ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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決戦────年季の違い

 

 船に駆け寄ろうとしたところで、ジンに「待て!」と押し留められた。

 

「嫌な予感がする。せめて臓物に乗っていけ」

「………わかった」

 

 コナンもこの旅でよく理解したことだ。

 ジンの勘はとても鋭い。この助言も、かなりの確度を持って的を得ているはずである。

 

 丸太状に伸びた星の精に跨り、静かにゆっくりと船へと近づく。

 ジンは船の周辺を銃を構えながら見張るようだ。

 上がってくる様子はない。

 

 船には朽ちかけの舷梯がかかっているが、脆く崩れ落ちそうで人の体重を支えるには不向きだ。

 船自体は木造帆船なのに実に整備が行き届いているから、誰かが常に手入れしていたのかもしれないと気づいた。

 

 磯の香りの海中地底湖に浮かぶ船へと、ゆっくりと乗り込む。

 見上げたマストには海賊旗が掲げられている。

 かつて、深きものどもが海賊を偽って渡り歩いていたのか。

 あるいは一時、人と分かり合えた時があったのか。

 

 それは神ならぬ身では窺い知ることはできない。

 

 慎重に、星の精から降りて船内を見聞しようとした、その時である。

 

 

 ズズズ、と低い地鳴りのような音が辺りへと満ち始めた。

 音の出どころがわからない。

 

「グスッ!!!」

「分かってる!星の精、上へ上がって!」

 

 指示とともにコナンを乗せた星の精がビュンと最速で天井付近まで飛び上がる。

 それでようやく分かった。

 音は、この船の下から響いていたのだ。

 

 サバリと、無造作に伸び上がる巨大な掌が船を掴む。

 何か空気の膜のようなもので覆われた船が、手によって無理やりに地底湖の底に沈められていく。

 

 いったいどれほどの怪力か。巨腕か。化け物か。

 それは完全に船を引き摺り込んだあと、ゾプリと泡の音を響かせながら大きな大きな頭を浮上させた。

 

【何用だ。この船は大事なものだから、あまり触れないでくれると嬉しいのだが】

 

 現れた巨大な影は、想像より遥かに理知的に言葉を紡いだ。

 

 びっしりと鱗で覆われた肌。

 所々に鰭が生え、ナマズのような髭と龍の如き鬣が水に濡れて垂れている。

 触腕がだらりと無造作にあちこちから生えて、こちらを探ろうと蠢いていた。

 

 じろり、とコナンの姿をその魚に似た大きな瞳が捉える。

 

 ああ、これは無理だ。

 コナンは一瞬で思い知った。

 

 まだ戦艦の力を1割も使いこなせていない自分が、この生き物を打倒するのは無理だ。

 ましてやこの海底宮殿を壊さないように術式を打ち込むなど、不可能にも程がある。

 

 全霊をかけて、やっとジンと星の精を連れて無事逃げ延びられるだろうという程度。

 

 化け物はのんびりと湖から体を浮上させた。

 まるでこの巨大なドーム状の空間が狭苦しい子供用ベッドでもあるかのように、窮屈そうに体を縮めてコナンと目線を合わせる。

 

 星の精がブルブルと震え出した。

 

 化け物の肌にはフジツボがびっしりついている。

 北海道で見たダゴンと比べても二倍、いや、三倍は大きい。

 コナンは生唾を飲み込んだ。

 

【侵入者か。あの忌々しき風の神の力を感じる。なにが目的だ?】

「…………」

【話さずとも良い。どうせこの我らが紡いだ歴史を、神復活の儀を潰そうというのだろう。風の神がこのような小動物を遣すとは、舐められたものよ】

 

 滝のように水を落としながら、巨大な手がもう一つ湖から浮上する。

 

【どれ、ワタシが捻り潰してやろう。子らの無念の声も聞こえる。覚悟はできていような】

 

 

「グスグスッッッッ!!!」

「っ星の精!待って!」

 

 耐えかねた星の精が、全身から涙を吹き出しながらコナンをひしと抱きしめて逃げ出した。

 ニタリと微笑んだ化け物が、「小鼠を潰すのは慣れておらん。逃げ回るなよ」と穏やかに声を出した。

 

 大気が動く。

 大質量が蚊を叩くように振り下ろされ、風圧だけで壁際へと叩きつけられかける。

 星の精が「ゲタァ!!!」と悲鳴をあげた。

 

 ジンに念話を繋げば、入り口近くの高台の物陰に隠れつつ応答があった。

 

『無事か!流されてねぇだろうな!』

『問題ない。あんなデカブツ、俺が行った時は居なかったが……不味いな。爆破すれば術が設置できねぇ。銃も、メタンガスに誘爆する可能性を考えると最低限しか使えねぇ』

『俺がなんとかする!ジンは俺の合図があったら奴の気を引いてくれ!』

『俺に死ねってか』

 

 変わらぬ軽口に少しだけ心が軽くなる。

 しかしやはり、それは少しでしかなかった。

 

 ふむ、と考え込む様子で化け物が言葉を落とした。

 

【ちょこまかと、狙いが定まらん。大人しゅうせい】

 

 魔術だ。

 予備動作的に展開された術式を視認して、コナンは半ば反射的に術式防御の姿勢に入った。

 コナンはブレスレットによって守られているが、星の精はそうでない。

 星の精を止められれば足のないコナンが捕まるのは時間の問題だ。

 

 判断は刹那の間もない。

 

 全力で術式解析、ぶっつけ本番の術式防御は雑極まりないお粗末な出来だった。

 目の前で弾けて崩れ落ちた術式によって圧力が生じ、星の精の触手が幾分か切り落とされた。

 ダラダラと血液が垂れ、星の精が痛みに泣き喚く。

 

 あらかじめ登録してあった簡易回復術式を回せば、星の精の傷口は塞がったようだ。

 塞がっただけだ。

 星の精はグズグズと泣いて、それでもコナンを置いて逃げようとはしなかった。

 必死で触手でコナンを庇い、泣きながら怪物からコナンを守ろうとしている。

 

 化け物はクツクツと笑ったようだ。

 

【おや、小賢しい。あまり家を散らかしたくなかったのだが】

 

 仕方ない。ではもう一度だ。

 

 先ほどと種類の異なる魔術が1000、100種が10ずつ装填されるのが見えた。

 夥しい魔術が洞窟の狭い空間にひしめき合い、まるで蛍の群れのように内部を発光させる。

 

 コナンは全力で叫んだ。

 

『今だジン!足元を撃て!』

 

 声と同時に走り出したような動きで、ジンがアサルトライフルのフルオートで玉をばら撒いた。

 耳の痛くなるような凄まじい銃撃音が響く。

 しかしそれは瞬時に展開された防護壁によって無効化され、何の痛痒も与えられなかった。

 

 ゆったりと化け物が振り返る。

 

【ほう、まだ居たのか。いいだろう、この際だし足のない方から先に───】

 

 

 瞬間。

 

 眼球に触れそうなほどの距離に不意に現れたコナンに、化け物は目を見開いたようだった。

 

「っ、これで終わり、だ!」

 

 短距離転移。

 腕時計型麻酔銃のモード変更。

 対怪異用最終兵器「ネムネム君」と命名されたそれは、阿笠博士と灰原哀の合作だ。

 

 それは当たれば旧支配者ハスターすら眠らせる、最終兵器の名に相応しい逸品である。

 

 小さな針が化け物の眼球に吸い込まれていく。

 

 

 

 

【────なにか、ワタシにしたのかな?】

「……っ、え」

 

 ああ。

 所詮は「当たれば」の話だ。

 

 鱗に、いや、鱗に紛れて張り巡らされた防御術式が瞬時に閉じられた瞬膜を覆い、薄皮一枚の距離で針を消し飛ばした。

 意識してのものではない。

 あらかじめ編んであったのだ。

 この魔術師は蟻を潰すのにも丁寧に仕事をこなす、慎重なタチだった。

 それだけのこと。

 

【では、先ほどの続きだ。皆まとめて消し飛んでもらうことにしようか】

「待っ、」

 

 

 飽和した光が、炸裂した。

 





・その頃の公安信者さん
包囲網を突破した加護ありダゴン一匹が東京でシン・ゴジラみたいに大暴れし始めたので、頑張って討滅した。
全力全霊の「五色の虹」で再生ごと仕留め切った形。
マジのマジに人類種の英雄。
MP枯渇でダウン。

・大英博物館
地下の収蔵物の死守に全力を注いでいる。
この状況で収蔵物が溢れたら人類の終わりだ。絶対にこれを出してはいけない。
命を賭して、これを死守せねばならない。
こちらはこちらでハリウッド映画作れるレベルのドラマがあった。
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