ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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ひまわりの予感

 

 あの後、「クトゥルフ神話TRPG」のゲームデータを公安へと納品した。

 

 プレイヤー用ルール冊子とGM用フルルール本1本、ゲーム用神話生物・魔術・アーティファクト等データ集1つ、シナリオ集、KPハスター君人形10体

 後追加サプリをいくつか。

 

 ルールブックは全てデータ形式だ。

 向こうもデータで見たい時もあるだろうし、好きに増刷できるようにしておいた。

 また、内容は6版を日本人向けにわかりやすいように編集しなおしたものだ。

 

 警視庁、公安総務課長の部屋にて。

 降谷さんがビヨビヨ動くKPハスター人形を見て、眉間に皺を寄せた。

 

 皆俺のゆるキャラで、イカさんの姿をした可愛い人形だ。

 ふわふわの布製の短い触手をウゴウゴと動かしている。

 

「なんだこれ。高い声で喋るんだが」

『TRPG楽しいよ!』『ダイスを振るぞ!ダイスを振るぞ!』『新しいキャラシを用意しようねぇ』

 

 口々に何やら呟くKPハスター君人形に、降谷さんは頭の痛そうな顔をした。

 俺は胸を張って誇らしさいっぱいに答えた。

 

「もちろん、キャラシ作成と司会進行をやってくれる有能人形君だよ。最初は怪異のエミュレートなんて難しいだろ?キャラシだって本人のものを随時作りたいだろうし、ルールにも不慣れだ」

「ありがたいが、君の負担にはならないのか?」

「ただ司会するだけだし、仮想人格に回してもらうだけでなんの負担にもならないよ」

 

 いつでも好きな時に相手してくれるフリーのKPという夢の存在だ。

 讃えるがいい。崇めるがいい。

 どんなマンチも大暴れも臨機応変に対応し、怒らず丁寧に寄り添ってくれる。

 

 ただ、やりすぎると行き先は留置場なので留意されたし。

 公安だから最終的に釈放されるだろうが上司からは大目玉を喰らうだろう。

 

「KPハスター人形君にお願いすれば実在の怪異を元にシナリオ作ってくれるよ。任務前のシミュレーションにどうぞ」

『まかせろ!』『いあいあー!』

「また君は…人間を甘やかして……。こちらとしても損耗を抑えられるのは嬉しいが」

 

 降谷さんは大きなため息をついた。

 

 ハスター人形に怪異の管理番号を伝えれば、管理番号を元にシナリオの作成が可能だ。

 実際の回収業務を行う前に演習すれば、事故率を相当減らすことができるだろう。

 

 ごほんと咳払いをして、降谷さんが顔を上げた。

 

「ともかく、僕の提案は上も好印象のようだ。君と言う世界でも上のない怪異知識を持つ者の考案したゲームだ。危険もなく、自然に怪異対応について考えるきっかけになる」

「ならよかった。ルールはそっちで勝手に変えてもらっても構わない。公安で使いやすいように変えたら、ハスター人形君に伝えるのを忘れずにな」

『教えてくれやす!』『学びは力!』

「本当に柔軟だなこの人形……。ところで貰ったデータなんだが、見本に怪異のデータが大量に含まれていた。これは本物か?」

 

 じろり、と降谷さんが俺を見た。

 俺はじっくりと頷いて、何一つ恥じることはないと胸を張った。

 

「全部本物だけど、種族単位の平均だから個体差激しいし参考程度に留めておいてくれよ。あと旧支配者と外なる神は俺が戦った時の体感数値だから同じく頼りすぎないように」

「そうか。僕が一番最初に確認しておいてよかった。データは極秘として取り扱いには細心の注意をしておく」

 

 降谷さんが顔を青ざめさせた。

 外なる神は俺とバトったことのある神しか載せていない。

 昔、荒ぶってた時期は目につく全てに喧嘩売ってたからなぁ。

 俺が何万回消し飛ばされても挑んでくるから、途中で怖がり始めるんだよ、相手。

 

 旧支配者は多分大体バトったと思う。

 そのせいで旧支配者の9割に嫌われてた時期があった。

 みんな横面張り倒した程度でイライラしすぎなんだよね。

 不滅なんだからそんなん気にすんなよ。

 

 ともかく。

 旧支配者&外なる神列伝に気圧されて地球の滅びを予感してしまったのかもしれない。

 いやそんなの初めからわかってたことやろがい。

 

 なお、これには俺のデータも入っている。

 旧支配者ハスター、星間宇宙を歩む者。

 スペックは旧支配者でも高い方という程度でしかないが、その真骨頂は魔術の豊富さである。

 

 魔術はルールを原作から拡張して「魔術の全て─グランド・グリモア」というゲーム用追加サプリを渡してある。

 

 だが、所詮はゲーム。

 魔術という物の自由度を表すには到底足りないと言わざるを得ない。

 ニャルや俺、ルリム=シャイコースなどの魔術巧者を相手にするのは不足になってくるだろう。

 あと人間の魔術師相手もちょっと不安。

 この点、ルールの改善が必要だろうか。

 

 降谷さんは顔に手を当てて眉間を揉みほぐしたようだ。

 

「データソースは全て極秘扱いだな……。まあいい。そういえば黄衣君、鈴木次郎吉氏のお誘いはどうするつもりか?」

「ニューヨークに行くアレ?ゴッホのひまわり見たいし行くけど」

「そうか。僕は忙しいから今回は見送るが、あまり暴れないようにな」

「残念だなぁ。ゴッホのひまわり、アレは俺を描いた絵なのに」

「!?!?」

 

 彼は俺の熱心な信者だった。

 真夏に咲く大輪の花に、彼はハイパーボリアという理想郷を思い描いたのかもしれない。

 黄衣の王とそれが統治する理想郷を、その黄色い花に投影して描き上げた。

 

「まあ、途中で夢を諦めて描かなくなっちゃったんだけど。彼はハイパーボリアを芸術の都、理想の共同体だと思ってたみたい」

「………なるほど。僕も行くことにした。仕事は山積みで首が締まりそうだが仕方ない」

「お、やっぱ見たい?だよね。いいよひまわり。かっこいいし、俺も複製画を部屋に飾ろうかな」

「そうじゃないんだがもうそれでいいか」

 

 降谷さんはガックリと力尽きてしまったようた。

 え、ひまわりを狙って魔術事件?

 やだなぁ。ひまわりが7枚揃うと俺が呼びやすくなるだけだよ。

 

「ほら、ゴッホさんの真摯な気持ちが俺を呼ぶ的な。まぁそこまで熱心に祈られたら悪い気はしないし、ちょっと顔見せしようかなとかね。その程度の話」

「君、僕の黄金の左を喰らいたいとかそういうアレか?どうしてそう筋金入りのポンなんだ???」

「え!?危険な神話生物とか何も関わってないけど!?なんで!?!?」

「君は危険な神話生物じゃないのか……?」

 

 俺は違うよ。俺は違う。

 断固たる気持ちで否定すれば、降谷さんはめまいを覚えたのか黙り込んでしまった。

 

 まあともかく、俺が行ったとして特に何か起こるってわけでもないし問題なかろうよ。

 

 俺は生ひまわりを見る機会に若干燃えた。

 どうやら鈴木次郎吉氏も何か企画しているみたいだし。

 

 どでかい催しになりそうで、俺はワクワクしたのだった。

 





・KPハスター君人形
優しいKP。仕事なので涙を飲んでPCを殺す。
そうじゃないと本番で死ぬので。

・ひまわり
7点全て揃うとハスター召喚に補正がつく、極まった芸術がもたらす魔術効果がある。
別名、物見遊山のハスターが釣れる効果。

・荒ぶってた頃のハスター
全宇宙の害悪。俺より強いやつに会いに行く。
ポケモン並みに目があった瞬間バトル開始で、自分が勝つまで幾度消し飛ばそうが執拗に襲いかかってきてしかもだんだん強くなる。
みんなハスターのこと嫌い。
実は今は相当丸くなった方。
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