ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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愛なるものの談議

 

 あの後、服部君にこんこんとお説教されたなり。

 

「堪忍したってや。工藤がこんなしょぼくれとるやろ。見てみぃこのしおっしおの姿」

「…………」

「ほら、口も利かれへんようになってもうた。未成年いじめて楽しいか?」

「うす……ちょっとやりすぎました」

 

 しょげた星の精にくるまって、しおっとしたコナン君の上目遣いを受けて俺は撃沈した。

 

 慈悲深く魚は生かしておいたつもりだったが、慈悲が足りなかったらしい。

 絵面がショッキングだったのがいけなかったかな。

 もっと他惑星追放とかの方が良かったかもしれない。

 

 降谷さんにも「日本近海に危険地域を作ってもらっても困る。今からでも処分できないか」と難しい顔をされてしまったしな。

 

 一応、万が一に備えてクトゥルフなどが復活して結界を解除したら罠が発動するようにはしてあったんだが。

 解除と同時に魚は跡形もなく消滅する仕掛けだ。

 同時に蠱毒により発生した呪詛や怪異はシャットダウン。

 

 俺とニャル用の覗き穴がついていて、覗き込んだり棒でつついたりして楽しめるようにもしてある。

 早速ニャルが覗いてちょっかいかけて楽しんでいたようだ。

 

 完璧だったはずなのに難しい限りだ。

 

 

 

 そんな今日も事務所はいつも通り平常運転。

 諸伏さんと降谷さんは事後処理で不在だ。

 

 雑談はなく、静かな空気にTVのニュースのアナウンスだけが反響している。

 

 相変わらずコナン君はしおしおのしおだし。

 星の精はクスクス俺の悪口いうし。

 ちろっと星の精がこちらを見て、それからコナン君を触手でたくさんヨシヨシした。

 

 黄色が友達をいじめたの?悪い黄色!きっと白黒の車がつれてく!

 元気ない?星の精のグミ食べる?たくさんあるよ。

 

 コナン君は少しだけ笑って「ありがと、星の精。僕は大丈夫」と言って星の精をもしゃもしゃした。

 星の精は喜んで触手をビタビタさせた。

 

 そして己の両頬をパチンと叩いてから、まっすぐに俺を見る。

 

「黄衣さん」

「はいっ!?なんでしょうか!黄衣さんは怒られる準備ができてます!」

「美國島では僕のわがままで困らせてごめんね」

 

 俺はパチクリと瞬いて、それからどっと冷や汗を流した。

 

「ぜ、絶縁宣言ですか……泣いて喚いて足に縋っていいですか…」

「どうしてそうなるの。単に、黄衣さんの立場を考えてなかったなって、そう思っただけ」

 

 コナン君は少しだけ悲しみの滲む、穏やかな顔で目を細めた。

 

「黄衣さんは深きものどもに因縁がある。そうでなくとも、人間を守る立場にある。両方に抵触するものを、無条件で生かしておけというのは少し無理があったかなって」

「いや……コナン君の信念は、なるべく法の下に裁きをしてもらう、命を尊重するものだろ?なら仕方ないよ」

「今の法で言えば、深きものどもは駆除したって感謝されようとも非難される謂れはないよ」

 

 黄衣さんの苛烈な憎しみは、守れなかった悲しみの裏返し。

 次こそは人間を守るという信念の現れでしょ。

 

 そのように言われて、俺はしょぼんと肩を落とした。

 

「そんな綺麗なものじゃないよ。俺は邪神だ。旧支配者だ。自分勝手な悪性の現れでしかない」

「そうかもね。でもそれが全部じゃない。前もあなたの自己嫌悪に触れたけど。やっぱりそれを加味しても───その善悪を超えて、人類の全てを慈しんでいる」

 

 俺はむむむと口を尖らせて黙りこくった。

 すごく綺麗な言い方だ。

 執着と言った方が正しいのに、コナン君の言葉選びは美しすぎる。

 これはストーカーの愛、ヤンデレの愛なのだ。

 

「逆に言えばどれほど善なる人外だろうと、極悪人の方が愛おしいって話になる」

「その通り」

 

 人間が俺に依存しないように、なんて普段悩んでいるけれど。

 依存してるのは俺の方なのである。

 

 コナン君にとって理解と推理とは愛である。

 許容で、最も誠実な触れ合い方。

 俺のことを理解しようとする行いは、彼の誠実さと親愛とを溢れんばかりに示している。

 

 俺は笑った。

 

「俺の愛、重かったりする?」

「とんでもなく。人類全体でも支えきれなさそう」

「でも主なる神は人の全てを見てるっていうじゃん。アガペー(神の無償の愛)とも言うじゃん。そういうのだからノーカンだよ」

「アガペーにしては偏りすぎてない?僕は無原罪の御宿りじゃないよ。ちゃんと父さんいるよ」

「この話は危険だから続けないでおこう。そのネタで行くと降谷さんは鳩ポジションしか残ってないことになってしまう」

「ブッ」

 

 コナン君が思わずと言った様子で吹き散らかした。

 

 三位一体。

 神と子と聖霊は一つのもの。

 俺が神として子がコナン君だとすると、鳩の姿で現れる聖霊こそが降谷さん……なわけないね。

 そんな牧歌的な絵面で降谷さんが現れたら流石に吹いてしまうなり。

 

「ともかく、僕は気にしてない……と言ったら嘘になるけれど。黄衣さんの人類贔屓は、確かに僕らを救ってるってことだよ」

「コナン君は、俺のやり方であらためて欲しいところある?」

「せめていたずらに苦しめないで欲しい、というのはあるかな。人間だって害獣を駆除する時、変に苦しめたら法律違反になるよ。できるだけ共存を図って。それがダメなら狩るけれどね」

「なるほど。その視点はなかった」

 

 人間の作った法に従う義理はないけれど、人間の考え方、道徳の参考にはなる。

 人は共感力が高いから、良い方にも悪い方にも進みやすい。

 

 そうか、害獣駆除の法か。

 それはいい案を聞いたかもしれない。

 

 俺は事務所の椅子の背もたれにおもいっきり体重を預けて伸びをした。

 

「あーーー。やっぱさ。コナン君に永遠の生を授けるのは割とありだと思うんだよ。俺の相談役」

「なし寄りのなしかな。だいたい、永遠は無理なんじゃなかったの?」

「そんな。コナン君が寿命を迎えるまでにまた頑張って研究するから!」

「なしかな」

 

 断固とした答えに俺はしょげかえってしまう。

 星の精も隣でしょげかえって、猛烈な勢いで喋り始めた。

 

「クス…クスクスクスクスクスクスクスクス」

「凄いクスクス言ってる!?なに!?」

「黄色と2人にするのかって怒ってる。この間、ナラトゥースさんの授業で星の精と僕ら人間の寿命の違いの話があったからさ。繊細になってるんだ」

「なるほど。つか俺と一緒やなの???」

 

 俺が眉間に皺を寄せて星の精に問いかける。

 星の精はむすっとして「グズ」と頷いた。

 

 黄色は不十分すぎる。星の精は納得できない。友達がいい。

 

 俺ではダメらしい。

 俺は星の精の触手を二本引っ掴んで片結びにした。

 「ゲダっ!?!?」と星の精が怒ってもしゃもしゃを蠢かせた。

 

 

 多種族共生は、きっと人間には早すぎる。

 でもこういう共生を否定するのはなんだか人情味がないような気がして、難しい気持ちになる俺なのである。

 

 まあ。

 人情味なんて、俺に一番縁遠い話か。

 





・それぞれの愛の形
※ハスター
甘やかして溺愛、管理する。
堕落させる愛。

※コナン君
理解、推理を止めない。
その上で理解できないは最大級の愛と賛辞を示す。

※降谷さん
危険から遠ざけて離す、隔離する。
どこか遠くで幸せになって欲しい。もしくは神隠しタイプの愛。

※諸伏さん
身代わりとなって危険を一身に受ける。
タンク型の愛。背負いこみがち死に別れがち。
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