祈ってみては?」

「はぁ?………ったく、こうか?」

 

 何故か素直に諸伏兄の言葉に従い、大和警部がナムナムする。

 多分大和警部もこう見えてノリはいいのだろう。

 

 というか、なんか日本人ってみんな俺に向かって手を合わせて祈るんだよね。

 世界各地で標準祈りフォーマットが違うから、別にどんなお祈り方式でも構わないけれど。

 

 まあともかく、祈られたなら応えねば。

 

 と思った瞬間最近作ったエメラルド・ラマの信仰管理システムが反応した。

 大和警部にごく軽い追儺の加護が付与されたようだ。

 大和警部が困惑して体を見回す。

 

「なんか光ったんだが」

「ん?魔力の動きが見えたんだ。霊視の才能あるかもね。追儺の加護だよ。厄払いとも言う。めっちゃ薄い加護だから全然実感ないと思うけど」

「テメェこんなポンポン加護与えてんのかよ」

「いやいや、システム化したから信仰の度合いに応じて自動で加護が付与されるんだよ。大和警部ももっと俺に祈るべし。すごく信じれば石をパンに変えられるよ」

「事案じゃねーか。問題しかねぇよ」

 

 ふんわり怒られ、俺はしょぼんと肩を落とした。

 

 ちなみに、ご存命中の御仏様とは昔少しだけお話をしたことがある。

 偉大な方だが結構厳しく、「永遠にそのまま生きるしかないとは可哀想に」みたいな感じで同情してくれた。

 そうなんです。辛いんです。わかってくれるのか……!

 

 逆にアブラハム系列とはあまり会ったことがない。

 最初期は結構助力してたんだが。

 時代を経るにつれて疎遠に、汎用性のある形になっていったんだよな。

 

 黄衣の王と同一視するのが異端になってしまっているのも大きいだろう。

 まあ、元々俺って人間の神ではあるが唯一神じゃないから噛み合わせは悪いし。

 

 俺は頷いて偉そうにした。

 

「讃えよ。崇めよ。俺が加護を授ける理由をくれ。ちょっと祈るだけでいい。めっちゃヨシヨシしてやる。人類ラブチュッチュ」

「よそ様にシンプルにキモい発言をしないでくれ。僕の名誉に関わる」

「なにおう。しょぼい生命体をこんだけ愛してやまないのは俺くらいのものだぞ!得難いんだぞ!全宇宙生物が嫉妬」

「それはすごくよくわかるが、だからと言って名誉は捨てたくない」

「欲張り!!!」

 

 俺の叫びに穏やかな笑いが沸いた。

 コナン君が「ねぇ、仕事全然進んでないんだけど、期限迫ってるのわかってるよね黄衣さん!」と苦言を呈している。

 

 とはいえこうして穏やかにしている分に問題なかろう。

 そう、俺は思うわけなのである。

 





・三種の神器
政府の象徴、学問の象徴、神殿の象徴。
どれも破格の効果がある。
政府の象徴はハスターの瞳への王族権限が付与されている。
学問の象徴はセラエノ大図書館へのアクセス権。
神殿の象徴にはハリ湖底経典儀の確認が可能。
他にも様々な権限が付与されている伝説的な品物。
一般的にはハイパーボリアの滅亡とともに海に沈んだとされている。
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