ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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クトゥルフ神話TRPGをやろう!③

 

 場所は変わって被害者宅前。

 

 何の変哲もない一軒家の幻影に切り替える。

 住宅街の一角だ。

 相変わらず人通りはないが、そこは省略でいいだろう。

 

「被害者宅に着きました!チャイムを押した貴方達に、インターホン越しに返事があるよ」

 

 「あなた方は…?」と女性の声で不審そうに問い掛ければ、諸伏さんがややギョッとした顔をした。

 俺程度になれば変声術ぐらい容易いのさ。

 怪盗キッド並ってやつだ。

 

 降谷さんがノリノリで警察手帳を取り出すフリをした。

 

「コナン君には隠れてもらうこととして。僕たちは警察手帳を見せて『警察のものです。行方不明の旦那さんについて少しお話を伺いたいのですが』と言おう」

「了解、なら『今伺います!』と言って女性が出てくるよ」

 

 青白い顔の女性の幻影を貼り付ける。

 すぐに気づいたコナン君が「顔色が悪いね、幻影の具合?」と言うから「いや、夫が行方不明で憔悴してる」と答えておく。

 

 次いで、民家の内側の幻影を貼り付ける。

 

 一応探偵たちの推理のノイズにならないように、間取りやレイアウトは設定に合うように作ってみた。

 

「女性が綺麗な居間に案内して、お茶を出してくれるよ」

「僕はすかさず盗聴器を安室さんに貼り付ける!」

「仕方ない。服についた盗聴器を雑音の少ない場所に移動させて聴きやすいようにしよう」

『この阿吽の呼吸である』

 

 本当だよ。

 俺は盗聴器に気づく判定でもさせようかとも思ったが、適切な判定がわからなかったのでそのままにしておいた。

 あえて言うなら目星だろうか。

 

「何を聴きたい?」

『まずは繰り返しになるけど事件当時の様子かな。この手のセオリーだ。まずは双方前提を確認する』

「オーケー。では、前任の資料と同様の話が聞けるよ」

 

 ポイントだけ押さえると三つになる。

 魘されてた夫が夜中に起きたこと。

 あちこち体をぶつけながらフラフラ部屋の外に出たこと。

 奥さんは寝ぼけてたと思ってること。

 

 降谷さんがふむ、と少し考えてから口を開いた。

 

「トイレに行っていたことは確かなのか?」

「『はい。ええと、近くで扉の開く音はしたので』」

『間取りの確認がしたい!』

「はーい!幻影を動かしまーす。ぐりぐり。このように寝室は一番近くに風呂・洗面所、その少し先にトイレ、曲がった奥が居間とキッチンだ。ちなみに平家」

 

 わかりやすいように幻影の扉を開け放っておく。

 降谷さんが「扉は全て同型。同方角。なら洗面所やキッチンにでたとして、聞き分けるのは難しいということか」とひとりごちた。

 その通り。

 この奥さんは勘違いしているだけだ。

 

『旦那さんがいなくなった時、開けっぱなしになっていた扉があったかどうかわかりますか?』

「『覚えてません…私も寝ようとしてたし、中々帰ってこなくて焦ってて、いろんなところを探したから』」

 

 と、この辺りでちょうどいいのでダイスロールの試運転と行くとするか。

 俺はふっふっふ、と笑って腕を組んだ。

 

「『……あの、そんなこと関係あるんですか?』と女性は不審そうにしたぞ。おお。時間が経ってアポもなく訪ねてきたからちょっと訝しげなようだ。全然夫は見つからないしで不信感が溜まっていたんだと思う」

「まあ、そうだろうな。この手の捜査は時間との勝負だし、前任が早めに見つけられない段階で、かなり不信感を持たれていると見ていい」

『と言うか前任どうなったんだよ。途中で飛ばされたのか?』

「ああ、それなら資料に載っていた。24人目の行方不明者だ。ミイラ取りがミイラ、と言うやつだな」

 

 降谷さん、あの速度で全部読んでいたらしい。

 諸伏さんが「あちゃー」と顔を押さえた。

 

「さて、舌ベラを回すお時間だ。交渉技能ってやつを使う時がやってきました!」

「交渉技能?」

「言いくるめ、信用、説得、の三つを指すよ。キャラクターシートのその部分。数字は成功率だ」

 

 言いくるめ、これはイメージ通りの技能になる。

 詐称詐術で相手を一時的に言いくるめる、小手先の技術。

 時間が経って冷静になられるとちょっと困るあたり、使う時は振り込め詐欺の気持ちで使うといい。

 

 信用は「疑われない力」とでも言おうか。

 社会的地位や堂々とした態度など、嘘を嘘と思わせないバックグラウンドを指す。

 相手を安心させる効果として使うこともできる。

 

 説得は一番穏やかな方法だ。

 自分の信念をわかってもらうために言葉を尽くす、正々堂々としたやり方だ。

 ただ、やっぱり分かりあうにも話し合うにも時間がかかるものだから、その辺デメリットとして扱われるか。

 

「降谷さんは言いくるめが一番高いから、それを使うのがおすすめかな。諸伏さんはどれも数値はやや低いけど、説得が高いか」

『警察なのに俺ら信用低いなぁ』

「若いからだろう。見た目に貫禄が足りないから、軽く見られがちになる。特に僕はこの髪色だし」

『実感がこもってて辛い……バーボンの苦労に涙』

 

 コナン君が何気なくキャラクターシートを見て、ムッとして唇を尖らせた。

 

「あっ、僕も言いくるめが高い!なんで!?」

「普段の行いを省みようか小学生探偵君。いつも容疑者にやってることじゃないか」

「安室さん酷い!納得いかない!僕は可愛い小学生だよ!?」

 

 なにやらコナン君に同調して星の精がクスクスブーイングを挙げている。

 降谷さんが試しに、とキャラシを片手に口を開いた。

 

「じゃあ僕は顔面を最大限活かして『現在警視庁でも最大限の捜査を行なっています。ご心労は察してあまりありますが、どうかご協力をお願いいたします…!』と切なそうに苦しそうに言おう」

『すごい!本当にそれっぽい顔する!バーボンがお願い事する時の顔だ!』

「俺この犬が困ってるみたいな顔苦手。人間にこの顔されると無限に加護あげたくなる」

 

 でも降谷さんは人間ではないし、警察にそもそも不信感があるので顔だけでこられてもプラスは上げられぬ。

 「夫が行方不明の奥さんに顔で攻めるでないわ。降谷さんの言いくるめは72。100面ダイスで72以下を出せば成功です」と俺は突っぱねた。

 

「顔面加点は無いのか?」

「無いです。顔面で減点が免れた感じ」

「チッ」

 

 降谷さんは行儀悪く舌打ちしてダイスを転がした。

 

1D100 >> 24

 

 成功したしたようだ。

 まぁ、お試しで失敗されても幸先悪いしこれでよかろう。

 

「『……でも、キッチンは、しまってた気がします。最近は閉めっぱなしてるので、空いてたら気付きますし』」

「なぜ閉めっぱなしにしているんですか?」

「『夫が空いてると嫌がるんです。なんでって聞いてもなんとなくとしか答えてくれないし。洗面所への通り道なので面倒なんですけど、こまめに閉めるようにしてました』」

 

 コナン君がハッと気づいて頭を上げある。

 

「僕、安室さん達と電話番号交換してたことにしていい?」

「いいともー。何の電話?」

「プレイヤーとしては知ってるだろうけど、キャラは情報共有してなかったことがあって」

「……ああ、悪夢で魘されてた件か。たしかに、被害者も魘されていたと言っていたな。電話で共有してくれると嬉しい」

 

 降谷さんが納得したように頷いて、「では、コナン君が電話してくれるので少し席を外してから、すぐ戻ってこよう」と言った。

 いいぞいいぞ。順調だ。

 

「うなされていたということですが、なんの夢を見ていたか分かりますか?」

「『さぁ……あ、でも。確か神社がどうとか言ってました。居なくなる少し前に、最近神社の夢を見ると言っていました』」

「神社?」

「『近くに神社があるんです。有名なパワースポットで観光客もいるみたいで。先月お参りに行きました。もしかしたら加護なのかもって笑ってましたけれど』」

 

 ここまでであらかた情報は出尽くしただろう。

 諸伏さんが「トイレと洗面所のレイアウトが見たい」と言ったので、その幻影を見せたぐらいか。

 何の変哲もないと言うことが分かっただけだ。

 

「別れ際、奥さんに話しかけられるよ。『どうか夫を見つけてください。最愛の夫なんです。二ヶ月後には、子も生まれる予定で』と涙ながらに少し膨れた腹をさするかも」

「……わかりました」

 

 降谷さんが沈鬱に頷いた。

 コナン君が、少し俯いてそっと言葉を落とす。

 

「ねえ黄衣さん、本当に生存者はいないの?」

「いないな。鏡合わせのコモリオムにおいて、未帰還とはすなわち死だった」

「………なるほど。なら必ず事件解決しなくっちゃね」

 

 これ以上の犠牲者を出さないために。

 探索者達の解決への動機は固まったようだ。いや、これはプレイヤーの動機というべきか。

 

 あとは神社にむかうだけだ。

 

『神社の場所、スマホで調べれば出るか?』

「有名だから判定なしで出るよ」

『判定?』

「やろうと思っても達成できるか分からない行為に関しては、判定が必要になる。向こう側に飛び移れるか、判定に失敗すれば落下!みたいなね」

『なるほど。天運をダイスに判定してもらう感じか』

 

 というわけで神社については話が出た時点で開示である。

 

「木守神社。徒歩10分ぐらいの場所にあって、縁結びの神様が祀られてるよ。公式ホームページもある。こんな感じ。スマホに送る」

「無駄に凝ってるな。これ今作っただろ君。きちんと金かけてるホームページが開いたんだが」

「俺お手製でーす。そういう企業HPみたいなオシャレなホームページ出ます。かっこいいご朱印帳も売ってるよ!」

『本当だ。干支土鈴いいな、俺も欲しい』

 

 ワイワイしつつ、民家の幻影をたたむ。

 もうここに用はないからな。

 外の映像に切り替えたあたりで、降谷さんが声をかけてきた。

 

「黄衣君、僕らに部下はいるか?」

「残念ながら下っ端です。降谷さんの地位だと現場に来るの難しいし」

「確かにな。なら今のうちに上にあげてくれ。行方不明になった人間が直前に木守神社に向かっていないか、捜索予定と」

「調べてくれじゃなくて?」

「僕らが生きているなら自分で調べるから構わないが。情報を抱えて死ぬのは不味いだろう」

 

 すっごいドライな返答が来てしまった。

 諸伏さんも同意見なのか、「踏み込む前の遺言大事」と頷いている。

 コナン君がヒエ、と若干怯えて星の精と身を寄せ合った。

 

「じゃあ、そのほか準備はあるかい?」

「今の所はないな。普通に参拝するだけでいいだろう」

『起こるとしたら参拝した後の夜、つまり今夜だな』

「あ、ならホテル予約しつつ行こうよ」

 

 コナン君の発案に、俺はうむうむ頷いて許可を出した。

 

「おーけー。ホテルは取れます。事件があってスカスカです。トコトコ10分。コナン君の足に合わせて15分かな。場面を切り替えるぜ!」

 

 景色を大きめの神社の前に切り替える。

 小さな山の中腹にあって階段が結構きつそうだが、見晴らしはいい感じの神社を想定してある。

 

 降谷さんがすかさず「メガネをかける」と宣言した。

 コナン君はニヤリとしてから、キュルンと子供の振りで目を潤ませた。

 

「ねぇねぇお巡りさんたちそれ何?」

「眼鏡だよ。君も見たことがあるだろう?」

「へぇ。お兄さん、被害者の家でも僕の写真見る時もメガネかけてなかったよね。コンタクトを外すそぶりもなかった」

「伊達メガネさ。ほら、度が入ってないだろう?」

「………へぇ。2人お揃いで?」

「………そうさ。君のメガネと一緒でね」

 

 なんで隙あらばギスらせようとするの!!

 また2人がハイタッチするから、俺はポコポコ怒りながら、メガネをはめた結果を伝えておく。

 

「読めないほどの濃密な魔術式がびっしり、参道に沿って奥に続いてまーす」

「碌でもないじゃないか!仕方ない。踏まないように進むしかないだろう」

「僕は諸伏さんによじ登って不満を表明しようかな。1人だけ見えてないし。踏んだら危険だから」

『肩車してブーンと走り出します』

 

 牧歌的な見た目の3人組が爆誕してしまったようだ。

 ふむ、と考えた降谷さんが真顔でとんでもないことを言い出したら。

 

「ヒロ!走ったら危ないわよ!と、少し所作をたおやかに変えて後を追いかけよう」

『ゼロママ!!!でも俺らスーツじゃんね!』

「服など瑣末な違いだ。演技は細かな所作に出る。僕はそう学んだ」

「あんたら意外とノリいいんだよな…」

 

 コナン君が何とも言い難い表情で突っ込んだ。

 コナン君はコナン君でいつも正気なんだよね。

 

 再び映像を切り替え、メガネを通した時点での禍々しい映像を映し出す。

 

「最奥へ到着すると、拝殿にはみっちり建物丸ごと作り替える勢いで魔術式が組まれていました。降谷さん達の知識で読み取るのは難しいだろうな。あ、リアル知識で読み解いてもらってもいいよ」

「無茶言わないでくれ。ABCがやっと読めるようになったのにシェイクスピアが読み解けるわけないだろう」

『すごく怖そうということしか分からない』

「僕も。でもこれ…意識だけ引き摺り込むとかそういう感じじゃないかな。術式的に」

 

 全降谷さんが嫉妬の顔でコナン君を見た。

 どうどう、落ち着け、嫉妬の炎をたぎらせるな。

 

 ちなみに、本当の鏡合わせのコモリオムはメガネを使っても見えない魔術だったんだよな。

 見えてりゃハイパーボリアの民が引っかかるはずもない。

 ニャルのあんちくしょうが俺の神殿乗っ取って媒体に改造して、次々国民を攫ってったんだよ。

 

 まじ許されんからだいぶ喧嘩したなぁ、当時。

 ともかく、眼鏡で魔術式が見えるのはどちらかと言うとゲーム用のおまけ演出だ。

 

 降谷さんがしばしの沈黙を挟んで、声を絞り出した。

 

「では、参拝しようか。各々腹を括るように」

『死にたくないなぁ。神社を封鎖、いやこの段階で封鎖すると被害者を見捨てたって非難がくるし』

「ここで誰か怪対課が参拝するのは決定事項だ。人員が戻っても戻らなくても神社封鎖の大義名分を得られる。できれば戻って、被害者の遺体を持ち帰ることができればベスト、といったところか」

『黄衣がいないってことはナラトゥース先輩周りもいないんだよな、戦力ガタ落ちだ』

 

 コナン君は現場の肌感覚、生の声にごくりと息を呑んだらしい。

 なんだかよく分からん星の精も場に合わせて「クス…!」固唾を飲んでいる。

 

「では、参拝しよう」

『俺も。5円玉出して投げ入れて二礼二拍手』

「僕も諸伏さんの上から十円投げようかな。星の精の分も握らせておく」

「クスッ!」

 

 星の精が何かを投げる仕草をしてから、ナムナムと触手を擦り合わせた。

 すっかり日本の礼拝様式に馴染んでしまって。

 

「よろしい。ではみなさん、POW対抗ロールです。って言っても、これは単なる情報開示だけだけどね」

「POW対抗ロール、というと?」

 

 POWは人間の精神力を示す。

 概ね11ぐらいが普通の人と言えるだろう。

 18が最大で、鋼の精神と言っていい。

 

「POW対抗は、相手の精神力と自分の精神力を競い合わせることを指すんだ。大体、魔術が効くかどうかとかの判定に用いるかな」

「なるほど。数値は?」

「100面ダイスを一回振って、-380以下が出たら魔術を弾けます」

「………は?」

「通常、これは自動失敗と呼ばれるやつだ。うむ。相手のPOWがとんでもなく高い時にこうなる」

 

 降谷さんがげ、と言う顔をした。

 

「神格か、それに類する何かってことか!生きて帰れる気がしないぞ!」

「ちなみに今の降谷さんでも弾けない難易度だから気をつけてね」

「旧支配者か外なる神じゃないか!神が出張るべき案件だろう!」

 

 ギャーギャー喚かれるが知らんぷりする。

 この世界の俺は慎ましやかな神なのです。

 なお、コナン君はブレスレットの効果で弾けるからご安心を。

 宇宙戦艦の名は伊達ではないのだ。

 

「クス…?」

「星の精も、とのお声に答えますと、はい。星の精もなんか怖いものに目をつけられました」

「ゲタッ!?!?」

 

 ぴと、とコナン君に張り付いて震え始めた。

 「星の精をいじめないで」とコナン君に注意をうける。すまんね。

 

 これでシティシナリオターンも終わり。

 ここからはクローズドなお時間だ。

 

 俺は容赦なく「時間を進めるけど寝る以外にやることある?」と問いかけた。

 しょぼしょぼの4人が「ない。拳銃はそばに置いておこう」「寝ないと言う選択肢」「ヒロ、それだと明日死ぬだけだ」「僕読経しとく」「クス」などとしょげかえっている。

 

 まあこれを潜り抜ければハイパーボリアでも英雄だから!

 そのように声をかけつつ、セッションは後半戦に移るわけである。

 





・ニャル
なんか我が夫が悪口言ってるような気がしたけど気のせいなので二度寝した。
鏡合わせのコモリオムでは殴り合った仲。
アザトースの使者相手に真正面から殴りかかる真性の狂人、ハスター。
ハスターの発狂モードを察してニャルは逃げ出した。
あれほんとに勝つまで殴りかかってくるねん。
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