ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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業火の向日葵〈燃える美術館〉

 

 レイクロック美術館にて「日本に憧れたひまわり展」堂々の開催当日がやってきた!

 

 俺はコントロールルームを出て、やや薄暗い廊下を歩いた。

 コントロールルームは息が詰まるし、声が響くからな。

 

 降谷さんがなんとも言えない顔でジロリと俺を覗き見た。

 

「君の調子は問題ないか?燃やされて昨日今日の話だが」

「大丈夫。ちょっと爪先に熱いもの当たったぐらいの話だし」

「それにしては丸焦げだったが」

 

 降谷さんが深くため息をついて頭に手を当てた。

 おととい、常温で自然発火する液体をかけられてハスターの丸焼きになってしまったんだよな。

 

 事務所のビルから出て、コンビニまで最短の道の途中でのことだ。

 昔バーボンに爆殺されたのと同じような場所で、事件は起こった。

 

 車の影に簡単な仕掛けが施されていたのだ。

 そこに化学薬品ホスフィンの密閉されたバケツが入れられていて、通り掛かった俺に射出。

 

 俺は無防備にその薬品を浴びて、燃え上がったうえにちょっと咳き込むなどした。

 ホスフィンは殺虫剤にも使われ、死亡例があるほど毒性が高い。

 俺はゲフってなるだけだが、近隣に空気が漏れたら厄介だ。

 慌てて燃えながら警察に連絡。

 一時周辺住民の避難も行われる惨事になったと言うわけである。

 

 もちろん、俺はこんがりハスターになって緊急で駆けつけた公安に回収された。

 

 すぐに消し止めることはできたが、特にそうする必要もなかったからな。

 俺は駆けつけた降谷さんに「一発芸、ハスターの姿焼き」を見せてポコって殴られるなどした。

 暴力反対!

 

「まさか俺を殺そうとするとはなぁ。俺に化学薬品かけても意味ないのに」

「人間なら間違いなく死んでた所業だ。殺意はバッチリだろう。こちらですぐにでも引っ張るが?」

「相手は魔術師だしなぁ。証拠も足りないし。俺を狙う分には実害もない」

「あんな量のホスフィンを街中でぶちまけるやつが実害無いわけないだろ。君が自分を軽く見積もっていて、人間に甘いのはわかるが」

 

 確かに、彼女の行為は完全なるテロ行為だ。

 俺はともかく他に被害を与えかねない行為は許して置けない。

 捕まえるしか無いわけだが。

 

 それには魔術師であるということが邪魔をする。

 どこまでの魔術が使えるかは未知数である状況で、一般の警官を向かわせたら返り討ちになってしまいかねない。

 

 せっかくの7点のひまわりが全て揃う日だ。

 マモーさんも楽しみにしていたし、彼女も諦めてくれればいいのだが。

 

 降谷さんが実に憂鬱そうに足元を見つめた。

 

「で、ニャルラトホテプは矛を収めてくれたのか?」

「一応今日のところは大目に見てくれるって」

「だが奴は嘘つきだろう」

「分からん……嘘なら俺は地球抱えてまた逃げねばなるまい」

 

 偶然、俺の事務所に遊びに来ていたニャルが俺の姿焼きを目撃しちゃったんだよな。

 燃え上がる俺を見て瞬時にマジギレ。

 殺意の波動に目覚めたニャルが燃える三眼をかっ開いて魔術を装填し出したから、宥めるのには大層苦労した。

 

 そんな、焼けた程度で旧支配者がどうこうなるはずないのにニャルも大袈裟なんだよ。

 一応俺が説得したから、ニャルも多分大丈夫なはずである。

 分からんが。ダメならまた考えよう。うむ。

 

「そういえば、諸伏さんの様子はどう?」

「相変わらず眠いようだが…正直、ここ二ヶ月働き詰めだしそこまでおかしい様には感じられない」

「過労かなぁ。俺の取り越し苦労ならいいんだけど。あ、そうだ。コナン君達は今どの辺?」

「3番目のひまわりのあたりだ。蘭さんと園子さんもいる」

「俺も見よ……おお。星の精が画家の顔をしている……」

 

 今日は特別な日だ。

 1日100名、一ヶ月間限定の7点のひまわりが集うビッグイベント。

 そのため、星の精の人間体モードを解禁。

 次郎吉さんにお願いして、一緒にチケットを発行してもらっていたのだ。

 

 子供達とはしゃぎながら、星の精はひまわりの周りをすごく嬉しそうに駆け回っている。

 そしてまじまじとひまわりを見て一言。

 

 「ほしのせーのほうがもっと上手く描ける。くす!」などと胸を張っている。

 

 すごい自信だ。

 目指せゴッホ並みの世界的巨匠。

 

 まあ確かに、星の精は絵の才能というか、空間把握とそれを二次元に投射する才能は凄まじい。

 星の精には絵の文化がないから種族的な特徴かはわからないが。

 ほぼノー勉強で正確に奥行きを写実的に描いているあたり、うちの星の精が優秀であることは間違いない。

 

 しばし、降谷さんが虚空を見てから俺に語りかけた。

 

「今、キッドから連絡があった。彼の協力者が宮台なつみの犯罪計画が彼女のPCにあるのを確認したそうだ」

「それなら踏み込めそうだな。公安を外に待機させてるんだろ?」

「ああ。僕は絵画鑑定士の宮台なつみの拘束にかかる。君は何か仕掛けられていないか確認しておいてくれ」

「了解。って言っても、魔術の痕跡はないけどな」

 

 絵画魔術に類するものも含めて、俺の感知は完璧だ。

 俺がこの目で見てわからない魔術など、ニャルラトホテプでもない限り使用は難しい。

 

 降谷さんが足早に去っていく。

 あとは向こうに任せて置けば問題無かろうよ。

 

 さて。そのあたりで念話が来た。

 コナン君からだ。

 

『ねぇ黄衣さん。この通路に飾られてる造花のひまわり、変な匂いがする様な気がするんだけど。気のせいだと思う?』

『ん……おや。テレピン油だね。油絵で薄塗りとかに使うやつ。すぐ乾く。なんでそんなんが造花についてんだ?』

『すぐ乾く……揮発性が高い。っそうか!この建物全体の構造を使って!黄衣さん!今すぐこの中の人を避難させて!』

『えっ!?な、なぜに!?』

『螺旋状の通路に敷き詰められたこのひまわりの造花を使って、建物全部に火をつけるつもりだ!』

 

 嘘でしょそこまでやるか!

 というか爆弾仕掛ける時間ないからって工夫して燃やそうとすんなし!!

 

 大慌てでコントロールルームに駆け込む。

 異常がないか、次郎吉相談役と監視カメラ担当がモニターを眺めているようだ。

 

 「なんじゃ騒々しい」と振り返った次郎吉氏が、焦った俺の様子を見て目を見開いた。

 

「ぬしか!どうした、何があった」

「通路の造花に油が撒かれてるみたいだ!早く観客を避難させないと、もし火をつけられたら丸ごと火の海だ!」

「なんじゃと!?!?」

 

 俺の言葉は、残念ながら一足遅かったようだ。

 

「たっ、大変です相談役!!!」

 

 ハッと何かに気がついた様子の見せた監視カメラ担当が顔を顰める。

 瞬間、電気が数秒落ちた。

 そして復活。

 それだけの間で、監視カメラの映像は火に包まれてしまっていた。

 

 観客達が異常に気付き、無秩序に逃げ惑っている。

 

 どうやら犯人が火をつけたようだ。

 逃げ遅れれば一酸化炭素中毒で命はないと言うのに、罪なんて何一つないと言うのに、人命なんてどうでもいいと思っているのだ。

 それとも、公安の動きを察知して、道半ばで捕まるくらいなら多少の犠牲はやむを得ないと思っているのか。

 

 監視カメラ担当さんが必死の形相でカメラを切り替えた。

 熱に焼かれた観客達の苦しむ声と、必死で入り口に向かって走る客達の姿が映っている。

 

 親とはぐれて泣く子を、星の精が背負って子供達と共に必死で外に駆けている。

 偉い!星の精偉い!

 

 うおぉ星の精泣いてる!超泣いてる!

 たぶん子供を保護してるからコナン君を置いて逃げねばならなかったからだろう。

 歩美ちゃんに励まされてグズグズになりながら走っている。

 

 もう現場は大混乱だった。

 監視カメラ担当さんが悔しさに歯噛みしながら叫ぶ。

 

「火元はおそらく電気制御室です!先ほどの停電もおそらく犯人の仕業かと!」

「っ、ひまわりの緊急避難装置を起動せよ!人命優先じゃ!ギリギリまで避難の遅れたものがいないか確認してから退避する!」

「はいっ!………いや待て、これは……」

 

 監視カメラ担当さんの顔色が青くなった。

 複数あるモニターの二つ、2番目と5番目のモニターに避難完了表示が出ていない。

 カメラを操作してみると、それが観客用のポールが引っかかっているせいだと把握できた。

 

 この混乱に乗じて観客と共に外へ出て逃げ延びる、という犯人の段取りが透けて見える。

 

「相談役!2番目と5番目のひまわりの避難ができていません!支柱に引っかかってシステムが機能していないようです!」

「なんじゃと、どういうことじゃ、それを加味してポールの位置は決めてあったはず…!」

 

 混乱の中、もうあの炎の中ひまわりの救出に戻るのは不可能であることを次郎吉氏は理解したのだろう。

 眉間に深い皺を刻んで怒りをこらえている。

 

 コナン君がひまわりの救助に動いているみたいだが、念のため俺も見て回ったほうがいいだろう。

 

「俺が行きます。皆さんは避難を確認し終えたら早めにご自身も退避してください。この場所は奥まっていてエレベーターでなければ地上に上がれませんし」

「!!……すまぬな。必ずやこの礼は返そうぞ」

 

 俺の言葉に、次郎吉相談役が深々と頭を下げた。

 この人は俺が神であることを知っている。

 その上で、礼とは信念をかけて神に返礼をすると言う意味を含んでいるのだろう。

 

 俺だって7人のサムライのうちの1人だ。

 そんな大袈裟にしなくたってひまわりを守るのは仕事のうちなのに。

 俺は軽く肩をすくめて、それを返事の代わりとした。

 

 

 

 

 コントロールルームは最下部にある。

 火の手の中をずんずんと上がっていけば、焼け付く様な熱気が肌を焦がす。

 

 もうすでに一番下まで火が回ってしまっているようだ。

 少し上がると、火の手に巻かれながら必死で5番目のひまわりの周りで悪戦苦闘するコナン君とキッドの姿を見つけることができた。

 

 俺はたかたかと火を無視して駆け寄った。

 

「コナン君達!どうした、なんか苦戦してるみたいだけど」

「うわぁ黄衣さん!?燃えてる!!!」

「ああこれ、大丈夫燃えてるだけだから。それで状況どうよ」

「燃えてるだけって……。ポールがいい具合に食い込んじまって取れねぇ。壁を壊せれば外せるんだけど」

 

 見ると、ポールの足の部分がうまい具合にはまりこんで引っかかっていた。

 壁は分厚いコンクリ製で、魔術でも早々壊せそうにない。

 これを壊そうと思ったら、ハイパーボリアの土木建築魔術が必要になってくるだろう。

 普通の攻撃魔術じゃ無理だ。

 

「んー、よいしょ。俺のパワーを見せてやろうぞ」

「えっっっ死ぬほど太い触手出てくるじゃん」

「ヨイショ」

 

 髪の毛ほどの触手でちょいちょいとつついてやれば、厚さ2メートルはあるだろうコンクリの壁は脆くクラッカーの様に砕け散った。

 その隙間からポールを外してやれば、無事に絵画は脱出経路に沿って素早く上昇していく。

 

 ドン引きのキッドが「うおぉ馬鹿力の怪物…」と仰け反るなどした。

 誰が怪物やねん。

 

「というかキッド、スタッフに潜り込んでたんだ」

「ああ。怒られたんだよ、工藤新一を無断で使いすぎって名探偵に。だから仕方なくな。というか完全に火が回って気圧が下がって地下空間が崩れ出してんだけど」

「早いとこ脱出しよう。黄衣さん、キッドに防火魔術かけてやって!」

「あいあいさー。火ぃ怖くなーい火ぃ怖くなーい」

 

 俺のライブ感100%の呪文によって、キッドに火と高熱への耐性が付与される。

 これなら溶鉱炉に沈んでも死因は溺死になるだろう。

 いや、酸素確保も必要だな。よいしょよいしょ。これでよし。

 

 キッドは「ノリにありがたみがなぁ」と渋い顔をして肩を落とした。

 コナン君も同意してうんうん頷いている。

 なんでや。何が悪かったって言うんや。

 

 さて。

 入り口へと向かえば。

 

 そこはなぜか膠着状態に陥っていた。

 

 公安の人員1人を人質に取った犯人が、黒い風相手に「近寄るなぁ!」と啖呵を切っている。

 うーむ。そこどいてもらっていいかな。

 





・犯人
冷静に考えたら爆弾って女の身には重いんやなぁ(しみじみ)
薬品使うやで!

・ハスターの姿焼き
公安はハスターの怒りを買ったんじゃないかと全身冷や汗だった。
ハスター自身は子猫に引っ掻かれたぐらいの気持ち。
どちたの?怖かった?ごめんね…!
ニャルも許してくれたみたいだし、大目に見ようね!

・ニャルラトホテプ
許す?そんなこと誰が言ったんです?
えへへ。殺します。^ ^
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