ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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クトゥルフ神話TRPGをやろう!①

 

「クトゥルフ神話TRPGをしよう!!!」

 

 真昼の事務所にて。

 おもむろに叫んだ俺に、コナン君が訝しげに眉を上げた。

 

「突然何。というか黄衣さんの分の仕分け終わった?」

「終わってない…」

「今週分もあるし急ぎでお願い。僕手が空いたから手伝えるとこある?」

「じゃあ公安に送るリスト、これ作って貰えると嬉しい……」

 

 俺はしおっとしてしょげかえった。

 話が始まる前に終わってしまったからだ。

 

 というか、俺多分薄々気づいてるとは思うけどクトゥルフ神話TRPG大好きなんだよ。

 

 こんな世界に来て毎日がクトゥルフ神話だから忘れてたけど。

 せっかく現代人間文明に来たんだから遊ばねば!!!

 

 俺は気合いを入れ直した。

 降谷さんも諸伏さんも視線すら向けないし、このままでは俺の野望はここで途絶えてしまう!

 

 ぱちん、と一つ指を鳴らす。

 すると事務所の全員が中央の来客用のソファへと移動した。

 「うわぁ!?」と諸伏さんがバランスを崩しかけて慌てふためいている。

 

 なお、キッチンでほっこりしていたマモーさんは除外である。

 ゲーム中紅茶持ってきてほしいし、仕事を俺が取るとすごい悲しそうな顔をするので。

 

 降谷さんがジトリとこちらを睨んだ。

 

「仕事あるのわかってるよな?」

「見ての通り、みんなの代わりに幻影を働かせておりますゆえご安心ください」

 

 指差した先には、青い幻像が先ほどと同じく、転移した事務員たちにかわって仕事を続けている。

 もちろん、全員のスペックを完全再現しているので本人の作業と何一つ変わらない。

 安心安全の幻像魔術なのだ。

 

「その代わり全員分の処理を俺がしてるってことになるけど、それは仕方ないものとする!」

『そこまでして遊びたいのか。気合い入ってるな。仕事辛いし俺は乗った!!』

「やったぜ!!!」

 

 俺がガッツポーズすると、降谷さんがため息をついた。

 一応乗ってくれるようだ。

 コナン君が膝掛けになっている星の精をモニョモニョしながら半目で問いかけてきた。

 

「で、何するの?クトゥルフ神話TRPG?何それ」

「俺らみたいな神話的恐怖と戦う人間のテーブルトークゲームだよ。TRPGはわかる?」

「D&Dみたいなやつだよね。アメリカ発祥の、紙とペンとサイコロを使う。昔父さんが話してたから覚えてるよ」

 

 なんと、あの工藤優作氏が関わっていたのか。

 確かにTRPGはその場で物語を作っていく即興劇みたいなものだしな。

 小説家としては興味があるジャンルかもしれない。

 

 降谷さんたちはあまり聞き覚えがないらしい。

 スマホで調べて「へぇ、コミュニケーションゲームか。面白いな」などと情報をパラパラと目で追っている。

 

『というか、クトゥルフ神話って?クトゥルフって確か深きものどもの頭領だよな、ハイパーボリアを襲った』

「うーん。いや冷静に考えたらなんで奴が神話代表の顔してんのって話だよな。本当に。アザトース神話でいいんだよ。うん。失礼、アザトース神話TRPGです」

 

 俺は断言した。

 異論は一切認めない。でものでの字が出た瞬間に触手で締め上げます。

 

 俺の断固たる姿勢に、ひとまず皆が引き気味に納得してくれたようだ。

 良いことだ。

 

「ともかく、もし日常で怪異に出会ってしまったら、どうやって情報をなるべく持ち帰りつつ生き残るかの会話シミュレーションだと思えばいい。みんなの手元に、自身のステータスを反映したシートを出現させました。使ってね!」

「あれ、自分でデータ作るんだ」

「時間かかるから、その間にお客さんが来たら嫌だなぁって」

 

 ペラリとキャラクターシートを持ち上げて、コナン君が嫌そうな顔をした。

 人間の平均値なども別紙でつけておいたからな。

 自分のSIZ(体格)を見て現実を突きつけられているのだろう。

 

 降谷さんが諸伏さんと見せ合いっこしながらふむふむと頷いて眉を上げた。

 

「これは、なるほど。自分が怪異事件をどう対処するのかの思考実験になるのか。怪対課の訓練にちょうどいいな。このSAN値という値はなんの略だ?」

「サニティ。正気度だよ。魂の強度ともいう。減るとカルコサ新党の狂信者たちみたいに狂気に陥るよ!」

「現実準拠、か。なかなかいい。君が考えたのか?」

「はっはっは」

 

 俺は誤魔化した。

 それを語るには深いようで浅く、長いようで短い前置きが必要になるので。

 ちなみに第6版である。

 7版でもいいんだけど、体に馴染んでいるのは6版の方なので。

 

「ちなみに、2人とも人間だった時の能力値だから気をつけてね!人間が怪異に立ち向かう想定だし、黒い風がいたら話変わっちゃうので」

「了解した。風になれないのは移動が不便だな」

「僕も魔術抜き腕輪なし?」

「おう。素のコナン君です。……ん…?素で幼児化した高校生なんているか…?」

「その疑問は灰原に言ってよ」

 

 ふと、星の精がコナン君のキャラクターシートを覗き込み、「クスクス!!」と触手を上げてアピールした。

 どうやら星の精もやりたいらしい。

 

 うぅん……プレイアブル星の精……?

 

 俺はとりあえず星の精にキャラクターシートを渡してみる。

 星の精がまじまじと紙を覗き込んだ。

 

「星の精は漢字とアルファベット読める?」

「………クス」

 

 声ちっちゃ!

 すかさずコナン君が「僕が一緒に読んであげるよ」と言って星の精を撫でてやってくれる。

 星の精は自信を取り戻し、「クスクス!」と元気よく触手を振り上げた。

 

「ルールはゲームやりながら説明します!物語は実際あったかつての事件を参考に、そう、『鏡合わせのコモリオム』としましょう!」

 

 あなたたちはそれぞれの事情で、この木守市にやってきた。

 降谷さんと諸伏さんは怪対課の仕事かな。

 コナン君はなんか遠足とかの帰りだ。もしくは事件に巻き込まれた帰り。

 

「適当じゃない?」

「いつもコナン君ってふわっと事件現場にいるから……相棒の星の精もいつのまにかいたってことで」

「大味!!!」

「ん?そうなると僕らは星の精に驚愕して拳銃を取り出すところからスタートするのか?」

「クス!?!?」

『野生の空飛ぶ触手の化け物かぁ。ゲーム性が最初から迷子になってる気がする』

「星の精がやりたいんだし良いんだよそれで。なっ!」

「クス!!」

 

 ぐだぐだになりつつ、無事ゲームは滑り出した。

 遠くでカチャカチャとマモーさんが紅茶を準備する音が聞こえる。

 

 なんだかとっても懐かしい気持ちになって、俺はニコニコと微笑んだのだった。

 





・プレイアブル星の精
エネミーデータ参照。
成獣より弱め。
扱いやすいようにコナン君の頭ぐらいしかなかった頃のデータ。
ポッケに隠せる。
クスクスかゲタゲタしか喋っちゃダメ。

・息子がニコニコしてて嬉しいヨグ=ソトース
よしよし。
客が来ないように時間を止めておこうねぇ。
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