ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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エピローグ

 

 運び込まれた星の精とジンはほぼほぼボロ雑巾に等しかった。

 

 時空改変で回復したこちらと違い、向こうは半分地続きだ。

 加えて致命傷の状態で無理やり時空移動したのがまずかった。

 彼らの元に駆けつけた時には死にそうを通り越して、死んで魂が霧散しかかってる状態であった。

 

 慌てて俺が処置をしたが。

 それでもなお、魂の受傷により一週間は絶対安静が必要となってしまったのである。

 

 俺たちはコナン君達を伴って、公安の手が入った病院にやってきている。

 ようやく面会時間がまとまって取れるようになったので、みんなで会いにきたのだ。

 

 ベッドの上の住人となったジンが俺たちを見て眉を上げた。

 既に足音で俺たちが来ていることに気づいていたらしい。

 

 俺から声をかけてやる。

 

「どうだ、ジン。動けそうか?」

「まだ手が震えて物が持てねぇ。車椅子に移動はできるようになったがな」

「順調、順調。あと四日もすれば普通に過ごせるようになるさ」

「あの臓物はどうした。俺を受け止めた勢いで中身出てたが」

「そっちも回復済みだよ、ほら」

 

 俺がコナン君に視線を向ける。

 コナン君のポッケの中からヒョコ、と星の精が顔を出した。

 触手を振ってクスクス笑っている。

 

「ゲタゲタゲタッ!ゲタッゲタッ!」

「星の精が、お前もうまいもん寄越せって言ってる。助けたお礼が欲しいみたい」

「モツにとって美味いもん……?死体の用立てルートは今は使えねぇんだが」

「星の精に何食べさせようとしてんの。美味しい中華がいいって」

「ゲタッ!」

 

 星の精は嬉しそうに触手をニュッニュッと激しく上下させた。

 ジンが宇宙猫の顔で「中華好きなのか…このモツ……」と信じがたい事実を噛み締めている。

 

 星の精の方はもうすっかり良くなっていて、このあたり生物としての強さが人間とは異なるのだと感じさせる。

 まあ、運び込まれた時は本当にギリギリだったがな。

 

 半日もすると目を覚まし、大泣きしてコナン君にずっとそばにいるように泣きついた。

 怖くて痛い目に遭って、もう片時も友達と離れたくないらしい。

 ここのところ、コナン君はトイレに行くにも難儀する状態になっていた。

 

「本当に星の精は腹ペコだなぁ。俺の贈り物の時も一瞬でビュッフェにしやがって。あ、ジンは何に使った?」

「酒とタバコ、無限に出るようにした」

「不健康!!!」

 

 放り出したままの俺の贈り物の「ハスターの褒章」がベッド脇のテーブルで朝日を浴びて鈍く煌めいている。

 

 「ハスターの褒章」はメダルほどのサイズの黄の印が彫り込まれた褒章だ。

 

 ハイパーボリア時代には人類史に大きな功績を残した民に与えていたものだ。

 分野ごとに大きく春、夏、秋、冬の四種類がある。

 これは冬の勲章で、艱難辛苦を乗り越えた証としての意味を持つ。

 特別に俺の触手から作られていて、これ一つが俺の一部そのものだ。

 

 込められた効果は「一回だけ、あらゆる願いをハスターの名の下に叶えること」。

 ハスターの事前相談付き。

 オーダーメイドでできる限りご本人の意思に沿って願いを叶えます。

 

 なお、星の精の願いは「ビュッフェ!お前たちの食う美味いもんを星の精も食べる!」だった。

 食いしん坊すぎる。

 

 しかも治療中で食べられなかったから「今食べるとお腹痛い痛いになるよ?」と止めたんだがな。

 「星の精はもう平気!食べれる!お前願い叶えるって言ったのに嘘ついたのか!ゲタッ!」と勢い付いてしまった。

 ベストコンディションの方がもっと美味しい、となんとかその場では納得してもらったが。

 全く苦労したものだ。

 

 そしてジンは酒とタバコ。

 

 なんというか、実に牧歌的な願いであることよ。

 本当になんでも叶えるつもりだったんだが、そういうのは必要ないという態度の表れか。

 

 ジンが鋭く舌打ちした。

 

「チッ、早く喫煙できる部屋に移りてぇ。この間ここで吸ったらアマにガチギレされた」

「当たり前だろう。全館禁煙の病院で何やってるんだ」

 

 降谷さんが呆れて肩をすくめる。

 ジンは「あのババア、タバコぐらいで死ぬほどキレ散らかしやがって。うっせぇんだよ」と渋面を作った。

 よくない患者だ。

 

 その隣には、ここに来てからずっと非常に申し訳なさそうに俯く諸伏さんの姿もある。

 やっと決心がついたのか、頭をバッと下げて諸伏さんかおもむろに叫んだ。

 

「悪かったジン!俺が弱かったからそんな苦労をかけて!」

「あぁ?わけわからんバケモンに操られたんだろ。不可抗力だ。それで気にする奴は居ねぇ」

「同じことを組織時代にスコッチこと俺がしたら?」

「射殺」

「ほらーーー!!!」

 

 諸伏さんは喚いた。

 

 ちなみに、諸伏さんも戻ってから病院から脱走した件で大層叱られたらしい。

 怪異の仕業で不可抗力として許されたが、怪対課が動くまで大捜索だったらしいからな。

 えらい騒ぎになっていた。

 

 また、諸伏さん自身の問題も解決した。

 クトゥルフ顕現に際してその繋がりは切ったし、精神干渉耐性を付与した肉体を与えてある。

 

 ジンが無意識に胸ポケットからタバコを出す仕草をして、気付いて「チッ!」と再び舌打ちしてから手を下ろした。

 

「それで、バケモノの復活はどうなったんだ」

「大丈夫。無かったことになったよ」

 

 過去改変が発動し、歴史は書きかわった。

 

 正確には過去改変ではなく現在を剥ぎ取って、手を加えて別の過去に接合した接木のような処置をしたのだが。

 まあ、人間にとってその二つに違いなんてほとんどないだろう。

 過去が変わったことだけを理解していればそれでよい。

 

 同じく、大量の死者も無かったことになった。

 

 死の苦しみは「夢見が悪かった」という程度に落とし込み、発狂者をなるべく減らす試みもしたからだ。

 基本は夢というか、虚な幻のような認識になったことだろう。

 

 それでも多くの人が迫り来る大津波、ビルほどに巨大な魚の怪物、終末の白昼夢を見ることになった。

 政府発表では伏せられているが、一応各国政府、魔術団体には連絡済みだ。

 

 今後国民へのフォローが必要になってくるかもしれないし、そうしたあっという間の滅びがあり得るのだという警鐘にもなるだろう。

 

 本来の歴史では東都は河川に沿ってほぼ壊滅状態になったからな……。

 それを眼前で統括して、東都民の避難を指揮しなければいけなかったお偉いさんたちだって、かつてのことは覚えている。

 

 俺がことのあらましを説明すれば、恐怖と共に言葉をなくすしかなかったほどだ。

 きっと彼らも今回の件をよく理解して、フォローに勤しんでくれることだろう。

 

「諸伏さんは魔術による心神喪失ってことで無罪放免。コナン君、ジン、星の精の三人は兄弟団から表彰されるかもって話になりつつ俺が話を止めてます」

「やってられるか。俺は降りる。そんな面倒絶対持ってくんじゃねーぞ」

「勿体無いなぁ、黄色の印の兄弟団の名誉ある章なのに。なおコナン君は俺の神子として出席予定です」

 

 コナン君がぶすっと頬を膨らませて納得していない様子を見せた。

 出たくない気持ちが全面に出ている。

 でも魔術団体に繋ぎがあるのは大切なことだし、いいと思うんだけどなぁ。

 

 星の精は「星の精は偉い!みんなが星の精のこと褒める!」って喜んでるんだがなぁ。

 コナン君がはぁ、と息をついて仕方なく星の精をわしゃわしゃ撫でた。

 星の精が瞬時に有頂天になって踊り出す。

 

 

 本当は。

 星の精は「友達と学校に行きたい、自分の席が欲しい、みんなと勉強したい」と願うつもりだったようだ。

 

 だがコナン君の複雑な事情を理解して、自分が人間と違うことを認識して。

 己の願いをそっとしまい込んだ。

 

 もちろんそれは俺がきっちり叶えてみせる。

 まだ星の精は四歳ほどの情緒と拙い常識しか持ち合わせていないけれど。

 そこをなんとかしてこその神様ってやつだからだ。

 

 なんでも願いを叶えると言ったのは俺なのだから、そのぐらい叶えてやるさ。

 

 

 ドン、とベッド脇にPCを置いて「この中身、お前が退院したら渡す任務だ。読んでおけ」と、情け容赦ない降谷さんが平坦な声を出す。

 流石黒い風、人の心がない。

 

「おい、誰かこいつ止めろ。死にかけ通り越してた俺を労る気がねぇのか」

「あっ、我が夫が羽虫と遊んでる。嫉妬。プチプチしていいですか」

「前言撤回だ。なんでもするからこの化け物を止めてくれ」

 

 ジンはキリリとした顔で意見を翻した。

 ベッド脇から無造作に湧き出てきたニャルが、ジンの髪の毛を一掴みプチッとやった。

 ジンが悶絶する。

 

「メッッッッ!!人の髪を毟らない!!手足がダメだからって髪の毛ならいいわけではないです」

「でもむしゃくしゃします。僕らの愛の巣に副王を讃える社があるのが気に食わなさすぎる」

「今回の立役者だし仕方ないだろ。父上が居なかったらコナン君たちも死んでたかもしれないんだし」

「やだやだやだ!あの虹ゲロの社あるのやだ!!」

 

 わがまま言わないの!

 

 ジンの髪を掴んで喚くので、なんとか人から引き離して宥めてやる。

 ジンはまた具合が悪くなってしまったようだ。

 引き抜かれた髪は運良く少なかったから、円形ハゲはできなかったらしい。

 可哀想なので瞬時に髪を生やし直してやる。

 

 社はコナン君から一部始終を聞いて、急いで作った俺の手作り品だ。

 コンパクトな家庭用神棚。

 

 日本の神社の旧神向け機能を元にした「ヨグ=ソトースリラックスプラン」が組まれており、中は狭いながらちょっと良さげな空間となっている。

 御神体として結婚式で使ったヨグ=花瓶を使用した。

 仕上げに酒と共に俺の手作り菓子を供えさせて完成である。

 

 供え終わった瞬間、神棚の扉がバタンと開き虹色の泡が出現。

 それは俺の手作りマフィンを引っ掴んでそそくさと戻っていった。

 

 見ていたニャルは「浮かれてて草」とだけ言っていた。

 こら、副王様に悪口言わない。

 

 ニャルが俺に縋り付いてジタバタした。

 

「副王あそこに居座って帰らないんですよ!?じっと見ててマジウザ……ねぇ撤去しましょうよ!僕が白痴の口に突っ込んできますから!」

「俺の力作捨てないでよ。ニャル分のクッキーも作ったろ?」

「副王のお下がりやだ……うぎぎぎぎぎぎぎ」

 

 ついにいじけ出してしまったから、俺はニャルをヨスヨスと撫で回してやった。

 まだ引き抜いたジンの髪の一部を握っていたから捨てさせて、優しく抱きしめてやる。

 

「なら今日の昼は二人で料理しよっか。お互い料理交換っこしよう」

「!!!する!します!」

「よし、決まり。立って、機嫌なおして。そろそろ面会時間終わるし、行こうか」

 

 コナン君が「操縦うめー」と思っているのが丸わかりの顔をした。

 

 いや、ニャル操縦は奥が深いから俺なんてチョトワカルの域を出ない。

 常に予想だにしない生き物、それがニャルである。

 

 ジンがため息をついて俺を追い出す姿勢に入った。

 

「回復までもう来るな。あと資料は見ておく」

「安静にしろよジン。あの時は本当に助かった。ありがとな」

「………ふん。ガキにされといて、懲りねぇ野郎だ」

 

 そっぽを向いて、ジンが吐き捨てる。

 根本的に感謝され慣れていないのだろう。

 コナン君は少しだけ笑ったようだった。

 

 部屋を後にすると、看護婦のおばさんが「あの患者さんまたタバコ吸ってませんでしたよね…?」と不安そうに声をかけてきた。

 俺は「頑張って禁煙してるみたいです」とフォローしてその場を離れることとする。

 

 清潔な院内は白く、それでいて慌ただしくいつも通りの忙しさを滲ませている。

 生命を預かる場ならではの、翻っての生の輝きを感じさせる。

 

 俺は思いっきり伸びて、笑顔で皆を振り返った。

 

「というわけで、今日の昼は俺の手料理になりまーす。食材買いに行くので買い物手伝って」

「君の料理は異国風で意外と美味しいからな。わかった、僕が車を出そう」

「洗い物係でーす。肉体が帰ってきて物に触れるのが好きになったなり」

「僕、諸伏さんの料理も好きだよ」

「ありがたい…ありがたい……気付いたけど俺のこの料理スキル母さん成分だわ。実質コナン君の母親は俺」

「際どいジョークを飛ばすなヒロ。返答に困る」

 

 普段通りの会話は和やか。

 かけがえのない平和を噛み締めて、それでもなお日常は続いていく。

 

 玄関を抜けると、爽やかな風が吹いた。

 日が差している。雲ひとつない晴天だ。

 

 

 俺はそっと、空を仰いで目を細めたのだった。

 

 

「ああ、いい天気だなぁ」

 





・こぼれ話A マモーさん
恐怖を押し殺して、ダゴン達を川沿いに限定誘導する暗示を大規模敷設して気絶してた。
街に無秩序に散らばればもう誰も助からないから、できるだけ多くの人が助かるように。
三億年の技術の粋、精神操作を極めたマモーさんの神格の群れにすら届きうる魔術である。
もちろんMP0で川沿いで気絶すれば無事なはずもない。
ダゴンに踏み潰され、本来の歴史では命を散らしていた。

目を開いた時、そこに神の姿があった。
ああ、やはり彼岸は神の袂にあったのだと、そう思った。
「大丈夫、生きてるよ………ありがとな、マモーさん。人々を助けてくれて、本当にありがとう」


これで終了。
今後どうするかはこれから考えようかな。
夢でお告げのあったハスターと幽☆遊☆白書か、ドラゴンボールか、はたまた全くの新作か。
これまでの未完作の続きか。
ううむ、悩ましいのぉ。

もし何かご意見ありましたら下記マシュマロよりどうぞ。
https://marshmallow-qa.com/wnat94f21sxd4vp
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