ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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つなぎなので短め。
これからから紅を経て紺碧の棺で完結や。



深海の囁き

 

 現在、俺たちは公安の息のかかった病院にいる。

 

 真白いばかりの病室のベッドに、諸伏さんが青ざめた顔色で静かに寝息を立てていた。

 俺の術式によってまだ物質化が続いているのだ。

 布団をすり抜けることなく、生前の癖で息をする姿は偽物ではあるものの生の息吹を感じさせた。

 

 降谷さんがギリ、と奥歯を噛み締めた。

 

「ヒロはどうなっているんだ?病院では検査ができないから寝かせているだけだと聞いているが」

「重篤な症状はないよ。寝てるだけ」

「寝てるだけ?疲労、ということか?」

「いや。このままだともう目が覚めない」

 

 ヒュッ、と降谷さんの喉が鳴った。

 愕然とした表情で俺を見るので、俺の口も自然と重くなった。

 

 見た目、諸伏さんは本当に寝ているだけだ。

 

「クトゥルフの封印が逆流してるんだ。クトゥルフとだんだんと接続が強まっている気配は前からあったけど」

「……!」

 

 それが閾値を超えて、クトゥルフの封印が諸伏さんへも牙を剥いた、ということが真相のようだ。

 

 だからここのところ諸伏さんは眠そうにしていたのだろう。

 本来クトゥルフにしか効果のない永劫の眠りが、何故諸伏さんに逆流したかはわからない。

 余程親和性が高かったのか。

 

 だんだんと諸伏さんの怨霊としての存在規模が大きくなっていたのも、接続が強くなっていた証拠だ。

 奴の「無限」を摂取し、成長していたのだ。

 

 降谷さんが震える拳を握りしめ、ゆっくりと口を開いた。

 

「解除方法は?」

「クトゥルフが復活すれば、同時に目が覚める。それしか道はない」

「ッ!」

 

 同時に、それは人類の終末を意味している。

 加えて、クトゥルフが復活した時正しく諸伏さんの精神が保たれるかも疑問が残る。

 

 ここまで接続が強くなっているのだ。

 クトゥルフによって精神になんらかの干渉を受けかねない。

 人間1人接続したからってクトゥルフが気に留めるとは思わないが……確実なことは言えない以上、心配して損はないはずだ。

 

 コナン君と星の精も、心配そうにベッド脇に立って諸伏さんを見下ろしている。

 

「クス……」

 

 星の精が諸伏さんの頭を触手で撫でて、それから口元にグミを近づけた。

 馴染みのない病人という概念に、星の精は動揺しているらしい。

 

 ヒゲ、ヒゲ。元気ない?

 星の精のグミやる。起きろ。なんで起きない…?

 

「クス、クス」

「たしかに、学校の友達は数日で学校に戻ってきてたね。でも、諸伏さんはわからないんだ」

「……クス」

「死んでないよ。これからもそうだとは、限らないけれど。でもきっと良くなる。諸伏さんの元気が出るように、これからお見舞いにこようね」

 

 コナン君の優しくて残酷な言葉に、星の精はしおしおの縮れ触手ボールになった。

 

 諸伏さんが目を覚ます時、それはクトゥルフが目覚める時だ。

 クトゥルフが目覚めてはいけない。

 どれほどの事前準備を経たとして、目覚めの一瞬であまりにも多くの犠牲者が出ることだろう。

 

 俺は冗談めかして肩をすくめた。

 

「はは、父上が全部なんとかしてくれたらよかったのに」

「あの虹色の泡みたいなやつか。頼んだらなんとかならないのか?」

「まさか。息子に甘い人だけど、クトゥルフだってヨグ=ソトースの子だ。『人間が死なないよう最速でクトゥルフのみを適切な力加減で爆散させてくれ』なんて面倒な頼みを聞くはずがない」

「……なるほど。そうなると、これは兄弟喧嘩ということになるのか」

「虫唾が走りすぎて降谷さんに悪質なイタズラしたくなった。猫耳生やしてやる」

 

 降谷さんが両手で頭を押さえて眉間に皺を寄せた。

 そして何かに気づいたようにニヤリと笑う。

 

「君の趣味はわかっているが、僕で萌えるのはやめてくれないか」

「宣戦布告か。なるほどよろしい。今後ニャーンとしか喋れない呪いをかけよう。猫上司として公安で可愛がられればいいんだ」

 

 少し肩の力が抜けたのか、降谷さんの表情に余裕が戻ってきた。

 なんにせよ、できることをするしかない。

 

 そのあたりで病室のドアがガラリと開いた。

 事前に連絡をしておいた諸伏兄だ。

 

 諸伏兄はゼエゼエと息を荒らげて、青ざめた顔色で「景光!」と声を上げた。

 降谷さんが彼のために場所を空けて、声をかける。

 

「早かったですね。長野からだと時間がかかると思いましたが」

「東京で少し調べものがあったので。………景光」

 

 その様子は本当に辛そうで、俺は先ほどと同じ説明をするのが躊躇われるほどだった。

 だが、真実を隠して救われるのは説明者だけだ。

 目覚める見込みが薄いことを正直に伝えれば、諸伏兄は「そうですか」とだけ言ったのだった。

 

 諸伏兄が縮れてしおしおの星の精を少しだけ撫でた。

 

「ところで、何を東京で調べてたんだ?怪異系の事件か?」

「かつて私たちの家を襲った佐比売党の男の行方を掴みました。景光をこのような形にした主犯である魔術師です」

「ッ本当ですか!!」

 

 食いついたのは降谷さんだ。

 何もできることのなかった場面に、垂らされた一筋の蜘蛛の糸のようなものだ。

 必死になるのは当然だろう。

 

 諸伏兄は頷いて、鞄から数枚の書類を取り出した。

 

「不動産会社、阿知波不動産。その社長の男と接触しているようです。京都の会社で…よければお力添えをいただけませんか」

 





・ヨグ=ソトース
光の影響で人間っぽいということは、ハスター贔屓ってことだ。
そもそも、ハスター贔屓なのは息子以前に光という「外」の希望を招いた子という側面が大きい。
つまり、いつでもクトゥルフ爆殺行けます!

・クトゥルフ
すやぁ。
なんやこのアクセス。細かい羽虫が1匹おる。
ワイの器?ほーん、殊勝な心がけやな。
せっかくやしわいの神子にしたるわ。

ハスターの寵愛を受けしもの。我がために働くがいい。
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