ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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絶海の探偵〈犯人に迫る〉

 

 別室に呼ばれた俺たちは、立石艦長に深々と頭を下げられた。

 隣には藤井一等海佐の姿もある。

 

「ありがとうございました!まさか海上にあのようなものがあるとは…なんとお礼を申し上げればいいか」

「構いません。それと、船内に異常はありませんでしたか?」

「今のところ異常は発見されておりませんが…」

 

 

 降谷さんの問いかけに、艦長さんはやや動揺して答えた。

 俺はお口にチャック。

 厳しい眼差しのまま、降谷さんが犯人の動きについて説明する。

 

「魔術師が狙うとすれば、先ほどの混乱に乗じてでしょう。あれは怪異を呼び出す魔術によるものですから、艦内に魔術師が紛れ込んでいる可能性は高い」

「!!!」

 

 地上で呼び出してフサッグァを航路上に向かわせることもできなくはないが。

 フサッグァは人間の海図なんて読めないから、正確に航路上に移動してもらうのはかなり大変だろう。

 

 艦長が恐怖に動揺して肩を揺らす。

 

「そ、それでは船員が怪異によって危害を加えられる、という可能性も…あるいは操られる、成り代わられるなど…」

「その心配は薄いでしょう。元々、魔術には潜入に適したものが山ほどある。そこであんな大物を招来してまで人目を逸らしたのは、それしかできないからと考えるのが適切だ」

 

 例えば「似姿の利用」や「皮膚の制御」など、他人に化ける魔術は事欠かない。

 それでもフサッグァの召喚なんて大規模魔術を行使したのは、召喚に特化しているが故だろう。

 

 とはいえ船上で大した儀式もできない状態で炎の精の長を呼んでいるのだし。

 そこそこできる魔術師だとは思われる。

 

 再び何か聞こうとした立石艦長の横から、藤井一等海佐が口を開いた。

 

「犯人は…」

「ありがとうございました。あとは我々にて艦内の捜索、犯人確保に努めます」

「はい。もし何かあればお声がけください」

 

 艦長がものいいたげに藤井一等海佐を見るが、彼女はそっと立石艦長に囁きかけるにとどめた。

 人間には聞き取れない音量だったけど、俺には聞こえるんだよな。

 

「これ以上神に踏み込むのは危険です。あなたも『例の件』はご存知のはずでしょう」

「………ッ!」

 

 立石艦長の顔が凍りつく。

 

 素早く取り繕った笑みで、艦長はお見送り用の隊員を呼んでくれたようだ。

 「皆様、本日は誠にありがとうございました」と声をかけられられる。

 

 俺たちは黙って見学者の見学可能区域まで送り届けられ、隊員は深々と頭を下げてから持ち場に帰って行った。

 

 降谷さんが憮然とした顔でため息をついた。

 

「美國島の件が効きすぎたな。今抱え込まれても犯人を刺激するだけなんだが」

「また怖がられた…艦長さん一瞬ガチビビリの顔だったやんけ…」

「黄衣君。傷付いている場合じゃないぞ。魔術師の居場所はわかるか?」

「ぐすっ。逆探知済み。甲板でのんびりしてる。一仕事終えたんだ…」

「そうか。まあ、船から出さないようそれとなく見張っておこう」

 

 傷付いてメソメソしてしていると、俺たちの姿を確認したコナン君達がやってきたようだ。

 「どうだった!?何かわかった?」と駆け寄ってきてくれた。

 

 興奮気味の星の精が、最近買い与えられた一眼レフをポッケから出してパシャパシャ写真を撮りまくっている。

 

【クスクスッ!】

「星の精は許可なく人を撮らないんだよね。守れてるかな?」

【クス!】

 

 星の精は元気よくカメラを構えた。

 写真がたくさん撮りたいっていうから買ってやったのだが、思ったよりハマったらしいんだよな。

 常に体に下げて持ち歩いているようだ。

 大半はコナン君の見切れドアップの写真。

 半分以上ボケてるが、本人は満足そうである。

 

 降谷さんと諸伏さんは写真NGのため、隠し撮りの精と日々攻防を繰り広げている。

 一番成功したやつは、降谷さんが咄嗟に顔だけ黒い風と化した怪人写真じゃなかろうか。

 普通にSAN値減るやつだが。

 

 今日の朝叱られてショボショボの精になったため、もうやらないことだろう。

 

「いや。普通にお礼の言葉だけ。何かコナン君は気になるところがあった?」

「……気のせいかなとは思うけど、あの時の中排水弁の音が少し。それと、戦闘訓練中ユウキ君のお父さんが居なかったのが気になる」

「ユウキ君?」

「小学生だと思う。記憶違いじゃなければあの訓練中部屋に行かなかった参加者はそのお父さんだけだよ」

 

 降谷さんの視線が俺にチラリと向けられる。

 俺は頷いた。

 

「……確認取れた。魔術師イコールそのお父さんだね。お父さんってか赤の他人だこれ。なして2人で乗ってんの?」

「!!!身分偽装兼、人質。本物の両親も危ないだろうね」

「厄介だな。子供だけでもこちらで引き離すか?」

「その方がいいと思う。子供の行方不明を装って別室に呼び出して確保、が理想的かな。証拠が足りないのが苦しいけど」

「国外の人間だとすると色々と厄介だが…黄衣君、子供の両親は今どうなってる?」

「縛り上げられて自宅に監禁されてる。水もない。放置は危ないかも」

「なら誘拐と暴行監禁で行ける。目的は捕まえてからじっくり絞ればいいさ」

 

 降谷さんがニタリとニャルニャルしい笑みを浮かべた。

 

 やや痩せ細った顔で「おお、ゼロがやる気だ」と諸伏さんが拍手した。

 へにゃっと眉を下げて降谷さんがムッとする。

 

「ヒロも仕事の時間だ。他の客に危害を加えないようにそれとなく引き離しておいてくれ」

「俺もう一ヶ月以上休みなしなんだ…そろそろ呪呪呪漏れそう」

「頑張れ。まだ行ける。鍛え抜かれた公安は心身を国のために捧げられるんだ!」

「欲しがりません勝つまでは。勝利っていつ来るの?」

「全世界を日本で統一したあたりでチュートリアルが終わるぐらいのペースを見ておいてくれ。そこからが本番だ」

「呪…呪呪……」

 

 可哀想に、幽鬼みたいな顔で諸伏さんが出動していく。

 社畜怪異とか変なところで日本らしさを出さなくていいのに。

 

 さて、俺たちも一応艦長さんに話を通しておくべきだろう。

 こういう事柄で勝手に動くのは流石に御法度だからな。

 

 さっきの手前向こうも言い出しづらくはあるだろうが、姿の見えぬ魔術師相手に自分たちでやるって言っちゃったので、困っていると思われるし。

 

 俺たちが情報を偶然掴んだのでできれば手伝いたい、と言い出せば角も立たないはずだ。

 

「黄衣君。魔術師が暴れた場合制圧頼む。周囲に人がいる環境下であまり暴れたくない」

「わかった。この魔術の神に任せなさいな。これでも、権能でもないのに自分で神を名乗るだけの腕はあるんですよぉ」

 

 魔術の神ハスター。

 魔術師達が畏怖を込めてそう呼ぶだけのことはあると見せてしんぜようではあるまいか。

 





・犯人の魔術の腕前
召喚特化で、真言系の流れを汲む呪文により素早く大量の炎の精を呼ぶことが可能。
原始魔術系。
フサッグァを瞬時に召喚するほどの腕前。
他の魔術は乏しく、艦内では火災の危険あったので炎の精での催眠は行わなかった。
腕前としては、紅子さんを東大主席とすると地方国公立卒ぐらい。
公安信者さんは五輪金メダル程度で、単純に凄さを比べるのが困難。

ハスターの腕前は「神は光あれと言われた。すると光があった」ぐらい。
やはり比べるのは難しい。
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